俺の屍を越えていけ
クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)
Heiz Ginza(東京都)
2009/10/04 (日) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
アカ、シロ2組観ました
会議などに使用されるレンタルオフィスのスペースを会場にして、
「会議」の劇を上演するという企画。ギャラリー公演やカフェ芝居と同様で
臨場感・緊迫感があり、面白かった。原作はもともとは上演時間約55分で、
のちに加筆して70分ものにしたそうだが、今回も70分バージョン。
アカ、シロ2チームを連続して観ました。
クロカミ未体験で迷っているかたがいたら、この機会におススメします。
3チーム、フルキャスト入れ替えなのでアカ、シロでも確かに印象が違います。
舞台となる放送局の雰囲気をより味わいたいなら、アカを。
ワダ・タワーファンで彼の熱演ぶりを観たいかたにはシロをお奨めします。
クロを12日に観ます。さて、どうなるだろう。
ネタバレBOX
TV局・ラジオ局を併設する放送局の会議室が舞台。
フランス帰りの49歳の新社長(劇には出ません)のリストラ計画のもと、
各部から召集された局員6名が会議を開き、クビにする管理職1名を決めなければ自分たちの中から1名を出さなければならないという、究極の選択を求められるお話。
実際、放送局に勤務経験がある自分の個人的感想としては、
アカはみんな本物に見えてリアルだったが、
シロは演劇を観ているという感じがした。どちらがよいかは好みが分かれると
思う。
役者の印象で言うと、
アカ・・・川本亜貴代の「松島」が面白い。報道部員らしく、マスコミによくいる
タイプの女性だ。女子アナ「郡山」の手塚桃子は、部屋に入ってきた時から、
「夕方ニュースの花」としての女子アナのオーラを発散。原稿を読むときの
声の美しさも本物らしく、「花」の虚像の部分もうまく演じている。
渡辺裕也の「本荘」は演技に安定感があり、この業界特有の投げやりで
荒っぽい人間性が出ていた(本当に、こういうタイプ、ディレクターに多い)。
つまり、人事になど感心がなく、職人的プライドが高い。
一番印象に残ったのは「東根」の太田鷹史。
組織率の低い組合の青年部長だが、昔の新劇青年にはこういう役が
似合う俳優もゴロゴロいたのだが、最近では珍しい。
「組合臭」(笑)のようなものがよく出ていて感心し、演技的にも惹きつけられた。太田望美は「三沢」の知的な面を、堀内保孝の「北上」は朴訥な純真さ
を素直に演じて好感が持てる。
シロ・・・アカに比べて、役者たちは肩に力が入っている印象が強い。
「本荘」の佐藤正和は、渡辺が「若作りしても服装センスが洗練されてない男」なのに比して、「業界人らしいカッコツケをしてる男」。投票紙の机への置き方にしても渡辺のような荒っぽさはなく、とにかく会議をうまく決着させたいと思っているふうだ。「郡山」の高見菜穂子は美しすぎてアナというよりお高い女優に見えてしまう。声質がアナウンサーらしくないし。だが、今後、ほかの役で観てみたいと思った。
“根っから組合青年”の太田に比べ、ワダの「東根」は「いちおう組合に
入っているけどね」というタイプ。太田、ワダで昔の民藝がやっていたような左翼演劇で対立する役を演じさせてみたいと思った。
日ヶ久保香の「松島」はトイレに落とした携帯電話の扱い方など、川本より几帳面な性格にみせる。「三沢」「北上」を演じる若手2人(馬場渚・松岡努)は一生懸命さが役と重なるが、演技がまだ堅く、青い。
この組は良くも悪くも「東根」のワダ・タワーの存在が突出しており、彼を中心としたお芝居を観ているという印象だった。
アカ組で笑いが起こった「鳥羽一郎ネタ」がシロではさほど面白く聴こえず、
観客の笑いも少なかった。
逆手本忠臣蔵(公演再開&追加公演決定!)
劇団バッコスの祭
池袋小劇場(東京都)
2009/09/30 (水) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
肩が凝らず楽しめる新釈忠臣蔵
プログラムで「史実との食い違いや時代考証の問題は承知の上」と釘を刺されては、そのことをとやかく言えないというより、それを言うと物語が根底から
崩れてしまうので言えない(笑)。
多数のバージョンが出尽くした古典を平成の若者が上演するなら、これくらい弾けてないと面白くない、ということでしょうか。
まったく違う世界に置き換えるやりかたを取らず、あくまでそのままで
現代風に演じるのがこの劇団の特徴のようで。
換骨奪胎ぶりはすがすがしいほどです。
狭い舞台をうまく使い、デメリットを感じさせないのは見事。
私がこの劇団を最初に観たのは、旗揚げ公演だったのですね。
主宰の森山智仁の名を初めて知ったのは東大の劇団シアターマーキュリー
「らんまるっ!」での殺陣。
旗揚げの「~奥州源平記~弟斬草」も森山氏が殺陣を担当していました。
時代劇専門に上演している劇団ではないのに、これだけ迫力ある殺陣ができればたいしたものです。
殺陣が得意な若手女優を誘って、もう一度観に行くことにしました。
以下、ネタバレで。
ネタバレBOX
シンプルだけど歌舞伎や文楽でよく使われる「奥のひと間」の手法も取り入れた舞台装置がとてもよい。傘をパテーションに使って多くの登場人物を処理するなど、昔、宝塚歌劇の時代劇などでは見られた手法ですが、巧いですね。
立ち回りで斬られた役者の引っ込みがきれいなのも感心しました。
冒頭の討ち入りのシミュレーションが往年のドリフのコントみたいで可笑しい。これで、重苦しい「忠臣蔵」のイメージが払拭され、若い人も肩の力が
抜けるのではと思った。登場人物の配役を各人に言わせるのは、「仮名手本忠臣蔵」の口上人形の変型とも解釈でき、なかなか洒落ている。
大石が「大星由良之助」という「変名(偽名のこと)」を使っていることにするなど、原本のパロディーも巧みに織り込んでいる。
浅野の正室・亜久里(史実では阿久利)の右頬になぜ青あざがあるのか、まず疑問に思ったが、物語終盤にわかるのでここでは触れない。
演じる金子優子は唐十郎作品が似合いそうな女優だ。
登場人物の中では吉良上野介の石井雄一郎が面白くて印象に残った。
高家筆頭(劇ではなぜ、高家肝煎となっているのだろう)には見えない俗物ぶりだが、この物語の中ではむしろ自然に見えるからおかしなものだ。
大石内蔵之助の丹羽隆博はアクロバティックな動きが得意な人だが、
演技には疑問が残る。脚本では大石がダメ人間という設定らしいが、
わざといじけているようにしか見えない。また、ときどき表情が歌舞伎で言うところの「生(なま)になる」(リアルな表情すぎて興趣を殺ぐこと)のが気になる。役柄が崩れてしまうので、学生芝居ではないのだから今後気をつけたほうがよいと思う。
派手な赤地錦の直垂という衣装はいくら主役でも目立ちすぎて
違和感があった。バカ殿ではないのだから。
大阪で世をあざむく遊興の身の上を大石が語り、「近頃では自分のことを人が昼行灯と噂してる」という意味のセリフがあるが、これも役柄の解釈としては誤りで、大石は赤穂にいたころに昼行灯と呼ばれたのである。
人数が少ないのでそうしたのか大石以外全員を家老職にしているのも逆に
不自然で、「藩士」でよいのではないか。
高田の馬場で弟子を堀部に斬られた道場主が小林平八郎という設定。
森山演じる平八郎が大石に兵法指南をするところがまじめにやっているのだが返って笑えた。
これから観るかたのためにあえて伏せるが、テーマともなる赤穂事件の真相
が、私には下手な時代小説のように感じ、少々こじつけがましくあまり説得力を感じなかった。このへんをもう少し練り直せば、傑作になると思う。
最後に、アキラさんがご指摘の部分
<討ち入りに、大石の妻りくや内匠頭の妻あぐりも参加したり、堀部が討ち死にしたり、松の廊下で浅野を止めた梶川が吉良の用心棒として雇われたり、さらにお軽は、なんと吉良の娘でソバ屋でバイトしていたり、その恋人の名前は勘平ではなく、三平のほうだったり、なんていう物語は、忠臣蔵ファンにはどう映るのだろうか。>
という点についてですが、確かに違和感があり、私が一番気になった点です。
さすが、鋭い!
野暮は言いっこなしということで黙っておきますが(笑)。
コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
3部通しで-贅沢なフルコースディナー
9時間近い作品を通しで観る不安はあったが、心配したほど疲れなかった。
ロシアの歴史もので印象的なのは映画の「戦争と平和」「ドクトル・ジバゴ」で、どちらも長編だが素晴らしかった。この作品もまた想い出に残る作品となった。
まず、当初購入した2階BOX席から舞台構造上見えづらいとの理由で、急遽劇場側が1階のBOX席に変更するというハプニングがあった。これが紗幕に挟まれた席で、通常なら舞台の袖に当たる。結果、舞台転換がすべて見えてしまう。役者の出の瞬間の表情を見られるのも興味深かった。スタッフの一員になった気分なのだ。これをおいしいと思うか興ざめと思うかは人によるだろうが自分は前者。開幕時、殺風景なテーブルの前に集まった稽古時のような普段着の俳優が解散して、扮装を始める。途中からは紗幕に隠れる部分も自席からはすべて見える。
難点は自分から見て反対側の舞台の奥が見えづらいことで、そのために
俳優が隠れてわからない場面もある。演説の場面で聴衆役の俳優の後ろから一緒になって拍手してしまい、思わずハッとした。完全に劇の中に取り込まれている(笑)。
通しで観終わっての感想は、集中でき、壮大な物語全体の流れが掴めるのが利点。理想的には、最初通しで観て、次に各部を観ることだろうが、時間的も経済的にも自分には無理(笑)。
やはり、トム・ストッパードという作家は素晴らしい。
まさに骨太の戯曲とはこういうのを指すのだろうな。
阿部、石丸、別所、勝村、この4人の主要俳優の熱演とロシアの女性を悠然と演じる麻実れいの存在感が印象に残った。
ネタバレBOX
あまり馴染みがないロシアの革命家や思想家が登場し、議論の内容も難しい。頭が良くないのでよく理解できなかったが、物語の世界は堪能できた。
退屈させない蜷川幸雄演出に感謝する。精神的に老いない彼にはまだまだ長く仕事をしてほしい。
1部はチェーホフの「桜の園」を思わせる貴族社会の崩壊とノスタルジー。2部は男女の愛憎を横軸に革命が展開。3部は歴史的終息と次代の萌芽。ロシア人というと肉食系大男というイメージが浮かぶせいか、日本人が演じること自体、何か嘘っぽく感じられるのでは、と観る前から危惧していた。
芝居が始まってしまうとさほど違和感はないが、勝村政信が登場するとやはり小男でロシア人には見えない。だが、彼は終盤、特殊メークで太った老人に変身し、その風貌をネタに周囲の役者にいじられ、滑稽な演技をするので、あまり気にならなくなる。
今回、宝塚OGが3人出ているが奇しくも雪組出身者。3人とも下級生のころから観ているが、生の舞台では久しぶり。宝塚というと見下す人もいるが、宝塚はいまも女優の宝庫で、日本の演劇文化に重要な人材を輩出していることを実感。大味で大根と言われた麻実、歌以外が弱いと言われた毬谷、子供っぽいと言われた紺野、みな当時が想像できない堂々とした女優ぶりだ。
栗山千明は若いころの蜷川有紀そっくりで個性的。サトエリはグラドルから舞台女優へ見事転進したし、とよた真帆もananのモデル時代のあどけなさは消えてしっとりとした大人の女の哀愁を出せる女優になった。
水野、美波、京野はこれからまだまだ成長するだろう。
若手男優陣では池内博之が印象に残る。こんなに巧い俳優だったかと再認識。当日出演を知ったのは阿部寛の長男サーシャ役の遠山悠介。東大の学生劇団劇工舎プリズム出身で、大学生のころ観ていたのだ。こんな有名男優に混じって芝居してるなんて夢のよう。幕内で阿部に一礼してからスタンバイする姿を見て、ほぉーと思った。
演出ではスローモーションを多用しており、各部では気にならないのだろうが、通しで観ると多いと感じてしまった。仮面舞踏会の場面で赤毛猫(手塚秀彰)を視覚的に出すのが面白い。
席の位置から、1部の毬谷、2部の麻実がどこに出ていたかよくわからなかったのが残念。
3部終盤、阿部のゲルツェンの述懐が今日の共産主義の零落を予言しているようで興味深い。徒労感もあるだろうが、目的や使命感を持ったゲルツェンたちには確かに国家の歴史をつくり、生き抜いてきた実感があり、日々の喧騒に押し流されがちな現在のわが身を反省した1日だった。
中国の不思議な役人【寺山修司×白井晃】公演終了
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
シンプルな感動
文字どおり「中国の不思議な役人」のお話。
平幹二朗の圧倒的な存在感が成功の全てと言えよう。
私はこの俳優をTV「三匹の侍」でブレークする以前、東映の時代劇映画の「百姓その1」のような端役時代から観てきたから感慨もひとしおなのである。
人気公演への出演が多いため、チケットが入手できずなかなか観られない秋山菜津子をじっくり観られたのも貴重。
岩松了の軽妙洒脱な演技と相変わらずのたくらんだような微笑が好きだ。
初演時(1977年、当時は西武劇場)もヒロインの一般公募が話題になったが、
今回ヒロインを演じた夏未エレナも舞台姿はちょっと木村佳乃にも似た
なかなかの美少女ぶりで、初々しいが堂々としている。今後が楽しみな
女優。
白井演出は、アングラ味も残しつつ、洗練されていてシンプルな感動を
もたらす。
中国の歴史的事件が字幕でおびただしく羅列投影される場面が印象に残った。
たまには、人気俳優のミーハーファンで埋まらない、こういう落ち着いた雰囲気の客席も良いものだ。
ka-e-lu
多少婦人
しもきた空間リバティ(東京都)
2009/10/02 (金) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★
大きな課題を残して・・・
酒井作品短編2作+渡辺作品1作の公演スタイルが定着。
3本立てというのは、往年の宝塚歌劇や歌舞伎の見どり狂言と
同じスタイルで、料金もリーズナブルに設定し、初心者にも観て
もらいやすい狙いがある。
見方を変えれば、それが逃げにもなるわけで、試演会に終わって
しまう危険もはらむ。
旗揚げから観続けてきて、そろそろ問題点も浮き彫りになってきた。
フライヤーにまったくコピーライトがなかったが、HPを見ない人もいるから
もう少し、内容をほのめかす文章がほしい。
今回作品だけに限れば★2つが妥当だと思ったが、キャスティングの妙や
役者の頑張りに1点プラスし、★3つとさせていただいた。
以下、長くなるのでネタバレで。
ネタバレBOX
酒井作品。第1話、第2話ともに面白いところはあるのだが、会話で魅せるレベルまで達していない。会話劇のコメディーならもっと面白い劇団はたくさんある。もう少しひねりや、起承転結の「結」にパンチがないと消化不良気味で客の心は掴めない。酒井氏は前回、1本立てのミニ企画公演でも、その部分は解消されていなかった。ここらで奮起を促したい。
第1話は話の展開が平凡すぎた。市野々はる果の母親の実在感が良かった。
第2話のスタイルは三谷幸喜の「12人の優しい日本人」を想起させるが、
そういう秀作があるだけに、論点が転がっていく面白みがもうひとつ足りない。もっと面白いのかと期待したのだが。細かい点では、ボイスレコーダーの前に役者が後ろ向きに立つが、後ろ向きの必然性を感じない。近頃の小劇場芝居ではなおざりにされているかもしれないが、芝居ではなるべく役者が客にお尻を向けないという暗黙のマナーがあるのだ。正面を向き、一歩前に出る演出でも支障なかったと思う。
渡辺作品に関しては、彼はこういう作り方が大好きな人。
ただ、自分のアイディアや演出を本人が楽しんでいる感が強く、
客への説得力が乏しい。
HPでの公演情報の作品解説も難解過ぎると思った。
冒頭の渡辺氏のナレーションは滑舌のせいか音声が不明瞭で、内容も不要に感じた。
「ことば遊び」の関係からか、登場人物の役名の付け方が不自然で
特に夫の「鯉雄(こいお)」というのが耳慣れない名前だけに、ガネーシャの
ナレーションに出てきたときも「人名なのか」意味がすぐにわからなかった。
パンフレットを読んでいる人ばかりとは限らないので一考されたし。
全体を通して今回、一番印象に残った役者は村上俊哉。多面性に期待が持てる。
ひゃくねん~『夢十夜』断章~
舞活道 自由童子
池袋GEKIBA(東京都)
2009/09/18 (金) ~ 2009/09/23 (水)公演終了
満足度★★★
のぞきからくりのようで猥雑な楽しさ
初見で初日観劇でした。
観劇日は、狭い空間ながら
すし詰め状態ではなく、ゆったり観劇できた。
のぞきからくりを見るような楽しさがある芝居だった。
見世物小屋のような猥雑さもあり、良い意味で
B級映画のような感じの作品だと思った。
広告をとってカラーパンフレットを制作した努力は
評価するが、配役が載ってないのは不満。
扮装しているとわかりにくい役もあり、一般的には無名の
俳優も出ている。小劇場に馴染みのない客もいると思うから、
個々のプロフィールを載せるなら、配役表もあったほうが親切
だと思う。
ネタバレBOX
比較的原作に忠実で、映像化よりも舞台化が難しいと思われる
作品にチャレンジした努力を買いたい。
劇中の終盤、女が男に100年ごとに出会っているようなことを言うが、
劇を見ているだけでは原作とは違い、神代や、鎌倉時代の感じに
は見えないので100年ごとという意味が伝わらなかった。
夢の中の話なのでかまわないと言えば、そうなのだが。
のぞきからくりと言ったが、会場が狭いので、登場人物が多い場面は
ドタバタ動いて見える難点もはらんでいる。
紗幕を使い、“時の妖怪”のようなのが出てきて、狂言回しを勤めるが、
この不気味さが良かった。
俳優では古山憲太郎に存在感があり、男としての色気もあり、
魅力ある俳優だと思った。
男3人の友人の中で、紅一点で男役を演じた深月要。
男優に混じってもさほど違和感がなく見えたのはお手柄。
実年齢はまだ18歳だそうだが、芸歴が長いせいか、宝塚の男役で脇の
芝居のうまい若手クラスのレベルにはなっている。
1人何役か演じているが、見世物芸人役の野原剛の「蛇になる」と言う
いかにも人を食ったような演技が面白かった。
創設メンバーの一人の逢川じゅんは殺陣の多い時代劇でよく見る女優。
今後、この劇団がどんな作品を取り上げるか注目したい。
現在はチープ感が漂うが、今後もっと洗練されていけば、と思う。
料金的には、劇団の知名度が低く、この規模の劇場の公演として
はもう少し安く設定してもよかったのではと思いました。
余談ながら、終演後、古山氏は観に来た自分のファンに
合宿で買ってきた足柄土産を配布していた。ブログで予告していたそうだ。
「自分は無名俳優」と宣言する謙虚な姿勢で、積極的に客演し、宣伝し、
そこでまたファン層を広げていこうとする努力にも敬服する。
自分の知る限りではそこまで徹底する小劇場俳優は少ないと思う。
青木さん家の奥さん
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/09/11 (金) ~ 2009/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
若手の座組みで成功した名作
先週に続き、青年団・南河内万歳一座のコラボ企画による
青年団版「青木さん家の奥さん」を観てきました。
南河内万歳一座の代表作でありながら、これまで批評しか
読んだことがなく、ずっと観たいと思い続けていた作品。
“静かな「青木さん家の奥さん」”と銘打ったが、じゅうぶん
賑やかだった。主力が海外公演中ということもあり、
若手による公演となったが、それが功を奏してテンポ良く
楽しめる舞台となった。
みんな役になりきって、実に楽しそうにやっている。
しかし、このように演出や俳優によっていろんな楽しみ方ができる作品を
書いた内藤さんはスゴイなぁと改めて感心した。
本家のほうも観てみたくなった。
青年団はやや観客層の年齢が高いので、ここのような感想欄
のカキコミが少ないのだろうか。
ネタバレBOX
流れだけ観ていると、店員の新参者いじめのようだが
どうも違うようだ。
ケータイが登場しており、話は現代の設定である。
だとすると、昭和30年代のように酒屋の配達が忙しいはずはないのだ。
いまどき何人も店員がいて、配達区域の線引きで揉めるのも
腑に落ちない。
事実、店員は配達には出かけていないうえ、店にも出ていない様子だ。
この三河屋の店員たちのやりとりすべてが妄想による“ごっこ”なのか。
終盤に「にせの青木さん家の奥さん」が青木さんの家の伝言を伝えにくる
のだが、青木さんという家に超美人の奥さんがいるということ自体
架空の話らしい。
「ツインタワー双子美人姉妹」も実在の白川姉妹から店員たちが勝手にデッチ上げた偶像なのだろう。
そもそも大勢の店員たちも実は偽者なのかもしれない、と思う。
そんな謎解きのような楽しさがある。
ここ数年、私は実在の酒屋さんを見てきたが、確かに最近の店員さん(経営者家族)はヒマそうで話好き。おばあさんと一緒に深夜まで店先のTVでずっと時代劇を観ているという変わった中学生の孫娘もいたっけ(笑)。
白川姉妹やにせの青木さん家の奥さんがビールを勝手に飲んでしまう
シーンがあるが、昭和期はどこの酒屋も江戸時代同様、一杯いくら
の有料で店内でも酒を飲ませており、常連客など勝手についで飲んでしまう
光景があった。ときには飲み逃げ客もいたものだ。
そういうことを知っていてこの芝居を観ると、この場面がさほど荒唐無稽な
ドタバタには見えない。
ひとつ気になったのは「青木さん家にはインターホンがなく呼び鈴」と台詞で
言ってるのに、擬音は「ピンポーン♪」とインターホンにしている。
呼び鈴なら「チリン」だし、せめて旧式のブザー音くらいでないと可笑しい。
細かいことだが、妄想話にしてもこういうツジツマは合わせてほしいと
思った。
S高原から
南河内万歳一座
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/09/02 (水) ~ 2009/09/08 (火)公演終了
満足度★★★★
なるほど、こうなりますか
確かに「S高原から」です。でもあたりまえのサナトリウムでないところが、南河内らしい!戯曲としての骨子はきっちり演じながら劇団としての個性を見せたところに好感が持てました。鴨鈴女さんの潔癖症らしい看護士が印象に残った(この人の田中真紀子役を見てみたい)。看護士の顔を引っ張って遊ぶ荒谷清水の医師がいたずらっ子のようで微笑ましかった。
悪趣味
柿喰う客
シアタートラム(東京都)
2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
乱痴気に見るサービス精神
本編に続いて乱痴気を観劇した。
本編の席が最前列だったため、舞台全体を観ようと
当日は後方の席に座った。
本編を一度観てストーリーは理解している
分、役者の演技に集中できた。
趣旨はまったく異なるが、これほど配役が違うと、
宝塚の新人公演を観る気分に似ている。
役が変わるとまったく違う一面を見せる人もいて、
これはこれで楽しい。
Wキャストのようでもあり、役者にも勉強になり、
ファンサービスにもなっている。
ネタバレBOX
アフタートークといい、この乱痴気といい、
「開かれた劇団」を志向する中屋敷氏の
遊び心とサービス精神を感じる。
本編同様、配役表を終演後に配布しているのも
ミソ。
本編とは演じる俳優の性別を替えたため、役によっては
歌舞伎の「天地会」のように、似合わないところをあえて楽しむ面もある
一方、本役とはまったく異なる芝居で印象に残る役者もいる。
本編の相手役を入れ替えた配役も楽しい。
その中では、本編ではマネキン風の女子大生を演じている七味の村長に味があり、巧いと思った。
片桐は、ぼたん丸と同一人物とは思えぬ
チャーミングな女子大生ぶり。
この数カ月で片桐は小劇場女優として大きく成長したと思う。
本編より星の数が1つ多いのは、演技の差ではなく、
単純に楽しめた度合いの差によるものです。
悪趣味
柿喰う客
シアタートラム(東京都)
2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★
想像以上のテンションの高さ
初見の劇団です。
「飛び散る鮮血! こだまする悲鳴!」というコピーに
ホラーが苦手な私は少々恐れおののいていたが
開演直前の不気味な効果音に反して、内容は
怖くなかったのでひと安心。
いわゆる八百屋という傾斜舞台を使い、スピード感とケレン味
たっぷりな芝居は野田秀樹の夢の遊眠社や劇団新感線が
出てきたころの
鮮烈なパワーを思い起こさせる。
ディテールを気にせず、一緒にノッていかないと楽しめない
と言う点では、演劇よりもコンサートに近いかも。
若い観客が役者の一挙手一投足に大喜びしているのを
観て、最近の芝居はこれくらい弾けてないと若者の共感を得られない
のかなぁなどと思った次第。
いずれメジャーな俳優が中屋敷氏の芝居に出たいと言い始めるのだろう。
勢いがあって面白いことは面白いが、コテコテギャグの連発が
私には少々もたれる。
ネタバレBOX
中屋敷氏に言わせると「いろんなパロディーがてんこ盛り」だそう
で、ホラーに詳しいとより楽しめるのかもしれない。
深谷のカリナは何となく映画「バトルロワイヤル」の柴咲コウを連想し、
とにかく怖かった。村上のOLリスカが強烈な印象を残す。
コロの怪演ぶりにはゾッとするセクシーさがある。河童と教授の掛け合いが面白い。須貝をアテこんで「箱庭」を連発するのがご愛嬌。
ぼたん丸の子供らしい棒読み台詞の意図は私にはよくわからなかった。
子役の演技をデフォルメしているのだろうか。
帰宅後、近所の小学校の校内放送を聴いていて、口調がそっくりなので
逆に吹き出してしまったが。
村の青年団たちの中には滑舌が悪く、台詞が聞き取りにくい俳優が
何人かいたのが残念。
ドリアン・グレイの肖像
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2009/08/21 (金) ~ 2009/08/31 (月)公演終了
満足度★★
山本は適役だが、感動が薄い芝居
白皙の貴公子で悪の香りが漂う・・・という山本耕史のイメージに
寄りかかった企画という印象が拭えない。
自分が観たのは、平日のマチネーだが満席に近く、
ファンクラブ会員とおぼしき女性ファンの一団が目立つ。
自分の周囲の客を観察すると、他の俳優がセリフを言っていても、
山本の顔しか見ていない(笑)。
ほぼ想像通りの出来栄えで、新鮮な感動には程遠かった。
加納幸和の好演がなかったら、芝居としては救われなかった
気がする。
山本ファンなら必見という芝居かもしれないが。
ネタバレBOX
三谷幸喜が「オケピ」の初演に山本を起用した際に
「美青年でやさしそうだが、意外と悪の要素があるかも」
という点に気づいたそうだが、以来、山本耕史にはこういう
冷徹な役どころが回ってくるようになった。
そのせいか、彼がその抽斗で演じている感じで、
グレイも土方歳三と表情が大差なく、やたら眉間に皺を寄せ、
演技が一本調子で苦悩にも深みがなく、薄っぺらに見える。
個人的には、この人は虚像であってもやはり元の誠実な役柄の
ほうが似合うような気がするが、最近はどの役もくせのある人物
に見えてしまうのが難点だ(笑)。
立ち方や姿勢に、下方を向きがちないつもの彼の癖が
出て、貴族らしさが感じられないのが気になった。
ヘンリー卿の加納幸和の背筋がピーンとしているのと対照的だ。
宝塚でよく使う銀髪の鬘も彼には似合っていない。
グレイの人生に大きな影響を与える一輪の花、シビルとシビルに
似た女の2役に須藤温子。
初々しいが、いちおう別人に見えたのはお手柄か。
(観るのはTVの昼ドラ「熱血擬似家族」のヒロイン以来だが、
相変わらず榮倉奈々に似ている)。
画家のバジル役の伊達暁も、立ち居振る舞いや雰囲気が
この時代の人らしく見え、悪くない。
少人数の芝居だが、役者同士の演技に火花も発せず、
全体が濃密な緊迫感にも乏しい。
それを補うかのように、生ピアノ演奏や、回転を多用した
舞台転換が存在している。
寒々しい芝居だと思った。
「何をやっても耕ちゃんはステキ!」という
女性ファンの声がむなしく響く中、物足りない気持ちで
劇場を出た。
幻想歌舞劇「太王四神記 Ver.II」-新たなる王の旅立ち-
宝塚歌劇団
東京宝塚劇場(東京都)
2009/08/14 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
無難にまとめてある
ペ・ヨンジュン主演の本家版は観ていないのだが、宝塚的に
よくまとめてあるなという印象。韓流ファンの評価はどうだろう。
前回の花組版も観たのだが、おおまかには変わっていない印象。
どうせなら、花組版の続編を観てみたかったが、版権許可が
降りなかったのだろうか。
主演の柚希礼音は王というより颯爽とした若武者ぶりで、脇役は
専科のベテランが固めて、芝居全体に安定感がある。群舞も一糸
乱れずそろっている。
昨今は組ごとのカラーが昔ほどはっきりしていないが、この新生星組
も歌、ダンス、芝居すべてが平均してまずまずのレベルに保たれてい
るように思える。
かつてのどこぞのトップスターのように、歌声がしじゅうひっくり返り、
音程が狂っても平気のへいざなんてことがないのは良いことだ。
あくまで私の個人的感想だが、小池修一郎氏は宝塚でも海外作品
の翻案物を手がけることが多く、大作らしく仕上げる手腕はあるけれど、
宝塚版ならではの面白さとか、感動したという経験があまりない。
本作品にも同じ感想を持った。
その点、かつて歌劇団でも手腕を発揮した菊田一夫には遠く及ばない
感じがする。菊田氏は、宝塚ファンを喜ばせ、商業演劇としても面白く、
他の追髄を許さない巧さがあったが。
リチャード・イーター
劇団銀石
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/08/12 (水) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★
力作に挑んだのが見事、将来性を感じさせます
初見の劇団です。「銀石メソッド」に興味がありましたが、
中央に切り穴式の階段を設け、周囲に円を描くように配した
階段をうまく使った演出で、身障者の行進など、
オープニングから惹きつけられました。
「リチャード三世」は登場人物が多く、人物相関も複雑なので、
映画、舞台で何度か観てはいるものの、難解な印象があります。
主人公を2つの人格に分けたことなど大胆な脚本解釈、視覚的な面白さ
もあいまって、じゅうぶん楽しめました。
これを大劇場でミュージカル化しても魅力的ではと思いました。
作・演出の佐野木氏はまだ若く、将来性を感じさせる。
今後も注目したい劇団です。
ネタバレBOX
2面性を持つリチャードを2つの人格に分けたものの、
単純に善悪に分けなかった点は工夫が見られる半面、
ちょっと中途半端になったことも否めません。
衣裳とメークが白と黒であると、視覚的にはどうしても善悪でとらえてしまい
がちですから。
リチャードの貴族的な白のコスチュームに対し、イーターの衣裳が黒の前衛的ヨージ・ヤマモト風だが、黒のほうがラフすぎて何となく手抜きに見えてしまった。
PPTによれば、衣裳につけた花は奇形をも表しているそうですが、浅利ねこの衣裳はヒッピーを現代的に表現した90年代初頭のキャサリン・ハムネットのロンドン・ファッションをも思わせる。
花-平和、快楽、鉛-戦争、業を象徴し、全体のテーマの対比にも思えた。
花をつけている登場人物たちのユーモラスな演技は“道化”にも通じ、
難解なストーリーをわかりやすくする効果もあった。
細かい点では、短い衣裳にタイツをはいていない少年役(リヴァーズ?)は
女優が演じているだけに生々しく、気になった。タイツははいてほしい。
公演の前半「寒い」と書いた人が多く、空調の利きすぎに配慮したのか、私が観た日は冷房がきかず、蒸し風呂のような暑さで、2時間20分は集中しづらかった。
前半では2時間30分と記している人が多いので、公演の後半には10分短縮したのでしょうか。いずれにせよ、2時間以内に収める努力もしてほしかった。
この点を減点して星4つ。
しかしながら、佐野木氏は観客にどう見えるかということも配慮して書いている人のようなので、その点は自己満足だけで押していない分、好感が持てました。
俳優の演技が荒削りなのは若さゆえいたしかたないかと思います。
観劇料金設定も妥当な線。
最後に、制作の清水さま、観劇当日までメールできめ細かな対応をして
いただき、ありがとうございました。
ねずみの夜 【公演終了・御来場御礼】
殿様ランチ
サンモールスタジオ(東京都)
2009/07/29 (水) ~ 2009/08/04 (火)公演終了
満足度★★★★
アイデアに脱帽、楽しめました
面白い名前の劇団だなぁと思っていたので初見です
導入部の面白さ、構成の巧みさ、笑いの質、すべて自分好みで
満足しました。でも満点にしなかった理由はネタばれで。
自分の観た日はアフタートークがあり、安井順平氏がゲストで
観客の視点で質問したり、感想を述べてくれたので参考になりました。
終演後、舞台に上がっていわくつき?の舞台美術を見学してもOKと
いうことで、上演中気になっていた部分を確認できたこともうれしかった。
また、平日マチネーの割引・アフター企画など、観客サービスの点でも
配慮されていると思います。
時代劇ばかりやっている劇団ではないとのこと、作・演出の板垣さんは役者としても面白い人だと思ったので、今後も機会があれば観てみたい劇団です。
ネタバレBOX
近江屋での「竜馬暗殺事件」をモチーフに、劇中劇が繰り広げられる。
男優陣は演技がみな役として説得力があり、自然で良かった。
女優陣のなかでは、私はみなさんとは違い、ちぐさ役の柳さおりとなつ役の
南あゆ美の演技が、妙に肩に力が入って、やさぐれぶりがわざとらしく芝居がかって、「こうやれば、こう見えるでしょう」という自意識が垣間見えた。
また、2人の衣裳の色合いが同じ臙脂系で似ていたが、まったく違う色にしたほうがよかったのではと思う。
再現ドラマ仕立ての劇中劇といっても、実際の観客は有料で観ているわけだから、逃げに使ってほしくはない。演技はおろそかにできないはず。いったん劇に入り込むと、時代劇なのでやはり役者はそれなりに動くべきで、細かいことは気になるものだ。
まず、柳の刀の扱い方がぞんざいである。刀を受け取るときも、渡すときも
いかにも軽い小道具として扱い、緊張感がない。たとえ、なまくら刀でも持ち慣れない町人にとっては重いはず。動体視力にたけ、斬り合いにも目を配る女が刀に無関心に見えては困る。
なつの使うお国ことばがどこのものなのかはっきりしないが、自分には下手な関西弁のような妙なイントネーションが気になった。あえてなつだけ方言にする意図もわからず、効果的にも聞こえなかった。
アフタートークで板垣氏は「やばいという言い方をやめたように、現代語でもいちおう時代考証は気にして、当時使われなかった言い回しはしてないつもり」と語ったが、それなら「動体視力」や「精神的には」と町人が言うのは違和感がある。現代語は気にならなかったが、この2つには違和感を感じた。
また、非常口灯は劇中では消灯しても良かったのでは。やはり気になった。
全体では小笠原佳秀の竹三が出色だった。この時代の中で息をしている人物に見え、目配りのうまさ、終始、芝居に気を抜かず、時代劇は初というのに、身のこなしもきれいだ。これまでコント芝居や喜劇で注目していた俳優だが、二枚目の性格俳優としての可能性も感じた。
よくできた芝居だけに、かえって細かい点が気になり、自分の中ではマイナス点に加算されてしまう。したがって★4つ。
舞台美術見学で、「段差にご注意ください」の注意書きを発見し、板垣氏の見学者がそれでもつまづくのが妙にリアルでひとりクスッと笑えた。
フライヤーの「誰もが早く帰りたいと思った。面倒くさそうだから早く帰って寝たいと思った。」という部分は、劇の設定とは少し違うような。家に帰らず、そのまま、頬かむりして、お勤めに出て行ってしまうからだ。
Jam Coffesion
マグズサムズ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/06/24 (水) ~ 2009/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
カフェ芝居の魅力感じた
マグナムブラザーズ時代に一度観たきりで、劇団合体後の前回のシアターグリーンでの本公演は見逃したため、観に行った。
小空間を生かしたいわゆるカフェ芝居の雰囲気で楽しめる作品。
ふだん芝居を観ない人たちも会社帰りに映画を観る気分で軽く楽しめる
芝居が増えて欲しいと思っているので、こういう試みは歓迎したい。
ネタバレBOX
チラシに書いてあった内容で想像していたよりも自称真犯人たちの告白が通りいっぺんであまり面白くなかったのは残念。もっとわくわくさせて欲しかった。真犯人の殺人動機もあまり説得力がない。だが最後のドンデン返しはなかなか洒落ている。
俳優では、泉粧子がいかにも女性編集者らしいリアリティーを見せてくれる。
客演の安藤洋介(劇団TipTap)も印象に残る。
作者の猿渡氏の今後の成長にも期待したい。
優しいけど、でも、とても嫌いです。
多少婦人
BABACHOPシアター(東京都)
2009/07/04 (土) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★
好きな雰囲気だが・・・
渡辺企画公演に続く多少婦人番外の酒井企画公演。リアルでゆるーい雰囲気が
酒井らしく楽しめる。
それぞれに面白いキャラクターが描かれるが、ドラマとしてもうひとつ
物足りなさが残る。単純なストーリーなのに抜群に面白かった初期のころ
の東京サンシャインボーイズなどとつい比較してしまうからか。
國枝の存在感がやはりこのドラマを引き締めている。
酒井氏の今回のような小品を観ていると、青年団プロジェクトのこまばアゴラなどに芝居を掛けてもっと多くの人に観て知ってもらいたい気がしてくる。
アゴラ企画がテイストとして好みそうな作者だ。
エドガワ・エディ
イエローケーキ
新宿眼科画廊(東京都)
2009/05/15 (金) ~ 2009/05/21 (木)公演終了
満足度★
キワドイ内容にショック!
初見の劇団のギャラリー公演。平日の昼間ということで4,5人しかいない
客の中での緊迫感有る芝居。
「観たい」という人が2人もいたのは意外だが、「観てきた」のカキコミが
ないのはどうしたことだろう。
ネタバレBOX
チラシではなんだかAVみたいなストーリーだったが、
正直全く予想していなかった衝撃的な内容だった。
映像を多用した白昼夢のような世界。
隣に住んでいる人の情報などまるでわからないで暮らしている
現代人に起こりうるような密室でのコワイ話。
「多少婦人」の酒井雅史がキーパーソンとなる隣人を演じるが、
彼の持つ危うい雰囲気が役にぴったり。
最初女性を助けに入るところの芝居がリアルで、この緊迫感が
のちに起こる事件を引き立てていた。
それにしてもスカトロプレイをテーマに持ってくるとは・・・ショック!
芝居としてはギリギリの線である。
テーマの選択と表現方法に共感できないので☆1つ。
今回はいままでと違った作品ということなので
次回以降を観て劇団としての評価を決めたい。
千秋楽公演終わってのカキコミなのでネタバレはご容赦。
眠れぬ森のアリス
unit-IF
シアターブラッツ(東京都)
2009/07/18 (土) ~ 2009/07/20 (月)公演終了
満足度★★
演劇スタイルとしては面白い
アニメを思わせるチラシと、ストーリーの説明文に興味を持ち、
初見で行きました。
ダンスあり歌あり、ゲームもどきの展開ありで楽しめる要素はあった。
ただ、3つの一見脈絡のないストーリーが同時進行していくため、
話が詰め込まれてる感は強く、このあたり、作る側に立てば、
交通整理が難しいとは思う。
横浜市立大の劇研OBが創始した劇団だそうで、公演が年1回のペースということだが、今後、プロとしてどう存在感を示し、進んでいくのか注目したい。
ネタバレBOX
ティンカーベルがむくつけきオカマだったり、ピーターパンがターザンにしか見えなかったり、アキバのメイド風のドロシー(オズの魔法使い)だったり、キャラクターとしては面白い。女優陣は唐十郎のアングラでもいけそうなほど濃い芝居をする。夫婦のストーリーはもう少し面白くできそうだが、平板で期待はずれだった。
ピーターパン症候群、男女雇用機会均等法や派遣切り、不倫など現代の社会問題の風刺などを盛り込んでいるが、少々最後のオチがこじつけっぽく見えた。
俳優が出ずっぱりで、扮装のまま、背景や大道具、小道具を演じるというアイデアは思ったほど効果的には感じなかった。
プライベート・アイズ
劇団フライングステージ
OFF OFFシアター(東京都)
2009/07/09 (木) ~ 2009/07/20 (月)公演終了
満足度★★
小品の味わいがあるが・・・
初見の劇団です。ゲイの劇団ということは知っていましたが、予備知識がないため、最初に出てきた女装の俳優さんがニューハーフの役なのか、本物の女生徒役なのか判断がつかず、回想場面に行くまで少し混乱しました。
暗転が多く、2時間は少し長く感じました。小劇場の芝居の多くに感じることですが1時間40分くらいにまとめることもできる内容だと思います。
通路際に陣取った常連客らしき男性たちがいち早く大声で笑うため、ちょうどテレビのお笑い番組に入る笑い声みたいでとても気になりました。
笑いのポイントも少し違うというか、ゲイでないとそんなにピンと来ないようにも感じるだけに、近くで爆笑されると興をそがれてしまいます。
劇としては小品らしい味わいで悪くはありません。しかし、いつも客席がこんな雰囲気ではまた観たいという気にはなれないというところです。
ネタバレBOX
俳優の何人かは、何役か受け持つ。特に加藤裕と西田夏奈子が面白く、アングラ劇団の座長と女優で出てくる場面が出色で、いかにもそれらしく見え、楽しめた。遠藤祐生のいくつかの役も雰囲気があって巧い。加藤記生の美土里が小林聡美のような雰囲気で印象に残った。久米靖馬も最近観る機会が多い俳優の一人だが、彼は何の役でも「いかにも芝居をしています」という印象を受け、役として観て感情移入できないものを感じる。私だけだろうか。
整理番号付き自由席を予約し、1ケタの番号だったので番号順に入るのかと安心していたら、列の最後尾。席もやっと座れる補助席のような小さな丸椅子で、これで2時間鑑賞はキツカッタ。
舞台装置も凝ったものではないので、料金をもう少し低く設定してもよいのでは。当日料金では高すぎて観なかったと思う。
ジプシー
ゲキバカ
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/07/11 (土) ~ 2009/07/20 (月)公演終了
満足度★★★
非日常の楽しさがある
「コーヒー牛乳」の評判は以前から聞いていたが、今回初体験。
「ジプシー」のチラシのイメージから想像していたのとは違う
内容だったが、非日常の芝居の世界をじゅうぶん楽しめ、役者もパワー全開でがんばっている様子。次回から劇団名を改名するそうだが、新生スタートにも
期待したい。以下、ネタばれで。
ネタバレBOX
劇中劇をはさむなどシェークスピアの世界らしさが出ており、自分の好みの題材だった。この劇団初見のため、従来の作品がどんなものか知らず、自分としてはこういう中世を主にした芝居もなかなかよいなあと思って観ていた。
後半、魔女裁判とシンデレラをミックスしたような話が出てくるが、このあたり賛否評価が分かれるところか。呪われた運命の娘、ブスコーの鈴木ハルニのメークがあまりにどぎつく本当にビックリした。醜悪グロテスクな容貌の娘をさんざんにいたぶるシーンがやりすぎの感がある。しかもお笑いを意識したようないじめ方なので正視するのが辛いほど。もう少し、普通の容貌にしてもよかったのでは。これでは、醜い異形の者はいじめられて当然というような解釈に見えて不快さが残る。
しかも王子に見捨てられ、火刑に処せられてしまうのだ。シェークスピアの娘が焼死したというエピソードとしっかりつながるわけでもない点に疑問も残る。
作劇能力はある作家のようなので、今後、改作してぜひ、また再演してほしいと思う。