ホテルカリフォルニア
劇団扉座
紀伊國屋ホール(東京都)
2021/12/07 (火) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
(なるほど、私戯曲かぁ)と観終わって思った。ある劇作家の追憶は、笑いとほろ苦い痛みを伴いつつ、ひとつの時代を鮮やかに描いていく。背伸びをしながらもオトナになりきれない彼らを大人が演じることで見えてくるモノもある。彼がそこで出会った人や出来事は個性的だけれど、同時に普遍性を併せ持っていて観る者に懐かしさを感じさせる。楽しかったこともささやかな後悔もそれぞれに。
開演前や終演後のロビーも含め、総力戦という言葉がふさわしい、劇団らしい面白さがあった。
ワレリー・ベリャコーヴィッチのマクベス
劇団東演
あうるすぽっと(東京都)
2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/18 (土) 13:30
故V・ベリャコーヴィッチ氏のダイナミックな演出をO・レウシン氏が引き継いで今回も圧巻の舞台。シアタートラムで観た初演よりいっそう鮮烈で、お馴染みのストーリーに多くの気づきを与えてくれた。キャストも粒揃いで息つくヒマもない充実の2時間45分だった。
べリャさんの舞台はいつも美術も印象的で、『ハムレット』の林立するように吊り下げられた円柱や、『どん底』のベットフレームの連なりも忘れ難いが、『マクベス』では4枚の巨大な扉が登場人物並みの存在感だった。
音楽や様式美を感じさせる独特の動き、衣装、照明、音楽なども演出や演技と相まって劇場内を濃密に満たしていた。
いとしの儚
劇団扉座
ザ・スズナリ(東京都)
2021/03/06 (土) ~ 2021/03/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
横内謙介氏の戯曲を東京夜光の川名さんが演出。
クズと呼ばれた男と鬼がつくった女の100日の物語。2人を取り巻く人(や鬼)たちが皆愚かしくも愛おしい。「人の夢、儚し」という序盤の台詞だけで込み上げてくる想いがあるのは、すでに結末を知っていたからだろう。戯曲の良さとキャストの魅力を生かした納得の舞台。
Transcendent Express
Cuebicle
上野ストアハウス(東京都)
2021/12/10 (金) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
婚活列車の中で起こる出来事、と聞いてコメディかと思っていたらそうじゃなかった←この程度の予備知識で観に行ったのは演出家と俳優陣が好みだったから。ダークファンタジーめいた陰影と奇妙な登場人物たちに惹き込まれて、上野からの長い旅を楽しんだ。
藪原検校 やぶはらけんぎょう
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2021/02/10 (水) ~ 2021/03/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
これまで何度か拝見している戯曲だけれど、今回も圧巻だった。猿之助さん演じる主人公のふてぶてしさと愛嬌、無惨な物語を明るく逞しく彩る人々の歌声に滲む猥雑さと哀切さ。杉原演出が過去と現代をつないで、骨太なテーマをがっしりと見せた。
森 フォレ
世田谷パブリックシアター
兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)
2021/08/07 (土) ~ 2021/08/07 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』同様自らのルーツを辿る旅を描く。いくつもの世代にわたる入り組んだ人間関係とそれぞれの時代背景、そして女性たちの苦しみ。「見捨てない」という言葉の重さ。俳優陣の熱演もあいまって充足感たっぷりの3時間50分。
子午線の祀り
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/03/19 (金) ~ 2021/03/30 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
言うまでもない名作を4年前と同様野村萬斎氏の演出と主演で。キャスト数も上演時間も削っての上演はより研ぎ澄まされた印象で、月を思わせるセットの上を駆け抜ける人々の姿と声の美しさが際立った。
シャンソマニアII~葵~
花組芝居
あうるすぽっと(東京都)
2021/11/26 (金) ~ 2021/12/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『源氏物語 第九帖 葵』をベースに歌や踊りを織り交ぜて綴る人間模様は、ときに滑稽でときに哀しい。キャストはベテランから若手まで幅広い世代の男性ばかり15名。衣装はほぼ黒の紋付に揃いの袴で、ほとんど白塗りも鬘もなしに美女も幼子も次々に演じ分けていく。
ずっとひとつだけちょうだい
♯Q
新宿眼科画廊(東京都)
2021/10/16 (土) ~ 2021/10/19 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かった。いや、面白いというよりキュンキュンした。単純な恋バナではなく、それぞれちょっと訳ありだったり価値観が異なっていたりしつつ、誰かを好きになる気持ちをナイーヴに描いていて気持ちよかった。もうみんな幸せになってね⁉️と思いつつ劇場を出た。
ヒ me 呼
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2021/09/24 (金) ~ 2021/10/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
いやあもう、なんでもありだな⁉️しりあがり寿さん脚本・天野天街さん演出で馬鹿馬鹿しいほどのエネルギーや可笑しさは言うまでもないけど、「恋」という新たな流行病に罹る恋人たちがそれぞれ素敵に見えてくるのは役者さんたちが魅力的だからかもしれない。
カナリヤ
日本のラジオ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/11/18 (木) ~ 2021/11/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても面白かったのだけれど、どこがどう面白いのか言葉にするのは難しい。緻密で完成度の高い戯曲の持つ世界観とか、個性的な登場人物たちを丁寧に具現化する魅力的な俳優陣とか、シンプルかつ印象的な美術とそれを際立たせる照明とか、そういうありふれた形容では伝えられない独特の空気感があって、それに引き込まれつついろんなことを考えたりもする。帰りの電車の中で、観客全員に配布されたパンフレットを読んで、またざわざわする。そうか、そうだったか。ここまでを含めての物語なのかもしれない。
フタマツヅキ
iaku
シアタートラム(東京都)
2021/10/28 (木) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
やるせなく愛おしい人々の営み。夫婦の生き方を正しいとか間違ってるとかそんなふうに結論づけることはもちろんできなくて、それでも共に生きてきた日々はかけがえのないものであったかもしれない。この繊細で完成度の高い作品を拝見できてよかった。
『すこたん!』
serial number(風琴工房改め)
ザ・ポケット(東京都)
2021/10/28 (木) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇場を出て駅に向かいながら、きっと顔がはれてるだろう……と思った。観ている間に何度も泣いたから。悲しい訳ではないのに、場面場面で胸に迫るものがあった。登場人物がみな魅力的で、物語の後の幸せを祈らずにはいられなかった。
扉座版 二代目はクリスチャン ―ALL YOU NEED IS PASSION―
劇団扉座
すみだパークシアター倉(東京都)
2021/10/21 (木) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
破天荒なキャラクターや展開を勢いで押し通すつかさん流の熱さに加え多くの台詞やモチーフでもオマージュを捧げつつ、同時にしっかり扉座の芝居になってるのが面白い。怒涛のパッションでキメていく終盤には有無を言わさぬ吸引力があった。
エレモア・ムーブ
バンタムクラスステージ
王子小劇場(東京都)
2021/10/22 (金) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かった。公私に渡って不運続きの落ち目のアクション俳優のもとを共産圏の大物ギャングが訪れた目的とその顛末をオシャレかつ予想外のスケールで描く約110分。登場人物がそれぞれ魅力的なのと映画を始めとするエンターテイメントへの愛情が素敵だった。
藤田嗣治〜白い暗闇〜
劇団印象-indian elephant-
小劇場B1(東京都)
2021/10/27 (水) ~ 2021/11/02 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
藤田が27歳でパリに渡るところから猫と裸婦の画家として名を馳せたのち、日本で戦争画に手取り組む際の葛藤などを130分で描く。鈴木アツトさんの作・演出は初めて拝見するけれど、表現者の葛藤と自負を丁重に描いて面白かった。
音楽劇 百夜車
あやめ十八番
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2021/10/29 (金) ~ 2021/11/02 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
雑然と積み上げられたように見えたデスクや書庫が各場面で効果的に役目を果たしていくように、幾重にも張り巡らされた物語と人の想いに絡め取られていく2時間40分。堀越氏の紡ぐ言葉の音楽との相性の良さも見どころ。
盲年【東京公演】
幻灯劇場
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/09/30 (木) ~ 2021/10/04 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても面白かった。なんとなく難しい系の作品かと思ってたけどそんなことなかった。スタイリッシュな演出でテンポよくときに笑いも散りばめつつ、俊徳丸伝説をモチーフにいくつかの愛情と哀しみと裁くこと許すことについて描いていた。それぞれの関係の鮮やかさと痛みが胸にしみた。
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
早くから予約して楽しみにしていたが、その期待をしっかり上回った。仕掛けの詰まった戯曲。二階席にも伝わる人々の熱量と技量。終盤、数々の伏線が繋がる快感にも増して、その人が伝えようとした言葉に胸を打たれた。
橋爪功さん、高橋一生さん、白石加代子さんがほぼ出ずっぱりって、もうそれだけで自分好み。加えて野田さんご自身が走り回りしゃべり倒す。俳優陣のご活躍だけでも観た甲斐があった。
インク
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2021/06/11 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
無謀なチャレンジにこぎ出すため仲間を集めていく冒険モノみたいな前半から、思わぬ事件への対応や目指すもののズレがしだいに可視化されていく後半。
戯曲の面白さを十二分に生かす演出とステージング、そして俳優陣の説得力。
3時間の長尺をたっぷり楽しんできた。