ケレン・ヘラー
くによし組
王子小劇場(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2018/05/30 (水) 19:00
國吉咲貴の作る芝居は、ロアルド・ダールの小説のような「奇妙な味」がする。今回は、不謹慎と笑いの境目に注目し、お笑い芸人の女子(三澤さき)に起こるさまざまな事件と、その周辺の人々のエピソード群で展開される。もう一つ、國吉の芝居には「語り手」がいることが多いのだが、今回は主人公が女性であるのに男性が主人公に成り変わって語り手をやっていて、それが終盤効いてくるように思う。「奇妙な味」を楽しんだ95分だった。
楽屋 -流れ去るものはやがてなつかしき-
ZOROMEHA企画
梅ヶ丘BOX(東京都)
2018/05/28 (月) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/05/29 (火) 19:30
一昨年の楽屋フェスティバルに近い企画だが、松岡洋子を観たくて、「ぐるっぽ・ちょいす」の回を観た。今更ながら、奥の深い戯曲だと思った。6ユニットが『楽屋』をほぼ同じセットで上演するのだが、一昨年のフェスティバルや他の公演と比べてみても、ポップな印象の上演だった。チェーホフの『かもめ』を上演してる楽屋という設定だが、本体の『かもめ』はどんな舞台になってるんだ、と思わせる作りが巧い。以前、女優Bと女優Dの作り方が巧いと思ったユニットがあったが、今回は女優Cと女優Dが面白かった。
市ヶ尾の坂
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2018/05/17 (木) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/26 (土) 19:00
岩松了が竹中直人の会のため1992年に書き下ろした作品を26年ぶりに上演する。何かが起こっているようで、何も起こっていないようで、やはり、何かが起こっていることを感じさせる、そんな芝居だった。竹中が演じた3兄弟の長男に大森南朋を置き、3兄弟が魅かれる人妻に麻生久美子を配したキャスティングが興味深い。2人とも映像系を中心に活動しつつ、時々舞台に上がるというスタンスだが、存在感はしっかり示す。他の役者陣も好演したが、盛り上がる芝居という感じではないので、何か消化不良的感触は残るのが惜しい。時代を感じさせてくれる舞台美術が良い。
iaku演劇作品集
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/05/25 (金) 19:30
『梨の礫の梨』を観た。2012年の初演も観ているが、クオリティが下がっていないどころか、むしろ円熟の境地に入った印象である。あるバーで一人マッカランを呑む女。いろいろと語る内、いつしか隣に若い女がいる。2人で語り合うが、それがどうも少し雰囲気が変わって…、という構成がまず巧い。そして、初演と同じ役者が演じているのだが、停滞感はなく新鮮に感じる。脚本・舞台美術・役者その他、あらゆるものがマッチしたステキな舞台だった。
ただ、序盤で、大して面白い話ではない(と私には思えた)シーンで大笑いする観客には、少し興醒めであった。
纏者の皿
フロアトポロジー×ヒノカサの虜
ギャラリーLE DECO(東京都)
2018/05/22 (火) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/24 (木) 19:30
Bプログラムを観た。Aプログラムと同じく、r細胞を持つ纏者の存在を設定しての物語だが、ABで互いに補完し合う関係ではなくて、全く別の世界を描いているということを気付くのに、やや時間がかかった。Aプログラムでは闇の世界の存在だったr細胞だが、Bプログラムでは公の存在で、その生命力から医療にも利用されているという設定。それなりに面白い物語ではあるのだが、話に入り込むのに時間がかかったし、同じ名前の登場人物が全く別の存在というのは、やや不親切にも思う。演技力を試されるという意味ではAプログラムの方に軍配が上がる気がする。
殉情わりだす演算子
電動夏子安置システム
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/05/23 (水) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/05/23 (水) 19:30
ロジカルコメディの雄、電動夏子アンチシステムの、いわゆる「館」シリーズの第4弾。面白い!ただ、主宰で脚本の竹田によれば、自分が「館」シリーズと呼んだことはないそうである。不思議な特性を持つ建物を舞台とした作品群をそう呼んでいるのだが、今回は、鍵穴にトランプのカードを差し込むと、そのカードに書かれている行為を、赤なら「できない」、黒なら「しなければいけない」というルールに縛られた館。そのことで起こる笑いも巧いが、今までの総集編的位置付けの作品らしく、過去の作品へと繋がるヒントも見せてくれる(勿論、今までの作品を観ていなくても問題ない)。道井がいつものテンションで引っ張るが、犬井が道井と対抗するまでに育ったところは見事。
纏者の皿
フロアトポロジー×ヒノカサの虜
ギャラリーLE DECO(東京都)
2018/05/22 (火) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/22 (火) 19:30
Aプログラムを観た。夭折したアイドル歌手の体はr細胞というものでできていて、肉を食べるとその人になれるという設定での、さまざまな人々の物語を中編+短編の2プログラムでやるそうだが、今回は愛でつながった男女の物語として観ると面白い。いろいろな人物が変身した状態を演じる奥野亮子が巧くキャラクターを演じ分けているのは、なかなか見事だった。80分。
バリーターク
KAAT神奈川芸術劇場×世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2018/05/12 (土) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/21 (月) 19:00
「腑に落ちない」系不条理劇だが、「永遠」を感じさせるような印象を持った。広い部屋に2人の男(草彅剛・松尾諭)がいて、バリータークという村の人々の様子を演じてみせる。暗転して、また、それを繰り返すことから、2人は閉じ込められていて、同じ事を繰り返しているらしいことが分かるが、突然、壁が倒れ、老人(小林勝也)が現れる…。なぜそうしているのか、そこはどこなのか、等が謎のまま終わるが、エンディングにより何故か少しスッキリする。不思議な芝居だった。小林勝也の重みが味わいを持って迫ってくるのがスゴイ。
『gokko』
BELGANAL
渋谷 宮益坂十間スタジオ(Aスタジオ)(東京都)
2018/05/18 (金) ~ 2018/05/22 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/20 (日) 18:00
物語は既にチラシなどによって公開されているので、説明的なセリフが少なく、感触を楽しむ芝居だと思った。主宰の林田沙希絵は映像系の人らしく、映像を多用して場面を作るのは巧い。
堀が濡れそぼつ
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2018/05/18 (金) ~ 2018/05/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/05/20 (日) 15:00
相変わらずセリフのキレは抜群のMCR。今回は、脇役として使われる(でも、貴重なキャラの)ことが多い堀靖昭をフィーチャーして、いつもながらの、やや真当な人と感覚の壊れかけてる人との会話を楽しむ。堀は、実は大変な特性の持ち主だと思ってた私としては大満足な出来で、他の役者陣も、しっかりMCRワールドを作り上げている。KAKUTAの異儀田夏葉がKAKUTAとは思えぬ演技を見せてくれるのも楽しい。
分岐点
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
紀伊國屋ホール(東京都)
2018/05/18 (金) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/18 (金) 19:00
トラッシュマスターズの中津留と青年劇場のコラボも第3弾となったが、今回はやや盛り過ぎに思う。2008年、リーマンショックで証券会社を追われることになる2人の男。一人は投資コンサルタントとして都会で働き、一人は田舎で農業をベースに地域を発展させようとする。物語は、2014年、2027年と進み、その2人の家族を巻き込んでいくが…。いつもの中津留風味で、社会問題を個人の(家族の)問題にする巧さは確実に観られるし、役者陣も長いスパンの物語を見事に演じているが、取り込んだ題材がやや多過ぎて、消化しきれていない印象はある。
iaku演劇作品集
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/05/17 (木) 19:30
「人の気も知らないで」を観た。何度もいろいろなところで上演されているそうだが、初めて観た。良い芝居だった。とあるカフェで、小さな雑誌社の女子社員3人のトークが展開される。同僚の結婚式の出し物や、別の同僚の事故の話から始まって、徐々に秘密にされているエピソードが展開される。横山らしい巧妙な会話劇で、適度な伏線の張り方も優れているし、少し明るく終わるエンディングも良い。何より役者の選択と好演が印象的。
健康への第一歩
制作「山口ちはる」プロデュース
「劇」小劇場(東京都)
2018/05/11 (金) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/16 (水) 19:30
女子版を観た。興味深い脚本だが、演出が過剰に思えた。第27班の深谷晃成による、ある大会社の健康診断でひっかかった10人が再再再々検査に集められるが、どうも様子がオカシイ。徐々に明らかになる事情とは…、という展開は面白いし、伏線の張り方もなかなかなのだけれど、薛朋花が演じるアオキという人物像が鬱陶しく演じられるなど、おそらく、演出の畑田哲大(東京ジャンクZ)が過剰に演出しているのだろう。セリフのないときにアオキにやらせる行為も納得ができない。折角の脚本と俳優陣なのだから、もっと素直に上演すればよいと思うのだけれど…。
図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの
イキウメ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/05/15 (火) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/15 (火) 19:00
イキウメの短篇集シリーズのvol.4。3話構成の1本目は、2036年、進行性の脳の病気にかかった脳科学者が、脳の機能をPCに移す話。2本目は、以前トラムで公演した長編を、エッセンスだけ取り出した短篇。3本目は周囲の優しさに違和感を感じる女子大生の物語。どれも巧く書けているし、3話が緩く連結しているように作られているが、何かいつものイキウメらしくない不満が残った。
2043年の銀婚式
激嬢ユニットバス
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2018/05/11 (金) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/11 (金) 19:00
この公演を最後に、関根麻帆と日和佐美香がユニットを卒業するのだと言う。最初で最後の、メンバー8人だけの公演だとは思わなかった。55分と短いながらも、8人の個性を際立たせて、卒業式っぽい感触の舞台になっていた。
Y FUTAMATA vol.2
ロ字ック
小劇場B1(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/10 (木) 19:30
ロ字ックのメンバーが気に入った作家と組んでの、短篇オムニバス公演。なかなかに面白かった。
1つ目の『ぼんやりした話/セプテンバー』は、ワワフラミンゴの鳥山フキの作品。鳥山らしい不条理でシュールな作品。セリフの断片を繋いで感触を持たせようとするのだが、やや抽象的に過ぎるか。
2つ目の『Re:』は世田谷シルクの堀川炎の作品。同じくシュールで不条理だが、バッドエンドの場面を見せて、同じ場面のハッピーエンドの場面を繰り返す展開や、ダンス/マイム系の動きを入れてきたのは、以前から世田谷シルクのファンである私にとっては、堀川らしい作品に思えた。
最後の『カラオケの夜』は須貝英の作品で、これだけ会話劇。離婚を前にした夫婦がカラオケに来て、互いにイタイ歌を歌ったり…、という展開。カラオケという設定を活かした歌の数々が物語を進める。
全体に、番街公演らしい感触を楽しめばよいのだと思う。
火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」
オフィス上の空
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/09 (水) 19:00
役者の熱量は伝わってくる舞台だった。サブタイトルにあるように、女優の卵(福永エリカ)が所属する小劇団がテロリストになるという物語だが、集団が狂気に支配されていく過程を描きたいのか、「女優の卵」個人の苦悩を描きたいのかが、やや焦点が絞れていない印象が惜しい。そのために、終盤の福永の長台詞は見事だが、それが活きない気がする。最後のエンディングは、ちょっと…、という感じがないでもない。それでも、達者な役者を集めただけに、舞台は巧く成立しているという気がする。
1984
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/04/12 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/05/05 (土) 17:30
有名なディストピア小説の舞台化だが、まさか「付録」から入るとは思わなかった。2050年過ぎの時期、「1984」の付録に書かれている「ニュースピーク」の研究会で物語は始まる。そこで交される会話から、主人公ウィンストン(井上芳雄)は小説の世界の登場人物となって、小説通りの物語を体験する…、という構成は斬新で意欲的だ。元の研究会の場面に戻るが、それが一種の夢落ちなのだが、実は、その研究会のシーンこそがウィンストンの望んだ未来への希望なのだという解釈も成り立つ。興味深い舞台だった。
なお、言ってもしょうがないし役者さんには大変に失礼なのだけれど、大杉漣で観たかったという気がする。
鉄とリボン
キコ qui-co.
座・高円寺2(東京都)
2018/05/02 (水) ~ 2018/05/03 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/05/02 (水) 19:00
壮大なファンタジーが徐々に種明かしされていく。「はなよめのまち」に来る男たちと町の人の物語と、現代の編集者の恋愛話など、複雑な構造が提示される前半の60分。5分の休憩を挟んで、そういった構造の種明かしがされていく後半の85分は興味深く展開される。タイトルは複合的な意味合いを持っているとか、面白い部分が多いのだが、いかんせん冗長に感じる。元々は200分あった作品を切って145分にまとめたそうだが、セリフの吟味がやや甘いのは小栗の特徴とも言える。生演奏/歌唱も雰囲気を出すのに効果的に働いているが、大人数のせいか、ボディクラッピングが合っていない瞬間があるのは勿体ない。
紛れもなく、私が真ん中の日
月刊「根本宗子」
浅草九劇(東京都)
2018/04/30 (月) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/05/01 (火) 19:00
根本宗子の新境地か。オーディションで選んだ21人の女優と話をしながら作ったという本作は、久々に根本本人が出ない。中1の金持ち女子が、誕生日パーティーにクラス全員を招待したのだが、そこで様々な人間関係が絡んだり、突然時間軸が動いたりしながら物語は展開する…。従来は、根本の分身的な数名の登場人物で「女子あるある」物語を書いていた根本が、21人のキャラクターを描き分けて90分でまとめたところは見事。エンディングは、アンビバレンツな状況で終わるあたりも興味深い。