尊厳の仕草は弔いの朝に
劇想からまわりえっちゃん
王子小劇場(東京都)
2018/03/14 (水) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2018/03/17 (土) 19:30
第1幕90分は西部劇で『ショットマン・レイ』の物語だが、何が何だか分からず終わる。10分の休憩後の第2幕で、第1幕が、亡くなった中学時代の同級生が書いてた漫画の世界だと分かり、同級生の通夜に集まるシーンから始まって、通夜後の宴会から過去の回想やら漫画の世界観やらに突入して、一応の希望を持って終わる。シベリア少女鉄道の(下手な)亜流とも言えるような気がするし、何より第1幕は冗長である。主宰でレイ役を演じた青沼始め、セリフが通らない役者が多いのは残念である。
再生ミセスフィクションズ2
Mrs.fictions
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2018/03/15 (木) ~ 2018/03/19 (月)公演終了
満足度★★★★
過去に上演した短篇を3本と、新作を1本の95分。再演物は全て観ているのだが、やはり劇作の巧さを感じる。新作は、再演物の別バージョンとも言える作品で、これもやはり巧い。切なさを感じる「東京へ連れてって」もいいのだが、初演時からハマってしまった「上手(かみて)も下手(しもて)もないけれど」は「ライフ・イン・ザ・シアター」の15分 Mrs. fictions 版ともいうべき作品で、本当に面白いと思った。
プープーソング
劇団きらら
北とぴあ カナリアホール(東京都)
2018/03/16 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/17 (土) 11:00
熊本の劇団だそうだが、しっかりした作劇だった。「代行業」を始めた青年が、初老の先輩と、ある「家族」に関わり、それを面倒に思いつつ、気にしつつも、何となく過ごしてしまう、という物語を温かいタッチで描く。不思議な感触の芝居で、登場人物5人がほぼずっと舞台上にいて、セリフがなくても何かの役割を演じているというのも面白い。ホッとさせてもらえる舞台だった。
おとうふコーヒー
劇団銅鑼
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/03/09 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/14 (水) 19:00
劇団銅鑼が、風琴工房改め Serial Number の主宰・詩森ろばの、図らずも芸術選奨新人賞を受賞後最初の戯曲を、元グリングの青木豪が演出して上演する。理想の介護を目指す特養ホームを舞台に、認知症の老婆の最後を看取ろうとする関係者の群像劇。詩森らしく、時間軸を動かしながら、状況を説明する技は冴えているし、社会的な話題をしっかりと扱いつつ、エンターテインメントの要素を抜いていない。青木の演出も、ある種淡々と戯曲を演じる方向を目指しているように思え、歴史ある劇団の底力を見た印象である。
なお、終演後に詩森と青木のアフタートークがあったのだが、忙しくて聞くことができなかった。どんな話が出たのか気になる。
また、劇中でFtMの性同一性障害の孫役を演じる俳優が、本当に性同一性障害だというのを今朝の朝日で読んで、ちょっとばかりビックリした。
義経ギャラクシー ─銀河鉄道と五条大橋の999─
X-QUEST
北とぴあ つつじホール(東京都)
2018/03/08 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/09 (金) 19:00
再演だが、初演も見ていて、ダンス&アクションに転じてからは最も面白い作品だと思っていたが、今回は大きな舞台を得て、更にパワーアップしていた。源義経の物語と、義経が死んだ岩手で生まれた宮沢賢治の銀河鉄道の夜を合体させるというアイデアは面白く、銀河鉄道の終点が五条大橋という回帰型の作りも興味深い。プロジェクションマッピングなども使って、豪華なX-QUESTだった。
何しても不謹慎
箱庭円舞曲
駅前劇場(東京都)
2018/03/08 (木) ~ 2018/03/13 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/08 (木) 19:30
箱庭の新境地か。古川に言を借りると、物語を説明するためのセリフを排除して会話に限定した、とのこと。その結果、いろいろと議論はするけど何も決められない日本人、という像が浮かび上がってくるという効果はある。面白い、というより、ずっと少しイライラさせられながら、でも、やっぱりそうなんだよな、と思わせるところが、古川らしい巧さだ。役者陣は豪華で、作品を作り上げる上で、劇作上も役割を果たしたのだろうと推測される布陣だった。
見晴らす丘の紳士
LiveUpCapsules
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2018/03/07 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/03/07 (水) 19:30
明治の実業家・渋沢栄一の一代記…、だが、次々と起こるさまざまな出来事で、渋沢が凄い人だったことは分かるのだけれども、何を伝えたいかがハッキリしない。大隈重信などは皆分かるのだろうけど、岩崎弥太郎は分かるのかな、という気もする。最後の大きなエピソードである大日本精糖事件も、知らない人が多いだろうし、劇的なセリフも用意されていないのが惜しい。初日だったせいか、渋沢役の宮原のセリフにぎごちない所があったのも残念。
赤道の下のマクベス
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/03/06 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
鄭義信が2010年に韓国で上演した作品を大幅に書き直して日本で上演する。1947年のシンガポール・チャンギ刑務所にあったという、死刑の確定したBC級戦犯を収容する施設での群像劇。日本人は3人、そして、日本人として判決を受けた朝鮮人が3人の6人が収容され、いつやってくるとも知れない執行の日を待つ日々を描く。重たいテーマにもかかわらず、登場人物はその危機を笑い飛ばすような生活を送るというのは、鄭の過去の作品でもあった。タイトルに含まれるマクベスというのは、池内博之演じる主人公が役者を目指した朝鮮人で、唯一の出演作。その選択あたりのバランスがよく取れた秀作である。池内や平田満が軸にはなるが、浅野雅博演じる元大尉の寡黙な演技が目を引いた。80分(休憩15分)65分は流石に長いが、それだけの価値はある。
母親はなぜ一人だと知っていたのか
稲田絵梨
新井薬師 SPECIAL COLORS(東京都)
2018/03/02 (金) ~ 2018/03/04 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2018/03/04 (日) 17:00
数学に関する芝居だと聞いて観に行った。数学の「ギフト」が自分にはあるはずと信じる男と、絵を描く女とそのフリーター兄との出会いから、数学と芸術に関して語り合う会話劇。やたら饒舌な兄妹と、やや寡黙な男との対比は面白い。作・演出の稲田はいくつかの舞台に出ているようだが、数学との関わりは分からなかった。「数学者は変わり者」という偏見があったり、男が読んでる本が「複素数」だったり、サヴァン症候群との違いに拘ったり、稲田の数学への造詣の程度が分からないのだが、意図的に話題を絞っているとすれば演劇的には正解だが、見ていて何かが得られる芝居という感触ではなかった。もっとも、稲田はコメディとして書いたと当パンに書かれているので、その意図は買うが、成功しているとは言い難いのが惜しい。
彼の地Ⅱ
北九州芸術劇場
あうるすぽっと(東京都)
2018/03/02 (金) ~ 2018/03/04 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/04 (日) 13:30
北九州を舞台にした芝居を作るシリーズで、KAKUTA・桑原は2014年の『彼の地』に続いて、第2弾の上演である。同タイトルでの「Ⅱ」だが、関連はない。北九州に、帰ってきた人・やってきた人・去ろうとする人・留まり続ける人たちの群像劇で、いくつかのグループの人達が絡み合って最後はある落ち着きを見せるというのは、桑原の得意な展開である。役者陣もオーディション組を中心にしつつも、しっかりとした演技を見せ、人は駄目なところがあっても信じていることが大切、という桑原らしい気持ちの良い素敵な舞台だった。
埋没
TRASHMASTERS
座・高円寺1(東京都)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/02 (金) 19:00
意欲作である。村の中心部がダムに沈み、離島を除いて最も人口の少ない村になってしまった高知県大川村の現在と、ダムに反対する住民が切り崩されていく60年代を交互に描く。同じ役者が時代に応じて親と子を演じるなどの工夫が巧い。国vs地域、多数派vs少数派という対立を描きつつ、個人の(ある家族の)物語として描いていくところが中津留の真骨頂だが、それが見事に発揮されている。そして、社会派と呼ばれていても、結論についてはニュートラルであることが多い中津留が、明確に少数派の立場で描いているのは珍しく、そういった意味でも意欲作である。古参の劇団員が出ないで、若手の男優と女優の川崎初夏が頑張っているが、みやなおこという逸材を得たことで素晴らしい舞台になっていた。今の沖縄をも意識させる作りも巧い。
今度は背中が腫れている
あひるなんちゃら
駅前劇場(東京都)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/05 (月)公演終了
満足度★★★★
前回の初日に、観客の応募の中から選んで付けたタイトルで、芝居をやるという試みが、いかにもあひるらしい。内容も、ある会社の社員の背中が次々に腫れる、という下らない(褒めています)内容で、いつもと同じで、ただただバカバカしいなぁと笑っていればよいという作品だった(繰り返しますけど褒めています)。宮本奈津美の切れ具合がいつもほどではなかったのは少し残念。
疫病神
ピヨピヨレボリューション
北とぴあ つつじホール(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/23 (金) 19:00
歌とダンスを軸にエンターテインメントをやるピヨピヨだが、今回は疫病神にとりつかれたと思った女子を右手が演じて、ちょっと渋いストーリー。登場人物が多いのだけれど、それぞれの個性や役割が描き切れていないのも、いつものピヨピヨらしい展開だが、400人規模のホールでサイリウムがホンの少し、というのは、ちょっと見栄えが冴えないのが勿体ない。
『人魚 ―死せる花嫁―』
鬼の居ぬ間に
王子小劇場(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/26 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/22 (木) 19:35
人魚伝説が伝わる海辺の貧しい村。嵐が続いて、女を生贄に出さねばならないが…、という、いかにもありがちな物語。興味深い転換があるのかと期待していたがそれもなく、予想された展開のままというのは惜しい。役者陣がしっかりしているだけに、観るべき所はある。
このBARを教会だと思ってる(千秋楽満員御礼、終幕しました!ご感想お待ちしております)
MU
駅前劇場(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/26 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/21 (水) 19:30
作風が少し変わった感じがする。と言うより、作りつつ変化してしまったというところか。三軒茶屋にあるという設定のBARを舞台に、姉妹が会話する第1話、バイトの女の子とその子が目当てでもある帰宅拒否症の男4人のあれやこれやの第2話、BARの上階にあるガールズ・バーの女子がコスプレでドタバタする第3話、そして、姉妹の物語に戻る第4話という構成。第1話でマスターの慰めのシーンが「告解」みたいだとしてSNSに流れたことから「教会だと思ってる」ことになるのだが、終わり方は確かに「教会」的である。ただし、それは舞台全体を良く観ていないと分からないかもしれない。登場人物が多く、それぞれのキャラが立ち切っていないのが惜しい。古市・福永の姉妹の感触がよく、BARマスター役の成川や、ガールズ・バーのリーダー的存在の真嶋は、ハマっている。
卒業式、実行
Aga-risk Entertainment
サンモールスタジオ(東京都)
2018/02/17 (土) ~ 2018/02/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/20 (火) 19:30
主宰で作・演出の富坂の出身校、千葉県立国府台高校を舞台とした作品。よく似た『ナイゲン』を見たときにも思ったが、この系列の作品では富坂の思いが強すぎて、芝居が長くなる傾向がある。もちろん、ドタバタ的な大笑いの中で展開される、シチュエーション・コメディはよくできているが、もっとスッキリとできそうな気もする。富坂自身が劇中の齊藤的ポジションにいるように思う。そして、この系列では、結局「長い物に巻かれる」結末になっているのが惜しい。
むしろ『時をかける稽古場』のような芝居にシフトする方が良いのではないか。
近松心中物語
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2018/01/10 (水) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/18 (日) 13:30
2度目の観劇は千秋楽。ストーリーは単純なのだけれど、役者の力量と舞台遣い(美術+照明+音響etc.)で見せる芝居だと改めて思った。千秋楽なりの力の入り方は特に見られなかった、というより、最初に見たときから豪快な舞台転換と熱演が、千秋楽まで維持されていたように思う。宮沢りえは美しすぎるが、ややバカップル的な小池栄子・池田成志の組み合わせも、改めて絶妙だと思った。
夜、ナク、鳥
オフィスコットーネ
吉祥寺シアター(東京都)
2018/02/17 (土) ~ 2018/02/24 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/17 (土) 18:00
福岡の4人の看護師保険金殺人事件に題材を取った大竹野の戯曲を、豪華な役者陣を揃えて、ミナモザの瀬戸山美咲が演出する。実話が題材なので、重たい舞台だが、戯曲がよくできていて、4人の看護師の役割が明確になっている。その点で、主犯格の松永が実に巧い。男性陣もそれぞれの役割をしっかり演じ、緊張感ある舞台になっていたが、不自然に笑う客がいたのは、若干の興醒めと言えよう。
スモール・フリーク・ショー
ひねもすほろすけ
シアターシャイン(東京都)
2018/02/16 (金) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
未明かばんをとじた
らまのだ
小劇場 楽園(東京都)
2018/02/14 (水) ~ 2018/02/20 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/15 (木) 19:30
昨日に引き続き、同じ作品のR40(平均40歳)バージョンを見る。セリフはほぼ同じだが、様々な役割を演じる女が出ず、完全な4人芝居。役者の年代もあるのだろうが、切実感というかリアリティみたいなものをより強く感じる芝居だった。その分、昨日は何回もあった笑いのシーンが少なくなっていたように思う。個人的には、こちらの方が好き。