音のいない世界で
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2012/12/23 (日) ~ 2013/01/20 (日)公演終了
満足度★★★
静かで優しいファンタジーの習作(?)
大人が優しく作った親子のためのファンタジー。
演出、ミュージカル、ダンス、など各方面で座長を務めるような
プロの人たちが、改めて個人として集まって、レベルの高い
エチュードを繰り返してできあがったような印象です。
貧しくても仲良く暮らしていた夫婦の家から、音と夫婦の人形の
片方だけ盗まれてしまう冒頭は、実に切なくて、哀しくて。
なくした何かを取り戻そうとする2人が別々に旅をして
少しずつ元の世界を取り戻していく様子を、静かにゆっくりと
描いている、心やさしい物語でした。
そして、衣装がすてきですね。
また、劇場入り口にも小屋の様な装飾があって、童話の様な本作に
ぴったり、気が効いてるな。と思ったら、それは、
小劇場から中劇場へのエスカレーターの工事中の囲いでした。^^;)
長塚さんの作品は(特に渡英前の)「暗く重く抽象的観念的で難解」
という印象でしたが、帰国してからの最近の作品は、
肩の力が抜けて優しく明るい穏やかな要素「も」加わったように感じます。
飛龍伝
ゴーチ・ブラザーズ
本多劇場(東京都)
2013/01/23 (水) ~ 2013/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
中屋敷法仁さんが演出!
すでに伝説と化している演目ですが、これまで、
つかさん由来のスタッフ・キャストで演じられたものを観てきましたが、
今回は、柿喰う客の主宰、中屋敷法仁さんが演出するというので鑑賞。
印象は、タイトに刈り込まれているように感じました。
玉置玲央、黒木華のペアだけでなく、他のメンバーも若いのもイイ。
新鮮でフレッシュでした!
そして、もちろん、変わらずにパワフルでした。
このエネルギーは、直接的には役者さんが発したものではありますが、
それも脚本の持つ根本的な『パワー』によるものだと改めて実感しました。
ZIPANG PUNK ~五右衛門ロックⅢ
劇団☆新感線
東急シアターオーブ(東京都)
2012/12/19 (水) ~ 2013/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
「歌って踊って殺陣アクションをこなす、女盗賊役」の蒼井優ちゃん推し!
さすが新感線!鉄板のエンターテインメントは五右衛門第3弾!!
歌って踊って、殺陣アクション、足掛け3時間40分(休憩20分)の超大作。
年末年始にふさわしく暗さ深刻さがなく、たっぷり楽しみました。
普段、演劇やミュージカルを観ることがない人には、特に是非お勧めしたい!!
絶対楽しめます!
今回は特に、同じスクリーンや床面、壁面に映像を投影して
城壁や街並みなど、景色を自在に変える工夫に関心しました。
さて、役者さんでは、私はとにかく
「歌って踊って殺陣アクションをこなす、女盗賊役」の蒼井優ちゃん!
実に楽しそうに、はじけて演じられていて驚きました。
これまでもっと、おっとりおとなしめの印象しかなかったので、
最初出てきても、彼女だと気づかなかったくらいです。
ほんとに楽しそうなので、観ているこちらも楽しくなっちゃって釘付け。
もうオペラグラスでずっと観てました。
他には、明智探偵方の三浦春馬さんの名探偵演技?と小林少年
ならぬ少女と少女探偵団の賑やかさ、
高橋由美子さんのきっちりしたミュージカル歌唱と独特のボケ演技、
村井國夫さんの余裕の貫録と遊び具合、
麿赤兒さんの想像以上にちゃんとした秀吉演技と存在感、
今回は珍しく極端にぶっ飛んだりしたところがない真面目な粟根まことさん
など実に多彩。
これらの方々に比べれば、かなり力の抜けた超自然体にみえる古田新太さんや
変わらぬキャラの高田聖子さん、橋本じゅんさんらは少し控えめに映りました。
今回の五右衛門ロックはまだしも、そろそろこの「超時代劇ロックオペラ路線?」
も結構パターンになってきたようにも感じます。
アリス・イン・ワンダーランド
ホリプロ
青山劇場(東京都)
2012/11/17 (土) ~ 2012/12/07 (金)公演終了
満足度★★★★
大人のアリスは娘を追って不思議の国に迷い込んで…。濱田めぐみさんインパクト強!渡辺美里さんいまひとつ。
今更のコメントですみません。
女流作家アリスは仕事のスランプ、離婚の危機、と問題を抱えて八方ふさがり。
ある夜、アリスはウサギを追いかけて出て行った娘を探しに、不思議な世界に迷い込んだ。
超有名な話をアレンジしたミュージカル版を、日本向けにさらにアレンジ。
ずらりそろったミュージカル畑の俳優さんたちを中心に、なんと、ミュージシャンの渡辺美里がミュージカル初出演。
<img alt="121124_170150_300" title="121124_170150_300" src="http://itoya-online.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2013/01/03/121124_170150_300.jpg" border="0" width=300 height=400 />
生活に追い詰められた大人のアリスの頭の中がそのまま擬人化されたような世界の中で、自分は本当はどうしたいのかを探る物語。
しかし、舞台は陽気で軽く楽しい。
特にアリス親衛隊4人組は、愛らしくて、本当に楽しい。
白ウサギの田代万里生さんは、他では見れなかった、
気が弱くてせっかちなキャラクターがすっかり身について、
白のナイト、石川禅さんも、これまた珍しいダメ男ぶりを
見事に演じてて良かった!
キャストの中では、ひときわインパクトが強かった
濱田めぐみさんがダントツでよかった! 存在感強し。
またアンサンブルのみなさんは、ダンスの振りが、ぴったり
と揃っていて、プロの仕事を見ました。
さて、初ミュージカル出演となる渡辺美里さんを避けて通れません。
出演決定を聞いたときは、もっと前面に出るイメージで、
例えば、悪~い女王役、不思議な国を強権で抑え込む独裁者、
のような役だと思ってたんですが、実際観てみると「女王様」が
現れるシーンの歌を数曲担当する1人の出演俳優という普通の
ポジションだったのでがっかり。
もっとガチで挑戦する、バーンと打ち出すようなスタンスかと
思っていましたが非常に残念でした。
作品自体はとっても良かったと思います。
バカのカベ~フランス風~
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2012/11/15 (木) ~ 2012/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
風間杜夫さん、加藤健一さん30年ぶりの共演に尽きる。西川浩幸さんの出番少なく風間さんとの絡みのみなのが残念!
今更のコメントで失礼します。
カトケン事務所お得意の典型的な、勘違いコメディ海外作品です。
何といってもつかこうへい事務所出身の風間杜夫さん、加藤健一さん
30年ぶりの共演に尽きます。
お二人ともさすがプロとしての安定した演技に、安心して目いっぱい
楽しみました。
新井康弘さん、加藤忍さんというカトケン出演常連の役者さんたち
も息がぴったりで素晴らしい。
唯一残念なのは、私の好きなキャラメルの西川浩幸さんの出番が
冒頭数分のみ、しかも風間さんとのからみしかなかったこと。
かなり期待してたので、次の機会こそは、カトケンさんとの真っ向勝負
を期待します!
こどもの一生
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2012/11/04 (日) ~ 2012/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
今更のコメントですみません。笑いが転じて恐怖となる瞬間がたまらない。
今更のコメントですみません。
孤島に集まった5人の男女はストレス障害治療のために「こども」に還る。
残酷な「こども」の社会が形成され、いじめと遊びから始まったちょっとした行動が、思わぬ展開を生み始めた。
笑いが転じて恐怖となる。
ゾッとする瞬間がたまらない。
芸達者そろいのメンバーで、中越典子さんのクオリティの高さはさすが。
さらにミュージカルで馴染み深い笹本玲奈さんのストレートでの演技もよかった。
山内圭哉さんはこういう「可笑しくて怖い」役はぴったりです。
可笑しかったあのフレーズが恐怖の象徴のようになる流れが凄い。
Heavenly Bento
ジェイ.クリップ
青山円形劇場(東京都)
2012/07/04 (水) ~ 2012/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
エンジニアのスピリットについて真摯なリスペクトに感動!
ソニー創始者、井深大と盛田昭夫のサクセスストーリー。
円形劇場中央に、大きなテーブルのようなステージ(4m×3m)があり、
ステージはスクリーンにもなっている。
劇場周囲の壁面にも大スクリーンが設置され、その時々でさまざまな
映像が映される。
ステージ席の周りには30脚椅子、机上には弁当箱。
弁当箱はタイトルの「ベントー」でもあり、機能的に整理されて箱にきれいに
収められた食材とご飯は、当時のソニー製品の特長、メイドインジャパンの
象徴である。
その観客には、ソニー社のユニフォームであるベージュのベストが
配られ、それを着ている様子は、まさにソニーの会議室でもあるように見える。
俳優は、JunKim、AlexanderSchroderの外国人2人。
この外国人による日本人の物語は、まさにエンジニアのスピリットについて
真摯なリスペクトに満ちた内容で、本当に感動しました。
映像の使い方なども工夫と創意に満ちていて、まさに革新的で、この物語にふさわしい。
素晴らしい作品でした。
七夕の夜、観逃さなくて本当によかった!
なにわバタフライN.V
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2012/07/11 (水) ~ 2012/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
ひとり芝居であることを忘れる戸田さんの演技が凄い。
ミヤコ蝶々の自伝「女ひとり」をモチーフに三谷幸喜が作演出した、
戸田恵子の一人芝居「なにわバタフライ」のニューヴァージョン(N.V)の再演です。
その時の会場シアタートラムは小さくて本当に目の前の演技でしたが、今回のPARCO劇場はとても広い。
それでも、戸田さんのあの語り口と親しみがあってあったかい演技は、身近に感じます。
普通、一人芝居というと、その名の通り、一人ですべてを演じることに、観る者が意識するものですが、
戸田さんは、話している相手の存在、相手のセリフ、相手のしぐさまでも、自然に感じさせるほどで、
その演技は実に見事です。
しかも、軽やかで、明るくて、楽しい!前向き!
「一人芝居」どうこうは忘れて、自然と引き込まれて、舞台上の女優の半生に一喜一憂し、感動しました。
もっと多くの人に観て欲しい!
Chanson de 越路吹雪 ラストダンス
東宝
シアタークリエ(東京都)
2012/12/04 (火) ~ 2012/12/19 (水)公演終了
満足度★★★★★
越路吹雪の半生を岩田時子との友情を軸に、戦後演劇業界の発展を背景に描く、7人で演じるミュージカル。柳家花緑さん、すごい!
越路吹雪の半生を岩田時子との友情を軸に、戦後演劇業界の発展を背景に描く、7人で演じるミュージカル。
観て笑って少し泣けて。瀬奈じゅんさんの越路吹雪は常に若く美しく明るい。
しかし、心の葛藤や、苦悩、どろどろとした内面などはほとんど描かないので、
楽しく観れるけれど、終わってみると、上辺を駆け足でなぞったような感じを受ける。
それはそれでいいのかもしれないけれど、やはり少し物足らない。それだけではないはず。
宝塚、日劇、東宝ミュージカルやそれら関係者などが実名で登場するのがとても興味深い。
特に、菊田一夫先生なんか、越路に毎回食事をすっぽかされるコメディレリーフになっちゃってて、面白い。
それにしても、この菊田先生を演じる柳家花緑さんはすごい!
6人だけ、しかも豪華顔合わせ、ミュージカルが得意な俳優さんばかりの中では、突出して異色の配役。
この中で堂々と歌って踊って笑いもとって、役をこなしている花緑さんは、ほんとにすごいと思う。
(出演作『宝塚BOYS』は観ました。)
6人の俳優さんたちのチームワークの良さ、いい雰囲気が伝わってくる温かい舞台でした。
【蛇足?】別所哲也さんがパンフの対談で、映画「ULTRAMAN」の
ウルトラマン役、別所さんと、ベムラー(敵怪獣)役の大澄賢也さんが共演、
と言っていて特撮マニアには嬉しいひとこと。
ポリグラフ
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/28 (金)公演終了
満足度★★★★★
吹越さんはきっとシャイな人なのだろう。
実にカッコよく美しく、音楽もムーディーで、ストーリー展開も凝っていて面白く、かといって難解すぎずバランスよく楽しめました。
未解決殺人事件、捜査に使われたポリグラフ(嘘発見器)、ベルリンの壁崩壊・・・
その担当科学捜査官、当時の容疑者、隣りに住む事件の映画化作品の主演女優の三角関係。
吹越さんの演出、出演による三人芝居で、
テーブルといす、電気スタンド、本立てと壁というシンプルな舞台。
これらを演者が移動させながら話が進む。
あるときは回り舞台のように二人の人力で回転させたり、
動かされているテーブル上で俳優が歩いたりする。
そして、この壁にビデオの生画像(舞台上の生撮影映像)を投映させたり、
影絵のように使ったり、裸に筋肉・内臓を投映したり、
さまざまな表現方法を駆使していて、実に面白い。
キャロリング
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2012/12/03 (月) ~ 2012/12/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
今、旬!原作は『図書館戦争』有川浩のキャラメル劇団員当て書き新作小説!
原作は『図書館戦争』有川浩のキャラメル劇団員当て書き新作小説!
倒産により閉鎖寸前の学童保育・子供服会社に勤める元婚約者同士の二人と
離婚寸前の夫婦と息子を中心に、やはり倒産寸前の整骨院、闇金融など
周囲の人々のクリスマスまでの物語。
SFでもない、ファンタジーでもない、現実社会の身近な話で、
しかも、安易なハッピーエンドに落とさない。
一見してキャラメルっぽくないような話でありながら、
笑って泣けるクリスマスの青年と少年の成長物語は、
まぎれもなくキャラメルらしい感動の一編になっている。
これまではコメディレリーフ担当の脇役が多かった前田綾を 純粋なヒロインに据えて、
また、ヒールやクールな役が多い大内厚雄を、ひ弱なダメ夫を、
主役級で好青年役の多い畑中智行、多田直人を闇金のやくざを 演じるなど、
これまでにない配役が新鮮でとても良かった!
劇団の良いカラーを伸ばしつつ、新たな挑戦を続ける(特に震災以降)劇団の姿勢に感心しきりです。
祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~【KERAバージョン】
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2012/12/09 (日) ~ 2012/12/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
残酷なファンタジー。
豪華メインキャスト19人、足掛け4時間(10分休憩2回)の大作です。
大人の童話と言うだけあって、しかもケラ作品なので、もちろん毒もあり。
後味にざらついたものが残るような苦味も。
私は単純でなんでも入れ込むほうなので、
(初舞台の)夏帆ちゃんの背中にドキッとして、淡くはかない恋愛に感情移入。
それだけにその行く末が、言葉でしか語られないにもかかわらず、
…とても落ち込んでしまった。(^^;)>(恥)
KERA作品ならではの、凝った『映像』の利用が素晴らしく、
また、個性的な生演奏も効果的。
これは何としても、蜷川演出ヴァージョンを、絶対なんとかして観なければ!!
月とスイートスポット
ヨーロッパ企画
本多劇場(東京都)
2012/12/05 (水) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
バタバタと笑わせながら、結局切ないSFヤクザもの。
「自分が輝いていた昔が見れる」という新種のドラッグ「スイートスポット」。
中国マフィアに追われ、瀕死の状態たチンピラは、死を目前にして
自らその薬を使って、一番良かった昔を見ようとしたが、
実際には幻覚が見えるのではなくて……
私には、SFっぽい特殊な環境における淡々としたゆる~い日常…
というイメージがあるヨーロッパ企画ですが、今回は、
ヤクザ+ドラッグ+タイムスリップ=ペーソス?ノスタルジー?
ドタバタやセリフの繰り返しが可笑しくて、それに加えてSF的展開も面白い。
クライマックスでは、さらにエスカレートしたり、いきなりドラえもんのような
ベタな”人物”と設定までもが登場し、笑いに拍車をかける。
バタバタと笑わせながら、結局切なくて、なかなか良くできた作品だったと思う。
しかし、もう少し長く、この作品世界を味わっていたかった。(上演時間約1時間30分)
前回公演は観れなかったが、タイムスリップ物は作りやすいのかも。
ヨーロッパ企画の有名な傑作「サマータイムマシンブルース」しかり。
※アフタートークでは小芝居的宣伝?まであって、さすがヨーロッパ企画は
ファンサービス満点。
でも、「ヨーロッパ通信」より、普通のパンフもほしいな (^^;)>
落語版・笑の大学
「落語版 笑の大学」制作委員会
しもきた空間リバティ(東京都)
2012/11/29 (木) ~ 2012/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
あの爆笑の名作を見事に落語化!
映画化もされた三谷幸喜舞台作品を見事に落語化。
一部のエピソードを省略して1時間30分、2人芝居は当然ながら1人で2役。
2人分のエネルギー、2人の掛け合いを1人で熱演!
私は舞台のDVD(および同じNHKテレビ放送)しか観ていませんが、
あらためて、笑って、泣いて、感動しました。
作家と検閲官、2人の奇妙でドライな友情、戦争がらみで泣けるところがイイ。
舞台の要素である、衣装、メイク、セット、大道具・小道具、効果音、音楽は一切そぎ落とされて、
落語の要素である話芸と上半身の身振り手振りの演技のみに集約され、
よりテーマに肉薄し中身の濃いものになっています。
(これに対して映画版は舞台にない要素のすべてを"追加"している)
これは、原作戯曲の素晴らしさと、さん生さんの巧みさのたまものでしょう。
(そのほか、演出や音響などがどのようにかかわっているのか素人の私にはよくわかりませんが)
これは、ぜひ今後も語り継いでほしい!
もっと多くの人にも聞いてほしい!
いつか「古典」になるほど、と思いました。
地球の王様
Doris & Orega Collection
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2012/11/14 (水) ~ 2012/11/25 (日)公演終了
満足度★★★
そんな状況でもカレーはうまい。
「地球上の人類の生き残り7人の物語」と聞いて、えらい大きく出たなぁという思いと、その7人が日本人で同じ舞台で話を展開させるというシチュエーションに、観る前に大いに不安を覚えて、今回はパスしようかとすら思ったのですが…。
実際に観ましたら、結構面白かった。
このテーマのあまりにも大きいことと、登場人物たちのあまりにも普通で小さい日常の対比が可笑しくて、こんな状況なのにやってることはしょうもない、という点がかえってリアルかも?
(本当ならこんな気楽にしていられないでしょうけど。)
永井くんが登場するまでは、これまでの延長で適当にやっていて、なんとなくうまくいっていたのが実に日本的で納得。
急に、地球再編、リーダーを明確にしようとしたり、子孫のことを考えたりしだすと、かえってまとまらなくなってくる。
日本的あいまいさの長所を見直してしまう。
子孫を残すためのやり取りなんかは、思わず「復活の日」を思い出してしまったり。
大仰に構えずに、笑いながら、少し考えてしまったりするくらいがこの作品や、一連の西村さんのDoris&Orega公演の特長ですね。
少し照れながら「どこかやさしい」感じが、西村さんそのままです。
4 four
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2012/11/05 (月) ~ 2012/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
臨場感が凄い。セリフ、役者さんが素晴らしい。会場の工夫が面白い。リピートできなかったのが残念!
当日、チケットと交換に、座席番号の書かれたカードを渡され(わたしは0100)、
会場に入ると、普段ある観客席と舞台が取り払われて、
全面、撮影スタジオのような床、中央に正方形のライン(中央の舞台の領域)、
上から絞首刑のロープが1本下がっている。
その周辺には床に直に、席番号が並ばずにランダムに書かれている。
自分の番号部分に立つと、案内の人が「箱馬」(演劇やテレビ、舞台などで汎用的
に使う木箱)2個を持ってきてくれて入り口でもらった座布団を置いて座る。
天井も壁面もおそらく劇場のむき出しのまま。
俳優さんと同じ床面で、中央に舞台エリアはあれど、俳優さんは客席内を自由に動き回る。
セリフをしゃべりながら、すぐ横を通ったりする臨場感がある。
(ちなみに劇中では私の肩越しの陰に、池田さんが隠れたりしてました。)
手元のカードの裏には、裁判員、法務大臣、刑務官、未決囚と書かれ、
そのうち一つに赤丸が書かれている。(わたしは未決囚)
これは実際に何かをするわけではなかったが、
これも、これまで数々あった観客がドキドキする仕掛けの一つ。
なお、こういった仕掛けだけでなく、肝心の俳優さんたちでは
普段コメディが多い池田鉄洋さんは力強く、
須賀貴匡さんは、きりっとした佇まいがいい。
前説的な役割もした野間口徹さんは、狂気を内に秘めた静かな外見が特色。
わたしの好きな高橋一生さんの巧みさには毎回感心させられる。
今回一番良かったと思ったのは、田山涼成さん!
コミカルな役が多い田山さんですが、今回は常にシリアス。
とうとうとセリフを語る様が素晴らしい。
白井晃さんの作品は難解なイメージがあって、最近は敬遠してましたが、
本作の演出は適格と思いました。
何より、素晴らしいかったのは「セリフの言葉」。
モノローグ、ダイアローグの可能性を追求するワークショップ、リーディングを経て
生まれたと聞きましたが、「死刑」「加害者/被害者」など重いテーマでありながら
いちいち聞き惚れてしまうようなセリフの波を心地よく味わいました。
これはもう一回、ぜひ観たいと思いましたが、千秋楽間近だったので叶わず、
それが唯一残念でした!
るつぼ
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2012/10/29 (月) ~ 2012/11/18 (日)公演終了
満足度★★★
怖い。
1950年代当時、アメリカの赤狩りなどを批判するために書かれた
17世紀末に実際に起きたセイラムの魔女裁判の話。
一人の狡猾な少女が、周囲の少女たちを巻き込んでヒステリー状態
が起きる様子を、悪魔の仕業と騒ぎ立てるという愚かな行為は、
大人たちの勝手な利害関係に大きく影響され、どんどん深みにはまっていく…。
その様子は、客観的にみると実に滑稽であり、そうであるがゆえになおさら恐ろしい…。
鈴木杏さんは他の少女と並ぶと、ことさら体格が良く大柄に見えて、少女の繊細さよりも
体格と個性・経験からくる迫力が大きく、少女たちを扇動する様がぎりぎりのオーバーアクト。
粗暴だったが投獄された後は真実と強い意志に目覚める池内博之、
妻エリザベスは病弱だったが獄中では静かで凛とした様子を演じた栗田桃子が見事でした。
裁判官を演じる磯部勉は、まさに厳格な人物、そのもの。
招かれざる客
東宝
ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)
2012/11/10 (土) ~ 2012/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★
クリスティの戯曲をもっと!
'09年「蜘蛛の巣」、'10年「検察側の証人」に続く、
浅丘ルリ子主演、アガサ・クリスティー原作シリーズ第3弾!
ミステリー戯曲もしくは推理小説を原作とした舞台作品は、
大好きなのに、少ないので貴重です!
本作は、アガサ・クリスティ作品の決定打!
濃い霧の深夜。
男は、車が溝に落ち立ち往生し、助けを求め近くの屋敷に立ち寄ると、
男が拳銃で頭を撃ち抜き死んでいた!
傍らにはその美人の妻が立ちすくんでいた…。
登場人物一人ひとりの証言が示す真犯人が、次々に変わっていき、
意外なクライマックスに!そしてラストに驚きの真相が用意されている、
ちょっとした発想の転換が見事なストーリー。
面白かった!
海外ミステリー、特にクリスティ作品の、貴婦人役には、演技以前、
その佇まい、存在感が「別格」である、浅丘ルリ子嬢が良く似合う。
これは、彼女の義母役の安奈淳と実際の年齢を比べるとどうかと思うけれども、
そんな年齢的なものを超越している。
(ちなみに、最後のセリフで、まるで歌舞伎のように「アサオカ!」と
大向こうから声がかかった。海外戯曲なのに、風情があっていい。)
他の共演者も芸達者。
金田一では探偵役の、古谷一行は普通ならヒロインを助けるヒーローの立場だが…。
今回は少し出番が少ない石井一孝は出ただけで本人の、「他作品でのイメージ」
やスタイルのダンディさが、本作では物言わぬ要素として生きている。
警部役をスマートで堂々とストレートに演じる川﨑麻世、
その部下を飄々とコミカルに演じる名脇役の不破万作、
スリーアミーゴス役でのヒヒヒ笑いもサービスで披露する斉藤暁の小悪党ぶり、
など、登場人物の面白さもクリスティ作品ならではの見ものです。
海外ミステリー戯曲、推理劇の舞台をもっと上演して!
銀河英雄伝説 輝く星 闇を裂いて
舞台「銀河英雄伝説」実行委員会
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2012/11/15 (木) ~ 2012/11/18 (日)公演終了
満足度★★★
キルヒアイス!演劇での発声方法を、一度特訓してほしい!
銀河の歴史がまた1ページ - 男達の野望が銀河を駆ける。
舞台版『銀河英雄伝説』第6弾!
原作小説『銀河英雄伝説外伝 千億の星、千億の光』を中心に舞台化。
アニメ版でも同名で3巻。全12話でアニメ化。
同アニメ版"本伝"最初の「アスターテ星域会戦」の2年前にあたるエピソード。
自由惑星同盟の誇る「薔薇の騎士(ローゼンリッター)」連隊を中心に、
元連隊長リューネブルク対現連隊長代理シェーンコップ、因縁の対決!
出世前の若きラインハルト、キルヒアイスも参戦する、シリーズでは珍しい陸上戦を描く。
やはり銀英伝は、ラインハルトとキルヒアイスがいたときが面白い!
舞台化にあたり、舞台オリジナルのキャラクター、
リューネブルクの腹心、ロイスを登場させ、
ラインハルトの腹心であるキルヒアイスと対比をせているのが面白い。
シェーンコップを演じる岩永洋昭は、戦う男が良く似合う!
「仮面ライダーオーズ」でも仮面ライダーバースに変身していた。
ケスラーを演じた岸祐二も好演。「激走戦隊カーレンジャー」レッド役主演!
今回はコミカル演技は控えめながらも、老将グリンメルスハウゼンに「寝てたでしょ?」
と軽く突っ込むのがウケタ!
しかし!
キルヒアイス!
どこかの劇団で演劇での発声方法を、一度特訓してほしい!!
セリフの後半が聞き取れない。
演技以前の問題です。
ジャニーズでは、何を教えているのか。
(「舞台 第一章 銀河帝国篇」での崎本大海は大丈夫だったのに。)
また、今回もチケット応募に何度も落選、やっと取れたら3階席!
3階席からでは、背景大スクリーンのCGが上半分が見えない!
通路での芝居も見えない!
撃墜王も、宝塚版も、チケットも取れなかった!
なぜか、舞台版銀英伝では芝居以外の問題が多い。
来年春、青山劇場上演決定の「第三章 内乱」が思いやられる…。
ドメスティックパレード
JOE Company
青山円形劇場(東京都)
2012/07/14 (土) ~ 2012/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★
私の大好きな「青山円形劇場」公演
(今更の書き込みで済みません)
私の大好きな「青山円形劇場」公演です!
中央、高さが無い円形舞台を中心に、同心円状に取り囲む座席(据置型パイプ椅子)と、
舞台から放射線状に数本の通路が伸び、役者はそこを客席のすぐ横を通って
行き来する、その迫力が魅力的です。
今回は、仕込み、とは言えないかもしれないけど、最前列、飛び飛びに役者が
座っていて、出番が来ると直接舞台に出る…という仕組みが、身近な感じで、
ドキドキする(最前列なら)。
話はSFヒューマンコメディ?ファンタジー?
ある町の住人は、人間の「控え」として生活するクローンたち。
(…ということが、観ていると徐々にわかってくる書き方が面白い)
普段からオリジナルの人間になるべく近い生活・趣味を生きている。
そして、オリジナルが死んだとき、彼らの『出番』が来るのだが…。
良く考えると、突っ込みどころ、矛盾いっぱいでしょうけれど、
そこよりも、この特殊なシチュエーションにおいて描き出される、人間関係、命、人生…。
時には残酷に、笑いながらも、ふと考えるきっかけを提示してくれる。
キャストでは、やっぱりヒロイン・エンクミ=遠藤久美子さん。
凛としとしてスラッとしたスタイル、かわいらしさと、冷たく鋭い斬り込みの落差。
小劇場演劇で間近かに見ると、良くわかる。
そして島田順司さん。
私にとっては、「はぐれ刑事純情派」よりも「科学戦隊ダイナマン」の夢野博士です。