日射し 公演情報 SPIRAL MOON「日射し」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    陽だまりの中で。
    家族がテーマです。

    ある家族の風景を描いた作品。
    セットは淡い色の布で一面を包み柔らかい雰囲気を演出しています。

    冒頭、女性3人がリーディングで、物語を進めていきますが、全体的に優しく丁寧に丁寧に仕上げた作品です。

    公演中なのでネタバレBOXに。。

    ネタバレBOX

    3人の姉妹を軸にして両親の結婚に至った経緯や兄・太陽が3歳で亡くなった後の家族、3人の姉妹の生き様などを、とても優しく柔らかく描いてゆきます。

    3人の姉妹はそれぞれ独立し育った家から離れてゆきますが、自分たちの生活に追われて実家とは疎遠になっていきます。


    母の臨終には結局、父しか間に合わなくて父はずっと母に「ありがとう。ありがとう。ありがとう。」と何十回も何百回も何時間も言い続けていた姿を目のあたりにした姉妹は、あんなに父に愛されていた母は幸せだった。としみじみ思うのです。



    母が居なくなって父が一人になっても姉妹は「お父さん、大丈夫?不安だね。」と言葉はかけても、父の元には帰らず、やがて半年が経ちます。


    ここでセットの布は外されバックには茶の間が出現します。
    中々の工夫です!




    父の誕生日に実家に集まった3人は不思議な体験をします。

    父が以前好きだった同級生のさよこの話を聞かされ複雑な心境になりますが、同時に自分たち3人の現在置かれてる環境も見直すきっかけとなります。


    一方で先天性の病で亡くなった兄・太陽はずっとこの家に住んで家族を見守っています。


    会社でリストラされても強がってるひじりに対して太陽は「いつも前向きな自分にも後ろはある。」と慰めてやったり、ひなたが縁側で物思いに耽ってる場面ではひなたの頭にそっと手を触れてナデナデするシーンもあり、涙を誘います。


    非常に繊細で美しく、ちょっとしたシーンの演出が見事です。


    黄泉の国からのさよこの出現は現実と曖昧さのギリラインですが、この部分、観客の感覚に委ねる演出も素敵です。

    明らかにさよこは死んでおり、死んださよこが今でも父を見守っているのです。。
    かつての父を思い遣ったがためにさよこが出した別れの経緯についても、姉妹は知る事になり、そのさよこのセリフで「家族」の大切さを再確認する事につながります。


    場面は変わり・・・
    太陽が亡くなって直ぐに母は父に別れを切り出しました。

    「あなたの心には別の女性が居る事を知っていました。太陽が死んだ今、別れたほうがいいと思います。」


    父は言います。
    「太陽は死んでも私たちの近くにいます。太陽が発した光が日差しとなって、私たちの家を暖かく照らしてくれている。私たちはきっと、大丈夫です。もっともっと幸せになれます。この陽だまりの中で一緒に生きていきましょう。これから沢山の家族と共に。私たちはまだまだ大丈夫です。どうか、これからも宜しくお願いします。」

    そうやって、この家には明るい日差しがいつも照らされているのです。




    ああ、何と強い日差しなのでしょう。




    美しく希望に満ちた作品でした。

    こうゆう暖かな作品を観ると、家族が欲しくなるんだよね。。

    2

    2008/06/17 23:50

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  • おーじ>
    はい、とても素敵な作品だったと思います。
    ついついほろり。。としたシーンもあり涙を誘いました。

    全体のストーリーは良く練られており、非常に優秀な作品だったと思います。
    全員が優しい人たちで、結果的に思い遣っていました。

    妻が別れを持ち出した時点で、愛しいわが子を失ったショックからの言葉が伺えます。
    自分の子供を亡くしたという事で、人はきっと自分を責めるのだと思います。
    その妻の心理を見逃さず、夫はまさに「日射し」のような言葉をかけます。
    この時、もし、夫が「解った。別れよう。」なんて回答を出したら、妻は深い海の底に落ちて二度と上がれなくなります。


    広島にお墓参りに行ったお父さんの心境も伺い知れます。
    かつて、自分の為に身を引いて亡くなった女性のお墓参りはしたいと思うでしょう?

    ワタクシにも、かつてお世話になった友人のご主人のお墓参りは欠かしません。
    お墓参りは、死んだ人の為のものではないですね。

    自分自身を納得させる為のものです。



    タイトルの「日射し」とは、太陽だけが見守ってる「日射し」だけではないのだと思います。

    太陽、さよこ、お父さん、お母さん、姉妹の登場人物で作り上げてる「日射し」です。



    そうやって、暖かいぬくもりの中に戻っていく作品です。

    脚本家を尊敬します。

    2008/06/18 11:00

    そうなんですね、あくまで家族がテーマ・・。

    後半の不思議な体験以降のくだり・・。

    深い洞察力ですね・・、なるほど・・・。

    う~ん、目からうろこ・・・。

    ついつい瑣末な枝葉に囚われて全体の構図を見失う自分は、所詮は余り良く見えてないんでしょうね・・。

    なんだか、すっきりしました。

    いやいや、素晴らしいレビュー・・。

    そう言われてみると、なんだか最後の日射しが、とても活きて来るように思いました。

    作品全体の印象としては、確かに、丁寧に丁寧に、あくまで優しい雰囲気に満ちたものだったと思います。

    2008/06/18 02:23

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