コドモもももも、森んなか
マームとジプシー
STスポット(神奈川県)
2011/02/01 (火) ~ 2011/02/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
拡張リフレイン
拡大する世界と自意識との間の調整に精一杯であった頃の、その隙に起こったもの。
自分自身への一生懸命さは、その場にいて、一緒に過ごしていたはずの存在さえ容易に見え辛くさせる。
嗅ぎ取り間違いでなければ、作中で、日曜に起こる事のいくつかの小さな予感と、一回の重要な予兆は匂わされていたように思うのだが、それぞれの切実な視点のリフレインが、小さなそれらの断片をするりと見過ごさせてしまう。
気付くのはいつだって起こってから。しかし後から思い起こす光景もまた、何気ない。そのことがせつなさに拍車をかける。
題材を見ていてふと、藤田氏が眼を向けているのは90年代の子供なのかなと思ったり。
子供の身体の再現率には毎度ほれぼれする。本心の包み隠せてなさ、下の子に対する容赦のなさ、語彙の追いついてなさ、細かい動作で積み上げられる生命感。召田実子の見事な幼児感。
「ヒッキー・カンクーントルネード」の旅 2010
ハイバイ
PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)
2010/05/25 (火) ~ 2010/05/26 (水)公演終了
モダン・ラヴァーズ・アドベンチャー
架空畳
テアトルBONBON(東京都)
2010/07/24 (土) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★
言葉を活かしきれてない
終わった後に悪い意味でポカンとした記憶が。
いくら言葉の大風呂敷がトリッキーな色彩を放っているとしても、演出的な部分でもっと、ヘンテコな世界を強引に説得させるケレン味がないと、演劇として気持ちよく満足出来ないなあ、と。
例えば音響の音量レベルとか、全体を通しての緩急のバランスとか、そういった細かい部分の演出で、皮膚の薄皮あと一枚貫いてこないむず痒さを感じる。
ロロ vol.4 ボーイ・ミーツ・ガール
ロロ
王子小劇場(東京都)
2010/08/18 (水) ~ 2010/08/22 (日)公演終了
満足度★★★★
「もう後は結構どうでもいい」
という言葉がこの公演の真実だなあと。「きみとぼく」がどうなりかすればいいハリウッド的ラヴ世界の穴、「あいつ」の世界の存在の出現。
盲目とも醒めてるとも違って、役者も演出も、どこか嗤う視点を持ってるとでも言ったらいいのか。そこが欠点にも見え、リアリティにも見え。不思議だなあ。
ガラパゴス
少年王者舘
ザ・スズナリ(東京都)
2010/08/19 (木) ~ 2010/08/24 (火)公演終了
満足度★★★★★
ナガサキからガラパゴスへ
反復がフーコー振り子のように微妙に角度を変えながら軌道を描き、長崎がナガサキに揺れ動いてゆく瞬間にぞくっとした。
群唱があれほどはっきりと言葉で聴き取れる舞台を観たのは初めて。
空中回転ブレンド ご来場ありがとうございました。次回は8月!!
みきかせworks
ワーサルシアター(東京都)
2011/01/06 (木) ~ 2011/01/10 (月)公演終了
満足度★★★★
アロマ
アロマはオタ向けという指摘がされてるが、正確には特撮オタとゲーム世代向け。
「みきかせ」ってリーディングに視覚的な動きを足すというよりも、「読む」というお題が与えられてる大喜利だと捉えた方が解り易い気がする。
あるいはマイクを挟んで喋るって型の中で新しい形態と笑いを探求してる漫才みたいな。
やる方も観る方もそんな意識が根付いてきたら、この企画は「みきかせジャンル」の発表場としてとてもいいものになると思うのでぜひ頑張ってもらいたい。応援。
劇団エリザベスはこの点で鋭かった。珍回答も出しつつも「読む」ことのトリックの本質まで踏み込みテーマを補完するものとして組み込みながら独創性が溢れていて、ロロぶりに未知のものに接するワクワクと脅威を感じた。ここ演出募集してたけど演出自体はもう完成されてるから、あとは外装と演技をちょっと整理してくれる人が現れればいいんだと思う。今後がとても気になる。
獣従承知(じゅうじゅうしょうち)
角角ストロガのフ
王子小劇場(東京都)
2010/12/16 (木) ~ 2010/12/20 (月)公演終了
満足度★★★
百夜一夜
これはもっとクリアに中身が見えてきていいはずの舞台だと思う。全体を通して前後の因果関係や各空間の関係を上手くさばききれずにごちゃっとしながらもふわっとしていた印象。後半の一部は明確でよかったが。
各キャラの心理の動向、次の動作や言動の動機の筋が把握できず、どうも一人の統一的な個人に見えるキャラクターが少ない。そのため大人数がいっぺんに動いているシーンを観ていても、なんだかスタイルに動かされているなーと感じてしまった。
物語上の必然性はともかくとして、視覚は存外に楽しい。
セットといい衣装といい視覚的な面にはかなり気を配っていたあの中での小道具の主張力。
虫虫Q
市原佐都子卒業研究
桜美林大学・町田キャンパス 徳望館小劇場(東京都)
2010/12/09 (木) ~ 2010/12/12 (日)公演終了
満足度★★★★
勘で行って正解
これは好きだなあ。きっと作者が二十数年間感抱えてきた「女」というものの周辺にあるもやっとした感覚を、こねてこねて削いでこねて形にしたのだろう。同情もさせないような寂しさの奥底に、それでもこれを表現したいんだという意思を力強く感じる。
個人的には今まで観てきた女性作家が描く女性像の中で、一番リアルな感触だった。なにしろ「男」の欲望という視線に一切迎合しない視点で作られているのがいい。
文学的な色を感じさせるが抽象に走らず実体の中で描ききる姿勢が素敵。
役者や演出は、おっと思う瞬間と鼻に付く瞬間があったが、これからぐんぐん伸びてきそうな勢い。これからも作り続けてほしいなあ。
光子の裁判 ★ご来場ありがとうございました。
青年団若手自主企画 渡辺企画
アトリエ春風舎(東京都)
2010/11/30 (火) ~ 2010/12/07 (火)公演終了
満足度★★★★
みつこ
数学の論題を解くような揺るぎなく明快な検証と実験。観客が疑問を抱くタイミングで舞台でも疑問としてフィードバックされ、スタイルで進めずに着実な速度で進行されるのがよかった。量子力学の池上解説といった趣で、よい授業を受けた気分。
量子力学はどうも「解釈」を通して理解しないとやってけないものらしく、その解釈を巡って色々るようだが、この芝居はその中でも確率解釈寄りになってるらしい。元々知っていた形がおそらくパラレルワールド的な解釈だったので、ちょっと混乱。
あと青年団系の自己同一性が保たれない演出が量子力学の理論と矛盾なく成立すると実証されたのは自分にとってかなり大きな収穫だったかも。
TOP GIRLS-トップガールズ-
ミズキ事務所
アイピット目白(東京都)
2010/11/30 (火) ~ 2010/12/05 (日)公演終了
満足度★★★★
女性たち
よく考えさせられる脚本。ただ「現代フェミニズム」ではなく「80年代フェミニズム」。初演も83年ということなので、当時の「現代」と考え、歴史として観るのが正しい。
ウーマンリブを体現する新しい女性たちと男性中心の社会、都会に出た者と田舎に残ったもの。どの立場も抱えるジレンマが大きかった時代だったんだろう。
しかしラストのセリフが見据えるのは「現代」なんだろうと思わせるあたり、さすが。
翻訳物の演技なので最初違和感が強いが、途中でほぼ慣れる。過去のトップガールズたちとの会食会、他人が喋ってようと構わず喋り続けるイギリス式会話術はすさまじい(笑)。
ただ場転の長さや場面の繋ぎ方など演出のつくりこみ方がもったいない。休憩に入った時、一体何が起こったんだと思ってしまった。あとチラシの絵は正直ちょっといただけない。
バウンティハンター
演劇企画集団LondonPANDA
王子小劇場(東京都)
2010/12/01 (水) ~ 2010/12/05 (日)公演終了
満足度★
え…
本当にわからない。
どう思い返してみても、作り手の都合と、言ってみたかった言葉をなんとなく落ち着きのよい場所に入れ込む作業で話らしきものを整えたようにしか思えない。
「ありえない!」と言いたくなるアクロバティックご都合展開は、むしろナンセンスな方向に笑わせてくれでもしたのなら納得できたのかもしれないが、大真面目にやられるととても不安になる。
自分には何がいいのか本当に解せなかったので、他の方の評価の高さに困惑する。誰か教えて…
(再演)太陽に恋した童貞モグラ[公演終了!ご来場ありがとうございました!]
ザ・プレイボーイズ
タイニイアリス(東京都)
2010/11/25 (木) ~ 2010/11/29 (月)公演終了
満足度★
学芸会のよう
脚本の稚拙さを自覚しているのなら、なぜ再演にしたのだろうと不思議でならない。改演ならまだしも。
内容の茶番さもさることながら、役者の演技の性質に統一感がないという所にすら気が回っていない演出は観ていてイライラした。照明操作も酷い荒れようだったのが気になる。
前回の短編コント集の公演はすごく面白かったのになーなんでだろ。
ハロースクール、バイバイ
マームとジプシー
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/11/24 (水) ~ 2010/11/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
マックが異国に思えた頃
今年の暫定マイベスト公演。登場人物もパンフもチケットも全てが愛おしい。
「それぞれ」に分化してゆくまでの、発語されずにいつの間にか蒸発してしまっていた感覚。誰かの記憶から記憶へと、行き来戻りつリフレインしながら一年という年月が濃縮された一つの「場」に喉の奥が熱くなる。
きっと皆ローファーではなく白いスニーカーを履いてるんだろうなと思わせる、中学生の身体感。この懐かしさといったら。
映像的な舞台は多いけれど、これは舞台にしか表現できない映像性だなと。
色んな所で絶賛されてた前作も観とけばよかったと激しく後悔。時間さえあればもう一度あの場を体感したい。
punctum プンクトゥム
MacGuffins
pit北/区域(東京都)
2010/11/19 (金) ~ 2010/11/21 (日)公演終了
満足度★★★★
ファイト、バカども
ツバをすごい速度で飛ばしていくような熱いバカ展開だが、演者が変に誤摩化しをせずにきちんとやりきっているのですんなりと笑える。水越健なんてキレが大変よく、ちょくちょく挟む小ネタですら振り切って演じており観ているだけでにやにや。暗転のない場転を的確に整理する演出のセンスもよく、全体的に観やすい舞台だった。
でも個人的に後半は微妙。
Project BUNGAKU 太宰治
Project BUNGAKU
ワーサルシアター(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
この企画こそ初心者に勧めたい
実力のある演出家が揃うってこういうことなんだなと。個々の作品からアフタートークまでみっちりと身の詰まった充実内容、お値段も手頃で大変申し分無し。このぐらいの密度の公演がもっとポンポンやっていたら、安心して普段小劇場に行かない人にも演劇を勧められるのに。
『HUMAN LOST』は元々が特殊な作品だったので、他の作品と同じ土俵に並べての順位付けには一考が必要だと思うが、罰ゲームは面白い(笑
アンドロイド演劇『さようなら』
フェスティバル/トーキョー実行委員会
あうるすぽっと(東京都)
2010/11/10 (水) ~ 2010/11/11 (木)公演終了
満足度★★★
発展途上中
人型はロボットよりも近い分だけ見る目が厳しくなる。自分としてはまだ不自然に映る動き。
しかしポストパフォーマンスが組まれた回を観たので、まだこれは発展途上中の技術だということで納得できた。
口の動きや声が後ろから声がすることに感じた不自然さは、技術的には咥内にステレオを埋め込んだり動きをなめらかにすることですでに解消可能らしい。けれどジェミノイドの一般化に重点を置く方針で技術開発をしているのでそちらはちょっと後回し(?)
でもあと2、3年もすれば市場に出回るとか。理論的には過去の映像からプログラムするのも可能らしく、ゆくゆくは各地に名優アンドロイドを置いたり、遠隔操作での世界同時多発上演構想も。すごいなこりゃ。
今度のロボット演劇の方も観るので、性質の違いを確認したい。
交響劇第二番嬰イ短調
劇団再生
APOCシアター(東京都)
2010/11/13 (土) ~ 2010/11/14 (日)公演終了
満足度★★★★
鉄パイプ空間
とにかく第一部の劇場論という名の雑談が微妙。個人的にあれはなくしてほしいのだが、それでもトークをするならちゃんと内容のあることを喋ってほしい。
内容は前半かなりアングラ抽象的な実験演劇かとみせかけて、意外と中盤・後半はピュアストーリーもあり、予想していたほど解りにくいものではなかった。ただ「コギト」にしろ「神さま」にしろ、キャラクターが背負う象徴性が物語に先行しているような感覚はあった。
男性の動きにしばしば惹き付けられるものがあったが、喋りに変な自意識が付いてしまっていてもったいないな、と。
しかしなんだかんだ言って自分がこの舞台が嫌いじゃないのは、とにかく劇場の使い方がよかったという点。
鉄パイプが会場全体を覆って、役者が観客の頭上に張られたパイプを移動したり隙間から降りてきたり四方の頭上から声が聴こえたりと、立体的な空間効果がかなりいい出来。舞台を物語よりも空間的な面に、特に第四の壁をダイナミックに揺らがせるような空間性に楽しみを見いだす人にとってはかなりワクワク空間だと思う。こういうことを許可する度量のあるAPOCシアターに拍手。
ジーンズ -gene(s)-
劇団銀石
ザムザ阿佐谷(東京都)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
ハッピーエンドと言うために
ダーウィンの時代と進化論の過程を、恋と音楽の引力で束ねるなかなかアクロバティックなストーリー。物語の展開は歴史を生物史観から再編成することで現在と未来と存在を肯定的に把握し直す時に向かうための道筋であって、観終えると確かに熱くひたむきなメッセージが残る。きちんと「物語、物語る」という劇団理念に正面から取り組む姿勢を感じ取れた。
音楽家と組んでるだけあって、音楽の感性できめるシーンがキレてて最高に気持ちよし。野田秀樹的想像力と派手な身体動作って今どきむしろ新鮮。
言葉遊びにほころびが見える瞬間もあったが、基本的にハッタリ力でどうにかしてて嫌いじゃない。あとは笑い所で笑わせられるだけ全体の演技に余裕が出てくるぐらいになったらエンターテイメントとしては安心して観られようになるだろう。今回はまだ多くの役者がいっぱいいっぱい。
「Floor in Attic 屋根裏の床を掻き毟る男たち」ご来場ありがとうございました!
演戯団コリペ
タイニイアリス(東京都)
2010/10/02 (土) ~ 2010/10/04 (月)公演終了
字幕なし
ということを会場に行ってみて初めて知る。
確かにあらすじを読んでいればキーとなる展開は把握できるのだが、独白のようなセリフもかなりあり、何も解らずボーッと観ている時間が多かったので、なんで字幕がなかったのかがよくわからなかった。演出上の都合と言うよりも技術の問題?セリフの速度が速かったし。
というか字幕がないならないでもかまわないのだが、そのことを予めきちんと明記しておかないのはどうだろうか。招待ならまだしも、お金を払って観ている方に不親切。それともこちらが見逃しているだけ?
そういう日本上演の際の不備は置いといて作品自体だけを観ると、とても面白い舞台だった。日韓合作は何度か観たが、韓国の現代演劇の公演は初めてだったのでナマの韓国の感覚が知れて新鮮。四人が置かれた汚らしいうだうだ状況からの反動パワー、ハチャメチャ加減は大変気持ちがよく笑わされた。
観ているだけで面白いシーンが多かったのは事実だが、やっぱり意味もちゃんと解った上で観たかった。なぜ字幕がなかったのか。
ワイルドターキー
ゲキバカ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了
なぜだ・・・
急用が入り行けなくなったので、代理で行ってもらった人の感想を。☆を付けてないのはそのため。何度も行こうとしてるのに結局まだ一度も観れていないので次回こそ観たい・・・