AI懲戒師・クシナダ
株式会社CREST
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2021/12/01 (水) ~ 2021/12/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/04 (土) 19:00
笑いあり、ラブ???要素も多少あり、シリアスあり、殺陣あり、感動ありのSFクライムサスペンスで、息もつかせぬ展開で、先が読めず、ドキドキハラハラし、思わず食い入るように見てしまうほど、劇世界にのめり込み、気がつくと、感動していた。
物語のそれぞれのキャラクターが個性的で印象に残りやすく、特に主人公の天才ハッカーの女の子櫛名田サホと物語の中心人物たちはアクが強く、それらを演じている俳優たちの迫真の演技と相まって、魅了された。
また、主人公の女の子櫛名田サホの過去が劇中で段々と明かされてゆく展開、サホが自身の過去に向き合うこと、ICMAになることで大好きなAIを駆逐する側になることを思い悩み葛藤し、自問自答し、自分と向き合い、途中諦めそうにもなるが、挫けず、前へ進もうとする非常に泥臭い人間らしさにグッときて、共感し、感情移入した。そして、サホの過去とペンダントの秘密の関係性や、事件の黒幕とサホの意外な関係性、テロ事件に直接関係していた凶悪暴走AIなど、複数の話が複雑に絡み合い、サホの仲間をも巻き込み、物語は謎が謎を呼ぶ複雑で緊迫していて、サホの出自さえもわかってくる壮大なSFクライムサスペンスで、手に汗握る展開に、どんでん返しの連続に振り回され、その事件やその真犯人、街の仕組み自体の伏線の回収の周到さのあまりの鮮やかさに目を見張った。
わが町 高円寺 子ども食堂
演劇なかま高円寺
座・高円寺2(東京都)
2021/11/20 (土) ~ 2021/11/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/11/20 (土) 19:05
高円寺の町を昔から最近に至るまでをずっと冷静に第三者の目線で見つめる巨木の精を中心に話が進み、そこに高円寺の住民たちが幾人か登場し、最終的に子ども食堂が高円寺の町にできて今に至るまでを、一人ひとりにスポットを当てつつ、全体の歴史の流れもすんなりと伝わってきてわかりやすかった。
一人親家庭の大変さや、その子どもの孤独、離婚問題、一般家庭における親と子どもとの感覚のズレ、世代間の違いなどを丁寧に、それでいてさり気なく描いていて、そういった社会問題について、改めて真剣に考えさせられた。
また、料理人だった男がかつて少女に出会ったときに、少女を助けてやれなかったことがきっかけで料理人を辞めているが、その少女が親になり、家が貧困なこともあり、その娘が居場所がなく、孤独に耐えて、イジメに耐えていることを知り、子ども食堂を始めるにあたっての料理人を申し出るに至るまでの物語が印象的で、感動した。
シャンデリヤvol.2
U-33project
高田馬場ラビネスト(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/10/23 (土) 18:00
『シャンデリヤvol.2』という短編集の劇を観ました。
最初オフィスでの、女性上司と、あからさまにお互い、何かと仕事を奪い合おうとしている2人の女性社員が出てくるドタバタコメディな話から始まる。
後に分かってくることなのだが、椅子や衝立をしきりに2人の女性社員が動かしているのは、舞台転換をしていて、その作業自体をドタバタコメディな芝居にすることで、芝居と芝居のツナギを退屈にせず、観客を一旦現実に引き戻させずにする効果になっていることに、途中の演者の台詞によって気付かされ、無名な劇団がこんな高度なことをさり気なくやってのけている事を知って、感心してしまった。
また、女性上司から仕事をもらうために2人の女性社員がそれぞれしゃしゃり出て、あけすけにお互いをライバル視して、しかし、それでいて、時々協力し合うドタバタコメディで、大いに笑えた。
コンビニが舞台の短編では、どっかズレていて、距離感もなく話しかけ、人の話をあんまり聞いていない男性店員と、ツンと澄まして隙がなさそうで、常識人っぽい女性店員との言葉のキャッチボールが全然成立していないやり取りが個人的にかなり受けた。
また、コンビニの男性店員を演じる俳優が、隣の女性店員に一方的に思いを寄せていて、アパートのシーンにおいて、女性店員のいる隣の部屋から壁に耳をそばだてて盗聴したり、女性店員がいない間で、たまたま入り口のドアが空いていたときに、勝手に入って、女性店員が所持しているものの匂いを嗅いだり、小型デジカメで写真を撮ったり、部屋を撮ったりといった異常行動を、その肉体全身と、目つき、声色を使って、ストーカー行為のそこ知れない気持ち悪さと、おぞましさを体現していて、存在感があった。
しかし、女性店員がガラス製の灰皿で彼氏の後頭部を何度も何度も叩きつつ、叫び続けて、殺すシーンにおいて、それを演じる女優が、眼が血走り、静かだけれども相当以上で狂気に満ちたサイコパスな雰囲気を肉体から漂わせていて、真に迫っている感じが出ております、思わず見ているこちらも緊張し、脂汗が流れた。
最後の劇では、殺人事件の話と、実際にその劇の稽古や本番、機材トラブル、脚本家が劇本番の最後の方になって降りるなどの劇団の現実問題とがシンクロしていく劇的展開、シリアスなようでいて、張り詰めたシーンでいきなり笑える内容になったりとコンセプトとしては、とても面白かった。
ただ、クライマックスシーンにおいて、せっかく今まで観客を物語世界に引き込んでいたのに、収集のつかない、相当無理な素人芝居レベルか、それ以下の終わり方には心底落胆したが、そこさえ何とかすればより良くなると感じた。
「PUZZLE~HUGALIVE2021~」「天穹の雫」
ハグハグ共和国
萬劇場(東京都)
2021/10/07 (木) ~ 2021/10/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/10/10 (日) 13:00
『破片』という劇を観た。その劇では、かつて虐待を受けていて、現在は学校の先生をしている女性、虐待を受けている子どもたちや、かつて受けていて心の傷が癒えきっていない大人たちなどに向けて、無償で食事を提供しながら、気軽に相談に乗る、虐待被害者を支援しているオバサン、現在虐待を受けており、今日自殺しようと決意している女子学生と、何とか自殺は思い留まるようにさせたい友達、かつて虐待被害者で、現在は弁護士をしている女性などが中心人物として出てくる。
虐待をテーマにしているが、それぞれの立場や価値観などによって、一方的な善悪論や単なる主観論に留まらず、多角的な視点で虐待問題を扱っていて、所謂新劇みたいに説教臭かったり、観客を教化することが露骨に表れていたりと言った感じがなく、劇を見終わった後に、社会問題としてだけではなく、もっと身近な問題として虐待の加害者、被害者、について深く考えてしまった。
カムカムバイバイ
U-33project
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2021/09/08 (水) ~ 2021/09/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/09/10 (金) 18:00
僕は『カムカムバイバイ』という劇を観ました。
群像劇で、社会派劇であり、不条理劇であり、少しサイコ·ホラーであり、劇を見終わる頃には、見につまされるような、他人事には思えないような気持ちにさせる作品である。
女性の上司に付き合ったことで、キャバクラの女の子入れあげた挙げ句、ストーカー行為に走る男性会社員、少し謎めいたところがあり、キャバクラ通いのかなり強引で、何かにハマると、それを人にも強引に押し付ける女性上司、それまではおバカで天真爛漫で、常に明るく元気だったが、女性上司にキレイになる香水を強引に勧められてからは、それがないと段々正常な状態でいられなくなっていくキャバクラ嬢、詐欺師で捕まった男は牢屋内で不思議で変わった女に救われ、それ以来その女性を探しつつ、透明人間のように殆どの人間の視覚から消える術を得て、逃げ続ける。また、それまで警戒心がなかったが、ある事がきっかけで警戒心を持つようになり、そして時を近くして自分が人から構ってもらいたい、優しくされたいんだと気付く女子アナウンサー、子どもっぽくて人を疑わず、いつかお金持ちになりたくて、そのためにはどういうことをすれば良いのだろうと悩んでいる女子アナウンサーと同居している女性、そして全てを見守っているが、物語の最後の方でとうとう感情が爆発してしまう、何とも人間的な神様など、相当個性的な人たちが出てきて、噛み合ってるようで噛み合ってないような会話が面白く、さり気なく繰り広げられる会話のなかにも、ユーモア、ブラックユーモア、皮肉が込められており、大いに笑えた。
キレイになりたい、人に構ってほしい、優しくされたい、お金持ちになりたいと素朴な願いから壮大な願い、欲望などを持つ人たちが、騙され、騙し、失敗し、挫けそうになっても何とか立ち直り、前に向かって進もうとする。しかし、物語の終わりのほうでみんなの願いを今まで一心に聞いてくれていた神様が爆発して、ハッキリとものを申す。
そうすると、今まで神様を頼り、お互いの幸せを称え合っていたのが崩れ去り、信頼、信じ合う心、自分よりも他人の幸福を祈っていたなんて真っ赤な嘘で、お互いを激しく罵り合い、人を疑い、SNSにはあることないこと書かれ、一気に拡散されるといった現代の噂に当たるSNSの負の部分も暴きだされ、人間の醜い部分があぶり出され、本性丸出しの、しかも神さえ救えない、そのどうしようもない終わり方に、他人事とは思えなく、自分にもそういう嫌な部分が多少なりともあるんじゃないかと思うと、背筋が凍りつき、嫌な余韻が尾を引いた。
あと、話は少し変わるが、この劇で、TVディレクターの役をやっていた俳優が、『お疲れちゃ〜ん』『もしもし〜○○ちゃぁ〜ん、今日この後予定ある〜』みたいな感じの、いわゆるTVディレクターの一般的なイメージを、さり気なく、でも相当誇張して表現していて、役者が演じてるというより、目の前にTVディレクターがいるという感じで、役と演者の区別がつかないくらい肉体から自然発生的に演じられていて、すごかった。出てきてちょっと喋っただけで、相当笑えた。
Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/08/05 (木) ~ 2021/08/10 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/08/08 (日) 14:05
febLaboプロデュース「Who's it?~ニューヨークの日本人〜」を観ました。天真爛漫で、相当ハイな日系人女性、テンションが異様に高く、人の話を聞かないニューヨークのアパートの管理人の女性、売れない画家の男性、小さなギャラリーを営む信用ならない男性、ダンサーの女性、そして、アパートの一室に何時間前からいるのか見当がつかない、銃を手にして座っている日本語しか話せないヤクザの男など、一癖もふた癖もある登場人物たちが、それぞれ存在感を発揮していて面白かった。
そして、役者と劇の登場人物たちが絶妙にマッチしており、且つ、役者の熱演ぶり、さり気ない所作から全身を使ってリアクションをしたりしていて、観ていて気持ちが良かった。
ヤクザが銃を持っていて、英語禁止で、スマホは机の上に置かなければいけない危機的状況なのに、最初のうちはヤクザにビビっているが、途中から、思い出話や何で自分がニューヨークで暮らしているのかという理由を話し出したり、日本人がアメリカにおいて、差別される話、そして、ヤクザが金品目的や命を取る目的ではないことが途中からわかってきたり、アパートの住人の男性の一人が、大麻を大量に所持しております、それを元手に新たな事業を展開してカリフォルニアに移ろうと考えていたことが物語中盤でわかったりと、先の展開が読めず、それぞれの思惑が絡まり、勘違いや空回りによる笑いがあり、見る者を飽きさせず、先が読めないものだから、次はどうドラマが展開していくんだろうとドキドキハラハラしながら観ていて、次第に気持ち的に目の前で起こっていることが演劇なのか、現実なのか、その境界が曖昧になるくらい劇世界に引き込まれた。
超ではない能力
24/7lavo
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/05/16 (日) 14:00
『超ではない能力』を観劇しました。
タイトル通り、社会に役立つでもなく、
たいして脅威ともならない中途半端な超能力を持った人々が集まり、そのような繋がりから、Youtubeの配信でそれぞれの能力を披露することにつながる。しかし、何回目かの配信で、注目を集める為にちょっとしたインチキをした人がいる。それでネットが炎上したりというようなドラマがある。なので途中どうなる事かとハラハラしたが、最後のほうでたいして役にも立たないどうでも良い能力を持った人々が向かってくる電車に飛び込み自殺をしようとしている女子高生を救う展開を観て、世の中に役に立たない、必要とされない能力であるとしても、力を合わせれば本当に追い詰められた人を救える。つまり、この世の中に役に立たない、どうでも良い存在なんて誰一人としていないんだということをしみじみと考えさせられた。
作品内のそれぞれの個性的で面白いキャラや過去が非常に暗いキャラを、俳優が迫真の演技だったり、熱い感じだったり、時にコミカルに表現されていて、俳優とキャラがシンクロして見えた。
ただ、最後の終わり方が結構強引に感じられたので、そこがまとまっていたらより良かったと思う。
共生
さんらん
アトリエ第Q藝術(東京都)
2021/03/17 (水) ~ 2021/03/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/03/19 (金) 19:00
『共生』という劇において、上野の動物園で働く祖父は戦争で、自分が育てている子象までも、飢え死にさせなければならない、そのどうしようもできない現状に苦しんだ。父は戦後、松屋デパートの屋上で子象のショーをやっているが、あることをきっかけに公務員と仲良くなり、一緒に小象を屋上から連れ出して上野の動物園に運ぶ為に思案し、行動し、最後はその血の滲むような努力が実を結ぶ。そして現在の娘は、女獣医としてアフリカに行き、動物自然保護区に象牙などを求めて侵入してくる密猟者達から子象を含む動物を護るため、体を張って闘い続けている。
という、それぞれ立場は違えど、動物に関わる仕事をしている1つの家族を取り上げて、その家族と動物の在り方を通して、動物との共生とはどういうことなのかを考えさせてくれた。
そして、象牙を欲しがらない、密猟業者から象牙を買わない、そういうことの積み重ねが動物と共に生きていくということなんだということを骨身に沁みて感じた。
羽化する朱い糸
劇団Pin to Hint
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2021/03/12 (金) ~ 2021/03/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/03/14 (日) 16:00
『羽化する朱い糸』という劇において、主役の真弓と、生みの親の朱音とを、俳優の望月ミキさんが、性格や雰囲気、声色を変えながら、見事に演じ分けていて、演技力があると感じた。また、最後のシーンで、主人公の真弓を演じるミキさんが、赤い蚕の赤い糸に絡め取られていきながら、妖艶さや、相手を引きずり込みかねない危険さ、それとともに春馬に対する純情さをも肉体や言葉を使っての迫真の演技が、思わず観ている僕に緊迫した状況を強いて、迫真に迫っていた。
春馬、先生、祖母役を演じた俳優の尼子亮平は、特に、頑固で、村のしきたりに異常なまでに固執する祖母役において、静かな言葉の端々に、急に何者かに取り憑かれたかのような狂気の演技に魅入った。また、最後のほうのシーンでの、今まで物静かで気が弱かった会社の後輩春馬役の亮平さんが、絶望や苛立ちから人が変わってしまう演技が、実に怪演で見事だった。
『布団漂流記』
尾米タケル之一座
Geki地下Liberty(東京都)
2021/02/24 (水) ~ 2021/02/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
『布団漂流記』において、政府による不正事件をあからさまに嘲笑して皮肉った笑いや、何度か同じ様な動作や言動を繰り返し続ける笑い、体を張ったスラップスティックコメディの要素、騎士が自身の過去を語るシーンで映像で文字が浮かぶはずが浮かばず、肝心のことを言わずに終わったので、そのことに対して周りが突っ込んだりすることによって起きるその場限りの笑いなど、とにかく終始笑わせてくれたが、主人公の竹広が引きこもりだったり、非常に人間味溢れたラブドールが出てきたり、暗い過去を持つシングルマザーフミ江に敵とも味方ともつかぬ騎士などが出てきて、物語の中に、出てくるキャラの過去や引きずっているものに現代の社会問題を内包させていて、終わる頃にはグッとくるものがあった。
主人公の竹広役の人が、本当の引きこもりってこんな感じだよなぁと感じさせるほど、演技から引きこもりの雰囲気を自然と醸し出していた。ほぼ主役と言って良いラブドール役の人は、劇中最後の方の竹広との○○○の場面で、手慣れた雰囲気と生々しさ、色気が際立った腰の振り方であったりの演技が目が離せない迫力があった。
竹広が劇中後半で言う「次元の王が部屋から出られずに引きこもっているのは、皆の特にユキさんの、王様は責任を持って国を治め、政治を行い、命令を出さなければならず、まずは部屋から外に出てもらわないと、という大きな期待や価値観の押しつけ、次元の王を心配していろいろなことをする、そのことが王にとってむしろ大きなプレッシャーとなり、結果、10年、15年、いやもしかしたらそれ以上部屋から出ない引きこもり生活が続くんだよ!!分かるか!?ユキさんが良かれと思ってやること、皆が呼び掛けに来ることそれ自体が逆効果なんだよっ!!!!」的な台詞を聞いてなるほどなぁと引きこもりの心理が少し分かったような気がした。「そうだとして、だとしたら、どうすれば良いってのよ」という皆の意見に、竹広は「2、3日といわず、最低でも3ヶ月はユキさんはお暇でも頂いて、城の外に出て、長旅でもし、皆んなは執拗に次元の王に声をかけず、そっとしておいてあげようじゃないか」というような台詞を言っていて、必ずしも引きこもりの人を支援しようとしたり、応援しようとしたりして、何とか外に出て普通の生活ができて、仕事をすることが本人のためにも幸せであり、引きこもり当人の生きがいにもなっていくという考え方事態が間違いなんだなぁと深く考えさせられた😓引きこもりの人が立ち直るように応援したり、支援することで立ち直ることよりも、返って当人のプレッシャーになることの方が多いということをこの劇で知って、距離を置くことも大切なのだと痛感した😔
『虔十公園林』 『双子の星』
J-Theater
「劇」小劇場(東京都)
2020/10/17 (土) ~ 2020/10/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/10/18 (日) 13:00
「虔十公園林」において主人公の虔十は、近くの森林に入っては笑ったりしているので、子どもからも周りの大人からも馬鹿にされ、蔑まれていた。ある時、親に頼んで苗木をたくさん買ってきてもらい、それを田畑の近くの草がたくさん茂っている土地に植え、伸びるのを待つが、やがて病気で亡くなる。この話を朗読と俳優の動きや表情で表現していて、俳優の演技も役柄にはまって、まるでそこに本当に虔十がいるような感覚に陥った。
また、その虔十という知的障害を持った青年後の血の滲むような努力によって、虔十が植えた苗木が本人が亡くなった後に、大きな雑木林の空き地となっており、本人の名を取って公園林としてその林が公的な遊び場として市が認めるようになったと言う事において、障害を持っていようが、そんなのは関係ない、その人のしたい事を極めれば、みんなもそのうち認めてくれるというようなことが伝わってきて、感動したし、何か自分の中で勇気が湧いてきた。
農園ぱらだいす
劇団匂組
駅前劇場(東京都)
2020/10/14 (水) ~ 2020/10/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/16 (金) 19:00
笑いあり、恋愛要素あり、ドラマあり、急に歌い始めたりと、次に起こる事がすぐには予想できず、面白可笑しかった。
何気ない日常会話の中に、不倫や浮気、急逝、受験問題、通学問題、離婚問題、それにジェンダー論、人生観、少子化問題など、深刻な問題がさり気なく織り込まれていて感心した。
物語の中心的な構成要素となる2人の恋愛も、なかなか素直になれなかったり、鈍感であったりと、もどかしさもありつつ、リアルな恋愛って案外こんなものなのかもなぁと思えた。
脳ミソぐちゃぐちゃの、あわわわーで、褐色の汁が垂れる。
オフィス上の空
シアタートラム(東京都)
2020/09/17 (木) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/09/21 (月) 13:00
解体工事のバイトをしている大河内大和と、大和が住んでいるアパートの自分の部屋の前に立っていた、清楚系の女岡部天音が出会い、お互いを知っていく中で生まれるドラマや、その周りを取り巻く人達の思いなどが絡み合い、先が見えないノンストップコメディになっており面白かった。しかし、途中から大河内大和が秘密にしていたことや天音が隠していたことが明るみに出たり、2人の過去が明らかになったりしていって、それにより2人の関係に亀裂が生じたりと、ドラマも盛り上がりつつ、それらの謎が大河内の友人によって明かされていくことに、次はどうなっていくんだろうというようなドキドキ感を味わえた。
2人の人一倍ぶっ飛んでいる性格や行動自体も印象深く、面白かった。
色々なドラマが起きたけれども、それらの苦難などを乗り越え、本当の自分をさらけ出した末に、大河内大和と岡部天音が幸せになれた感じに劇が終わっていて、途中どうなることかとも思ったが、ホッとすることができた。
この劇を機会に、改めてジェンダーの問題について深く考えてみようと感じた。
ReaDance THE FOREST
WItching Banquet
ハーフムーンホール(下北沢)(東京都)
2020/09/17 (木) ~ 2020/09/18 (金)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/09/18 (金) 16:00
太陽と月が少し擬人化されていて、人には太陽や月の声が聞こえないというふうになっている。そして、太陽と月がそれぞれが知っている物語を語りだし、途中で話が繋がっていって、話の結末に向かうという展開だった。
少し幻想的な話だとはあらすじを読んで知っていたが、劇に出てくる謎めいていて不思議な少女が最後の方で、実は父親から性的虐待を受けそうになったり、それを拒むといきなり暴力して来たりの生活が嫌だし、怖かったしで、森に逃げてきたことが分かったり、男の子がその弟になるはずだった母親のお腹の中から産まれて間もなくに息を引き取った赤ちゃんを隣のおばさんが土に埋めたらその子も天国で幸せになれるだろうというようなことを聞いて、赤ちゃんを土に埋めるのは可愛そうだと思い、かつて産気づいたおかぁさんのためにオレンジを取ってきた森に、再び足を踏み入れるなど、ただのメルヘンにしては、かなり話の内容が重く、ホラーにしては妙に現実味が強かったが、ある意味で内容がショッキングすぎて、鳥肌が立ち、身体が凍りつく程、怖ろしかった。
しかし、所々に入る太陽と月の掛け合いは程良く緊張感をほぐしてくれ、面白かった。
ツバメの幸福
ツツシニウム
キーノートシアター(東京都)
2020/09/09 (水) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/09/11 (金) 14:00
オスカー·ワイルド作の「幸福の王子」を参考にした『ツバメの幸福』という劇を観ました。
ほとんど原作通りなのですが、ところどころ違うところがあって、例えばそれぞれのキャラが凄く個性的に演じられていたり、幸福の王子像よりもツバメがむしろ主人公にされていたり、ツバメの葛藤や本当は幸福の王子に言われて立ち回った事なのに、自分はツバメなので、人に自分の言葉が上手く伝わらず、何か責任を感じたりする人間の様な、いやそれ以上の思いやりや切なる願いだったり、温かい心などを持っていることを劇中では強調しているところ。
自己犠牲の物語ですが、舞台ではそこの部分はそんなに大袈裟には強調されておらず、むしろツバメの心理描写や物語に出てくる他の人たちの一つ一つの小さなドラマの部分がかなり強調されていて、幸福の王子が強調されないことによって、神秘性や浮世離れした感じが薄まり、現実味が増して、感情移入しやすかった。
また、観ているなかで、涙があとからあとからほとばしり出てきて、涙腺が崩壊した。それぐらい感動した舞台です。まぁ、ツバメ役の女優の泣く演技や悲しむ演技が真に迫っていたので、本気で泣いたり、悲しんだりしているのかなと私に思わせたことも大きかったのかも知れませんが…。
後、今どき珍しく演出家が主要な役で出演しているのは驚きでした。現在において、なかなか演出、脚本、俳優の三つを器用にこなせる演出家なんて、ほとんど私が見てきた限り、特に若い世代ではあまりいないと思うので。
楽屋 —流れ去るものはやがてなつかしきー
ことのはbox
シアター風姿花伝(東京都)
2020/08/22 (土) ~ 2020/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/08/30 (日) 14:30
実際には役がもらえないのに、ひたすら化粧をし続ける女優達、かつて主演女優のプロンプターを努めた若き女優、苦労もしてきたが、妙に明るく振る舞う主演女優これらの思惑がそれぞれ絡み合い、時にシリアスに、時にユーモアが入り混じったドラマになっており、退屈したり、現実に引き戻されるどころか、その劇世界に引き込まれた。
最初は役が貰えないことへの焦燥感、諦め感情だった女優たちも、いろいろツッコミどころ満載で、機関砲のように喋りだしたら基本止まらない若き女優が絡むことによって、その心情が少しづつ変化していき、かなり浮いていた若き女優も最後は女優たちと一体となって劇の練習を始める展開になり、感動した。
中年の主演女優が若き女優に対して放つ、若いばかりが女優の命ではなく、経験を積み重ねるごとに培われていく演技力、そして信念を持ち続けて諦めない心の大切さを説く場面に、小劇場演劇の現状とマッチする部分も多く、感慨深くなった。
スーパー・ウーマン・リヴ
藤原たまえプロデュース
シアター711(東京都)
2020/08/04 (火) ~ 2020/08/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/08/09 (日) 13:00
スーパーで働く女性たちを中心とした日常を描くドラマだが、それぞれの店員の個性や思惑、レジ打ち選手権を巡ってのドラマ、途中から新規で入ってくる女性店員、主人公の女性の抱え込む悩みや責任感、主人公が依存していく占いの女性、などいろいろな人や事柄が絡み、スーパーという小さな空間を主に置きながらも、その中で繰り広げられる人間ドラマは意外にも壮大だということに感慨深くなった。
また、笑えるシーンも多く、自分の中に溜め込んでいたであろうストレスを払拭することが出来た。
そして、自分の性格や特性を相手に十分に伝えているつもりでも、余り相手に伝わっていなかったり、相手をfollowしたり、周りに合わせたり、普通であることに必死になって、自分を見失っている主人公に共感した。
仲間意識があり、新人のスーパー店員に対して、敵意むき出しの店員に対しても、優しく諭すスーパーの人達が、安定した給料を貰える会社員でも無いのに、それよりもある意味では、スーパーの店員さんたちの方が人間味溢れて見えた。
おくすり、ひとつ
法政大学Ⅰ部演劇研究会
YouTube Liveにて上演致します(東京都)
2020/07/17 (金) ~ 2020/07/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/07/17 (金) 19:00
リモートでの上演とあって、正直不安でもありましたが、実際にその動画を見てみたら、逆にリモートの特性を活かして、緊密な心理描写をした近未来のドラマに仕上げていて、こういうふうな演劇もありだなと実感した。
世界では人が消える謎の病気が蔓延し、人知れず消えた人が来る診療所があり、そこで処方される特別な薬を飲むと元の世界に戻れるという設定になっている。そしてそこに来る患者たちに対して盲目の女性の先生と助手のAIが悩みを聞いていくのだが、それぞれの画面で悩みを話していく患者との対応が、すぐ隣で話すよりも、心理カウンセラーとのリアルな対応に思えた。また、リモートだからこそ諦め、思い込み、泣くなどの感情を役者が身体を張った演技で、モロにさらけ出している気がして、こちらまで引き込まれた。
そして、劇を観終わった後、あまりにも今今私たちが抱え込んでいる様々な悩みとフィットし過ぎていて、共感し感動して眼から涙がとめどなく流れ、そのせいで眼は充血し、暫くは余韻に浸り、胸が熱くなった。
朗読劇『灯喬月塔』
LUCKUP
新井薬師 SPECIAL COLORS(東京都)
2020/03/26 (木) ~ 2020/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/03/27 (金) 15:00
天使になりたい悪魔が主人公だが、天使たちと悪魔両方の対立の描き方が現代社会における移民問題を彷彿とさせ、また一見天使と悪魔が仲良く暮らしているが、その実態は悪魔に対する一部の人々による差別意識や偏見が渦巻いていて、それが現代日本における反韓、反中的な考え方とも見事にマッチしていて、リアルに感じた。
主人公の悪魔に対する天使たちの複雑な思惑の絡み方と、主人公の悪魔が天使に対する憧れとが空回りして、それによるギャップネタなどもところどころあって面白かった。
朗読劇なのに動き回ってセリフを言う上に、よく役者を見ると、手に持っている台本のようなものの中身が見える瞬間がたまにあったが、中には何も書かれていないように見えたので、これは新しい朗読劇だと実感した。
中国神話の世界
カプセル兵団
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2020/02/26 (水) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/02/28 (金) 19:00
中国神話の朗読でありながら、アドリブやいきなり始まる一発芸、脇なはずなのに無駄に存在感を出してくる役者や昭和50年代TVネタに、何故か深夜にやっている番組の間に入るCMネタ、1990年代〜最近の流行までを取り扱って笑いに変えていたりと、とにかく面白く、ツッコミどころ満載で、自虐ネタまで入っていて、全篇を通じて爆笑のし通しだった。
また、役者の演技と音楽によって奥深くあまり一般的な知名度がない中国神話の世界に引き込まれつつ、且つ時々アドリブが入ったり、劇が一瞬中断したりとハプニングも数多くあり、その反応を見ているの自体が面白かった。