yozの観てきた!クチコミ一覧

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iaku+小松台東「目頭を押さえた」

iaku+小松台東「目頭を押さえた」

iaku

サンモールスタジオ(東京都)

2018/01/30 (火) ~ 2018/02/04 (日)公演終了

満足度★★★★

それぞれの登場人物が舞台の外でも普通に暮らしていて、その日常の断片をたまたま舞台上で見せて貰ったかのよう。各々の言動にちゃんと血が通っていた。説得力があった。すばらしいお芝居でした。余談ですが、りょうちゃんが途中で着用してたTシャツがWolfgang Amadeus Phoenix(懐かしい!)だったので、田舎という割になかなかのセンスだと思った笑。あれは誰のチョイスなのだろう?

ネタバレBOX

枝打ち中に修子の父(松本さん)が落下し、そのまま喪屋へ運び込まれるシーンがあったけど、もし仮に即死状態であったとしても普通なら一縷の望みをかけて病院へ搬送するだろうし、病院以外で人が亡くなった場合には、警察が介入の上、必ず検視が行われるはず。 その後、ようやく亡骸が遺族に返されるはずなので、目が飛び出た状態の遺体を病院にも連れて行かずそのまま喪屋に搬送の上、儀式を行うのは違和感があった。
街に外出中で携帯が繋がらなかった家族らも、お芝居をみた限りでは、事故からさほど時間が経っていたとは思われず(数時間程度?)、誰一人「なぜ病院に連れて行かなかったのか?」と疑問に思うこともなく喪屋での儀式を受け入れるのは心情的に理解できなかった。
「喪屋での儀式」はこのお芝居の胆の部分なので、そこに違和感を感じたのは非常にもったいなかった。(ああいった行為が許される地域が日本の中に、まだあるのだろうか??)
源八橋西詰

源八橋西詰

T-works

テアトルBONBON(東京都)

2018/01/23 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★

丹下真寿美さんを売り出すために旗揚げしたT-works。プロデューサーの目論見通り、丹下さんの演技力や声の美しさを十分に堪能させていただきました。

ネタバレBOX

「カッパミイラちゃん」のシーンは胸にグッと刺さり、そこから畳み掛けるようなオチまで見事な展開でした。ただ、売れない劇団の座長と女優のシーンはコミカルというより「おちゃらけ」もしくは「おふざけ」の感が強く、古臭い感じがしてしまいました。
『熱狂』『あの記憶の記録』

『熱狂』『あの記憶の記録』

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/12/07 (木) ~ 2017/12/19 (火)公演終了

満足度★★★★

「熱狂」を鑑賞。ナチス黎明期からドイツ国会第一党になるまでの物語。緻密で重厚で生々しく、あのナチスがどのような過程を経てドイツに君臨していくのかを描く。ナチスおよびヒットラーの歴史をなぞるスペクタクルな話でありながらも、同時に男社会の見栄や権力闘争の話でもあり、黒岩重吾の社会派小説のような趣きもあり、大いに楽しませてもらった。
何よりあの膨大な台詞を噛まずにすらすらと喋り演じた役者さんたちに敬意を評したい。

怠惰なマネキン

怠惰なマネキン

MONO

新宿眼科画廊(東京都)

2017/11/17 (金) ~ 2017/11/21 (火)公演終了

満足度★★★★

10年ぶりくらい?ってくらい久々のMONO観劇。ふわっと耳触りの良い思いつきだけ巻き散らかしておいて後はほったらかし。実行能力はないくせに口八丁で何故か女にもてる「仙人」さん。こんな人の後始末ばっかりしてきた私の人生を思わず振り返った。
会話運びが流暢で、受動的で地に足の着いていない各登場人物が「こんな人いそう!」って思わせてくれる。可笑しいのにリアリティがあって引き込まれた。

それだけに、例の「虫」だけ妙に現実味がなくて若干の違和感が。普通にいる虫(ヒアリとか?)でもよかったんじゃないの?と思う。小さな部分だけどそこだけは引っかかった。・・とはいえとても楽しませて貰いました。面白かった!

モダンスイマーズ実験公演

モダンスイマーズ実験公演

モダンスイマーズ

高田馬場ラビネスト(東京都)

2017/11/07 (火) ~ 2017/11/12 (日)公演終了

満足度★★★★

どこにでもありそうな夫婦の一夜を覗き見しているような感じ。穏やかな生活の中に不穏な気配が滲んで惹きつけられた。鄭亜美さん演じる少々幼くうっかり者な奥さんが奇妙な浮遊感を醸し出していた。公演時間1時間で1800円。こういった安価で良質で濃密なお芝居がもっと増えるといいと思う。

父母姉僕弟君

父母姉僕弟君

キティエンターテインメント

シアターサンモール(東京都)

2017/11/02 (木) ~ 2017/11/12 (日)公演終了

満足度★★★

上演時間2時間10分ほど。もう少しコンパクトにまとめてくれたら…とは思いつつも、記憶や過去や未来など、時間を扱うお芝居に滅法弱いので、やっぱりグッときてしまって最後は涙目に。初演以降、劇団の皆さんそれぞれが外部公演をいくつも経験し、相当な力量でお芝居を魅せてくれる。中でも天球役を演じた島田桃子さんの「この世ならざる感」が凄かった。

月の剥がれる

月の剥がれる

アマヤドリ

座・高円寺1(東京都)

2013/03/04 (月) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★

「死」が軽すぎでは?
扱われている題材はとてもシリアスで痛々しいのだけど、登場人物各々の心情が深く描かれてないから「死」がリアリティを持って迫っては来なかった。

散華メンバーのそれぞれの事情は一部を除いてほとんど描かれず、なぜ身を挺して活動しようとするのかの個々のバックボーンが全然見えてこなくて、活動といっても単に部活みたいで死に対する意識が軽々しかった。

肉が裂け、骨が砕け、親族が嘆き哀しむような「死」はそこにはなく、単に物語上のアイテムとして「死」が扱われているようで、どうも受け入れがたかった。

少年王者舘のような群舞は迫力あったし美しかったんだけどな。

めくるめくセックス 発酵版

めくるめくセックス 発酵版

シンクロ少女

王子小劇場(東京都)

2013/01/17 (木) ~ 2013/01/21 (月)公演終了

満足度★★★★

恋愛版SAW?(笑)
面白かった!公演時間2時間10分と聞いて最初は長いなーと思ったけど、お芝居が始まると引き込まれて長さを感じなかった。内容は殺人の代わりに恋愛や痴話喧嘩やセックスが起こるSAW(1作目)のようだなーと思ったり。

マミ役の墨井さんがよかった。乞局ではあまり見られないようなマドンナ役で愛らしかった。あと墨井さんの生足が妙にエロかった。

・・・好きだからセックスするのか、性欲があるから誰かを好きにならずにはいられないのか。セックスがなくても好きでい続けることは美しいことなのか、あるいはただのやせ我慢に過ぎないのか。なぜ体温を感じると安心するのか。相性ってなんなんだろう。なーんてことを思いながら観ていた。

夫婦役の二人、終盤にはプロレスの技を掛け合ったり頬を殴りあったりディープキスをしたりで凄かった。あのお芝居を続けると公演最終日にはボロボロになってそうでちょっと心配になった。

あ、ストレンジャー

あ、ストレンジャー

マームとジプシー

吉祥寺シアター(東京都)

2013/01/18 (金) ~ 2013/01/27 (日)公演終了

満足度★★★

マーム版「ゾウガメのソニックライフ」?
2011年4月にSNACで初演を行った作品の再演。初演は「過剰な肉体の酷使」を導入する前夜で、小さな会場で紡がれた愛らしい作品だった。当時は確か1時間足らずの作品だったんじゃなかったっけ?それを1時間40分に拡大し、また会場も30人も入れば満席のSNACからそこそこキャパのある吉祥寺シアターに場所を移しての上演。

客入れBGMにRIDEのTasteがエンドレスループで流れていた。このBGMは後に劇中でRIDEのファーストアルバムNowhereを紹介する場面に繋がる。Nowhereの中ならVapour Trailのほうが好きだなーとか思いながら開演を待つ。

ネタバレBOX

「演者がハンディカメラを用いて他の役者を写し、それを舞台上のスクリーンに大きく映し出す」という演出手法は、まんまチェルフィッチュ「ゾウガメのソニックライフ」で見受けられたものであり、舞台上にレイヤーを導入することで新たな世界観の提示があるのかと期待していたが、ガジェットとしての面白みはあったものの、作品に深みを与えるには到っていなかったように思う。

「ゾウガメ~」では影像を通じて映されている役者さんを他の役者が客観視して語るという役割があったけど、マームは今回あの影像で何がやりたかったのだろう?舞台上に道路に見立てて引かれた線や、オモチャの車を影像で写すことでミニチュアの世界を虚構の世界として立ち上げるというう機能は僅かにあったけど、それ以外効果的な使われ方がされていたとは思えなかった。

前日寝不足で集中力がなかったというのもあるけど、僕にはピンとこなかったなー。

とはいえ青柳さんの演技はさすがだったし、見所もたくさんあったのだけど。
マームに対しては期待値のハードルが高くなってるから「もっとすごいの、プリーズ!」って思ってしまう。
めくるめくセックス 発酵版

めくるめくセックス 発酵版

シンクロ少女

王子小劇場(東京都)

2013/01/17 (木) ~ 2013/01/21 (月)公演終了

満足度★★★★

長さを感じない出来
面白かった!公演時間2時間10分と聞いて最初は長いなーと思ったけど、お芝居が始まると引き込まれて長さを感じなかった。内容は殺人の代わりに恋愛や痴話喧嘩やセックスが起こるSAW(1作目)のようだなーと思ったり。

マミ役の墨井さんがよかった。あと墨井さんの生足が妙にエロかったです。夫婦役の二人、あのお芝居を続けると公演最終日にはボロボロになってそう。最終日まで怪我の無きよう(祈)!

エッグ

エッグ

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2012/09/05 (水) ~ 2012/10/28 (日)公演終了

満足度★★★★

仲村トオルのバリバリバディが見もの!
リニューアルした東京芸術劇場、さすがに高級感があった。普段よく行くアゴラやスズナリとは全然違いますね(当たり前)。サイドシート席で観覧。多少見切れる場面はあったけど、まずまず見やすかった。ただ、役者陣の声が聞き取りにくく(特に序盤)。何を言っているか聞き取ることに意識が行ってしまい、集中力が削がれた。

エッグというスポーツや、ロッカーやカーテンの使い方は見事!しかし野田さん得意の?「無駄に広い世界観」が現れるにつれ、芝居から興味が薄れていった。THE BEEはとても好きだったんだけどなー。

秋山菜津子さんの演技は流石のクオリティ!仲村トオルさんのビルドアップされた見事な肉体美!椎名林檎さんの音楽もよかったものの「椎名林檎の楽曲」という印象が強すぎて、このお芝居とはマッチしていない印象を受けた。

深津絵里さんの力演も見事だった。歌上手い!妻夫木聡さんは終始熱演するも、なぜか印象が薄かった。

野田さんとこれだけの役者の演技が観れて、5500円(サイドシート)なら、十分に満足です。

ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。

ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。

マームとジプシー

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2012/09/07 (金) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★

いつものマームらしいけど、物語の詰めが甘い気も
「大きな古時計」という歌の「古時計」を「木造家屋」に変えたようなお芝居。チクタクチクタク過ごした日常を台詞とダンスで幾度も繰り返す。そのリズムが観客の記憶に作用し、それぞれの「チクタク」が脳内に立ち上る。

今回の公演を「自己模倣」と言って批判してたひともいたようだけど、マームはずっと「喪失」それ自身と、喪失という事象により望むと望まざるとに関わらず変化を強いられる人々の姿と記憶を描いていたように思うし、今回の公演もそういう感じがした。

ネタバレBOX

ただ、ある日突然行方不明になり、関わった人それぞれに深い影を落としたまま3年が経過した「Kと真夜中~」に比べ、今回は「国道の用地買収により、昔から住んでいた木造家屋が壊される」という、結論のはっきりしている話で、しょうじきそんなに感傷に陥るほどのことでもないような気も。

思い出深い住み慣れた家を手放すのはそれなりに哀しいのは理解できないこともないけど、借金苦で家を手放さざるを得なかった訳ではないし、住んでいた家屋を含む土地が国道用地買収になれば、土地代及び補償費には税法上の優遇制度もあるし、得た買収費用で新たな生活を始めることができ、一人暮らしのおばあちゃんを老人ホームに入れたり、もしくはデイサービスに通わす資金も出来るわけだから。それはそんなに悪いことではないはず。そのあたり、あの3兄弟の感傷は過剰に過ぎるような気も。

「国道用地買収」とか、僕のような地方出身者にとってはそんな珍しい話題でもないけど、東京都在住だとあまり身近な話題ではないだろうから、観客の側がどこ出身かで、受け取り方も違うのではないだろうか、と思った。

あと、細かいことだけど、たかだか一軒家の解体をする程度の作業で土木作業の現場監督が夜中に解体現場を見回りに来ることはまずあり得ない。また自宅を解体している現場に見知らぬ人が勝手に寝ているのを施主(である兄)が発見したら、不審者の不法占拠として警察沙汰になっているハズなので、あのあたりはリアリティがないなぁ、と落胆した。また、次女の彼氏は最後まで次女の兄に「彼氏だ」とは名乗らなかったので、兄からすればただの不審者の男に家に纏わるプライベートな思い出を唐突に語り出すのはかなり無理があるし不自然に思えた。

感傷を感傷として観客に訴えかけるには、物語のほつれが極力ないように配慮するべきだが、今回はほつれがいくつか露呈し、「ああ、これは所詮物語なのだなぁ」と距離を置いて観てしまった。

マームの公演は毎回シューゲイザーやエレクトロの曲が効果的に使われる。今回はSTEREOLABの曲が印象的だった。
りんご

りんご

快快

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/16 (日)公演終了

満足度★★

合わなかった・・。
「よかった!」」という評判が多くて期待してたけど、「えっ、どこが?」という感じだった。

ネタバレBOX

役者がチンコ出してどーとかこーとか、ハイレグで散々見飽きてるし。演劇の枠組みをぶち破るという意味ではバナ学のほうがインパクトあるし。

りんごのような血反吐を吐いて死んだ母親を、目線によって悲劇にも喜劇にも捉えることができるというのも、目新しいとは思えなかった。メタ演劇のつもりなら、つまらない。なんで評判いいのか、理解できない。
マームと誰かさん・さんにんめ 今日マチ子さん(漫画家)とジプシー

マームと誰かさん・さんにんめ 今日マチ子さん(漫画家)とジプシー

マームとジプシー

SNAC(東京都)

2012/07/21 (土) ~ 2012/07/23 (月)公演終了

満足度★★★★

男が思い描くファンタジーとしての「生理」
女学生二人が学校を抜け出し川を下り海まで歩いていく話。

女同士の喧嘩の最中に生理が始まり、教室に血を垂らしたまま立ち去る女学生役の青柳さん。

「太ももに経血がつーっと伝い、床を赤く濡らす」という描写はよくマンガなどで散見されるものの、そんな女性、少なくとも僕は人生で一度も観たことがない。観たことがないことにかけては「転校当日にパンを咥えたまま走る女子学生と道路の角でぶつかる」のと同じくらい。イッツ・ア・ファンタジー。

ネタバレBOX

藤田さんの母親は生理によって随分と情緒を左右される人だと以前どこかで伺ったけれど、ここで描かれる「生理」は「男が思い描くファンタジーとしての女性の生理」であって、本当の女性のソレとは違うのではないか?という印象を持った。そして今回の物語のエンジンとなるのが正にその「生理」なので、そこにほんのわずかでも嘘や誇張が含まれると、物語自体の訴求力も弱まってしまう。

とはいうものの、経血を垂らした(ことになっている)青柳さんの演技は瑞々しく、また女性2人のリフレインを用いたダンスはRosasのカム・アウトやクラッピング・ミュージックをも髣髴とさせ、とても楽しめた。

(マームのお芝居をROSASのような厳しい修練を受けたダンサーが行ったら、どんな風になるのだろう?と想像すると、また違った面白みも膨らんだ)

今日マチ子さんの描いた絵を白い壁に投影しながら話は進む。こういうの、既にあったようで意外と観たことはない手法で、マームは「リフレイン」「肉体の酷使」に次ぐ、第三の表現方法を手に入れつつあるのではないか、と思えた。

お芝居に使用される選曲にも毎回センスを感じさせる。今回はBLACK DICEが効果的に使われていた。ただ、場面によってはお芝居と絵と音楽の3つの要素が生み出すリズムがバラバラで、ズレがノイズのように感じてしまうところも。「ノイズ」の場面が意図的に醸し出されたものであれば一方で「完全にコントロールされたハーモニー」の場面もなければおかしいけど、そこまでシビアに3つをコントロールしてはいなかったように感じた。

ただ、絵とダンスがほどよくシンクロするシーンは見ていて心地よかった。

お芝居と絵と音楽がより密接にシンクロし、絵がお芝居を、お芝居が音楽を、音楽が絵を互いに影響しあうような3すくみのような構造になれば、さらに深みが出るのでは、という可能性も感じさせた。

これでマームとだれかさん「ひとりめ」から「さんにんめ」までを全て観覧したことに。短期間にテイストの違う3つのお芝居を(低価格で)堪能させていただいた。その全力疾走な姿勢には素直に敬意を表したい。
「バーニングスキン」

「バーニングスキン」

劇団子供鉅人

Vacant(東京都)

2012/06/29 (金) ~ 2012/07/02 (月)公演終了

満足度

つまらなくて途中で帰りたくなった
アトピーの女の子が主人公だという設定で、私自身にも子供の頃アトピーで随分と悩まされたこともあり興味を惹かれとても楽しみにしていた。開演前の舞台にはアンティーク調の椅子が多数並べられ、それがまるでピナ・バウシュ「カフェ・ミュラー」のようで期待が高まる。

けれど、実際の芝居は「突飛なことをしている」ということに力点が置かれ、アトピーに対する苦悩も理解も感じられずイライラした。舞台上でハイテンションでバカ騒ぎをされればされるほど客席は冷めていき、早く終わらないかなーとばかり考えていた。

ネタバレBOX

娘をアトピーとして生んでしまったために両親が過保護に育てすぎ、結果、娘の性格が破綻し、家族を崩壊させるというアウトラインはある程度理解できるけど、それならなぜ妹を殺し、両親の殺害を企てなければいけないのか動機が全然伝わってこない。単に「アトピー患者として生まれてしまったから」だけが動機なら、全てのアトピー患者に謝って欲しいとすら。

妹の代わりとして登場するジェニファーも、エキセントリックなところが強調されすぎて、アトピーの娘とどういうつながりがあるのか、なぜ妹を殺すのか、まるで理解できない。

そんな風に、全ての話が客席を置き去りにハイテンションに続いていき、舞台のテンションが上がれば上がるほど見ている側は冷めていく。

「舞台上の椅子を指定の位置に動かす」という特定の客に対するイジりも、それで客を笑わすこともなければ芝居の世界に客を介入させるという試みにもなっておらず、ただ単なる「客イジリ」で終わっていた。「こんなことできるオレらどうよ?」みたいな傲慢さを感じ、腹立たしかったほど。

エンディングで「全ては妄想でした」とも取れるオチがあったけど、そういうオチが一番つまらない。

主役の女の子の役者としての技量は高かったので、もっと面白みのある舞台で演技をすればいいのに、と思った。

2012年に観た芝居は素晴らしいものが多かったので、個人的には上半期ワースト1でした。
ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景

ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景

マームとジプシー

PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)

2012/06/22 (金) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

「あの時こうしていれば・・」に関するお芝居
最初、「鉄道事故」のことを取り上げられているのを知り
私の後輩がJRの鉄道事故に遭って亡くなっているので、
あまりお芝居として安易に扱われるのは違和感があったのですが
「あの時こうしておけばよかった」「あの時あんなふうに言えていれば・・」など
あの時にこうしていればまた違った未来があったかもしないのに、という分岐点と後悔は
だれにでもあって、それを「鉄道事故」が象徴的に示しているのかな?と思いました。
(そういう意味では、ままごと「あゆみ」やバタフライ・エフェクトなどを髣髴したりもしました)

マームが「身体の酷使」を提示し始めたのは「帰りの合図、」以降だったかと思います。
なのでこのお芝居の初演は、今回のように役者の肉体をここまで酷使してはいなかったのではないでしょうか?
私は未見なので、初演と見比べてみたい気持ちになりました。

音楽の使い方や照明もセンスよくステキでした。

3方に座席がある中、今回私は正面から見ましたが、
横の座席からも見てみたくなりました。

南部高速道路

南部高速道路

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2012/06/04 (月) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

日常から非日常へのシームレスな移行
車を運転していたらよく遭遇する渋滞の風景からシームレスに非日常へと移行していく様子に感心した。「非日常」も受け入れれば日常になる、ってことを言われているようで、それは「震災後」の日本の姿のようにも思えたりした。
達者な役者さんが多く出演し安心して観ていられる中、真木よう子さんの演技だけがどうもぎこちなく、彼女のシーンになると全体の流れがノッキングを起こしたように感じられた。一部声も聞き取り辛いところがあった。
今年上半期に観た中でも素晴らしい出来の芝居だっただけに、そこが残念でした。

Kと真夜中のほとりで

Kと真夜中のほとりで

マームとジプシー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

2011年を代表する芝居のひとつ
「塩ふる世界。」以降の体力勝負な展開がさらに拡大。「あ、ストレンジャー」以前のリフレインを用いた通常のお芝居だけでもすでに高い評価を得ていた劇団だったので、あの体裁のまま進化していくこともできたはず。なのにあえて賛否を呼びそうな役者の肉体を酷使する方法を取り入れた勇気に喝采を送りたい。

ひとつの事象を多用な視点から見せる事で浮かび上がってくる情景は、観客各々の個人的な記憶に作用して、あたかも「もうひとつの現実」がそこにあるかのように感じさせた。一緒に行った友人は自殺で友だちをなくしていたので、その記憶とこの芝居が結びつき、強く内側を揺さぶられて感極まっていた。

最後の20分がクドイという声がある。たしかに「クドイ」と取られても仕方ないところもあるが、僕は昔のアルバムでよくあった「リプライズ」を聞くような気持ちで楽しめた。「リプライズ」があることにより、今まで観てきた芝居を追憶の中で再現するという効果が生まれていたように思う。

音楽のセレクトが僕の趣味と近くてグッときた。あのカヒミ・カリィのようなウィスパーボイスで歌われるエレクトロニカがとても気になったのだけど、誰か歌手(バンド)名をご存知の方がいたら教えてください。

遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』

遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★

非常に有意義な作品であることは判るものの
軽薄で気楽な1986年と震災前後の2011年を行き来する登場人物たち。ちょっと村上春樹的な(世界の終わりとハードボイルドワンダーランドや海辺のカフカ的)世界観といった風。
無機質で凝った意匠の舞台と、国籍不明なデザインの衣装、それに幾分現実味が削がれた物語によって、妙な浮遊感を持った芝居になっていた。(以下、ネタバレ)

ネタバレBOX

個人的にはバブル期のバカ騒ぎと高揚感はもっとクドく描いてもよかったんじゃないかと思うし、震災前後はもっと深く切り込んでもいいんじゃないの?と思った。震災後7ヶ月という時期には、このくらいの距離感で描くのが適切だという判断なのか。

最後のシックスセンス的なオチ(?)も、本当に必要なのか?その直後の3月11日前後の言葉の「記述」を読み上げる「リアルな風景」とシックスセンスが僕の中で噛み合わなかった。つい最近起こった悲惨な事故を物語に取り込むのはものすごく大変なことだとは思うけど、なんか釈然としないものが残った。
少女椿

少女椿

虚飾集団廻天百眼

ザムザ阿佐谷(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/17 (月)公演終了

満足度★★

「少女椿」に対して掘り下げ不足では?
丸尾末広の代表作のひとつ「少女椿」の舞台化。昔から思い入れの強い漫画だったので、期待半分、不安半分で鑑賞。

当日は東中野で人身事故があったため中央線が大幅に遅延。私も6時過ぎの段階で新宿に足止めをくらい、このままでは開演に間に合わないと思い、急遽丸の内線で南阿佐ヶ谷に向かい、開演の7時ほんの少し前に到着。事前予約をしていたもののスタッフに一番奥の座席に案内される。ギリギリに到着したから仕方ないな、と思い着席するも鴨居(?)が視界に入り、舞台の上半分が見えない状態。しかし私より後に入ってきた人は、前列の見やすい席に案内されたりとスタッフのチグハグな対応が気になった。(以下ネタバレ)

ネタバレBOX

作品世界を忠実に再現したヴィジュアル面に感心。また、主人公のミドリちゃんを演じる紅日毬子さんの迫真にせまる熱演がよかった。しかし、役者さんの一部には学芸会レベルの芝居をする人も交じり、デコボコした印象。作品世界にのめり込むことができなかった。

また、中盤以降の展開にスピード感がなかったのと、戦いの場面の立ち回りのテンポが遅すぎて、徐々に退屈な気持ちに。

エンディングも「終わりなき日常を、それでも生きる」という悲嘆や絶望が感じられなくて、ただ上辺をなぞったような感が。

東京グランギニョル「ライチ☆光クラブ」に出演した役者がいたからか、舞台の壁面に「ライチ☆光クラブ」と落書きめいた文字が書かれていたけれど、「少女椿」の世界とは全く関係なくて、むしろ作品世界をぶち壊していた。ああいう「甘さ」が、この作品全体の「甘さ」に繋がっているような気がする。

せっかく丸尾末広「少女椿」、造形に清水真理さん、音楽に犬神サーカス団という素晴らしい素材を集めながら、うまく料理ができていない印象を持った。

ところどころハッとさせるシーンもあったので、もっと深く作品世界を掘り下げたらよかったのになぁ、と残念に思う。

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