そこに道理など、いりませぬ
THE☆偏差値
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/08/03 (火) ~ 2010/08/10 (火)公演終了
満足度★★
やや難解だが想像力をくすぐる!
さすが偏差値の高い人達の作っただけある難解な芝居。舞台上に1本のロープがあり、ひとりの男が縛られて倒れている。あたかも不条理演劇のような舞台設定で興味をそそる。
象徴的なシーンや象徴的な言葉が飛び交い想像力をかきたてる。魅力的なところもたくさんあったが、全体としては残念ながら私の頭脳では理解しづらい作品だった。
あらためて当パンのタイトルを見て気がついた。「そこに道理(ワケ)など、いりませぬ。」・・・そうか、頭で考えてはいけなかっったか。もっと感性でこの芝居を観ればよかったのか。
ノクターンだった猫
ニットキャップシアター
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/08/06 (金) ~ 2010/08/09 (月)公演終了
満足度★★★★
多重構造の面白さ
アゴラ劇場を縦横無尽に使い、ストーリー構成も縦横無尽、とても象徴的で面白い作品でした。ごまのはえさん、ご結婚おめでとうございます。以下はネタバレで。
パーティーが始まる
TOKYO PLAYERS COLLECTION
王子小劇場(東京都)
2010/08/03 (火) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★
甘酸っぱい自伝的作品。
上野友之の青春グラフィティと言った作品。 大半の芸術家やスポーツ選手が女にもてたいという思いからその道を目指している。しかし、売り出し中の演出家がそのことを自ら暴露するような作品を作ることはなかなかない。
競泳水着にしてもTOKYO PLAYERS COLLECTIONにしても見事なまでにかわいい女の子を集めている。今回も「綺麗でなんとなくエロい美女」などという登場人物までいる。
そういったことだけを表面的に見ると、あざといとか、目立ちたがりというイメージになるが、しかし不思議なことに上野友之が作る芝居は繊細でどこまでも美しいのだ。今回も、むしろ全体に抑えめの演出になっている。そして渡邊とかげがものすごくいい。
それでもちょっと私には甘酸っぱすぎた。
しかし、競泳水着フアン、上野友之フアンの方、この芝居は見逃せないぞ。
Hit Hit ヘルメットスマイル
創像工房 in front of.
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/08/05 (木) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★
シアターグリーン学生芸術祭、第一弾!
通常私は芝居が終わると演出家や顔見知りの役者に挨拶をして帰るのだが、とてもそんな気にならなかった。この芝居に叩きのめされたのである。
作風としてはやはりゴジゲン風と言っていいだろう。一見、コメディのように見えるがその実、奥には深い哀しみが潜んでいるというのがゴジゲンの作り。ところが今回の創像工房、前半コメディタッチではあるが、笑える部分は少ない。(これは初日の固さがあったかもしれない。)そして、ゴジゲンの芝居なら2時間のうち最後の10分で感情を爆発させるであろうシーンが、芝居の半分以上占める。
全ての役者が泣きわめき、バットを振り回し、感情をMAXにする。途中から客席は笑い声ひとつ起こらない。そういったシーンが延々続くのだ。作劇上のテクニックから言えばありえない作りだ。それにも関わらず、私は胸を締め付けられた。
若いからこそ出来る芝居、若くなくては出来ない芝居、言ってしまえばそれだけだが、実は私が創像工房に求めていたのはそういう芝居だったのだ。
たとえて言えば、若いピッチャーで、球種も少なくコントロールの悪いピッチャーが160キロのストレートを投げ続けている。フォアボールや死球の山で、どんどん自滅していっている。しかし、それでもかたくなに160キロのストレートを投げ続けている若いピッチャーがいたとしたら、それは逆に感動してしまうことだろう。今日の芝居はわかりやすくいえばそういう芝居だ。
自称女優
江古田のガールズ
「劇」小劇場(東京都)
2010/08/04 (水) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
期待を大きく上回る面白さ!
強烈なフライヤーの女優顔、そして、「女優ですけれど・・・・何か。」という挑戦的ななコピー。そしてタイトルが「自称女優」、何から何までが刺激的だ。芝居を観る前からここまでわくわくさせられたのは久しぶりだ。
そして、観た舞台が期待をさらに上回るものだった。三軒茶屋ミワ演ずる女優鳳誉のふてぶてしさ。そして登場するその他の女優のかわいらしさ。この対比は見事だ。
そして物語はラスト近くから、どんどん盛り上がりどんでん返しの連続。そしてラストにしか登場しない登場人物が複数いるのだが、そのほんの少ししか出ない(しかし重要な役)を演ずる俳優がまたうまく、魅力的な役者を贅沢に使っているなあと感心。
くどさ、あくの強さはあるものの、それらも全部劇団の持ち味。そういったことを差し引いても(いやそういったことはこの芝居では全てプラスなのだが)面白くて楽しめる。日大芸術学部出の劇団とのこと。あらためて日芸の底力を感じた。初日ゆえ若干どたばたした感じはある。また役者で台詞の噛みが目立った。それにも関わらず、面白くてたまらなかったと白状しよう。明日から、もっと凄い作品になるだろう。これはもう一度観に行かなくてはいけないな。
魔法の公式
とくお組
赤坂RED/THEATER(東京都)
2010/07/29 (木) ~ 2010/08/04 (水)公演終了
満足度★★★★
映像とのコラボが面白い。
劇団員6人のうち5人が出演して、もう一人は映像出演。客演なしの劇団員だけの公演というのが好感が持てた。
達者な役者によるウェルメイドな作品。ほんわりと暖かいものが伝わってきたのは役者達の魅力か。
物語は荒唐無稽なコメディだが、映像をうまく使い、リアリティを感じさせてくれた。
きみどりさん
東京ネジ
OFF OFFシアター(東京都)
2010/07/28 (水) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★★
屈折した家族の物語
東京ネジ初見。どこにもありえないような話をあたかもどこの家にでもありうる話のように仕上げている。わけのわからない哀しい話でありながら、何故かとても懐かしくもある。そこら辺の作劇が見事。
役者が皆うまい。特に自由奔放に生きる次女を演じた佐々木なふみが見事、先生から父親になった小林至、長女の婚約者寺部智英のほわっとした演技がこの芝居を支えていた。
きみどりさんという奇妙な存在を加えながら家族というものを再認識させられる物語。終わった後、じわーっと響いてくる物語だ。
廃墟ブーム
サイバー∴サイコロジック
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/07/28 (水) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★
B級映画のマニアックな面白さ
さまざま面白い演出があったがそれはネタバレで。
魅力的な役者がいっぱいいて、面白い演出がたくさんあって、見どころ満載だが、作品としてのまとまりはというとクエスチョンが付く。企画公演ということで思いっきり遊んでみましたということか。B級映画のようにマニアックなフアンのための作品と考えると、なるほど、こういうのもありかと思える。
白井肉丸は相変わらず上手いのだけど、今回はどちらかというと普通の役。白井肉丸には白井肉丸にしか出来ない役をやってほしいと期待するのは贅沢か。栗原香がいい味を出している。こういうおどろおどろしい芝居の中で、無邪気でかわいらしい雰囲気の彼女が登場すると心が安らぐ。
以下ネタバレに続く。
ザ・キャラクター
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2010/06/20 (日) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
軽快で躍動感があり素晴らしい。
久々にかろやかな野田芝居を堪能した。夢の遊眠社時代のような若さを感じた。宮澤りえが抜群にいい。なんてすてきな声、しかもよく通る。後ろ向きでもクリアに聞こえる。そして圧倒的な存在感と美しさ、すごい女優になったものだ。
アンサンブルのメンバーの身体の動きと調和に感動。スケールアップして遊眠社が帰ってきたような感覚だ。
椿版『天保十二年のシェイクスピア』
椿組
花園神社(東京都)
2010/07/16 (金) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
井上ひさしフォーエバー!
劇中、「もしシェイクスピアがいなかったら」という歌が歌われる。しかし、その歌を聴きながら私は、「もし、井上ひさしがいなかったら」と思ってしまった。
この素晴らしい脚本、シェイクスピアが凄いというより、井上ひさしが凄い。そして今回椿組が素晴らしかったのは、井上ひさしの脚本の面白さを見事に演出に生かしていること。
本当に面白い芝居とはこういう芝居だと見せつけられたような気がする。文句なしに5つ星。
「根拠のない余裕」
月刊「根本宗子」
タイニイアリス(東京都)
2010/07/23 (金) ~ 2010/07/26 (月)公演終了
満足度★★★
駄目男と駄目女のラブストーリー
どうしようもない男の典型的二つのパターン(ヒモ&DV)が出てきて、それにも関わらずその男と別れられない女が出てくる。梨木智香の演じた、普通の子が駄目男を愛するがゆえに、段々普通でなくなっていく様子は胸打たれた。
屈折した形でしか確認しえない現代の愛の形を巧みに表現している。ただ、宣伝文句にある「女性のお客様がほくそ笑み、男性のお客様が悔し涙を流す芝居」というフレーズがとても素敵で、それを楽しみに観に行ったものだから、その点では物足りなかった。次回は是非そういう作品にしてほしい(笑)。
ただ、根本宗子の脚本力はさすがだと思った。演出ではオープニングの自転車のシーンが素敵だった。
エーデルワイス
feblaboプロデュース
エビス駅前バー(東京都)
2010/07/23 (金) ~ 2010/07/30 (金)公演終了
満足度★★★★
最高に贅沢な藝術!
演劇はありとあらゆる藝術の中で最高に贅沢な藝術と呼ばれる。それはまさにそこに役者がいるという贅沢さである。
その中でもこの恵比寿駅前バーは、さらに贅沢感が味わえる会場だ。なにしろ少し手を伸ばせば届くところであこがれの役者達が演技をしてくれているのである。
ただいつもはこの劇場、超満員で、贅沢感も味わえるが居心地の悪さもあった。ところが今回はステージ数が多いせいか、席に余裕がある。こんな少人数の観客のために、これだけ豪華なメンバーが少しも手を抜かず、最高の演技を披露してくれる。まるで貴族にでもなった気分だ。チケット代1万円くらいの価値がある。
三瓶大介、石井舞、筧晋之介、西尾友樹、平塚正信、堀雄貴、萱怜子、いずれも小劇場を代表する人気役者だ。その役者たちの息づかいから、匂いまで感じられるのだ。そして、終演後、少し残っていれば話も出来る。あらためて、恵比寿駅前バーは最高の劇空間だと思った。
反重力エンピツ(再演)
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2010/07/23 (金) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★★
名作の再演はやはり名作!
演出家が急病で、急遽看板役者の福原冠が演出に回り、演目を変えて臨んだのが今回の公演。初日の幕を開けるまでの苦労はいかばかりか。
ただ、そういう劇団に対する同情の念をおいて、純粋に一公演として見て、とても楽しめた。この作品は国道58号戦線が昨年、同じくサンモールスタジオで上演して、高い評価を得た、劇団の代表作の再演。
「この世で一番重いものは何だと思う?」この問いかけ自体がとても劇的。そしてその答えのひとつとして「反重力エンピツ」が登場する。ひとつひとつの言葉のイメージが斬新で美しい。
伊神忠聡とハマカワフミエの二人のシーンが何度見てもとても素敵だ。
暖かそうな場所 【ご来場ありがとうございました。次回は12月クリスマス】
ろりえ
nakano f(東京都)
2010/07/22 (木) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
ろりえが新境地を見事に開拓!
今まではどちらかというと派手な演出で大向こうをうならせてきたろりえが今回は狭い会場で少人数でどんな作品を見せてくれるのかと楽しみにしていたが、今までの作品とは全然違うテイストで、それでも期待を裏切らない素晴らしい舞台を作り上げた。さすが奥山雄太、やはり只者ではない。
後はねたばれに書くが、ひとつだけ、ろりえの芝居は観客に身の安全を保証していない。と言うと大げさで実際に危害を加えられるわけではないが、観客が安全地帯にいてのほほんと芝居を観ることを奥山は許さないのだ。今回もその姿勢は変わりない。体調管理をしっかりとし、万全の心構えをして観劇していただきたい。
チケットは残り少ないそうだが、ろりえフアンはもちろんのこと、まだろりえを観たことが無い人にも是非観てもらいたい公演だ。
『「「「愛」を使う」と言う」とつぶやく』
コマツ企画
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/07/21 (水) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★★★★
奥が深い!
息をつかせないという言葉があるが、川島潤哉の役者としてのエネルギーと淀みない言葉にあっという間に時間が過ぎた。
物語はコメディではない。川島潤哉の人間的魅力と、独特の台詞術で、前半は笑いの渦だが、物語の構造が見えてくると次第に笑いが減り、観客はたったひとりの川島潤哉に圧倒されてしまう。
今回、役者として卓越しているだけでなく、作家としてもなかなかのものを感じさせてくれた。作品の構造が実に深い。構成が卓越している。作家としても今後が楽しみだ。
葬式クラス【満員御礼で終了!ありがとうございました!】
エビス駅前バープロデュース
エビス駅前バー(東京都)
2010/07/16 (金) ~ 2010/07/20 (火)公演終了
満足度★★★★
演劇ってなんて贅沢。
こんなに狭い空間に、こんなに詰め込まれて、それでいて最高の贅沢感を味わえる。演劇って不思議だ。
米内山陽子のしゃれた脚本、広瀬格の斬新な演出、そして豪華役者陣の競演。全てが素敵だった。
バーテンダーを演じたホチキスの山崎雅志がかっこよかった。島田雅之が駄目男を、鈴木麻美が駄目女を見事に演じ、新境地を開いた。
座席が狭く、お尻が痛かったことだけがマイナス。
あそび
山田ジャパン
サンモールスタジオ(東京都)
2010/07/14 (水) ~ 2010/07/20 (火)公演終了
満足度★★★★
切ないコメディ
今回の山田ジャパンはとても切ない素敵な物語だった。山田ジャパンはもちろんコメディ劇団で、今回も全編笑わせられたが、主役耕平に最初のシーンから感情移入したため、何度も胸をしめつけられた。
今回私が観た回だけ、轟モータースの社長役を主宰の山田能龍が演じた。一日だけの出演とは思えない好演だった。この回に来れたことは幸運だったかもしれない。
「あそび」というユニークなタイトルだが、今回このタイトルに込められた意味は深い。あらためてあそびの大切さを考えさせられた作品だった。
ザ・ベストマンションシリーズVol.3F
コメディユニット磯川家
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2010/07/14 (水) ~ 2010/07/18 (日)公演終了
満足度★★★★
祝東京進出!
大阪で人気の若手劇団が東京に進出し、初めての公演とのこと。新作一挙に三本というだけでもこの劇団のやる気と才能が感じられる。
時間の都合でHELPしか観られなかった。三本とも作品のタッチが違うそうで、話を聞くと後二本も面白そうだと悔しい気持ちでいっぱい。
ただ、私の観た「HELP」、十分面白かった。テーマとか堅苦しいことは考えないでともかく笑ってくださいという姿勢が大阪出身らしくて潔い。東京で旋風を巻き起こすかもしれない。
イカロスのかけら
NICK-PRODUCE
シアター711(東京都)
2010/07/13 (火) ~ 2010/07/19 (月)公演終了
満足度★★★★
ピアノとチェロの生演奏に感激!
中谷路子のピアノと山岡真弓のチェロがとても素敵だ。チェロの優雅な音、そしてピアノと実に合う。なんて素敵なんだ。この生演奏を聴けただけでも来たかいがあるというもの。
NICK-PRODUCEは毎回、生演奏と芝居とのコラボをやっているが、今回が一番フィットしたのではないだろうか?今回はまさにピアノとチェロのためにある芝居のようだった。
そして、今回映像がとても効果的だった。特に舞台上で映して、それがすぐに背景に映し出されるという演出は見事だった。
ラクダ
範宙遊泳
王子小劇場(東京都)
2010/07/14 (水) ~ 2010/07/18 (日)公演終了
満足度★★★
きらめく才能。
範宙遊泳、桜美林大学出身の山本卓卓の劇団だ。その演劇的センスで、同世代の中で頭ひとつ抜けている。面白い芝居を作る劇団はたくさんある。しかし新しい時代を切り開くきらめきを感じさせる劇団は少ない。範宙遊泳はその数少ないきらめきを感じさせる劇団である。
今回の作品でも随所でそれを感じた。かっこいい始まり方、斬新な場面転換、ラストのはじけっぷり。さすがだ。
ただ、同時に初日ゆえのちぐはぐ感もあった。山本卓卓のステージはリズム感と体のキレが命だ。そこが少しぎこちなかった。これからますます良くなるだろう。出来ればもう一度観たいのだが時間が・・・。