黒塚
木ノ下歌舞伎
十六夜吉田町スタジオ(神奈川県)
2013/05/24 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
ラップ&昭和歌謡だけどバッチリ歌舞伎!
『黒塚』は昭和14年に発表された、比較的新しい歌舞伎作品なんですね。4人の僧たちが人里離れた一軒家に一晩の宿を求めます。老女が迎え入れ歓待してくれますが、なんと彼女は鬼だった…という歌舞伎らしい物語です。監修・補綴の木ノ下裕一さんと演出・美術の杉原邦生さんが、終演後のトークで作品解説をたっぷりししてくださったので、理解も深まり、木ノ下歌舞伎という団体への好感度も増大しました。以下、そのトークで知ったことも踏まえた感想になります。
木製の箱を組み立てた抽象美術でした。客席が対面式で中央に大きな柱があるため、席によっては見えないところもありますが、バランスの良いステージングだったので全く気になりませんでした。客席双方の死角になる部分もうまく使い、「見えないこと」も利点にした巧みな演出でした。カラフルな照明、意外な選曲、マジカルな場面転換は芸術的で娯楽性もあり、遊び心も粋です。
歌舞伎の台本どおりのセリフ、歌舞伎台本の音の数に現代口語を当てはめたセリフ、そして現代口語のセリフという合計3種類の言葉を混合し、現代人である観客に歌舞伎本来の魅力をわかりやすく伝えてくれます。まず原作の舞台を完全コピーする稽古をしてから、それをもとに新たに作り上げるそうです。だから俳優の足取りに重みがあり、言葉に説得力があるのだと思いました。
老女を演じた武谷公雄さんが素晴らしかったです。隅々まで意識が行きとどいた所作や表情のひとつひとつに深みがあり、ただ立っているだけで迫力がありました。すすり泣きをしても凄い形相で激昂しても、ひとときの感情におぼれることなく、常に自身をコントロールされています。じわりと足を一歩進めるだけの動作が歌舞伎の舞に見えた時、背筋がゾクっとしました。
客席が背もたれのない小さなイスだったせいもあると思いますが、1時間30分はちょっと長く感じました。もともと劇場ではなかった小空間での上演でしたので、もし再演があるならいわゆる劇場でも観てみたいです。
ネタバレBOX
ヴィヴィッドカラーの現代カジュアル・ルックの僧たちが、いかにも恐ろしそうな老女岩手(武谷公雄)の家を訪ねます。腰の曲がった老女が小さな歩幅でよろよろと歩みを進めていたかと思ったら、急に軽やかにジャンプしたり、歌舞伎調の発声で歌っていたかと思ったら、歌詞が中島みゆきの「時代」だったり(笑)。丁寧に仕込まれたギャップにかなり笑わせていただきました。
強力役の北尾亘さんが1人で踊る場面では、ヒップホップダンスのようでいて、実は振付に歌舞伎の様式が反映されていて感心しました。長唄をラップにしたのもとても面白かったです。
僧(夏目慎也)は岩手に「どんな罪人も赦される」と説きます。岩手は、実の娘を含む大勢の人間を殺してきたのですが、そんな自分も赦されたことを心から喜び、月夜に舞います。しかし僧たちに「(死体が山のようにある)寝室を覗かない」という約束を破られ、裏切りに絶望して鬼になってしまいます。舞うシーンの岩手の可愛らしいこと!そして幸福の頂点から突き落とされて鬼になる武谷さんの演技は、歌舞伎の様式美を取り入れた演出効果とあいまって、猛烈な凄みがありました。
原作では鬼になった岩手と僧との立ち回りで終幕するのですが、倒れた(=成敗された)岩手に僧の1人(大柿友哉)が祈りを捧げ、誰もいなくなった後で、岩手が黒塚の中に戻っていく場面が追加されていました。岩手への祈りで救済を示し、勧善懲悪で終わらせなかったのが良かったです。岩手が起き上がって再び黒塚に戻ることで、彼女の怒りや悲しみは決して癒えることがなく、怨念は永遠に東北の地をさまよい続ける…そんなイメージが広がって、空しく切ない余韻が残りました。
『熱狂』『あの記憶の記録』ご来場ありがとうございました!次回は9月!
劇団チョコレートケーキ
サンモールスタジオ(東京都)
2013/03/23 (土) ~ 2013/03/31 (日)公演終了
満足度★★★
何事も多様に見せる演出で観たい
「熱狂」はヒットラーがドイツで大統領に選ばれるまでのお話。「あの記憶の記録」は1970年のイスラエルを舞台に、ある男が1944年の出来事を語るお話でした。共通の登場人物によって2作品をつなげる工夫もあり、両方観るとより楽しめる公演でした。
四角いステージをほぼ三方から客席が囲む舞台美術で、舞台中央奥の壁には床から天井にかけて逆L字型に、強制収容所をおもわせる金網と柵が張り巡らされていました。網の中にはがれき、レンガやごみ、くしゃくしゃになった布や、片方だけの革靴もはさまっています。家具やその他の装飾で変化をつけ、同じ舞台美術で2作品をうまく上演されていたと思います。
私は「熱狂」の方が面白かったです。「あの記憶の記録」は主人公の一人語りに重きを置き過ぎて、歴史教科書のようになってしまっているように感じました。
Ort-d.d『わが友ヒットラー』のクチコミにも書きましたとおり、同じ題材を扱った団体同士で半券割引や交互トーク出演などの共同企画を実施されました。2作品交互上演だけでも現場は大変だったでしょうに、他団体と協力し合って広報活動をされたことは素晴らしいと思います。
ネタバレBOX
■「あの記憶の記録」
家族4人の朝食の場面から始まったのですが、演技から時間帯が体感できず、食事をしているようにも見えず、私はしょっぱなからつまづいてしまったようです。照明の変化だけで場面転換する割に、役者さんの出ハケがもっさりしていました。違う空間にいるはずの人物たちが同時に舞台上にいても気にならないような、スピーディーな演出が欲しかったです。
強制収容所にいたことを隠してきたイツハクは、息子が母国イスラエルのために兵隊になろうとしていることを知り、再び戦争と対峙せざるを得なくなります。ガス室での死体処理業務の詳細、生きるために死体から金歯を盗んだこと、善い人間は死んで悪い人間は生き残ったことなどを具体的に語らせたのは良かったですが、長いセリフが言葉というより説明に聴こえてしまうことが多かったです。一人語りだけでアウシュビッツで起こったことをヴィヴィッドに伝えるのは、かなり難しいと思いました。あと、「話がある」「聞いてくれ」といったセリフが何度もありましたが、不要だと思います。
2人登場した母親がいわゆる「家族のためにご飯を作って温かく見守ってくれるいい人」として、終始描かれてしまったことが残念です。夫イツハクが人殺しだったと初めて知るのですから、少なからず衝撃を受けるでしょうし、彼を思いやる優しさだけでなく、疑問や不快感も噴出するのではないでしょうか。男女や夫婦の対比が、戦争と平和の対比であるかのように映るのも、シンプルすぎて物足りなかったです。
ただ、子供のあるイツハクは過去と対峙し、子供のいないイツハクの兄アロンは過去に蓋をするという対比は効果的だったと思います。イツハクが殺したナチスSS将校ビルクナー(「熱狂」にも登場)について、アロンが「他のSS将校よりいい奴った(味方だった)」と言うことで、兄弟の認識が正反対だったことがわかります。人間の記憶の頼りなさを示し、罪悪感に打ちひしがれたイツハクをさらに絶望的な状況に追いたてるのは、残酷ですが説得力がありました。息子の歴史教師がイツハクの握手に応えなかったのも良かったです。
言葉にして発せられたことが嬉しくなるようなセリフがありました。イツハクが息子に「生きていることは素晴らしい」「戦場に行くのは義務だから仕方ない。俺の息子なら何をしてでも生き残れ。逃げろ」「イスラエル(国)よりも、お前の命の方が大切だ」と言いきってくれました。私もそう信じています。日本でも、国のために死ぬことを美とする教育が行われ、たくさんの命が奪われました。国とは何なのかを説いた井上ひさしさんの戯曲『兄おとうと』を思い出しました。
■「熱狂」
開演10分前には客席がほぼすべて埋まっていました。全席自由だから早めに来場する人が多いのかもしれませんが、それにしても人気があるんだなと思いました。私が観た回は前売り完売で、キャンセル待ちの列ができていました。
ハーケンクロイツが描かれた垂れ幕を三方の壁に吊りさげて、客席を含む劇場内全体がナチス本部内のようで、観客を当時のドイツ国民と見立てて演説を行うのにも臨場感がありました。照明の切り替え、効果音や音楽の挿入、俳優の出ハケなどの演出がスピーディーで小気味良かったです。
ナチスやヒットラーを題材にした作品は多くありますが、『熱狂』はヒットラーが大統領に選出されるまでを描いており、演説場面がいいハイライトになっていました。1人の政治家としてのヒットラー像を垣間見ることができました。
舞台上に実際は登場しないけれどその場に居るはずの人々が、出演者の数よりもずっと多くいるように感じられました。それぐらい舞台背景を描ききれていたのだと思います。ただ、俳優の演技が熱いのか冷めているのか、怒っているのかいないのかといった両極端の2種類に偏りがちだったことは気になりました。もっと繊細で、多彩な表情を見せて欲しいです。
「ハイル、ヒットラー」と敬礼されるのに応えて、ヒットラー役の西尾友樹さんが右手をユルっと顔の横に持ってきて返礼(?)する仕草が、とても可愛らしくてギャップ萌えしました(笑)。真剣ゆえに可笑しいんです。そもそも大の大人が勢ぞろいして、妙なほど背筋を伸ばし胸を張り、右腕を前方上部にあげたポーズで、同じ言葉を同時に叫ぶこと自体が滑稽なんですよね。仕組まれたかっこ良さの方がクローズ・アップされて、不格好さが鳴りを潜めていたのは少し残念。何事も多様に見せる高次的な演出があると、さらに良いのではないでしょうか。
ナチスの飛躍的な台頭は、私の中で今年の自民党の圧勝と重なりました。数ある争点を1つだけに絞って「○か×か」を迫り、楽な単純思考へと導く罠に、私たちは簡単にハマります。広報戦略として行われた統制の取れた美しいパフォーマンスに、のせられ、騙されるのが人間なんですよね。「ヒューラー(=ヒットラー)に従ってさえいれば楽」という民衆心理もよくあらわされていたと思います。
ヒットラーの雑用係になった若者ビルクナーが、語り部として物語の進行をつとめます。終盤に彼が親衛隊に入隊するエピソードがあり、『あの記憶の記録』へと続く構造になっていました。両方観ることの楽しみがちゃんと担保されていました。
ココロに花を
ピンク地底人
王子小劇場(東京都)
2013/05/31 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★
若者のナイーブな不安と悲しみ
意識が戻らない病人たちがそれぞれのベッドに横たわる中、殺人事件の犯人探しが始まります。取調室での嘘の自白、次々と増える意識不明の病人など、サスペンス・タッチで進む複数の物語には、夢の中の邂逅といったSF要素もシームレスに組み入れられていました。
物語上で起こる物音を擬音語、擬態語などを使った人の声で表現するのが劇団の持ち味で、俳優は舞台上下(かみしも)の端にいながら、声を使って効果音の役割を果たしていました。淡々と存在しているのがいいですね。騒音だけでなく街にあふれる言葉も混ぜ合わさるのが面白かったです。
劇場の壁をそのまま使ったブラックボックスで、道具や衣裳の色を白、黒、赤等に絞り、統一感のあるシャープな空間にしていました。黒く塗った椅子やテーブルに白い線で縁取りをしているのが良かったです。白線に注目すると空洞をはらんだ骨組が浮かび上がり、捕らえ所のない空疎さや満たされない心などの抽象的な表現にもなっていたように思います。
ネタバレBOX
ベッドに横たわるのは政治家の息子、刑事の妻、女子高生の兄(大学生)。現実世界では植物人間ですが、彼らが夢の中で家族などと語らうシーンがあり、本当は意識もあるし耳も聞こえているんじゃないかという疑いが生まれました。乙一さんの短編小説「失はれる物語」を思い出しつつ、人間には感知できない世界を想像しました。
快復して記憶を取り戻した政治家の息子は、自分がある交通事故の加害者であることに気づいて自首しようとします。でも事故発生時に車に同乗していた友人や、主治医に止められるのです。理由は彼が政治家の息子だから。幼いころに教えられた善いこと、悪いことが、なし崩し的に捻じ曲げられたり、逆転してしまっているのは、まさしく原発事故後の日本の姿だと思います。
国際問題への言及とともに「私たちは歴史を知らなきゃいけない」という決意も登場人物によって語られました。今の10~20代の方々とお会いすると、皆さんがすごく真面目で賢いことに驚かされます。私が同じ年の頃はもっと楽観的で馬鹿でした。インターネットによって世界中の出来事がオンタイムで自分の現実に流れ込んできて、何でも検索すれば概要ぐらいは知ることができるようになったせいで、楽観的な馬鹿であることが難しくなったんだろうと思います。理不尽極まりない残酷な愚行だらけの世界を見せられたら、誰だって将来が不安になりますし、人間に心底がっかりするものですよね。
犯人逮捕というすっきりとした成果は得られず、殺人未遂事件が次々と起こり、刑事は「きりがない、お手挙げだ」と静かに吐き捨てます。衝動的な暴力が無数に連鎖していくエンディングは、悲しみがひたひたと空間全体に満ちて行くようでした。
劇中に一度あった暗転の後が長いと感じました。最後の暗転直前のシーンは不要だったのではないでしょうか。終演時の暗転の味わいが良かっただけに、もったいないと思いました。
終演後に作・演出のピンク地底人3号さんとお話しすることができました。会話劇を書いたのは今回が初めてと伺い、驚きました。ト書きばかりの戯曲の上演も観てみたいですが、京都に暮らす地底人独特のセンスを生かした会話劇にも、またチャレンジされると良いのではないかと思います。
My Favorite Phantom
ブルーノプロデュース
吉祥寺シアター(東京都)
2013/04/26 (金) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★
我が道を進み極める
シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を題材にしたパフォーマンスでした。日本で『ハムレット』といえば、上演されない年はないと言えるぐらいの有名古典戯曲です。多くの人が知っている作品をどう上演するのかを観たかったので、出演者が『ハムレット』とどんなきっかけで出合ったのかを言葉で説明されても、興味をそそられませんでした。たとえば「この公演に出ることになって初めて『ハムレット』を読んだ」など。
『ハムレット』を等身大の自分たちに引き寄せて、自分たちにとっての『ハムレット』を見せたのかもしれませんが、残念ながらシェイクスピアの『ハムレット』の方がずっと面白いと思いました。
終演後のトークには構成・演出の橋本清さんと出演者全員が登壇し、全員の自己紹介がありました。予想通り、自己紹介だけでトークの時間が終わってしまいました。質疑応答時に橋本さんが答えられたことを、最初からお話しされた方が良かったと思います。出演者全員の自己紹介が行われたのは、「せっかくなので」という理由でした。橋本さんは、ある状態や自分の気持ちに正直に向き合って、その場に居合わせた人々とありのままを共有することを、第一義とされているのではないかと考えました。もしそうならば、観客の気持ち(主に欲望)も想像してみて、それも「ありのままの状態」に一部だけでも組み入れてみてはどうかと思いました。
ネタバレBOX
若い俳優が『ハムレット』の登場人物として、現代口語の若者言葉で話します。実生活の言葉づかいでいかにも自然体でいるかのように振舞っていましたが、「そんな時にそんなことは言わないよ!」とつっこまざるを得ないセリフばかりで信憑性がありませんでした。明らかに嘘とわかる演技を、俳優が自然にやってる体(てい)に見せるのが不快でした。魅力的な役者さんがそろっていたので本当に残念。
客席通路やロフトなど吉祥寺シアター内全体を演技スペースにされていました。客席通路では必ずと言っていいほど出演者が待機していたり、セリフをしゃべっていたりするので、出たくても出られなかったです(最終選考作品なので私には退出の選択肢はありませんでしたが)。
オリジナル音楽がかっこ良かったです。銀吹雪が舞う瞬間もきれいでした。あそこで終わって良かったと思います。
私は基本的に、他人に迷惑をかけても自分がやりたいことはやってみればいいと思っています(迷惑をかけた責任は自分に返ってきますけど)。橋本さんはやりたいことを実現する勇気も力もお持ちだと思います。終演後のロビーで観客との対話の時間を設けていることから、賛辞も批判も堂々と受けとめる、誠意ある方だとお見受けしました。今後の挑戦に期待します。
左の頬(無事全ステージ終了!ご来場まことにありがとうございました))
INUTOKUSHI
シアター風姿花伝(東京都)
2013/04/10 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★
学園祭ノリを謳歌
劇場に入るなり、笑いを前面に押し出すような舞台美術が目に入りました。そういえば劇場入口から、にぎにぎしいムードを演出されていましたね。受付付近の若い女性から劇団ファンクラブ用(?)のカードをいただきました。
内容はお芝居というよりはコント集だったな~と思います。ただ、私は笑えなくて…「このままクスリともできず終演したらどうしよう…(汗)」とおののいたのですが、1か所、本気で笑えるところがあって良かったです。
笑っている観客は大勢いらっしゃいました。固定ファンを多く獲得されているんでしょうね。全体的に元気な若者が集う学園祭のような雰囲気で、私がそのノリにフィットできなかったんだと思います。ただ、ノレない客をノセるのが、お笑いには必要なんじゃないでしょうか。役者さんは体を酷使してがんばっていらっしゃいましたが、舞台上だけに納まっている感もありました。押すだけじゃなく引いて欲しいし、言うだけじゃなく聞いて欲しい。観客とのコミュニケーションをもっと意識してもらいたいと思いました。
ここ数年(もしかすると10年以上?)、テレビをほぼ見ない私でも意味がわかるギャグが多くて、懐かしく感じることもあり、意外でした。作・演出のモラルさんは20代だそうですが、昔のお笑いがお好きなようですね。そういえば、今はインターネット上でいつでも昔のテレビ番組を見られます。ネット社会は色んなものの価値を変えて行きますね。興味深いです。
ネタバレBOX
二階堂瞳子さんと鈴木アメリさんのダブル主演で、2人の対立を軸に、周囲の男優さんたちが複数の役を演じます。ストーリーを追うことは特に重要ではなく、次々と繰り出されるネタを楽しむような構成でした。「私は夢の中にいた」等、観客に対して状況を説明するセリフが多かったですが、舞台の転換や照明の変化、身体表現で十分に伝えられていたので、余分なセリフはもっと削っていいと思いました。
役者さんが体を張ることが劇団の作風になっているようです。でも男優さんが女優さんに空中キックをかますなんて…私は恐ろしくて目を開いていられませんでした。「体当たりの演技」と言えるのかもしれませんが、私は苦手です。
二階堂さんは緊張感みなぎる精度の高い演技で、常に観客とコミュニケーションを取ってくれていました。体のキレやプロ意識の高さでは、ウォルト役の一色洋平さんも印象に残っています。そういえば「脱ぐ」のも劇団のお約束なんですよね。男優さんたちの上半身は、脱ぐ意味があるぐらい鍛えられていて感心しました。
笑ったのはディズニーランドのエレクトリカル・パレードの場面です。体に電球を巻いて走る黒子を、鈴木アメリさんが飛びかかって捕まえた瞬間に爆笑しました。
兄よ、宇宙へ帰れ。【ご来場ありがとうございました!】
バジリコFバジオ
駅前劇場(東京都)
2013/05/29 (水) ~ 2013/06/03 (月)公演終了
満足度★★★
コントの言葉選びが巧み/もっと人形の活躍が観たかった
劇団活動を10年続けてきた劇作・演出家の男性と、引きこもりの兄がいる女性を軸に、2つの物語が交わって行きました。バックステージものや劇団の内部事情を暴露するタイプのお芝居は苦手なのですが、それだけに終わらなかったでホっとしました。
劇中の会話は短いコントのようなやりとりが多く、つっこみが巧みで、ナンセンスギャグも冴えています。折り込みチラシで作・演出の佐々木充郭さんがコントユニット親族代表の新作を手掛けられると知り、納得でした。
オリジナルの人形が俳優同然に活躍するのを期待していたんですが、今作はそうでもなかったですね。たまたま10周年記念アフターイベントのある回だったので、たくさんの人形を拝見できて良かったです。ロビーでオリジナルの人形を販売していることについて、前説で「里子に出します」と言っていたのに和みました。人形への一方ならぬ愛情を感じました。
ネタバレBOX
大勢の役者さんが上半身の衣裳を黒色で揃えて、不特定多数の誰かを演じる場面では、街で聴こえる声や目に入る広告を声に出して、風景を描写します。セリフにする言葉や単語を選ぶセンスがいいなと思いました。ただ、ストーリーは全体的に盛り込みすぎの感がありました。例えば兄が宇宙人で(?)超能力があるという設定に、特に必要性は感じられなかったです。
劇作・演出家の砂城は引きこもりの同級生に即興演劇をさせて、失われた青春を取り戻させます。演劇をやって心が癒されることにリアリティーが感じられました。私自身、演劇というフィクションを自分のことのように疑似体験することで、自分が大きく変化してきたと実感しているので、とても微笑ましく思いました。
劇団解散を決めた砂城の過去作品にかかわっていたドードーなどの動物の人形が登場しました。砂城が演劇から離れたせいで動物たちは消滅しそうになるのですが、彼が演劇の力を信じて再び創作を始めると、復活します。既に存在しない絶滅動物を、想像力や夢の象徴として表現するのがいいですね。ただ、わざわざ人形を出さなくても、たとえば役者さんが「私はドードーだ」と名乗って演技しても成立し得たのではないでしょうか…。人形でなければ生み出せない演劇的な効果をもっと味わいたかったです。人形自体がとても良かったので、もったいないな~と思いました。
終演後のイベントは「紅白人形歌合戦」でした。キモカワな風貌の人形はそれぞれに個性的で、有名人の特徴もよくとらえています。前説でも異様な迫力だった美輪明宏さんの人形が再登場し、昨年末の紅白で話題になった「ヨイトマケの唄」を歌いました。散々デフォルメしてるけど(笑)、とても似てましたね。特にセリフは強烈!(笑)
誰が美輪さんの声を担当してるのか知りたくなり、イベント終了後に顔を出した役者さんたちを凝視したところ、三輪人形を持っていたのは引きこもりの兄役の武田諭さんでした。そして彼の頬にマイクを発見!人形操作だけじゃなくセリフも歌も武田さんだったんですね…あの挙動不審でちょっとキュートな兄と、とんでもないキワモノ(として表現された)美輪さんの両方を演じていたとは…!武田さん、素敵です。
不道徳教室
森崎事務所M&Oplays
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2013/05/29 (水) ~ 2013/06/04 (火)公演終了
満足度★★★★
余韻が長く続いて幸せ
現代日本語の親しみやすそうな会話劇…では全くなく、説明ゼロでさらりと時空を超え、迷子になったまま最後まで抜けられない。最高。二階堂ふみさん…確かに「恐ろしい子…!」だった。演技も声もいい。十代なんて信じられない。古典戯曲もやって欲しい。
私もパンフ(800円)とてもおすすめです。岩松さんと高橋源一郎さんとの対談があるのです。これが…すごい。ああ、やはりあの場面がクライマックスだよね!と、一人納得(勘違いの可能性最大)。
ネタバレBOX
カエターノ・ヴェローゾ「Cucurrucucu Paloma」。彼女を家まで追いかけた、あの瞬間。
プルーフ/証明(谷 演出ver.)
DULL-COLORED POP
シアター風姿花伝(東京都)
2013/05/24 (金) ~ 2013/05/27 (月)公演終了
満足度★★★
proof
何度観ても面白い戯曲です。キャストが変われば関係性も変わるので、退屈もせず。
ネタバレBOX
谷さんがサンモールスタジオで上演した時も客席中央通路を出ハケに使ってました。爆音が鳴るのも同じですが、選曲が全然違いました。下手奥の穴は今回が初めて。
わが友ヒットラー
シアターオルト Theatre Ort
駅前劇場(東京都)
2013/03/27 (水) ~ 2013/03/31 (日)公演終了
満足度★★★
独自の美意識を徹底した空間。だが、心が見えてこない。
三島由紀夫作『わが友ヒットラー』は『サド侯爵婦人』と対をなす長編戯曲です。私がこの戯曲の上演を観るのは今回で3度目になります。
暗い劇場に入るなりスロープ状の白いステージが目に入りました。ステージ両脇に客席が設定されていて、いつもとは違う駅前劇場にわくわくしました。スロープ最下方あたりの天井から吊り下げられたシャンデリアには、人骨や髪の毛を思わせる装飾が施され、ユダヤ人虐殺を想像させます。
男同士の言葉の闘いは常に丁々発止というわけではなく、俳優はある演技の手法や型をもちいて丁寧に演じていました。緊迫感がないわけではなかったけれど、細かな対立をたっぷりと見せすぎだったように思います。型を演じるにしても、スピード感や軍隊らしい躍動感が欲しかったです。三島由紀夫戯曲の長大かつ流麗なセリフは、やはり難易度が高いですね。
スロープが割と急こう配なので、俳優が登っていくと天井に頭がぶつかりそうになります。意外と狭い演技スペースで椅子を転がしたりもしますので、俳優への身体的、精神的負荷は高そうです。4つの脚が包帯で巻かれた歩行器が、演説台や朝食のテーブルになるのを見て、鈴木忠志さんの作品(俳優が車イスに乗って登場するなど)を思い出しました。演技手法だけでなく、演出に関してもSCOTの影響があるように見受けられました。
千秋楽は満席で、スロープ下方の階段上にも客席が設置されていました。「CoRich舞台芸術まつり!2013春」で偶然同じ題材を扱っていた劇団チョコレートケーキと、半券割引や交互トーク出演などの共同企画を実施されていたので、その効果もあったのではないでしょうか。フェスティバルを有効活用してくださっていることをとても嬉しく思いました。
ネタバレBOX
作り込んだ演技、美術、衣裳、ヘアメイク、照明などのスタッフワークから 劇団独特の美意識を感じ取ることができました。でも『わが友ヒットラー』を上演するなら、今の日本の政治や世界情勢をほのめかすような演出の遊びや工夫が、もっとあっていいのではないかと思いました。衣装に和のムードを加えていましたが、今の日本とヴィヴィッドに直結するわけではありませんでした。ヒットラーが昭和天皇に見えた瞬間があったのは面白かったです。
俳優はある型を演じるのが基本でしたが、残念ながら俳優自身のクセが目立っていたように思います。声の大小の変化や歌うようなセリフなど、語り方に工夫はあるし、訓練も積まれているのでしょうけれど、人物の心が伝わってこなかったです。たとえばレームはヒットラーを溺愛し、盲信していますが、それが感じられないので彼の滑稽さが見えませんでした。レームの「ヒットラーの命令がないから殺せない」という意味のセリフは笑いどころだと思うんですが、笑えなかったのが残念。私もシュトラッサーと一緒に呆れて苦笑したかったです。
生きたねずみを透明のケースの中に入れていたのには驚きました。ヒットラーがレームを殺したあと、そのケース上部に取り付けられていた小さなシャンデリアの光が消えます。細かいところまで凝っていますね。
ステージ中央部分に通っている長い溝の中に照明が仕込まれており、俳優を足元から照らすのが効果的でした。ヒットラーが最後のセリフを言い終わった後、照明が消えるタイミングが素晴らしかったです。ヒットラーがちょうど進行方向を向いた直後に暗転したので、暗転後も彼の残像が残りました。決して後退しないという暗い決意と、ユダヤ人虐殺と戦争へと進む未来が見えました。
て
ハイバイ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2013/05/21 (火) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
ハイバイ「て」10周年記念全国ツアー
初日拝見し、これまでにも何度も観てるのに号泣。お薦めお芝居を紹介するメルマガの号外を発行しました。東京の後に兵庫、三重、北九州、香川、札幌ツアーあり。東京、北九州以外は『て』初上陸です。お見逃しなく!
ネタバレBOX
次男と母親の視点から同じ時間を2度上演する仕掛け。舞台の向きが180度変わるのは、今回からの演出です。葬儀屋さんが変わって、下層の場面の演出も変わりました。爆笑。
枝光本町商店街
のこされ劇場≡
枝光本町商店街アイアンシアター(福岡県)
2013/03/23 (土) ~ 2013/03/30 (土)公演終了
満足度★★★★
私もいつか地層になる。商店街で、時空を超える演劇的体験。
電車、モノレール、飛行機、バスを乗り継いで、最寄駅から徒歩でアイアンシアターに辿り着きました。長旅でした。劇場に着くと、まず今回の散歩型演劇についての説明と、参加者の簡単な自己紹介。いわゆる劇場での演劇公演とは全く違うオープニングはとても新鮮で、非日常への切り替えスイッチが一瞬で入りました。
枝光という街を媒介にして、自分の生まれ育った街の思い出を引き寄せ、重ねるような体験でした。今、ココを生きている生活者と交流し、彼らの語る過去と現在が鮮やかに記憶に刻まれ、私の過去とともに血肉になったように思います。
公演が終わった帰り道、街に隣接するテーマパーク「スペースワールド」を横目に見ながら、私自身と街を全部飲みこんで、周囲の全てが地層になったような感触を味わいました。それは遠い、遠い未来の視点から世界と私を見つめる行為です。枝光の土地と一体になれたから、遥か遠くへと思考をジャンプさせることができたのだと思います。
ネタバレBOX
和菓子屋さんでは、昔の枝光には遊郭があって300人のおいらんがいたという話を聴きました。そして名物もなかの実習を受け、完成品をご馳走になりました。八百屋さんでは元気で陽気なお父さんに歌を詠んでもらいました。お肉屋さんで美味しい自家製コロッケを買い、からあげをご馳走になりました。そば屋「鶴亀」ではおそばを…食べたわけではなく(笑)、枝光本町商店街アイアンシアターがこの商店街で行ってきた活動の記録を見せていただきました。枝光にやってきた劇団、ダンサーの写真や、商店街が採り上げられたテレビ番組の映像など盛りだくさんで、壁には多数の展示物もあり、店内はまるで資料館のよう。店主の井上敏信さんは枝光の歴史も研究されており、製鉄所があった時代の白黒写真から、当時の風俗についての詳しい講義もしてくださいました。洋装店さんでは、古いアルバムの中から枝光の街の変化がわかる写真を見せていただきました。製鉄所の街として大いに栄えた枝光は今や過疎の街ですが、商店街をめぐる割安バスの運行を始めたことで、買い物客が増加しているそうです。
街歩き演劇の最終地点は廃屋になりかけた元料亭。宿泊可能な和室や広い調理場などには、家財道具が放置されたままで、当時の生活の香りが残っていました。小さな台所の食器棚に、私の大阪の祖母の家にあったのと全く同じ食器があり、見覚えのあるデザインのガラス戸もあって驚きました。戦後の高度成長期に作られた商品たちは、日本全国津々浦々に広まったんですね。そして流行遅れになり、棄てられて失われていった。炭鉱の廃坑や製鉄所の閉鎖とも重なります。
建て増ししたビルの屋上に登ると、枝光の街が一望できました。80代になるまでそこに住んでいたというオーナー女性の名前は「ゆきこさん」。最後は案内人だった劇団員の役者さんが、屋上で「ゆきこさん」を演じ、料亭の外に出た参加者たちに手を振るという「お芝居」が用意されていました。今はもういない「ゆきこさん」を通じて、掘り起こされた料亭の歴史と記憶を共有することができました。
料亭はいつか取り壊され、「ゆきこさん」との出会いは参加者の記憶の中だけに残ることになるのでしょう。そば屋「鶴亀」で見た白黒写真に写っていた木造の劇場の跡には、製鉄所の購買部が出来て、製鉄所がスペースワールドになった今では、スーパーマーケットが営業されています。人が死んで、物も建物も朽ちて無くなれば、商店街の人たちと過ごした優しい時間も、忘れら去られ消えてしまいます。でも、土地だけは、そこにあり続けるんですよね。
アイアンシアターから枝光駅へと向かう帰り道、向かって左にスペースワールドを見ながら、枝光中央商店街での旅を思い返した時、自分が地層の中に埋もれて行くような感覚を覚えました。地面から上空までが地層になったように感じたのです。同時に、海底に沈んだ幻のアトランティス大陸も思い浮かべました。海底に沈む私、やがて土になる私…それが積み重なって蓄積されていく、地球の歴史。街歩きから宇宙規模にまで想像は広がり、身体的にも不思議な体験をすることができました。
以上のように、演劇の効果として得られた体験には非常に満足だったのですが、演技や演出についてはもっと練る必要があると思いました。お散歩演劇といえば岸井大輔さんの『ポタライブ』、リミニ・プロトコルの『Cargo Tokyo - Yokohama』、廃屋めぐりだと飴屋法水さんの『わたしのすがた』などを私は拝見しています。街の探索がメインだったとしても、お芝居として用意されたのが最後に「ゆきこさん」を演じることだけだったのは、取って付けたようで物足りなかったです。できれば旅の最初や途中にも、仕掛けや伏線を張るなどの演出が欲しかったですね。役者さんの演技やせりふも改善の余地があると思いました。
キャッチャーインザ闇
悪い芝居
王子小劇場(東京都)
2013/03/20 (水) ~ 2013/03/26 (火)公演終了
満足度★★★
やりたいことをやる、ストレートな実行力
オープニングの暗闇までは興味をそそられたのですが、声が聴こえた途端に興ざめしてしまいました。若い役者さんが客席に向かって大きな声を出し、身体を元気に動かす様子を見どころとするタイプのお芝居で、演技の精度が低く、残念ながら全体的に集中できませんでした。作・演出・出演(ジャパン役)の山崎彬さんは、『駄々の塊です』で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされ、『嘘ツキ、号泣』ではOMS戯曲賞佳作を受賞されています。せめて言葉だけでも味わえないかと自分なりに努力はしたのですが、役者さんが叫べば叫ぶほど、セリフが耳に入って来ませんでした。
衣装は派手な装飾と際どい色使いで工夫が凝らされていました。キャラクターをわかりやすく表す配慮は良かったと思いますが、安っぽさが気になっていまいました。テカっとまんべんなく白く照らす照明のせいで、粗が見えてしまったせいもあります。そう、LEDの照明がとても苦手でした。装置や俳優だけでなく、劇場の壁も客席もすべて白々しく照らしてしまうのです。闇と対比させる効果を狙ったのかもしれませんが、青白くて明るい光に照らされ、隅々まで晒されることにはリスクもあります。
劇団でバンド活動もされていて、毎公演終了後に無料で短いライブを披露しているとのこと。私が観た回の後もライブが行われていました。やりたいことをやるというストレートな実行力は作品にも表れていましたし、三都市ツアーを敢行する力を備えてるのも素晴らしいと思います。劇団独特の魅力があり、ファンを獲得していることにも納得でした。チラシのイラストがアーティスティックで、形も質感も独特で目を引きました。タイトルもキャッチコピーにもそそられました。
ネタバレBOX
3つのエピソード(目が見えるようになった全盲女性とその夫と愛人の三角関係、女性アイドル短距離ランナーたちの闘い、先生と生徒2人の過去と夢の物語)は、それぞれに“闇”をモチーフにしていたようです。ギャグが多い目なのは関西らしさなのでしょうか。三段落ちもいいですけど、なるべく一発でキメて欲しいです。
終盤の無言で走り回る場面は面白く、集中して拝見できました。各エピソードの登場人物が全員出てきて、ステージ上だけでなく劇場通路、ロフト、ロビーまで使って、空間全体をカオスにしたてあげ、スリルもありました。
ぼくの国、パパの国
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2013/05/17 (金) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★
3ステージ目を鑑賞
1970年代の英国に暮らすパキスタン人家族のお話。面白かった。混血の七人兄弟から「おおかみこどもの雨と雪」を想起。英国人母の家族観が既に古いから、思考を数階層跳び越える必要あり。それを感じさせない立体感が欲しい。2時間強。
ぬけ男、恥さらし
MCR
駅前劇場(東京都)
2013/05/15 (水) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★
90分でスッキリ
TV見てない私が言っても説得力ゼロでしょうが、ドラマにぴったりだな〜と思いました。小野さん、色んな工夫のある演技で楽しかったです。
鴉よ、おれたちは弾丸をこめる
さいたまゴールド・シアター
彩の国さいたま芸術劇場・NINAGAWA STUDIO(大稽古場)(埼玉県)
2013/05/16 (木) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★
ゴールド&ネクストは鉄板
ファクトリー「楽屋」より過激な部分にややひるむが(笑)、やはりだだ泣き。「蒼白の…ハムレット」と同様、ネクスト・シアターの若者との共演によって、1971年と今が肉感を伴って繋がる。そう、肉なんだな。血と汗が滴る。
鴉婆役の田村律子さんが素晴らしい!千年もの昔から積もり積もった怒りが老いた声に宿り、ゆるりと、でも力強く歩き、立つ姿から目が離せない。私の胸の中にも、彼女たちと同じ笛があるはずだ。
しっかし…ハレンチだよな~(笑)。パリ公演の反応はどんなだろう!
ネタバレBOX
おじいさまがたのパンツやふんどしはできれば見たくなくて…(笑)
獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
獣の柱
約百年を隔てた過去と未来を行き来し、日本の今を風刺するSF娯楽作。メッセージにいたく、いたく感動!久保栄「火山灰地」のセリフを思い出し、地球の永い歴史の中に、愚かで儚い私自身の存在を確認できた。シアタートラムで約2時間10分。
ネタバレBOX
「幸せだったあの時に、少し昔に戻りたい」という浅はかな政策を腹立たしく思っているし、行き詰って失敗だとわかった社会のシステムに区切りをつけたいとも思っているから、前川さんのメッセージがビシバシ来た。
もうひとり
酒とつまみ
OFF OFFシアター(東京都)
2013/05/07 (火) ~ 2013/05/21 (火)公演終了
満足度★★★★
もうひとり
あーホントに笑ったわ~~♪下北沢で上演時間が1時間20分。友達と夜に観て、終わった後に軽く飲みに行きかったな~。
クライムス・オブ・ザ・ハート
演劇集団円 アンシャンテ公演
ステージ円(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/05/15 (水)公演終了
満足度★★★
笑いながら泣きたい
1970年代の米国南部のお話。やはりいい戯曲でした。悲惨な状況をただ悲惨に見せるのではなく、笑えるのがいいですよね。私が観た回は演技が急ぎ過ぎだったように思います。上演時間も若干短くなっていたようでした。
ネタバレBOX
舞台がずっと同じ室内なので、もっと照明を利用してもいいんじゃないかと思いました。もちろん、俳優の演技だけで見せられるなら、それがいいと思いますが。長女が昔の彼氏に電話をかけて話すシーンが良かったです。
三人姉妹
三条会
ザ・スズナリ(東京都)
2013/05/09 (木) ~ 2013/05/13 (月)公演終了
満足度★★★
三条会の『三人姉妹』プレビュー
『三人姉妹』の登場人物たちは、こんなにも哲学してたんだな~と、まるで初めて出会うかのように、そして今生きて悩む人の言葉を聴くように、味わいました。
ミュージカル「ブッダ」
わらび座
THEATRE1010(東京都)
2013/05/07 (火) ~ 2013/05/12 (日)公演終了
満足度★★★★
ミュージカル「ブッダ」
人間の善と悪が舞台で描かれると、悪の方が光って見える。人間の弱さ、醜悪さが剥き出しになっているほど、私は惹かれてしまう。
わらび座ミュージカル「ブッダ」は人間ではない(とされる)者たちとブッダを鮮烈に対比する群像劇。野生を際立たせる群舞が良かった。身体表現はわらび座っぽくないと感じるほどワイルド。魑魅魍魎が跋扈し、ブッダの周囲に悪が渦巻く場面が白眉。タッタ役の三重野葵さん素晴らしい。化けたと思う。ルリ王子役の石井一彰さんも良かった。
ただ、最後にひとつの「宗教」に集約されて、世界が小さくなったように感じたのが残念。