満足度★★★★
鑑賞日2019/03/04 (月) 18:30
座席1階
タイトルの寒花とは、極寒の地に舞う雪という。文学座がアトリエで上演したものをサザンシアターという比較的大きい劇場で再演、その初日を拝見した。
初代韓国統監伊藤博文を暗殺した安重根が処刑前に収監された旅順の監獄が舞台。信念を持って殺害を実行した安が毅然と、泰然と死刑を受け入れようとしているのに対し、監獄の看守長や通訳など日本人たちはそれぞれの思いや背景を抱え、落ち着かない。日本はアジアの盟主として君臨しようと体裁を維持するのに腐心しているのが情けない。それはともあれ、死に向かう人間の心理、心の動きを少し斜めから見つめている舞台といえる。
今の時代の価値観から言えば、どんな理由があれ暗殺は許されない。その観点では安を英雄的に描いていて落ち着かない感じも。今の日韓関係には寒花が舞っていて、歴史の教訓を考えるのも、なんだかタイミングがよくない気も。舞台を見た後、かなりの重みを体に感じたのは、そんな今の政治状況があるからかもしれない。