きゃるの観てきた!クチコミ一覧

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絶頂マクベス

絶頂マクベス

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2012/04/14 (土) ~ 2012/04/23 (月)公演終了

満足度★★★★

楽しみなシリーズだが
1時間30分、ノンストップで見せていく、現代風脚色のシェイクスピア劇として、大変面白い試みだと思っている。

たとえ、好評を得られなくても、当分は続けていくという中屋敷さんの心意気にも賛同する。


正統派のシェイクスピア芝居を観る際の入門ガイドにもなりうるだろう。


女性ばかりの演劇だが、上品な宝塚歌劇とはまったく趣を異にするものだ。


「悩殺ハムレット」はホストクラブ風の翻案が面白かったが、物語に、直接、その設定はあまり関係はなかった。

今回の「絶頂マクベス」はマクベスのブラック企業の中間管理職的役割と言う読み解き方が面白かった。


独特のスタイルを持つ「柿喰う客」は、一般公演では私には近寄りがたい劇団だが、女体シェイクスピアはついて行けそうで、今後も観たいと思っている。



ガールズナイトのアフターイベントではペンライトを振るスタッフなのかファンなのか、熱烈応援団が客席にいて、異様な熱気を感じた。



男性が女性の倍額の観劇料を支払うシステムもいまいちよくわからないが、男性も嬉々としているのだから、かまわないということになろうか。

ネタバレBOX

マクベス夫妻が、執事とメイドの扮装なのは、中屋敷氏の読み解き方が表現されたものでわかりやすい。

祝宴の場面では、ドレスアップするのかと思ったら、夫妻とも寝間着にテロっとしたガウン姿。

ちょっと違和感があったが、私なりの解釈では、この夫妻の悪夢が始まっているという象徴の扮装にも思えた。

マクベス夫人(内田亜希子)のやたらハイテンションのオーバーな演技が浮きすぎで、私にはどうにも生理的に受け付けなかった。

期待していたマクベスを駆り立てる芝居が、このおバカなキャラクターでは、全然面白く感られない。

内田さんは実力派の女優さんだけにこの演出は惜しい。もっと青い火花が散ると期待したのだが。

「内田亜希子さんが良かった」という感想がここでは多いようなので、私の感じ

方が特殊なのかもしれないが。

ハムレットのときのオフィーリアも、今回のマクベス夫人も、どうも人物造形が原作から飛躍しすぎていて、私には馴染めない。

原作では魅力的なヒロインが、いかにもチープな感じで残念だ。

若い観客にはウケるのかもしれないが。


ハムレットに続いて主役のマクベスを演じる深谷由梨香さんは、今回も「魅せる」。

音楽のように心地よい声質と誠実な演技。

ガールズナイトのショーでくしゃくしゃの笑顔で踊り狂う彼女が素顔の彼女なのかもしれないが、役では別人だ。

中屋敷氏のリクエストで、深谷さんがハムレットの一場面を演じて見せたが、その変わり身に、集中力の凄さを感じた。

劇全体としては、前回のほうが完成度があったと思う。
深海のカンパネルラ

深海のカンパネルラ

空想組曲

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/04/15 (日) ~ 2012/04/22 (日)公演終了

満足度★★★★

ほさか版『銀河鉄道の夜』
原作からカンパネルラとジョバンニの友情に焦点を当て、「ほさか版銀河鉄道の夜」を創り上げた。

シュールレアリスム絵画を思わせる舞台美術が作品テーマをくっきりと表現しているのが秀逸。

物語が始まる前からワクワクした。

人間の深層心理や登場人物の二重構造など、ほさかよう氏の作劇の特徴はいつもどおり生かされている。

「銀河鉄道の夜」は、単なる空想ではなく、ずべて憲治自身が実際に体験したことでは?というほさか氏の読み解き方がすぐれた形で劇に表れていると思う。

いつも思うのだが、「銀河鉄道の夜」は原作が未定稿ということもあり、複雑で、いまだに解釈が定まらない部分もあり、まったく物語を知らない人には、劇も理解しにくい。

だから、ある程度物語を知ったうえで、観劇すると、このほさか版の優れた点もより深く理解できると思う。

今回観て、さらに原作への関心が深まった。本作ももう一度観てみたいと思う秀作。再演を希望する。

ひとつ難点を挙げるとしたら、2時間10分は少々長すぎると思った。正直、疲労感が残った。

私は、観客の集中力の観点からも、休憩なしの小劇場演劇は長くても1時間45分までにおさめたほうが良いという持論があり、優れた作者なら、なおさらそれが可能だと思っている。

学園生活とリンクさせる手法も「遠ざかるネバーランド」と共通しているが、今後、新境地を開くかどうか、作者の才能に期待したい。

ネタバレBOX

歪んだ立方体のスケルトンの内と外で、物語が展開する。

時空のゆがみをも表現した美術である。

原作には化石の話が出てくるが、スケルトンの外には、過去の生活の記憶を象徴するようなチェストやテーブルが傾いて埋まっている

照明でモノクロームの世界を表現した冒頭のシーンも素晴らしい。

ジョバンニとカンパネルラの双生児性を主張する研究者も多いそうで、この劇の2人にもそれを強く感じる。

星を愛する少年と海に憧れる少年。

ジョバンニ=りく(多田直人)の白、カンパネルラ=けんじ(篤海)の黒の衣装、一見正反対のようで、背中合わせの似た者同士。

大切な人を失った時、残されたものは、生死の悲しみの壁をどのように乗り越えていくのか。経験のある者には鋭く迫ってくる。


寒色系のオーガンジーのモチーフをあしらった衣装や、ライトのつくマグカップで星座をつくる場面(マグカップには銀河鉄道おなじみのアイテム、牛乳が入っている)、視覚的にも楽しませる。

小玉久仁子お約束のアニメチックで強烈な個性の魚座の女王(魚心先生)に拍手が沸いていた(笑)。

牛水里美の二面性のある黒蜜星の乙女(黒上)はアングラ劇を得意とする劇団にいるだけあって美しい凄みを感じさせた。

古川悦史演じるけんじ(カンパネルラ)の父(車掌)の述懐により、りく(ジョバンニ)はけんじの心の奥に入っていき、救いを得るのだが・・・。

このへんの描写が観客の心に染み入るようであった。

「りく」という名も空と海をつなぐ存在を表しているのだろうか。

ザネリを救おうと溺死するカンパネルラは、自己犠牲の象徴と解釈されることが多いが、本作では、そのへんは強調されてはいない。

足を痛めて泳げなくなりショックを受けていたカンパネルラがあえてとった行動の裏の心情のほうが胸に迫る。





にんじん

にんじん

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2012/04/14 (土) ~ 2012/04/14 (土)公演終了

満足度★★★★

大人になって見直すと
『にんじん』は中学1年生ころに小説を読んだことがある。小説と戯曲では主人公の年齢に違いがあり、小説は10-11歳、戯曲のほうは、16歳という設定。

私が学生時代は、松本典子さんという女優さんが当たり役で、その後、若かりし
頃の大竹しのぶさんが演じて話題になりました。

松本さんのにんじんはかなり昔に観ましたが、大竹さんのは観ていません。

小説を読んだ時は、実の親子なのに継子いじめのように息子に辛くあたる母親や無関心で冷淡な父親など、いまでいうところの児童虐待や育児放棄のような状態が理解できなくて、にんじんが可哀想でならなかった。

この年齢になって、改めて観ると、ルピック夫妻は離婚はしないが仮面夫婦状態にあり、結果的ににんじんが夫人の鬱屈した感情のはけ口になってしまうという、現代でもありうる話だと思った。

終演後のアフタートークによれば、演出担当の三木元太さんが、ご自身が母子家庭であり、『にんじん』の父子関係に興味を持ち、岸田國士がルナールに強く影響を受けていたことなどから、上演を提案したとのこと。

劇団のご厚意で、作品にちなんだにんじんスープが観客に配布され、アットホームな雰囲気で、久々に実のあるアフタートークを聴いた思いです。

ネタバレBOX

にんじんことフランソワを演じた木戸真紗美さんは、若手なので、こんな膨大な台詞をしゃべったのは初体験だそうで、けなげだが、家庭環境から屈折した一面も持つ難しい役をよく演じきった。

戯曲の台詞そのものが、16歳にしては子供っぽかったり、おとなびていたり、起伏に富んでいるから、よけい難しかったろうと思う。

ルピック夫妻の奈須弘子、熊谷宏平両氏は、役のイメージに合っていた。奈須さんを観ると、いつも三田和代さんを連想してしまうほど、良い意味で、昭和の女優さんという雰囲気。

一家に波紋を起こす女中のアンネット役、神成美忍さんは口跡もよく、知的で清冽な印象を残した。

アンネットの出の衣装はスカートが短すぎると思った。

スカートが短いと、現代の普段着に見えて興をそぐ。
荷

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

刺激的だった坂手さんの演出
中に入ってまず息をのんだ船底を模した客席配置。可動式オープンスペースを生かしたブレヒトの芝居小屋ならではの文字通り「芝居小屋」としての楽しさがある公演だった。

東京演劇アンサンブルの場合、最近流行の劇団員が他劇団へ客演する機会はほとんどないと思うので、今回のように、韓国の作品で、韓国人俳優との共演、外部演出家などによる刺激を受けることはとても貴重で有意義だと思う。

坂手洋二氏の斬新な演出に、若い劇団員たちが柔軟性でよくついて行ってる印象で、いつもの新劇とはまったく違う魅力を発揮していた。

「本当に東京演劇アンサンブル?」という嬉しい驚きがあった。

このお芝居、ふだん、東京演劇アンサンブルを観たことがない人や、坂手洋二ファンにもぜひ観てほしいレアな作品だと思ったが、新劇になじみがない人に足を運んでもらうことは難しいのかもしれない。

それでも、ブログなどを検索すると、演劇関係者、小劇場ファンも多数来場され、好評を呼び、話題になったようで嬉しく思う。

このコラボが劇団員の今後の舞台生活に必ずやプラスになることを信じている。

ネタバレBOX

日本と韓国、両国が抱える「問題」を象徴するような舞台中央の大きな水瓶に浮かぶ「荷」。

この舞台装置が秀逸である。

水瓶の水は惨事の海にもなる。

2つの家族の間を「荷」が行き来するさまを眺めながら、観客の私たちも、船底で心が揺れ動いていく気分。

日本の家族の娘の「私が知らない時代の責任を背負いながらいつまで謝り続けなければいけないのか」という想いは、我々日本人の本音でもあると思う。

「こうである」という押し付けはなく、観客それぞれの心にくさびを打ち込むような深い作品だった。

難を言えば、私の席からは字幕が直角で見えにくく、視力も弱いもので、韓国語のセリフについていくのが辛かった。

俳優では、原口久美子さんの明晰な台詞と、情感あふれる桑原睦さんが印象に残った。

「噂をする日本人トリオ」の使い方も面白かった。

東京演劇アンサンブルは、創始者の故広渡常敏氏が桐朋で教えていた関係で、劇団員には桐朋卒業生が多い。

今回演出助手を勤めた赤澤ムックさんもやはり桐朋OGで、劇団員の中にに同期生もいて、良き潤滑油となったようで、公演成功の陰には赤澤さんの活躍を称える声があったことを追記しておく。

コリッチには赤澤さんのファンも多いと思うので。
農業少女

農業少女

アシカツ(明日カツ丼!企画)

d-倉庫(東京都)

2012/03/28 (水) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

Aキャストを観ました
アシカツは、野田秀樹の戯曲の上演を続けているプロデュース・ユニット。

主宰の添野豪さんは、ほかのお芝居に出ているときも、まるで野田作品の登場人物を連想させるような

ときがあるのだが、体に野田作品がしみこんでいるのだそうだ。

妥協せず、納得できるかたちで上演するために、働きながら費用を貯めるので、3年に一度くらいしか上演できないという。


私がこの戯曲の上演を最初に観たのは、明治大学の老舗劇団である劇団螺船によるものだったが、諷刺がこめられ、

面白い作品だという印象が強く残った。


今回のアシカツ版はそれをさらに立体的にした感じで、東京芸術劇場の上演のものと比べてもひけをとらない出来だったと思う。

電動夏子安置システムの澤村一博さんが本作で俳優活動を休止されるとのことで、Aキャストを観た。

朝から暴風雨の吹き荒れた日の観劇で、交通も乱れ、心配したが、終演後は雨も小やみになっていた。

ネタバレBOX

私はd-倉庫という劇場が?観やすさの点で、あまり好きではなく、いつもはついついパスしてしまう。

ところが、今回、場内に入り、舞台を底上げして、いつもと観客の目線を変えてあり、とても観やすく工夫されていたので、

嬉しかった。

役者の動線も追いやすく、視界が良くなっている。

配役が想像通りで、添野の都罪、澤村の山本。何度も共演して息が合っている2人だけに楽しめた。


役者として私が観始めたころの添野は体形もぽっちゃりして、おっとりした善人役が似合う人だったが、その後、

体重を絞り、非常にスリムに変身した。

その甲斐あってか、動きにキレがあり、リズミカルな演技をみせる。

澤村は前回の「カノン」のときもそうだったが、難解な野田作品の一見奇怪な人物も、彼が演じるとリアリティーが出てくるので物語が理解しやすくなるのが長所だ。

翻弄される役どころも合っている。

新野のドリームガールは予想から言うともう少し弾けるかと思ったが、意外におとなしく、かすんでしまったように感じた。

少女役の浅川薫理は努力賞といったところだろうか。やはり難しい役だと思った。

時々、「力演している演劇少女」を感じてしまうところがあった。

パステルカラーで植物を描いたボックスや、電飾をつけたビニールハウスの舞台装置が効果的に使われていた。

ビニールハウスの遠近感、照明、音響も良かったと思う。

農業も一過性に消費し、呑み込んでしまう、巨大な都会の偽悪と魔力に思いを致す。

観るたびに、新鮮さを感じる戯曲だ。


Aキャスト版しか観ていないが、ラストに電夏のテーマ曲が流れていたのは澤村さんにちなむものだったからなのか。
春狂言2012

春狂言2012

セクターエイティエイト

国立能楽堂(東京都)

2012/04/07 (土) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

春狂言らしく
国立能楽堂の茂山関係の狂言会で、こんなに客席が空いていたのは初めての経験で驚きました。

それだけ、伝統芸能の環境も厳しくなってきたということでしょうか。

演目が始まるまでの前説に、茂山元彦さんが登場。

彼はNHK朝ドラの「ちりとてちん」で落語家の役をやったが、上手すぎてNGが出たというほどで、

本職顔負けの話術。落語の枕を聴いているようだった。

一門の狂言師の近況を笑い話に仕立てて話は確かに面白いが、「演目はパンフレットを読めばおわかりかと」とだけ。

これが山本家だと、東次郎さんが演目について、いろいろ興味深い解説をしてくださる。

初めて狂言会に来る人も皆無ではない。

狂言師の名前をまったく知らない人に、家族のおちゃらけ話をされてもチンプンカンプンだろう。

せめて、おちゃらけは3分の1にとどめ、演目についてきちんとした話をすべきだと私は思う、

茂山家の公演数の多さはダントツで、稽古時間の不足や将来の若手の芸を心配する声もある。

いつか、いまのやりかたに限界が来るのではと、私も心配している。

演目の構成は春らしくほのぼのした味わいの狂言が並んだ。

ネタバレBOX

「鶏聟」

聟狂言である。婿が舅の家に婿入りの挨拶に来るまで初対面という、室町時代特有の風習が題材。

友人に嘘の作法を教えられ、闘鶏の物真似をする婿に、婿がかつがれたと知りつつも恥をかかせまいと合わせる舅。

千五郎、茂親子のおおどかな芸が心地よい。

日本人の本来持つ相手への思いやりが出た狂言で、山本東次郎さんは、狂言の魅力はそこにあるといつも話されている。


「地蔵舞」

高札のお触れが出て旅人に宿を貸さない男に、傘を預けてとんちをきかせ、打ち解ける旅の僧。

「地蔵舞」の僧の役の山本東次郎さんは絶品と言われている。

宿主は茂山あきらさんが務め、あきらさんは東次郎さんの親友だった故・千之丞さんの子息。

同じ大蔵流でも、茂山家と山本家は芸風の違いから共演が難しく、同じ舞台に立つことは稀有だ。

千之丞さんの供養だと思って客演しているのだと思う。

声を高く張り明るい芸風のあきらさんと、神妙にきっちり演じる東次郎さんの演技は対照的で、演じ手は呼吸を合わせるのが難しいかもしれない。

両家の芸風の違いを知る好機会でもある。


「首引」


鬼のお姫様の喰い初めに引き出された鎮西所縁の若い美男と鬼たちの力比べ。

姫鬼(丸石やすし)の愛らしさや、アクロバティックな親鬼(千三郎)の跳躍が目を引く。

鬼の眷属が、ショッカーのように「ヒョイ、ヒョイ」と声をあげ跳躍しながら一列に出てくるなど楽しい演目だ。

ハーフムーン

ハーフムーン

劇団テアトル・エコー

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2012/04/03 (火) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★

唐沢さんに今後も期待したい
前回「アラカン」で注目した唐沢伊万里さんの脚本なので、観に行きました。

個人的な感想としては、正直「アラカン」ほどは面白く感じなかった。

場内は中高年夫婦の姿が目立ち、男女としてのときめきを失った「日本の中年夫婦」特有の問題が描かれ、改めて夫婦の会話の必要性を思い、反省させられました。

勘違いやなりすましなど、オーソドックスなシチュコメの手法で笑わせ、今後も唐沢さんのコメディは観たいと思います。

1時間55分で少々長く感じられ、1時間40分くらいに圧縮するともっとテンポよくなるのではと思いました。

ネタバレBOX

夫婦の在り方を見つめなおす目的で、民宿にやってくる遠山夫婦が主人公。

まず、冒頭のシナリオ作家志望の民宿の次男(加藤拓二)と、遠山の元部下で次男とは幼馴染の従業員桃子(沖田愛)との会話が面白くない。

「北極と南極くらい住む世界が違う」というのも、笑わせるつもりの台詞なのかもしれないが、

客はシーンとしている。

コメディは幕開きが肝心だと思うが、面白くなりそうな予感がもてなかった。

民宿の兄弟のキャラクター設定が平凡で、役者の「間」もよいとは言えず、この2人が出てくると、テンションが下がってしまうのが難。

兄役の粟野志門が、台詞をつっかえるのも気になった。

舞台が、民宿ではなく、民宿の付帯施設の「焼き物工房」なのだが、夫婦が部屋に行かずに延々ここで会話するのが何となく不自然でしっくり感じられない。

登場人物も、当然、民宿ではなく、いきなり工房に入ってくる。

舞台と設定上の制約がとても気になってしまった。

ドリフの「もしも」シリーズの民宿コントのような設定の可笑しさもないし。

夫婦でつくる骨壺の会話はおかしかったが。


遠山の夫、藤原堅一の好演が印象に残った。

シチュコメの「間」が身についている。

不倫宿の企画者・三島役の森澤早苗は面白い役だが、少々演技がオーバーで鼻につく。

舞台には登場しない遠山家の隣家の人妻と遠山の夫の関係についての説明も、とおりいっぺんで興味をひかない。

それだけに、遠山の妻(石津彩)がみんなの手前、隣家の人妻になりすまして夫に皮肉を連発するのが笑いにまで昇華しない。

遠山の妻が民宿の兄弟と従業員に、愛人と誤解されたまま、工房を去る幕切れも後味が悪い。

台詞に沿ったハーフムーンのお月様の演出は良かったと思う。


A MIDSUMMMER NIGHT'S DREAM

A MIDSUMMMER NIGHT'S DREAM

声を出すと気持ちいいの会

小劇場 楽園(東京都)

2012/03/15 (木) ~ 2012/03/18 (日)公演終了

満足度★★★

少々空回り気味の印象
コエキモは観客の少ない学内公演当時から観てきたので、最近コリッチでも人気が急上昇した感があり、今回「観たい」の人数が多いのにとても驚きました。

盛況のためか、予定していた日が完売でとれず、ギリギリ都合をつけての観劇でした。

「夏の夜の夢」をモチーフにした作品に、シモキタの「楽園」を会場に選んだという時点で、かなり期待できそうと思いました。

『黒猫』の再演がダンスをセンスよく挿入していたので、新進気鋭の木皮さんの振付でダンサーも出演と聞いて、興味もありました。

結論から言うと、アイディアは面白いけど、『被告人ハムレット』ほどは興奮できなかったというのが正直なところ。

星は3.5というのが実感ですが、発展途上の若い劇団であり、期待をこめて4でなく3にしました。今後も注目していきたいと思います。

ネタバレBOX

東日本大震災と、77年のニューヨーク大停電、シェイクスピアの『夏の夜の夢』をからめたアイディアはなかなかなものだと思う。

大震災と、日常である家庭内の問題や恋人との関係、世紀末のカタストロフィー的な肉欲などが描写されていく。

山本タカは複層構造の芝居構成が得意で、アングラ的な密度の濃さが特徴だが、今回は少々空回り気味というか、散漫で物足りなさを感じた。

それもまた挑戦意欲ゆえの途中経過と理解したいが。

原作のパック=ロビン・グッド・フェローの黒幕的存在が物語の中で少々浮いた存在で、うまく物語を回している印象が残らなかった。

ロビンの草野峻平のアクの強さと若さに似合わぬ貫禄、コエキモメソッド的な後藤祐哉の独特の体の動きと演技は相変わらず目をひく。

私が観た回は珍しく後藤が台詞をとちったのが残念。

セックスをダンスで表現するのは、リアルになりすぎないという点では評価できる。

ただ、普通のダンス場面がさほどかっこよくなく(それはあえて意図したものなのかもしれないが)、「ダンスがあってよかった」と思うほど効果的には感じられなかった。

せっかくミラーボールが回っているのに、ディスコの雰囲気が出ていなかった。

不和の両親がオーベロンとタイターニアでもあり、石渡大夢の演じるステレオタイプの父親が私には面白かった。





芸劇+トーク―異世代劇作家リーディング 『自作自演』<第4回> 唐 十郎×渡辺えり

芸劇+トーク―異世代劇作家リーディング 『自作自演』<第4回> 唐 十郎×渡辺えり

東京芸術劇場

水天宮ピット・大スタジオ(東京都)

2012/03/20 (火) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★★★

念願だった対談が実現
チラシではよく内容がわからず、トークショーなのかと思っていたら、リーディングもたっぷりあって、とても楽しめた。


渡辺えりさんが唐十郎さんを尊崇し、強く影響を受けていることは前々から聞いており、お二人の対談を聞いてみたいと願っていただけに、とてもありがたい企画だった。

渡辺さんが「私は若いころから唐十郎一派と言われてきたけど、自作に歌が入るのは、やはり唐さんの影響で、ミュージカルからの影響ではないんですよ」と明言されたのが我が意を得たり、で嬉しかった。

月並みな言い方だが、「芝居が好きでたまらない」というお二人の真情が痛いほど伝わってきた。


水天宮ピットも、こういうことでもないと、私が観るような公演をやっていないので、足を運ばない会場である。

ネタバレBOX

唐さんの芝居はラストに舞台後方が開くことが多いが、オープニング、舞台後方が開いてのお二人の登場に会場がどよめいた。


渡辺さんは『夜の影』と『ゲゲゲのげ』から朗読と歌を披露。唐さんは『少女仮面』の朗読と歌。

渡辺さんの朗読は何役も演じ分けるのがあざやかで惹きこまれてしまう。


唐さんはもっと芝居がかった読み方をするのかと思っていたら、飄々、淡々としている中にも、ボーイたちのコミカルな演技や、水道飲みの男のとぼけた行動など、私が大好きな『少女仮面』の第一場の情景がありありと浮かんできた。


渡辺さんが自作の役がやりにくいのは、自分の実像と周囲の持つイメージが違うからで、「本当は『ガラスの動物園』のローラのような女性なので」に会場からは笑いが。
「作・演出だけでいっぱいいっぱいで、自分の役は稽古時間が取れず、必死でこなすので、共演者から浮いてしまい、渡辺だけ客演に見えるって言われた」とのこと。

唐さんが鈴木忠志さんの依頼で『少女仮面』を三日で書き上げたというのも驚き。司会の扇田昭彦さんによれば、唐さんの戯曲は推敲なし下書きそのまま清書であれだけの傑作が完成するというのだから、やはり天才である。

渡辺さんが唐さんの『逢魔が恋暦』を初めて、商業演劇の牙城・新橋演舞場で、演出した時がまだ30歳だったというのもすごい。


その際に渡辺さんが描いた舞台美術プランの原画を持参されたが、「これを朝倉摂さんに見せて創っていただいたけど、先日、コクーンの『下谷万年町』観て、あれっと思った。ちょっと似てません?あの装置は?」に唐さんがすかさず「朝倉さんですよ」

「あら、じゃあ、これ、ねえ・・・私が描いたの。朝倉さんに・・・」に場内からは感嘆の笑いが。


渡辺さんは話術にたけ、巧まずしてまるで芝居のように面白い。

かざかみパンチ

かざかみパンチ

カムカムミニキーナ

座・高円寺1(東京都)

2011/11/03 (木) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★

一筋縄ではいかない作品
昔から名前はよく聞いていたが、観たのは今回が初めて。

カンフェティで割り当てられた席が入口近くの壁際だったこともあり、舞台が見えづらく、少し落ち着かなかった。


俳優たちのウォ-ミングアップから始まる前半部分の演出・構成の端々に、この劇団の草創期-学生演劇時代の雰囲気がしのばれるようで興味深かった。


キャラメルボックスやヨーロッパ企画など、学生演劇から出発した劇団が持つ独特の親しみやすさ、それは一種の懐かしい青臭さと言うのか、「ヘタウマ的」面白さというのか、そういった雰囲気がこの劇団にもあるように感じられた。


物語が不条理劇風の二重構造で途中までが分かりにくく、わかってきてから先も、また観ていて混乱する箇所があり、なかなか一筋縄ではいかない作品だった。

長時間ということもあり、少々、頭が疲れました。

ネタバレBOX

後半部分に先の大震災の津波を思わせる描写があり、ドキッとさせられた。

ほかのかたも触れられているように、この作品にも震災の影響が感じられたのだった。

私が観た日は、八嶋智人の声がひどく嗄れ、着ぐるみを着ていたこともあり、最初、誰かと思ったほど。

「いろいろあってゆうべも遅くて声ガラガラだよ」などとアドリブで笑わせていた。

売れっ子で忙しいのか、飲みすぎなどの不摂生によるものなのかは知らないが、プロとしてあまりほめられたことではない。

観客との距離が近く、ネタにして笑いにできる小劇場系劇団だから許されるかもしれないが、これが大劇場作品や新劇、歌舞伎などなら、シャレではすまされない。
ハムレット

ハムレット

劇団東京乾電池

ザ・スズナリ(東京都)

2012/01/04 (水) ~ 2012/01/15 (日)公演終了

満足度★★★

肩透かしをくらった
この作品が今年、初観劇となりました。

35周年記念公演、「ハムレット」ということで、過剰に期待したせいか、見事に肩透かしをくらった気分です。

この劇団のファンなら、別の楽しみ方もできたのかもしれませんが。

シェイクスピア劇としては不満が残りましたが、このような大胆な試みをやること自体、東京乾電池の新陳代謝の良さなのかもしれません。

ともあれ、劇団活動を35年続けると言うのは大変なこと。

カーテンコールでの柄本さんの挨拶を聴いていて、同世代でやはりご夫婦で演劇をやっている平田満さんの場合もそうなのですが、気負ったところがなく、根っから芝居が好きで続けているというシャイで謙虚な人柄がにじみ出ていて好感が持てました。

これからもお元気で、と願わずにはいられません。


ネタバレBOX

若い役者の大半が、台詞を覚えるのが精いっぱいという感じ。

滑舌がかなり悪い人もいて、失礼ながらよく入団できたな、と思ってしまいました。

俳優たちの早口で棒読み、無表情は、演出上狙ってやっているとしても、稚拙さが強調されてしまい、気になりました。

一番違和感を感じたのは、ガートルードの不貞ををハムレットが責め立てる場面。罵倒されたガートルード(宮田早苗)が全然感情を出さず、さしてショックも感じていないみたいに演じ、ハムレット(田中洋之助)も迫力が足らず、茶の間で親子が口げんかしてる程度にしか見えず、意図的演出なのかもしれませんが拍子抜けしました。

劇中劇の王(沖中千英乃)、王妃(吉橋航也)を男女逆転の配役で演じ、王が狂言と義太夫、王妃が歌舞伎と能楽を取り入れたパロディーになっていたのが面白い。

王妃はロングヘアを鏡獅子の毛のように振りまくる。ここは両者大熱演で楽しめました。吉橋さんは大学生のころから観てる役者さんですが、卒業後、観たのは初めて。

ベンガルさんは冒頭の場面での台詞がおぼつかない感じで、息継ぎも変に感じました。

ポローニアスの谷川昭一朗さんはシェイクスピア劇の中の人になっていたと思います。

そして、やはり、柄本明さんの墓堀はセリフ回しにも妙味があり、相棒の綾田俊樹さんとのやりとりも原作通りやっていても面白く、惹きつけられました。

「役者の演技は一朝一夕にはいかないぞ、特にシェイクスピア劇ともなると、背負った人生が出てくるんだ」ということが示したかった公演なのかとさえ思えました。

別冊 谷崎潤一郎

別冊 谷崎潤一郎

SCOT

吉祥寺シアター(東京都)

2011/12/14 (水) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★

違和感が強かった
当日券を購入し、ぎりぎり観劇が間に合いました。

旅館で作家(蔦森皓祐)が書いてる小説「お國と五平」が劇中劇のように演じられるのですが、台詞はそのままでも女将の演じるお國(高野綾)が原作とは違い、ものすごくきつく、鬼気迫り、凄みをきかせて演じられているので、
違和感が強かった。

原作を読んでいなければ唐突に感じるでしょうし、原作を読んでいる自分でも、この二重構造の趣向の真意がよくわからなかったです。私の理解力が足りないのかも知れませんが。

ネタバレBOX

東大の学生劇団「劇団サーカス劇場」のメンバーだった木山はるかさんを久々に観ることができました。

口跡がよく、たのもしい女優さんに成長していて、嬉しかったです。
学生版日本の問題

学生版日本の問題

日本の問題

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/12/21 (水) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★

Bチームを観ました
小劇場版と合わせ、全バージョン観劇したが、両方観てよかったと思える企画だった。

好みの問題だが、私個人の満足感はAチームのほうがあった。

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思い出横丁「鼻曲りの残像」は、鎮魂劇なのだろうか。タイトルの意味がよくわからないのと、観念的な内容で、暗い中で泣き叫ぶ演技が続くので、胃もたれ感が残った。

荒川チョモランマ「独り、だなんて言わせない」。

これも初見の劇団で、観る前に想像していたのに近い団風だった。

クリスマスイブに、女性ばかり集まってパーティーをやるが、とりとめない会話の中からそれぞれが抱えている問題があぶりだされていく。

出演者の役名が「若草物語」の登場人物なのだが、原作とはあまり関係性がなかった。

前2つの作品が、女子高の演劇にもありそうな内容だったのに比べ、3番目のけったマシ-ンの「喫茶しののめ」は、外国人労働者を登場させるなど、ビターな味わいで、学生版のくくりとは関係なく、ドラマとして見ごたえがあった。
学生版日本の問題

学生版日本の問題

日本の問題

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/12/21 (水) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★

Aチームを先に観ました

初見の四次元ボックス以外は、既に知っている劇団で、興味津々で観劇しました。

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ミームの心臓の「vital signs」は、フクシマを思わせる作品で、若者らしいつくりになっていたが、個人的にはもうひとつ胸に響いてこなかった。

声を出すと気持ちいいの会の「役者乞食」はギョットさせられる表題だが、農業と演劇活動の対比が興味深い。

オリジナルの現代劇をこの劇団で観るのは初めてだが、俳優の演技がいつもの声きもの特色を表現していて見ごたえがあった。

四次元ボックスは、初めて観る劇団だったが、ダンスを取りいれ、スピーディーで表現が面白かった。

日本の問題と言うよりは、人間の内面の問題と言えそうだが、主人公が若者なので、現代社会の諷刺が若者の視点で描かれていたといえる。
一九一一年【ご来場ありがとうございました!】

一九一一年【ご来場ありがとうございました!】

劇団チョコレートケーキ

王子小劇場(東京都)

2011/12/16 (金) ~ 2011/12/20 (火)公演終了

満足度★★★★★

見ごたえがありました
小劇場劇団の作品としての完成度の高さとしては、抜群だと思う。

最近、検察のありかたについて、冤罪などネットでもかなり批判が出ているが、大逆事件を題材に、演劇で見事な司法の問題点を表現してくれた。

最初に有罪ありき、で進められた裁判、それに強く抵抗をみせながら、国家権力の前には大勢につかざるをえなかった人物の苦悩と慟哭。

これは決して過去の出来事ではなく、いまも続いてる問題だと思うだけに、よくぞ舞台化したと着眼に感心した。

古川・日澤の作・演出も期待にたがわず、俳優の演技が全員素晴らしく、文句なく満足度☆5つ。

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この劇団は、秋に法廷劇を既存・新作2本立てで上演したが、その成果も生かされていたように思う。


衣裳もその時代らしく、工夫されていた。
復活

復活

ピーチャム・カンパニー

都立芝公園 集会広場(23号地)(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/11/04 (金)公演終了

満足度★★★★

意義のある野外劇上演
野外劇と言うのを観る機会が少なく、ピーチャム・カンパニーが東京タワーの下で上演するというので、興味を持って出かけた。

鑑賞の手引きとなるHPの関連記事紹介や周辺ミニツアーなどもきめ細かく行っていたのがよかったと思う。

F/Tトーキョーの参加作品だったため、時期的に寒い夜の野外での公演で、平日の観客動員などは苦労されたようだが、悪条件はあるものの、じゅうぶん上演意義があるものと思った。

年明けに作者・清末浩平氏の退団が発表され、東大駒場時代から観続けてきた者としてはこれが彼の劇団最後の作品となり、感慨深いものがある。

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東京タワーの点灯式のセレモニーを観客が共に見守るというオープニングに惹きつけられた。

未曽有の大震災を受けて、日本国民が海外に散って移住し、再び、帰ってきた。日本はアメリカの一州となっているという設定。

小松左京の『日本沈没』の続編のような始まり方である。

放射能汚染からの避難の必要性が叫ばれていた時期なので、なんだかこの設定がうらやましくも感じられてしまった。

本物の東京タワーが舞台装置であり、トラックやタクシーが縦横無尽に走り回り、劇場では出せないスケール感や開放感が楽しめた。

野犬たちが転がり出て、踊る場面などは視覚的にもワクワクした。

修学旅行を引率する女教師たちが、稽古場ブログの写真では傘をさしていて、劇中「ティム・ティム・チェリー」が流れるので、メアリー・ポピンズの趣向かと思ったが、本番では傘をさしていなかったので気になった。

3人の女教師が中里順子さんを除くと、あまり活躍場面がないのが残念だった。

この場面は、演出家のアイディアだとのことで、聞いてみたいところだ。

メッキー・メッサの夢とも妄想ともつかぬ家族の食事の場面なども、走るトラックの上で演じられるので、ロードムービーのような空間的効果が感じられた。

被災地の犬を安楽死させるために、メッキーが犬をナイフで刺殺し、やがて狂気をはらみ、東京へ帰ってからも野犬を殺し始める。

メッキーは自分の身代わりに殺してくれたのだという少女ネロ(日ケ久保香)。

メッキーの神保良介さんが、ヌーベルバーグの映画の主人公のようで、適役で好演していた。

しかし、実際に被災地の犬を刺殺することが安楽死とは到底思えず、この設定には違和感を覚えた。

物語の後半になると、土産物屋で買った東京タワーの小さな置物を小道具に使うなど、小劇場的なちんまりした演技になり、野外劇のスケール感がしぼんで失速感がぬぐえなかった。これはネット批評でもほかのかたが指摘されていたが。

ネロの独白などは、よくも悪くも、何度も繰り返してきた清末浩平氏の好むアングラ小劇場的純愛場面であり、日ケ久保さんが小柄な女優ので、熱演はしているが、広場である舞台の広さに負けてしまっている印象だ。

また、当初聞いていた話よりも、冒頭の場面以外、東京タワーが思ったほど復活の象徴として物語の核にはならず、核は「犬」で、東京タワーは単なる借景になっていたのは残念。

東京タワーの近くにある南極の樺太犬の像から、共に置き去りにされた南極と福島の犬を対比するなど工夫もみられたが。
道成寺

道成寺

劇団山の手事情社

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2011/12/07 (水) ~ 2011/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★

遊び心もある「道成寺」
お能や歌舞伎、文楽で、親しんできた道成寺物ですが、絵巻物のようでもあり、遊び心もあり、こういう見せかたもあるのだなーと新鮮でした。

道成寺伝説を複数キャストで反復して見せていくので、わかりにくくなるようにも感じました。

「傾城反魂香」と比べると、歌舞伎で言うところの「入れ事」が多く、お約束なのか固定ファンのかたは爆笑されてましたが、

馴染みがないせいか唐突に感じました。

この作品も、衣裳が素晴らしかったです。

山の手事情社、今後も機会があれば、また観てみたいと思いました。

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ローションと足を使って蛇を表現する場面に驚きました。

その人たちが履いていたハイヒールを人形のように遣っての寸劇。女性心理を表現しているようで面白いアイディアでしたが、試着室の場面など、本編と直接関係ない内容ので、違和感が強かったです。

息抜きの場面なのでしょうけれど。

マリリン・モンローのような扮装の外人カタコト日本語の語り部・キャスリーヌが面白かったです。
はさみ男のカルテ

はさみ男のカルテ

もざいく人間

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2011/12/22 (木) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★

クリスマスらしい作品
クリスマスらしいハートフルな作品でした。

おのおののキャラクターがよくできていたし、役者の好演で支えられている印象。

場面転換もスピーディーで、シザーハンズの小道具もなかなかよくできていました。

主役の横島さんは昔懐かしい感じのするコメディアンぶりが魅力。

25日のコント公演も併せて拝見しましたが、劇団員3人の魅力が出ていて楽しめました。

中込さんは本公演の役も印象に残りましたが、真面目に演じて笑わせるところがいいなーと思いました。

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ハッピーエンドにしてほしかった気もしますが、ラストシーンから照明が入ってすぐ明るい歌になるので、ラストシーンのインパクトが弱まった印象でした。

私個人は東京カジノ構想には反対で、それだけに、もし、歌舞伎町に東京都公認のカジノができたら、きっとこういう事件が起きるのでは?と危惧してしまいます。


ミュージカルとするなら、もう少し歌唱力を上げてほしいところです。

音程が狂ったり、声が出なかったりする人がいるのは、ちょっと残念でした。

古市海見子さんのやくざのハンサムウーマンぶりが出色。

岩田裕耳さんの中国人マフィア、ファン氏が、淡々としているだけに何をするかわからない不気味さがあって、ドンデン返しが生きたと思います。
傾城反魂香

傾城反魂香

劇団山の手事情社

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

わかりやすい入門編
前から観たかった劇団ですが、誘ってくれる人がいたので、今回初めて観に行きました。

「傾城反魂香」は「吃又」くらいしか観たことがなく、全段通してのストーリーがわかりやすく、興味深かったです。

古典の入門編としても優れていると思いました。

衣裳も素敵で、退屈せず、集中力を持てました。




山本芳郎さんが野村萬斎さんに似た口跡のよさで注目しました。

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身体の使い方が独特で、退場する時、頭の後ろに手を組むとか、様式美もあって個性的でした。


DREAM FOREVER

DREAM FOREVER

梅田芸術劇場

【閉館】日本青年館・大ホール(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

宝塚の良さを集約
宝塚には偏見のある人もいると思うが、銀幕やテレビ、舞台に多くの逸材を輩出し続けている女優の宝庫でもあり、私は観客として誇りを持っている。

暗転なしのノンストップ・レビュー「モン・パリ」の大成功が今日の日本のミュージカルの礎になったことは、演劇史上にも明らかである。

来る100周年へ向け、OGたちが宝塚レビューの全国ツアーを開始した。

今回作・演出を担当した酒井澄夫さんは宝塚歌劇団のショー作家の第一人者であり、歌劇団で私がもっとも好きなかただ。

酒井さんのショーの魅力をひとことで表現すると「夢の宝石箱」。

シャンソンの名曲から始まり、宝塚の数々の名舞台の主題歌がふんだんにちりばめられていて、オーソドックスで夢のようなショーだった。

OGのみなさんにはちょっと新しい発見もあった。

いろいろと失望することの多い時期に観たせいか、本当に元気をもらえ、涙を流し、ともに歌い、すっきりした。

自身の宝塚への愛を再認識できたのが収穫。

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今回は優しさと力強さと舞台への愛にあふれたショーだった。

鳳蘭のステージには迫力があった。サヨナラ公演だった「セ・シャルマン」のサロメのダンスの足さばきの見事なこと。彼女の年齢でこの激しいダンスを踊りぬくことは驚嘆する。
第1部のシャンソン「三文役者」や「歌い続けて」は彼女の人生そのものを歌いきって感動した。
途中で歌詞につかえ、「もう一度頭からやり直させてください」というハプニングがあり、現役の頃もそれをやったと苦笑。そのときの楽団指揮者の怒りのタクトを再現して場内爆笑。

2番手役を務める麻路さきは20そこそこのころから観てるが、若々しさが変わらない。
彼女は耳に障害があるため、歌にはハンデがあったが、よほどレッスンを積んだのか、現役当時とは比べ物にならないほど歌唱力が増していた。
「サロメ」のナレーションの演技力も素晴らしかった。菊田一夫の名作「ダル・レークの恋」の一場面をトップコンビだった星奈優里と演じたが、王子様ぶりは健在で哀しい台詞が胸に突き刺さるようだった。

鳳のトップお披露目の「セ・マニフィーク」や麻路の下級生時代の「ディガ・ディガ・ドゥ」に、現役当時を懐かしんだ。

3番手役の大和悠河のカッコよさも現役当時と変わらない。

アフタートークで、鳳が大和の退団第一作で共演した時、あまりに女らしいので、男役なんて想像できなかったそうだが、今回の稽古場で
「やっぱり、男役!みんなもさっき観たでしょ? これもんでキザるし、人気あったのがわかるわ」と笑っていた。

花組で歌唱力がぬきんでていた初風緑、風花舞と星奈の同期生コンビの定評あるダンスシーンなど、見どころ、聴きどころ満載。

なかなか宝塚歌劇を観る機会のない地方を回り、必ずや本家の魅力を伝えるきっかけになると思う。


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