44マクベス 【トークゲスト決定!!】 公演情報 中野成樹+フランケンズ「44マクベス 【トークゲスト決定!!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    臆することなかれ、見くびることなかれ。
    シェイクスピア戯曲とは、これほどまでに引力があるのか。
    誤意訳の名手・中野成樹をもってしてもその引力を意識させてしまった。
    別に引力に勝つとか負けるとかそういう話ではない。
    どう付き合うかという話である。
    それまでの中野作品は、その点が絶妙なバランス感覚だったのだと思う。
    しかし、それが今回はうまく機能していないように感じられたのだ。

    ダイナミズム溢れる戯曲である『マクベス』と中野演出の相性の問題である。
    現代口語翻訳調で対処できてきた雰囲気が、王冠を出した時点で崩れる。
    そこに中野演出の迷いが見て取れるようであった。

    『マクベス』に対し、臆する必要はないし、また見くびる必要はもっとない。
    中野演出は後者の選択をしてしまった気がしてならないのだ。

    ネタバレBOX

    別にシェイクスピアに造詣が深いわけでもないが、少し長めに印象を記す。

    トークゲストだった翻訳家の松岡和子の言葉がこの劇を語っている。
    “シェイクスピア戯曲の引力”という枕詞を置きつつ、
     ・引力を利用した部分
     ・引力から離れた部分
     ・引力から離れようとして離れ切れていない部分
    という3点のコラージュであるという感想を述べたのだ。
    私も全面的に同意したい部分である。

    中野成樹に言わせれば、“古典戯曲の保険”ということになるだろう。
    彼は、シェイクスピア保険に懐疑を抱いていたが、結局保険を使っている。
    『マクベス』をやること自体の重みを、彼は見誤ったのかもしれない。

    ここだけは中野作品の妙だなと思ったシーンを2つ。

    魔女の予言の性質を中野流に分解できていた点は面白い。
    そこらにいそうな若者のいい加減な言葉にしても、当たれば予言になる。
    別に当たったとしても、偶然か自分がそうしただけのこと。
    そこに溺れていくマクベスという定番の印象を、別の形で提示できている。

    最後に、マクベスとマクベス夫人が一緒に墓で眠るシーン。
    眠れなかった2人が眠るという清々しいシーン。
    これまでの『マクベス』に対し、新たな解釈を提示できているように思う。

    この2点にしても、そこだけを切り取ればと巧いというだけなのだ。
    要するに3点のコラージュが有機性のある提示ではなく、
    どこかでこぼこが気になるような感じで提示されているのが本作だ。
    地ならしした結果、別の地ならしが必要になったのではないかと思う。

    0

    2009/02/23 22:41

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大