玉川上水心中 公演情報 めがね堂「玉川上水心中」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    作品としては踏み込みが欲しい
     太宰 治は6月19日の誕生日(遺体発見日・桜桃忌)直前、1948年6月13日(38歳)に山崎 富栄と玉川上水で心中した。

    ネタバレBOX

    太宰ファンならずとも文学好きなら誰でも知っている事実である。が、最後の数日の二人の行動には、謎が多いことも事実だ。前年には、「斜陽」が大ヒットして斜陽族という流行語迄生まれ太宰の名は一躍有名になっていた。その後も多くの執筆依頼が殺到し、創作にも熱が籠っていた。1948年5月10日には、「人間失格」も脱稿している。然し一方で、結核の進行もあったであろうことは考えられる。また文壇の寵児ともてはやされても、稿料は飲んでしまうし、多額の税に悩まされたことも事実ではあろう。
     今作は、こういった背景を前提に当時太宰が入り浸っていた小料理屋、千草の女将、太宰の一番弟子を自認していた田中 英光、小説「グットバイ」の担当編集者、妻、刑事やタクシー運転手の証言と太宰、富栄のフラッシュバックシーンや霊の現前で構成されたゴシップ事件史のような作りになっている。
     その点、脚本家はもう少し練ってほしい所だ。何をって、何故太宰は何度も心中事件を引き起こしたのか? についてである。別の言い方をすれば、何故、太宰は無頼派だったのか? と問うても良い。その根底にあったであろう彼のコンプレックス(複合意識)を想像力によって埋めて欲しかった。何故なら、実際に死に至ったこの心中事件には、不明な点が多いのだから、その点を脚本家の想像力によって埋める自由はあるハズだからである。この創作がうまく嵌れば今作は遥かに良い作品になったであろう。

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    2015/11/27 12:39

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