実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/07/16 (土) 13:00
三人姉妹の暮らす家から次女と夫が引っ越しするのだけれど、知的障がいのある長女が見慣れない男性(引っ越し業者)を見て暴れたらしい。
長女が落ち着くのを待って手持ち無沙汰な引っ越し業者2人の他愛もない会話などから、しだいにそれぞれの事情やキャラクターが思いが伝わってくる。
次女と三女の互いへの微妙な気遣いと屈託も、次女の夫に対するわだかまりも、引っ越し業者の綿引と由香里、そして由香里の義理の兄で社長でもある山本、それぞれを思う気持ちも。
知的障がい者である長女とそのボーイフレンドの言い出したことが、その奇妙な一日にまたひとつ大きな波紋を呼ぶ。
授産施設の職員だって、その役割からはみ出す思いを抱えている。
大学教授だった次女の夫が起こしたらしいスキャンダルについての助手の言及。
戯曲の細やかな人物造形を手練れ揃いのキャストが見事に立体化して、作り物ではない生きた人間がそこにいる、という感慨がひとしおだった。
ドラマティックな「物語」ではなく、人が暮らすということや生きるということが丁寧にそして切実に描かれて、観客を惹きつける。
観終わって劇場を立ち去りながら、登場人物の一人ひとりのこの先の日々を思う、そういう舞台だった。