満足度★★★★★
意外や労使対立の劇
宮崎の小さな電気工事会社の労使対立を軸にした、悲喜こもごもの人間ドラマ。
観てつくづく思ったのは、演劇は緩急だということ。
“急”にあたるシリアスで重いシーンは方々の女性客からシクシクと啜り泣きが聞こえてくるほど痛切な反面、“緩”にあたるコミカルなシーンは電気工同士のしょうもないふざけ合いが極まって肉弾戦まで飛び出すほどで、その振れ幅の大きさに引き込まれた。
それも、緩、急、緩、急…と続く大きな流れがあるだけでなく、それぞれの緩や急の中にさらなる“緩、急、緩…”が畳み込まれているという念の入りようで、作劇のお手本を見る思いでした。
しかし、流行り廃りに捉われずにこうした普遍的な人間ドラマを作り続ける団体があるのは心強い。
この団体が今作で描いたのは人類が滅びない限り永遠になくならないに違いない、中間管理職の苦悩。上からは圧迫され、下からは突き上げられる者の憂いを管理職役の松本哲也が抑えた演技で見事に表現しており、その苦しい胸の内がひしひしと伝わってきた。
もちろん、コミカルなシーンもシリアスなシーンに負けず劣らず面白く、飄々としてトボけたキャラクターが素敵な永山智啓扮する中年電気工から同僚への「何か面白いこと言え!」というムチャ振りから始まるくだらないやり取りにはその都度笑わされました。