溶けるカフカ 公演情報 カトリ企画UR「溶けるカフカ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    カフカはほとんど知らないけれど
    広い教会のスペースに作られていく
    役者たちのさまざまな関係性に目を奪われました。

    カフカの作品とのリンクはほとんどできませんでしたが、
    にも関わらずとても刺激的な舞台でありました。

    ネタバレBOX

    カフカについては、
    はるか昔の高校生のとき、
    図書館で読んだっきりだと思います。
    だから、作品に織り込まれたものがなんであるかについて
    ぴんとくるものはほとんどありませんでした。

    にもかかわらず、
    これ、面白い・・・。
    ロジックとして積み上がるおもしろさとはちょっと違うのですが、
    肌で感じることができるような魅力があって。

    冒頭のキャラクター間の感覚のすれ違いや重なりのようなものを
    息をつめて見つめる。
    そのルーティンのなかでの空気の様々な変化に
    観る側の時間感覚が消えるほどの密度が生まれ
    作り出される距離、表情、苛立ち、
    一つずつの要素が観る側に意味を作り出す。
    そぎ落とされたシチュエーションの中で、
    ひとりの男と順番を待つ3人の表情から
    醸しだされるふくらみがあって・・・。

    やがて、そのルーティンから外れると
    舞台の空気も動き出します。
    壁に貼られたペーパーに歪んだ映像が
    シーンの広がりをしたたかに制御していく。
    役者たちの断片的な台詞に加えて
    様々な身体の表現が
    空気の流れを広げ、あるいはまとめ
    観る側を巻き込んでいく。

    伝わるものと伝わらないもの。
    同期するものとずれるもの。
    感情の露出、あるいは内に統制されていく感覚。
    進んでいく時間、
    あるいは留まり広がる時間。
    それらを演じる4人の異なるタイプの役者たちには
    常に刹那の身体表現があって
    物語の世界と彼ら自身の素の質感を浮き沈みしながら
    途切れることなく観る側を舞台空間にとりこんでいく。

    見続けるなかで、
    気がつけば、
    なにか様々な質感が
    観る側のコントロールを離れてそこに置かれていて。
    噛み合わない緊張と閉塞、ユニゾンが醸し出す実体のない解放、
    ベクトルの見えない動いていく感覚、
    エッジの見えない広がりの肌触り・・・。
    理のない留まる意思・・・。

    そしてそれらが、
    高校生の時に放課後の図書館で読んだ
    カフカの読後感に重なる。
    宿題で書いたありきたりの感想文と
    別枠で残しておいた、というか表現のしようのなかった感覚というか色が
    やわらかく深くよみがえってきて・・・。
    その感覚が、なんだろ、とても刺激的なのですよ。
    内容なんてなにも理解していないのに、
    あっ、カフカの世界だって思う。

    観終わって、強い疲労感を感じて、
    初めて恐ろしいほどの集中を強いられていたことに
    気がつきました。
    著しく好みが分かれる表現なのかもしれません。
    でも、私にとって、
    その消耗感は決して不快なものではなく
    むしろ、ある種の心地よい高揚がのこったことでした。

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    2011/12/11 09:14

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