TOCTOC あなたと少しだけ違う癖
株式会社NLT
ザ・ポケット(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★
よく練られた脚本、これは面白い。エスプリの効いたフランス喜劇。前半は丁寧なキャラクター設定の解説。後半はその応用が細かく複雑に絡み合ってハイテンポの交響楽に。強迫性神経症の患者六人が医師の到着までの間、お互いの病状について語り合う。細かい約束事がラリーの応酬のように見事に展開。会場の笑いをかっさらったのは、同じ事を二度繰り返して言う強迫観念の女役、井上薫さん。何となくNOKKOを思わせる彼女が観客を爆笑の渦に叩き込む。潔癖症の山崎美貴さん、心配性の中村まり子さんも秀逸。もう一度観て細かい笑いを確認したい程。ルー大柴氏のパブリック・イメージでこれを見逃すと後悔する作品。
イーハトーボの劇列車
こまつ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/02/05 (火) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★
松田龍平氏が良かった。理想の日本人像とも言える宮沢賢治。彼の思想は高畑勲、宮崎駿に受け継がれ今も尚、正しい人間の在り方の象徴のよう。勿論、現実の賢治はそんな格好いい訳もなく。高等遊民の自己弁護的ユートピア論は太宰治始め日本文学お馴染みの定番。美化した現実逃避を必死で続ける無力な木偶の坊の姿に、松田優作の『それから』がだぶって見えた。土屋佑壱氏の出演シーンがかなり湧く。紅甘さんが印象的な二役で美しい。エスペラント語の歌が秀逸。長い割に散漫な印象になってしまった物語。『思い残し切符』の謎に惹き付けられる。
ビョードロ
おぼんろ
新宿FACE(東京都)
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
何となくティム・バートン×ジョニー・デップの『シザーハンズ』を想像していたら、全くの別物。筋肉少女帯の世界観。この世を憎み滅ぼすルサンチマン・ファンタジー。真の主人公、ジョウキゲンの登場から物語は加速する。わかばやしめぐみさん演ずるジョウキゲンの恐ろしいこと。トラウマ級のキャラ設定に呆然。子供騙しではない、濃密な世界観。戦争兵器としての病原菌作りを生業としているビョードロという民。一族を皆殺しにされた最後の生き残りのほんのひとときの月夜のお話。土方巽を思わせる軟体サーカス団の呪術的舞踏がまた凄い。
月の谷 赤い石
秦組
d-倉庫(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★
『赤い石』を観劇。主演・新垣里沙さんの何とも不可思議な存在感。俳優だと森田剛氏にも似たものを感じたことがある。ふてぶてしくも目が離せない、技術では表せない禍々しい『何か』。この人は一体何を演じていくことになるのか、興味は尽きない。(多分表象に現れるものとは全く別のことをしている。)横山一敏氏の醸し出す重厚な雰囲気が虚構を肉付けしていく。名前が判らないのだが、女中頭役の女優さんの怪演が凄かった。デフォルメされた動作に場内がどーんと弾ける。壮大な因果の輪を連想させる物語世界。他の作品にも興味が湧く。生演奏が見事。
陰獣 INTO THE DARKNESS
metro
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/01/17 (木) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
江戸川乱歩マニア必見。乱歩の脳内世界が見事に再現されていて至福。純粋な『何か』に無力なる理屈で立ち向かう明智小五郎の葛藤。大槻ケンヂ氏の言葉を借りるまでもなく、乱歩世界は社会不適合者の妄想である。天願大介氏のパズルのような演出が冴えに冴える。明智小五郎役いわいのふ健氏が実に良かった。月船さららさんは愛らしいキチガイをやらせると絶品。若松力氏との濡れ場は美しい。乱歩は人間そのものを的確に捉えている為、時代が移り変わっても通用するのだろう。観れることに感謝。
深沢ハイツ302~もう一つのニュートンの林檎~
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2019/01/05 (土) ~ 2019/01/09 (水)公演終了
満足度★★★
期待通り面白い。タイムリープものとして判り易く観易い。『オペラ座の道化師』みまさんのアコーディオンと生歌が凄すぎる。物語世界をはみだす程の破壊力。必見。主演ヒロインの今村美乃さんの存在感が楽しいので、話の流れがテンポよく進む。人気女子アナ役の那海さんも流石。ほぼワン・シチュエーションでこれをやるアイディアが良い。
Love 駈込み訴え
JAM SESSION
アトリエファンファーレ東新宿(東京都)
2018/11/06 (火) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★
成る程こんな演出もあるのか。何もない舞台上、7人のユダが口々に訴え続ける。“あの人…”は、“あの人…”が、“あの人…”を、“あの人…”に。愛する者を裏切るユダの心の葛藤。男女入り乱れ役者陣皆ボロボロ泣きながらの表現。嫉妬、失望、独占欲、自己愛、自虐。アイドルの熱狂的ファンの心理にも似て。『愛』とはそもそも何なのだ?がテーマのよう。時節柄、オウムを絡めるかな?と思ったがそれはなかった。
中国の不思議な役人
劇団☆A・P・B-Tokyo
明石スタジオ(東京都)
2018/11/01 (木) ~ 2018/11/06 (火)公演終了
満足度★★★★
寺山修司作品の中でも判り易く面白いのでお薦め。地獄の娼婦宿にさらわれた妹を救う為、兄は役人殺しを請け負う。ただ、その役人は不死であった。娼婦宿はエロ・グロ・ナンセンスのオンパレード。拾ったカストリ雑誌で読んだ丸尾末広の漫画のよう。飯塚美花さん初め娼婦達が客席にまで雪崩れ込み観客との垣根を破壊していく。ヒロインの花姚役、渡邉結衣さんが素晴らしい。よくこんな娘捜してきたなと驚いた。まだ中一、末恐ろしい。兄の麦役の横木安未紗さんが出ていると寺山修司度が高まる。出演している役者全員、実生活が見えない。舞台上にしか存在しないのではないかと思う程。
黄金バット~幻想教師出現~
劇団唐組
雑司ヶ谷鬼子母神(東京都)
2018/10/27 (土) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★
怒濤の展開、面白いのか面白くないのかすら判断不能になる。ただ見終わった後は凄い充足感に包まれた。幻の学校に消えた教師を、かつての生徒達が思い思いの方法で捜していく。キーとなるのが、『ゴッホは何故自分の耳を切ったのか?』である。初期永井豪のキャラクターを使ってつげ義春が描いた劇画のよう。第二幕、隻腕の教師、月船さららさんの登場から狂気が炸裂。完全に気が違ったオーラに客席の空気が呑まれた。藤井由紀さんとの対決は見もの。福本雄樹さんが何でもこなせる良い役者だなあと感心。 ラストの光景の美しさは必見。
紅姫物語【ご来場ありがとうございました!】
劇団えのぐ
萬劇場(東京都)
2018/10/24 (水) ~ 2018/10/28 (日)公演終了
満足度★★★
面白かった。役者のレベルが高く、細かい演出がしっかりしている。妖怪と人間の純粋なる恋物語。劇中劇にて『椿姫』をも想起させる。物語の展開が想像の斜め上を行くので飽きさせない。噺家役の立田聡実さんの口上が実に良かった。キャラ一人一人に何かしらを持たせていてその他にはしていないのが良い。
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
楽園王
サブテレニアン(東京都)
2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
観に行って良かった。下に電球を吊るした椅子が十二脚。殆どそれだけのセットなのだが、夢うつつの世界にいざなわれていく。ずらした句読点、妙なイントネーションで語られる宮沢賢治の世界。エッシャーの騙し絵からのインスパイアということでこちらも細かい部分にも勘繰ってしまう。『銀河鉄道の夜』の世界と一組のカップルの物語とが同時進行していく。ヒロインの藤田早織さんが綺麗だった。宮沢賢治論としても興味深い。敢えて欠落させている感覚が夢の中のよう。ラストのジョバンニが印象的。
想稿 銀河鉄道の夜
ことのはbox
新宿シアターモリエール(東京都)
2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
未完であるが故に果てしなく続く銀河鉄道の旅。ももクロの『幕が上がる』やamazarashiの『スターライト』などジョバンニとカムパネルラは未だ銀河を彷徨していく。自己犠牲に依って世界を正そうとするカムパネルラ役を岡田彩花さんが好演。凛とした佇まいで美しい。ジョバンニ役の春名風花さんの涙ぐむ演技は流石。二人が銀河鉄道の旅に出ないのは珍しい。マタギ役の山崎亨太さんがド迫力。作品の世界観に厚みを増した。要所要所で登場するダンサーの5人は必見。驚く程ハイレベル。楽曲が素晴らしく照明も工夫されている。観劇後、宮沢賢治が何を表現したかったのか、想いを馳せることでしょう。
燃えひろがる荒野
ピープルシアター
シアターX(東京都)
2018/10/03 (水) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★★
天才作家、船戸与一の魂は未だ燃えたぎる。氏の遺した浪漫が舞台上の荒野に吹きすさぶ。日本の黒歴史、幻の満州国。四兄弟の視点からそこに確かに生きていた者達の息遣いを聴く。シェパード犬の猪八戒がPUNKでかっこいい。確かに船戸与一の作品であった。アブサンを飲みたくなる。観た方が良い。
大脚色
Dangerous Box
浅草六区 ゆめまち劇場(東京都)
2018/08/08 (水) ~ 2018/08/11 (土)公演終了
満足度★★★
『ドグラ・マグラ』的脳髄の迷宮のような物語。ある著名なミステリー作家が殺害される。彼の遺した最後の作品の中に真相が隠されているのか。編集者が原稿を読み進めると、現実と虚構がリンクしていく。複数の世界で同時進行する連続殺人事件。いよいよ名探偵木暮一片の登場である。劇場の特性をフルに生かした体感型ミステリー。モーツァルトが大音量で轟く。篠田賢一さんが実に良かった。ダンサーが魅力的。
泣いた赤鬼
糸あやつり人形「一糸座」
シアターX(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
観ておいた方が良い。『泣いた赤鬼』に涙したことのある全ての人へ、そのもやもやした涙の正体が掴めるかも。歌と演奏も兼ねる王子菜摘子さんが素晴らしい。赤鬼役の田中英樹さんの存在の在り方に唸る。誰もが知っている話の新しさ。高畑勲作品に通ずる。
散ッと舌を突く凍えそうな毒夢
劇弾☆ムーチョ・モーヂョ
吉祥寺シアター(東京都)
2018/07/26 (木) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★
とある戦地にある精神病院の患者達が今日もひたすらボケまくっている。それをボンヤリと眺めていると、突然木刀片手の看護婦、那海さん演じるドロン嬢が突っ込み捲り暴れ捲る。そこからは怒濤の展開、戦場の狂気と病院の狂気の取っ組み合い。筒井康隆風シニカルなドタバタ。那海さんが好き放題やっているのがスカッとする。自殺願望のある患者役の安達優菜さんも印象的。
NoBody,NoParty
東京AZARASHI団
シアターサンモール(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
超面白い。筒井康隆調ドタバタ・メタ・フィクションが好みの方、観といたほうが良い。人を笑わせるとはこういうことだ。三谷幸喜『ラヂオの時間』ぽいかも。昔ながらの喜劇の良さで観劇後、温かい。
火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」
オフィス上の空
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★
どこにでもあるような売れない小劇団が突如、大規模な爆弾テロを敢行。大量の被害者を生む。フリーのルポライターはその謎を解明すべく、加害者の家族や獄中の犯人に取材を続ける。到頭一人の自称女優が犯行に至るまでの手記を手渡す。
LADYBIRD,LADYBIRD
アリー・エンターテイメント
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2018/05/02 (水) ~ 2018/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★
評判が良かったので気になっていたのですが、観てみると納得。主演の葛岡有さんの顔芸の凄いこと。ギャグセンスが高い為、コメディとしても秀逸。アンサンブルも含め全ての出演者が歌も踊りもハイレベル。ディズニー映画並の志の高いシナリオ。マザーグースの詩を下敷きにしているのであろう。人に勧めたくなる作品でした。一人二役の吉田菜々さんも良かったです。