山の声
温泉ドラゴン
「劇」小劇場(東京都)
2018/01/06 (土) ~ 2018/01/08 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/01/06 (土) 19:30
自身も登山家である大竹野正典が、登山家・加藤文太郎と岳友・吉田登美久の冬山行遭難を扱った戯曲を、温泉ドラゴンのシライケイタが演出する2人芝居。初日ということもあってか、立ち上がり、セリフ回しがカタイ感じもあったが、すぐに緊張感ある舞台となっていき、90分一気に流れるような芝居だった。ただし、本来は笑いを取れる場面もあるように思ったが、客席が緊張して観ていたせいか、そうならなかったのは少し残念である。浅倉がしばしば引用する、加藤の「単独行」からの文章の鋭さが際立つ。
新年工場見学会2018
五反田団
アトリエヘリコプター(東京都)
2018/01/02 (火) ~ 2018/01/05 (金)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/01/03 (水) 19:00
毎年恒例の工場見学会だが、なぜか凄い人気で、いっぱいになる。五反田団は「ドラえもん」のパロディで「ドラマえもん」だが、これが演劇界の不条理に食い込む興味深い作品。続いての獅子舞はモダン・ダンス系に寄ってる。休憩を挟んでの「ザ・ぷー」は、昨年まで「ぷーちんず」として活動していたが名前にクレームが付いて改名したとか…。相変わらず見事なテルミンを使った演奏と芝居仕立てのMCが楽しい。ハイバイは、別役実と城山羊の会のパロディで、奇妙に哲学的な不条理。ラストは、お馴染みのポリスキルも、いつもながらの爆発力だった。今年は、結構練られた作品が多く、真剣に考えてみると、問題提起として意味を持つ作品が多い気がした。ただし、とにかく長い。
藁藁・餅・まめまめしい女
演劇ユニット「みそじん」
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2017/12/28 (木) ~ 2017/12/30 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/28 (木) 19:30
小林美江扮するスナックのママのレイコが、自分の知ってる女たちの話ということで、3つの短編を上演する。ありえない馬鹿バカしさの1話、ちょっとばかり切ない2話、緻密な構成の3話ということで、テイストが異なる3つの話が楽しめるのだが、できれば3つが繋がっているといいな、とも思う。
NICE STALKER 短編演劇見本市
NICE STALKER
cafe&bar 木星劇場(東京都)
2017/12/27 (水) ~ 2017/12/31 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/27 (水) 16:30
Niceバージョンを見た。1話と3話は過去にも観てるが、2話は再来年に向けて執筆中だと言うもの。「見本市」と言うだけあって、台本と上演権をくれるという企画にはちょっと驚いた。どれも、イトウならではの脚本だが、2話の切ない感じは、初見ということもあって良い印象だった。3話では数学の話が出てくるのだが、数学者が板書ミスという、あってはならない事件があったのも、ご愛嬌と言える、楽しい舞台だった。
スピークイージー
やみ・あがりシアター
荻窪小劇場(東京都)
2017/12/23 (土) ~ 2017/12/28 (木)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/12/25 (月) 19:30
東京のみ禁酒条令が通ったという設定での、某会社の忘年会の様子。酒がないので盛り上がらないのだが、それを何とかしようとする社員たちが、1年の酒での失敗など回想シーンを交え、徐々に明らかになる様々な状況、…、という作りは巧い。役者陣もしっかりした人が多いが、設定に寄り掛かり過ぎてる印象はある。作・演出の主宰は26歳の女性だそうだが、そういう人が書く芝居とは思えない展開とも言え、挿入曲は、やや驚きでもある。
アキラ君は老け顔
劇団高校四年生
東京大学駒場キャンパス学生会館215(東京都)
2017/12/20 (水) ~ 2017/12/23 (土)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/12/22 (金) 19:00
くによし組の傑作を東大の学生劇団が上演するというので観に行った。学生が多いのだろうが、演技的には問題はないのだが、アキラ君の母親・その恋人・ネットカフェの客、という、1世代上の役を演じる役者が、そう見えないというのが惜しい。それと、アキラ君は老け顔だが、実際に老けているわけではないので、老けた動きにするというのはどうなんだろう、とも思った。当パンに潤色・演出の松浦祐矢が「この芝居で何かが言いたいわけではない」と書いていたが、作者の國吉は何かを言いたかったのではないかと、くによし組の公演を観た時は思った。そこはどうなんだろう。
俺は大器晩成、~四十にして大輪を咲かせる予定~
劇団献身
駅前劇場(東京都)
2017/12/20 (水) ~ 2017/12/24 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/12/21 (木) 19:00
最近、いくつかの公演で興味深い注目すべき演技を見せる永井久喜を、本拠地で観たいと思って行った。作者が22歳の時に書いた28歳のミュージシャン3人の物語を、実際に28歳になり大幅にリメイクした再演(と言いつつ、当パンでは最小限にしたとか書かれている)。22歳なら分かる勢いは感じるが、緻密さにはやや欠ける。
ミュージシャンに関する芝居というのは、多くの場合、それを演劇に置き換えて自己肯定的になりがちだが、本作でもその傾向は見られる。もっとも、登場人物の多い群像劇で、最終段階ではミュージシャン主体になるものの、それぞれの人物の物語が絡み合っているので、やや薄まってはいる。ただし、人数が多いことによる分かりにくさと冗長感は否めない。
注目した永井久喜は、出る場面は少ないけれど、劇団員らしい脇を固める演技が興味深かった。
荒れ野
穂の国とよはし芸術劇場PLAT【指定管理者:(公財)豊橋文化振興財団】
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/12/14 (木) ~ 2017/12/22 (金)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/21 (木) 14:00
桑原祐子の巧みさが出た芝居だった。火事で家に戻れなくなった父母娘が、母の旧友の家に避難するが、そこでは部屋の上に住む元教師と教え子を加えた半協同生活が行なわれていた。そんな火事の一晩に起こる様々な出来事の中で、過去と現在が露になっていく過程を興味深く描く。どの役者も巧いが、小林勝也の瓢々とした演技が印象に残る。いしだあゆみの「あなたならどうする」を劇中歌的に使っているのが面白い。
『熱狂』『あの記憶の記録』
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2017/12/07 (木) ~ 2017/12/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/19 (火) 18:00
『ある記憶の記録』千秋楽を観た。アウシュビッツを生き延びたユダヤ人の父親が、息子・娘の通う学校の教師の前で語る、アウシュビッツの「記憶」は凄まじいものである。やはり『熱狂』→『ある記憶の記録』の順で観るのが良いのだろう。『熱狂』ではヒットラーの世話係だった男が、ナチスのSSとなって登場するところにも意味があり、からみあった2作品で、一つの意味を持つ芝居だと思った
クラウドナイン
大人計画
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2017/12/01 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/17 (日) 13:00
2度目の『クラウドナイン』は千秋楽。友人と一緒に行ったが、1幕が終わった時点では「何が何だか分からない」と言ってた友人が、2幕を見て納得してた。それだけ構造的に巧く作られた戯曲だということは言えるだろう。奇抜なパフォーマンスだけ注目されがちだが、そこに深い意味があるように思う。
オーラルメソッド4
シンクロ少女
駅前劇場(東京都)
2017/12/12 (火) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/14 (木) 19:30
『This is 30』を観た。再演で、3人兄弟の末弟の30歳の誕生日に久々に兄弟が会い、ドライブに出かける。その間に、いわくつきの相手と末弟が結婚するということが分かり、さまざまな出来事に巻き込まれる、というロード・ムービー風の作り。初演も観たが、役者が変わったことで風合いも随分と変わるのだなぁ、と改めて思った。70分。
おまけ的に、『性的人間』(15分)も上演。これも再演だが、性的な小説を書く作家と妻と弟子の関係が、何とも言えない味を出す。田中のり子が妙に艶っぽいのが、またいい。
オーラルメソッド4
シンクロ少女
駅前劇場(東京都)
2017/12/12 (火) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/12 (火) 19:30
『40歳の童貞男』を観た。主宰の作家・名嘉友美は、作風が変わったのだろうか。シンクロ少女と言えば、SEX関係のセリフが飛び交い、ややダークな印象の劇団だったのだが、前作『LOVE CHAPTER 1』から、むしろ「純愛」系の芝居をやるようになった。今回も、40歳で童貞という安藤を軸に、SEXを題材にしつつも、何かホンワカと「愛」を語るようになっている。130分という長さが苦にならない。欠点はないのだが、役者の無駄遣いは若干気になるけど、それだけ面白い舞台だったということも言える。名嘉の音楽センスは年齢に観合わないと私は前から思っているのだが、今回のエンディング "Aquarius/Let's the Sunshine in"もさることながら、その直前の Apollo 100 "Joy" の選曲は抜群である。
『熱狂』『あの記憶の記録』
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2017/12/07 (木) ~ 2017/12/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/10 (日) 19:00
『熱狂』を見た。ヒットラーがナチスに登場し、独裁者に上り詰めるまでの物語を、ヒットラーの世話係である下級兵士の言葉を通して描く。ある程度は史実に基いているので、実在の人物ばかり登場するが、本当にそういう出来事があったかのようなシーンの連続で描かれているのは、確かに「熱狂」である。同劇団として、ギャラリー・ルデコ,サンモール・スタジオに続いての再々演だが、劇場が大きくなっても、それに負けないエネルギーでやっているのは見事だと思う。
ペール・ギュント
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2017/12/06 (水) ~ 2017/12/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/08 (金) 19:00
イプセンの有名な戯曲(劇詩)を韓国人の演出家が潤色し、韓国人俳優も使って多国語で上演する。原作を読んでいないので、どこまでが原作通りで、どこからが改変か分からない(明らかに改変と分かるシーンもいっぱいある)のだが、おそらく原則よりも祝祭的で派手な作りになっていると思われる。個々のシーンや、舞台美術等の面白さがあるのは確かだが、「理解する」というのは難しく感じた。浦井は大活躍だが、ちょっとそれに頼った舞台という印象も否めない。
ちゅらと修羅
風琴工房
ザ・スズナリ(東京都)
2017/12/07 (木) ~ 2017/12/13 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/07 (木) 19:30
風琴工房としての最終公演は、沖縄の過去から現状をド直球で扱う硬派な芝居だった。この数年こだわっているように、エンターテインメント性をタイムスリップSFという手法で見せているが、扱う内容は、これでもか、これでもか、と差別され続けた沖縄の状況である。ただし、東京から来た青年という沖縄にとっては「外部」の青年を主人公に置いたことと、霊的な語り部として佐野功を置いたことで、苦しさを感じず冷静に観ていられる。初日だったせいか、終盤に役者が少し疲れた感があったが、130分を興味深く観られる舞台だった。いつもながら、青木タクヘイの音響も見事だし、やんばるの森を再現した美術も見事だった。
サバンナモンキーの憂鬱
くによし組
王子小劇場(東京都)
2017/12/06 (水) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/06 (水) 19:00
青い睾丸を持ったサバンナモンキーが人間にされてしまう、という設定はシュールだが、会話や物語はシュールでないのが、いつものくによし組とは少し違う。人間の世界と動物の世界を共有するサバンナモンキー→人間の青介という存在がどういう意味を持つのか、人間と動物の類似性に着目しようとしているのか、そんなことを考えつつ観てたが、もう一匹のサルが「これ、友達の話なんですけど」と繰り返すあたりも気になっていた。
たまご祭
味わい堂々
スタジオ空洞(東京都)
2017/12/02 (土) ~ 2017/12/05 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/04 (月) 19:30
高校の同級生という女性3人の劇団が10周年に際して企画した上演。一見、脈絡のない3つの話を並べておいて、実は…、という作り方が巧い。劇団員の3人に加えて日替わりゲストが出るのだけれど、適度に力を抜いた下手ウマ系の劇団なので、3人とのコンビネーションもよく、短いけれども楽しい時間を過ごすことができた。もっと適度に世に出てほしい劇団の一つであると言えよう。
クラウドナイン
大人計画
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2017/12/01 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/03 (日) 18:30
かつて、「劇団青い鳥」時代に本作を3回演出したという木野花の演出で、大人計画のメンバーを主に上演する。何故か、性的倒錯や女装・男装だけが取り上げられがちだが、もっと普遍的な「抑圧」に対して解放されようとする人々の物語として捕らえたいものだ。演出も勿論だが、役者陣もしっかりしており、3時間が苦にならないけれど、95年にパルコで観たときほどの感動は残念ながらなかった。
ちょっと、まってください
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2017/11/10 (金) ~ 2017/12/03 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/03 (日) 13:00
別役実へのオマージュ的に不条理劇をやってみたというが、いつものナイロンとそれほど変わった感じはしなかった。もちろん、電信柱とか別役的なものはいろいろ出てくるのだけれど、それで何かが変わったという印象はなく、良くも悪くも、いつものナイロンだから、一定のレベルは維持されている。今回で面白いと思ったのは、客演のマギーが語り手になっていて物語を動かしているところか。
ホテル・ミラクル5
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2017/12/01 (金) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/01 (金) 20:00
シアター・ミラクルをラブホテルに仕立て、4人の作家に短編を書いてもらって上演するシリーズの5回目。で、今回は、坂本鈴(劇団だるめしあん),河西裕介(Straw&Berry),藤原佳奈(mizhen),屋代秀樹(日本のラジオ)の4人。奇想天外な設定をやらせたら随一の坂本、自身の欲望に実に忠実(?)な河西、シュールなエンディングの藤原、実に微妙な会話劇の屋代と、4作の色合いが違って、存分に楽しめる。藤原のセリフのキレが楽しい。