満足度★★★
臆することなかれ、見くびることなかれ。
シェイクスピア戯曲とは、これほどまでに引力があるのか。
誤意訳の名手・中野成樹をもってしてもその引力を意識させてしまった。
別に引力に勝つとか負けるとかそういう話ではない。
どう付き合うかという話である。
それまでの中野作品は、その点が絶妙なバランス感覚だったのだと思う。
しかし、それが今回はうまく機能していないように感じられたのだ。
ダイナミズム溢れる戯曲である『マクベス』と中野演出の相性の問題である。
現代口語翻訳調で対処できてきた雰囲気が、王冠を出した時点で崩れる。
そこに中野演出の迷いが見て取れるようであった。
『マクベス』に対し、臆する必要はないし、また見くびる必要はもっとない。
中野演出は後者の選択をしてしまった気がしてならないのだ。