ヴォンフルーの観てきた!クチコミ一覧

421-440件 / 699件中
セイレーンの痕

セイレーンの痕

たすいち

吉祥寺シアター(東京都)

2022/06/23 (木) ~ 2022/06/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

いきなり開幕からピーズの『しげき的な日々』が轟く。
「バカはたばになって がなっているだけ
 バカはちぢこまって だまっているだけ
 きどってねーで スリルだぜ
 しげき的な日々」
作品世界とは全く関係なく、15周年を迎えた劇団の雄叫び。人生やったもん勝ち、吉祥寺シアターが沸く。

幻想的な舞台美術は海上にぼんやりと浮かぶ光る金属の環。ギリシア神話の海の怪物セイレーン、美しい歌声で人々を惹き寄せ惑わせたまま喰い殺す。

物語はカリスマ的人気を博す女性シンガーの歌声に導かれた人々の群像劇。岸口萌香役の北川理恵さんがメチャクチャ説得力のある歌声、楽曲の完成度も高い。(本物の歌手だった)。『Polaris(ポラリス)』は頭上に輝く北極星、闇夜を彷徨う旅人達の唯一の目印。それを遠く見上げる者達一人ひとりに「大丈夫」と優しく告げてくれる。ライブシーンが盛り上がるので、もっと観たかった。
信者のように熱狂し取り憑かれていくファン達。そこに疑念を感じた者達がライブハウスに潜入する。

同時に描かれるのは、とある女子高の合唱コンクール前の様子。やる気をなくした教師(中田暁良〈あきら〉氏)や何かに悩み続けている生徒(永田紗茅さん)、それを心配する友人(中野亜美さん)。

小柄なチカナガチサトさんと身長182cm!の杉田のぞみさんの対峙するシーンが絵になる。
印象に残るのは信望厚い学級委員長の中野亜美さん。彼女はどんな役を演らせても何か気になる存在感。
ファンの一人、小野里茉莉(おのざとまり)さんが可愛かった。

ネタバレBOX

北川理恵さんに自分の力を預け一緒に歌う幽霊は巨乳が目立つ永渕沙弥さん。(今作を最後に無期限休養とのこと)。聴く者の潜在意識に働きかけるサブリミナル効果で次々に聴衆を魅了していく。ただ自分の想いを誰かに聴いて貰いたいと思うだけの孤独で純粋な女性。普通はこの手の悪霊キャラには邪悪な野望があるものだが面白い設定。
北川理恵さんを信奉し路上ライブからずっと追い掛けている最古参ファンは山咲和也氏。彼女を「キチキチ」と呼ぶのが気になる。
ライバルだった筈がどんどんファンを取られて激しく人気の差を付けられていく落ち目のシンガー、大森さつきさん。金髪ロングはやたら似合っていて美しい。ウィッグだと思っていたが、地毛か?
独りアクション俳優のような青木清四郎氏。舞台上を上下左右奥手前、走り廻り踊り廻る。気ままな風来坊の亡霊。
古参ファンの細田こはるさんは『嫉妬深子』の印象が強い。
北川理恵さんの「助けて」と云う心の声が聴こえて会場に訪れた宇佐見輝(あきら)氏。彼の存在を上手く使いこなせていないのが残念。

複雑な物語の語り口には作家のオリジナリティが溢れる。ばら撒かれたエピソードが多彩で話の構造がなかなか読み取れない。二つの話が実は5年間の隔たりがあったことが最後に分かる仕掛け。

生徒に掛かりっ切りになり過ぎて、家庭が崩壊し妻に去られた教師。仕事への意欲を無くし次に何かあればもう辞めようと思っている。
両親の離婚問題で自分が何かを選択することに恐怖している少女。
友達の為に何かをしてあげたいのに何もしてやれない無力さに涙する少女。
もう誰が歌ったものかさえ分からない『Polaris』、それを編曲し合唱する生徒達の歌声が流れる。
「何もしてやれないかも知れないけれど僕はずっとここにいるよ。ずっと君の傍にいるよ。僕は君の味方でいるよ。」
北極星が闇の中で煌めく様が確かに見えた。
ゴンドラ

ゴンドラ

マチルダアパルトマン

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『黄色いゴンドラ』

凄い才能。ウォン・カーウァイの登場時みたいな。触れるもの皆黄金に変わり、未だ誰も観たことがない作品世界の扉が開かれる。
よくある設定の三人芝居なのだが、辿り着く到達点に驚く。一体ここは何処なんだ?数十分の観劇(しかも初日2000円!)で相当参った。これは是非観に行った方がいい。コメディとしても秀逸。

山本直樹のエロ漫画みたいな開幕で、東京から田舎の実家に帰ってきた無職引き籠もり駄目男(坂本七秋〈ちあき〉氏)が寝たきりの父親の訪問介護のヘルパー(小久音〈さくね〉さん)に恋をする。その女性は天然?というかかなり頭が悪く、会話もなかなか成立しない。これシナリオなの?と驚く程、自然に間の抜けた噛み合わない会話のラリー。駄目男の叶わぬ恋模様かと思いきや、全くそんな話ではない。宇宙論だ。

ネタバレBOX

小久音さんは若い頃の宮崎美子を薄幸そうにしたような美人。会話のセンスが抜群で、これを書いた作家は天才だ。「ん?」の使い方。
坂本七秋氏は典型的な駄目っぷり。「ああ、これは駄目だな・・・」と誰もが哀しげに溜息をつく。その駄目さ加減が段々と笑えなくなり、みんな己の分身のように愛おしく感じていく。
ズレた二人の間に理性として突っ込みを入れるファミレス勤務の妹(富山華佳〈はるか〉さん)。飼い犬はダークネス号(ダーク)、カワウソはウソツキ(ウソちゃん)。地に足の着いた現実に生きている者の声を聞かせてくれる。

多分キーになる話が母親に関する“何か”なのだろう。「妹と並んで乗った観覧車、向かいの席の母親の顔が逆光で思い出せない」と主人公は語る。「貴女に母に似たものを感じた。だから一緒に観覧車に乗ってくれませんか」と。
妹も「母の死の時、兄が私を守ってくれた・・・」と涙ながらに“何か”に触れる。それはマクガフィンで存在しないものなのだろうが、この物語の底流に流れ続けている。

『ブロック宇宙論』とはそもそも時間など存在しないと云う理論で、「過去・現在・未来が今全て同時に存在している」と云う考え方。この考え方だと仏教で云う因果律が成立し得ない。主人公は自分を駄目にした“因果律”にがんじがらめになっていたが、ふとそこから自由になる。ほんの少しだけ。
嵐になるまで待って

嵐になるまで待って

CfY

新宿村LIVE(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

原作は1991年に発表された小説で1993年に舞台初演。韓国映画『超能力者』に感じが似ているなと思ったが、こちらは2010年の作品。
『ナルニア国ものがたり』がアニメ化、急遽声優のオーディションを受ける中舘早紀さん。その独特な声が評価され見事合格。ベテランの中3声優・環幸乃さん、主演の人気俳優・土屋兼久氏と顔合わせ。そこにアニメの音楽を担当する作曲家・三浦剛(たけし)氏とろう者(聴覚障害者)である姉の椎名亜音さんがニューヨークから挨拶に訪れる。実は土屋氏と三浦氏には友人ギタリストに関わる因縁がありその場で口論、喧嘩となるが・・・。

狂言回しでもある精神医学教授役、近江谷太朗(おうみや・たろう)氏が印象的。カエルのぬいぐるみとやるユーモラスな腹話術。声が出なくなった中舘さんが何とか身振り手振りで伝えんとする必死のジェスチャーを、悉く外してみせるアドリブ満載の遣り取りに場内爆笑。声が出せない中舘さんが必死に笑いを堪える程の好き放題。観客の心を巧みに掴み掌に乗せて操ってみせるサイコロジーは流石のベテラン技。手話の腕前も凄い。

「劇団6番シード」から椎名亜音さんと土屋兼久氏が参加。
ろう者の雪絵が物語のキーパーソンになる為、流麗な手話が飛び交う。椎名亜音さんをこの役に選んだセンスの勝利。いつも早口で捲し立てる彼女が一言も喋らない役で見事な存在感、全く凄え女優だ。奥さんがろう(聴覚障害)の女優、忍足(おしたり)亜希子さんである三浦剛氏も本物の手話を披露。(ちなみに二人の出会いは今作の2002年の再々演公演での共演)。
手話が理解出来たならばもっと楽しめる作品だろう。

テーマは『聴こえない声と言葉にできない想い』。障害で声を出せない人もいれば、声は出せても本当の気持ちが伝えられない人も沢山いる。この世に満ち溢れた“聴こえない声”が人々を苦しめ、無意識を支配している現実。言語化すると途端に嘘になってしまう淡い複雑な想い。人に何かを伝えようとすることの難しさ、同じく他人の気持ちを正しく受け止めることの難しさ。人と人とが意思を疎通する唯一の手段、コミュニケーションの苦しみ。

ネタバレBOX

椎名亜音さんが演じるのは天真爛漫な善人、ろう者の雪絵。
彼女の弟・波多野役の三浦剛氏が人の心を読み、相手の無意識に暗示を掛けて意のままに操る超能力者を怪演。佐村河内守や高野拳磁を思わせる妖気、怪僧ラスプーチンすら連想させる。少年時代から、ろう者の姉に危害を加える者達を幾人も始末してきた血塗られた過去。
ユーリ(中舘早紀さん)は波多野と偶然同じ声質を持ち、同じく特殊能力を持っている可能性がある。胸に秘めた片想いと自身の声がコンプレックスであることを波多野に読まれ、暗示を掛けられてしまう。
チカコ(環幸乃さん)も実はテレパスで、相手の心を読み、相手に暗示を掛け操って生きてきた。(流石にこの設定はやり過ぎだろう)。

クライマックス、暴風雨の高層ホテル、波多野の催眠暗示から逃れる為、幸吉(野口オリジナル氏)とユーリは部屋の灯りを消し窓を叩き割り、嵐の夜に身を委ねる。

無垢なる雪絵の無意識が波多野に命じた殺人だったのか。全ての汚泥を背負って波多野は消えていく。
自らの意志で声を取り戻したユーリはチカコと『ナルニア国ものがたり』の読み合わせ。「君が本当にそう信じてくれたのならばその時それは本当になるんだ」。
バロック【再演】

バロック【再演】

鵺的(ぬえてき)

ザ・スズナリ(東京都)

2022/06/09 (木) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

初演を観ているので二回目。
野花紅葉(もみじ)さんの美脚がエロエロ。小崎愛美理(えみり)さんの秘書も良い。杉本有美さんの霊感NPOもやたら美人だった。

照明バッテリーの充電トラブル(?)で演出の寺十吾氏が舞台に登壇して突然の中断。充電休憩を挟んでの再開。寺十吾氏は土下座までしたが、観客は玄人でこの手のトラブルには慣れたもの。何の混乱もなく拍手で舞台の再開を後押し。逆に後半戦の雰囲気が良くなった程。

もうこれはホラーではなく、メタ的セルフパロディーの域に達しているのでは。

ネタバレBOX

途中、これは作家と役者の話ではないかと考え始めた。絶対的な権力を持つ作家(創造主)に役者達一人一人が抗うような。作家(超自我)をどう切り崩していくのかの寓話。そう考えないとどうも物語の構造がおかしい。作家は単純なホラーを語ることにうんざりしているようだ。

黒沢清や高橋洋など、Jホラー・ムーブメントを牽引してきた作家がことごとく方向転換。黒沢清の『LOFT』を当時観た時、本当にこんなものを創る作業が心から嫌なんだろうなあと同情すら覚えた。「もう怖いと思うものが無くなってしまった」と彼等は語る。恐怖は突き詰めていくと笑いに変化し、笑いは狂って意味を為さなくなるもの。無意味と真剣に向き合う作家は当然熱烈なファン以外からは相手にされなくなる。高木登はどうもそんな境地と向き合っているような気がした。全くの勘違いなら申し訳ない。煮詰まった時は原作ものか史実に基づいたものをやると良い。
瀬沼さんのことを何も知らない

瀬沼さんのことを何も知らない

ライオン・パーマ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/06/08 (水) ~ 2022/06/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

海辺の田舎町。舞台は人気ラーメン店に並んだタクシー運転手(草野智之氏)と市役所勤めの幼馴染(星野そのみさん)のエピソードから始まる。なかなか席が空かない人気店。一人どうも奇妙な客がいるようだ。その男の余りの気味悪さに、隣の喫茶店に集った町の顔馴染達が語り合う程。一人の男が登場したことにより小さな町にさざ波が立っていく様相はスティーヴン・キングの『ニードフル・シングス』を思わせる。

主演は瀬沼敦氏、役名もそのまま。長身で強面の妙な雰囲気は古尾谷雅人と田中哲司を足して更に異様な犯罪者のオーデコロンを振り掛けたような。全く内面を他者に類推させないこの男が観客の心を徐々に掴み、ある種の感傷を呼び起こすのは見事。
海沿いの小さな田舎町、花村怜美(さとみ)さんは町の男の誰もが恋するような華のあるホステス。ママのいないラウンジやクラブ的な店で男達に夢を売っている。彼女の所作が本当に魅力的で目を奪われる。
その店「ピンクムーン」の店長、 嶋澤秀展(ひでのぶ)氏はスリムクラブの真栄田賢を思わせるゴツさ。
狂言回し的な役回りのタクシー運転手、草野智之氏は元巨人の槙原寛己似。
人気ラーメン店「漫々亭」の主人、樺沢崇氏は若い頃の石橋蓮司に似た印象的な風貌。
ラーメン店に弟子入りする室谷靖氏は鳥越俊太郎っぽい。
ラーメン店の隣にある喫茶店のマスター、草野智博氏はモロ師岡に似た雰囲気で物語の謎を解くキーパーソンに。
喫茶店でバイトする高校生、本多正憲氏は競歩がよく似合う。オダギリジョーの若い頃みたい。
スーパーのパート役、斉藤優紀(ゆうき)さんがお色気ムンムンのミニスカでエロかった。

長目のコントが続いていくような奇妙な作風。そこにこの町で過去に起こった奇怪な事件が絡んでくる。そして第二幕からいよいよ物語は作家の語りたかった核心に迫る。

ネタバレBOX

花村怜美さんと瀬沼敦氏が「ピンクムーン」で二人きりになるクライマックス。花村さんは過去を捨てて逃げ続け偽りの自分で生きていくことを腹に決めている。瀬沼氏にも自分と同じ業を感じ、二人で町を出て行かないかと誘う。このシーンで流れる曲がブランキー・ジェット・シティの『いちご水』(しかもLive Version!)。まさかここでこう来るとは・・・、参った!

「サヨナラが知ってるのさ 何が一番綺麗な世界?
 目に映るもの全て 切なくなる程純粋なものばかり···」
「消えてくれないか今すぐ 僕の目の前から今すぐ
 死ぬ程お前を愛しているから」 

死ぬ程美しく愛おしいから、それを醜く感じてしまう前にサヨナラを告げようとする歌。それ以外に美しさを守る術を知らない愚かな人間の詩。
ああ、ここでこれを流すか・・・、と胸が千切れそうな想い。この世で一番美しい女の心の中に手を伸ばした男達の零す涙。(店長、嶋澤秀展氏がボロッと流した涙の重たさ)。この海辺の田舎町は弱い者達のありったけの優しさで出来ていた。優しくて優しくて痛くて堪らない。

この曲が流れた以上、瀬沼氏が一緒に行くことはないことを観客は知っている。花村さんは独り海辺でタクシーに乗り込み、「何処か遠くへ」と告げる。喫茶店では瀬沼氏が窓の外の海を黙って見つめている。ヌーヴェルヴァーグだ。BJCなら『砂漠』なんかを流したくなる気分だが、『いちご水』を選曲する作家のセンスにやられた。
夏至の侍

夏至の侍

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/06/07 (火) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「金魚金魚、鬼祓えや厄祓え、全てを流せや永久に
 金魚金魚、生まれ変われや人となれ、命を繋げや永久に」
この印象的な劇中歌、作曲はもりちえさん!

昭和49年7月、記録的な台風が大分県に上陸。舞台はここから開幕する。由緒ある老舗の金魚問屋、その跡取り息子が新婚3ヶ月の妻を遺して水死。残された一家は、女主人(音無美紀子さん)、長男の嫁(板垣桃子さん)、女子高生の長女(長嶺安奈さん)、次女(大手忍さん)。その後二人の娘は自由と夢を求め家を捨てて出て行くことに。
昭和60年夏至が近付いたある日、それぞれ現実に敗れ果てた二人の娘、あてどなく足は実家へと向かう。

ステージ上部から降り続ける雨。裏返り、奥へと可動するセット、舞台美術は流石の出来栄え真骨頂。皆が差す何本もの黒い傘が印象的な場面転換を生む。

「夏至の侍」とは、夏至の水門開きの時、何処からか生まれ育った溜池に帰って来る金魚のこと。身体中傷だらけになりながらも生命力に満ち溢れた縁起のいい存在とされる。水車は台風で壊れたまま何年も放置され、水は腐り淀んだ死に池にもう金魚なんか育ちはしない。しかし閉業目前の金魚問屋の溜池で水面を跳ねる赤い金魚を見た者が現れる。

鈴木めぐみさん演ずる本家の女主人の優しさに救われる。
この劇団の顔といえば、客入れのもりちえさん。誰もが間違いなくファンになる。

ネタバレBOX

それぞれ物語を抱えているのだが、各支流が本流に合流し奔流が激流へと川の大氾濫を起こすまでには至らない。板垣桃子さんの秘めたる恋のエピソードの描き方が物足りず勿体無い。(イチジクの花言葉は「実りある恋」)。ヤンキー長女の子宮癌、多額の借金を返せずに逃げ出した次女、親友との約束の為に無償で水車を修繕する大工(稲葉能敬〈よしたか〉氏)。
どうも話と話が上手く噛み合わず転がっていかないもどかしさ。主人公の視点を置かず群像劇にしたせいなのか。音無美紀子さんの自分に言い聞かせるような「負けんぞ、負けんぞ。」の呟きだけが作品のリズムとなる。

今作に足りないのは、登場しない冒頭で水死した跡取り息子。彼の幻影を「夏至の侍」とだぶらせて語るべき。息子であったり、夫であったり、兄であったり、親友であったりする。登場しない彼の存在を観客もリアルに手触りで感じられた時、ラストの奇跡を音無美紀子さんと共に体感出来るのであろう。
関数ドミノ

関数ドミノ

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/05/17 (火) ~ 2022/06/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

粗筋から藤子・F・不二雄の『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』を想像したが、M・ナイト・シャマランの『アンブレイカブル』だった。
2005年初演、2009年再演、2014年再再演。2017年寺十吾によるプロデュース公演。

地方都市の交通事故、横滑りした乗用車の助手席部分と歩行者がぶつかった。歩行者には何一つ怪我はなく、逆に車は大破。助手席に乗っていた運転手の娘は意識不明の重体。その事故を目撃していた複数の人物が保険屋によって集められる。誰もが納得のいかない“神の奇跡”。一人の男が半生を賭けて導き出した「ドミノ幻想」理論について語り出す。

ネタバレBOX

『アンブレイカブル』は先天的に脆い骨を持って生まれてきた「ミスター・ガラス」がアメコミに耽溺する内に、自分の対極であるスーパーヒーローも実在するのではないか?と捜索する話。そんな人間を見付ける為に大規模な事故を自ら仕組み、生き残る者を調査する。

今作は「ドミノ幻想」理論と云う架空の理論を掲げ、願いが全て現実化する“ドミノ”を探し求める男の執念。“ドミノ”と睨んだ者にHIV陽性の男を近付かせ、彼の力によって陰性に変わるのかを試す。男は仲良くなり友人関係を築くのだが、彼といて変わったことといえばやたらパンチラを目撃することだった。“ドミノ”の願いによってパンチラ目撃率が大幅に上がったのか!?それともただの偶然か?

誰の視点による願いなのかがドラマの焦点。しかも“ドミノ”の力は半永久的なものではなく、時と共に移り変わる一時的なものでしかないという。誰にも確定不可能な、まさに妄想。ある一時期、神の力を手にしていたかも知れないという推測に基づく・・・、仮説。精神科医の言う通り、そんな妄想にしがみついていても全く仕様がないこと。不思議な事件(バグ)に拘り過ぎて全てを台無しにしてしまうパラノイド(偏執狂患者)のような話。
サラサーテの盤

サラサーテの盤

くじら企画

座・高円寺1(東京都)

2022/05/21 (土) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』が大好きで、それを期待して観に行った。
内田百閒(ひゃっけん)の短編小説『サラサーテの盤』。
1904年にレコーディングされた『ツィゴイネルワイゼン』、作曲家サラサーテ本人がヴァイオリンを弾き、フアン・マネンがピアノの伴奏を。3分30秒辺りでサラサーテ本人のものと思われる謎の声が入っている。(伴奏者への指示とされている)。
主人公の長年の親友が亡くなり、遺された妻が生前旦那が貸していた物を返してくれと訪ねて来る。その中の一つがサラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』のSPレコード盤。すぐには見付からず、探しておくと主人公は言う。

主人公ウチダ役の戎屋海老(えびすやえび)氏が奮闘。小日向文世や石橋蓮司を思わせるルックスでコミカルなマイムが絶品。夢と記憶の迷宮を彷徨い歩くような物語。どこかしら『銀河鉄道の夜』やつげ義春を想起する。「カラン コロ カラカラカラ」と頭上から音がする度にふと我に返るよう。ちぎりこんにゃくのことが頭から離れなくなる。

ネタバレBOX

難解。やっぱりちょこちょこ居眠りの人が散見。多分、生と死の境目に迷い込んでしまったお話。懐かしい死者達が生き生きと存在し、自分の記憶が頼り無く混在する。瓦の上を小石が転がるカラカラという音、庇を伝って庭に落ちたのだろう、音は途中で消えてしまう。(自分には丁半博打の壺振りの音に聴こえた)。人の一生を転がる小石の音に仮託してみせたのかも知れない。
花柄八景

花柄八景

Mrs.fictions

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

才能に満ち溢れた舞台。ファンタジーのような、落語の一席のような。
落語界の名門花柄一門。花柄花壇師匠役は岡野康弘氏。これが素晴らしい。とにかく惹きつけられる話芸。
その弟子、前座のプラン太役はぐんぴぃ氏。愛らしい巨漢で語り手も担う。

PUNKSの鉢は今村圭佑氏。頭の悪い喋り方が秀逸。
その彼女、ナンシー・スパンゲン風味の苗は永田佑衣さん。今作のかなりの笑いを担っている。
橋の下で暮らしていた風変わりな少女、燐役は前田悠雅さん。チラシの浴衣の女性も彼女。物凄い演技派なのか天然なのか判断が付かない。ただ強烈な印象が残る。
この三人の微妙な関係性、口の利き方や会話の内容が絶妙。

今作に関わった人全員の次作に興味が湧く。
落語に何の興味もなかったが、岡野康弘氏のような人が高座に立つのなら一度見てみたいと思った。そのぐらい落語の魅力に溢れている。
照明の暗転の繊細な具合が絶品。この効果が強烈で作品の記憶を夢うつつなものとする。
不思議な話で、今作を人に薦めたくなる気持ちに皆自然となってしまう。

ネタバレBOX

「お後がよろしいようで」の意味をプラン太が解説。「次の方の準備が整いましたのでここで切り上げます。」との意味。これがマクラ(?)になってサゲが綺麗に決まる。

『シド・アンド・ナンシー』落語もよく出来ている。「ヴィヴィアン・ウエストウッドのブティック、『SEX』で・・・」から始まり「山師マルコム・マクラーレンがチンピラのガキ共を集め・・・」と来ればニヤニヤしてしまう。作者は本当に好きなんだろうなあ。ちなみにシド・ヴィシャス〈兇悪なシド〉の本名はジョン・サイモン・リッチー(母親が再婚してビヴァリーに)。ジョニー・ロットン〈腐ったジョニー〉が飼っていたアルビノのハムスター、シドに似ているとからかって付けたと昔聞いた。(諸説あるようだ)。

燐の存在が不思議。一年中季節外れの花を摘んできてはそれは枯れず、戸籍もなく誰にも正体を掴ませない。やたらケラケラケラケラ笑う。AI×初音ミクに敗れた花壇師匠が彼女にこそ自分の落語を託した理由。

終演後、階下に降りると貼られているポスターの絵柄が変わっているので要チェック。初演の60分バージョンも観てみたかった。

『人生讃歌』 Hazel Nuts Chocolate
孤という毒

孤という毒

獏天

サンガイノリバティ(東京都)

2022/05/14 (土) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

明日で50になる元刑事、今は自殺防止センターで夜勤。追い詰められた見知らぬ老若男女達と、受話器一つで向かい合う。妻は男を作って出て行き、17の娘はニ年前に家出して失踪。カップ焼きそばが御馳走で、独りで好きな曲を熱唱するのが大好き。自殺を思い詰めた人間がふと脳裏を掠めた気分でダイヤルしてくる。その微かな“生”への渇望の欠片を嗅ぎ分け手繰り寄せていく作業。

亀石太夏匡(かめいしたかまさ)氏、これが初舞台とは本当なのか?ルックスからも演技からも自信が満ち溢れている。歌もやたら上手い。玉置浩二の『メロディー』なんか素晴らしい。
全く退屈とは無縁。舞台上は一人だが受話器越しに声の出演者が複数。映画の脚本家を目指していただけあって、映画的な仕掛けに充ちている。良い台詞が沢山あった。
「本当に孤独でないと死ぬ資格はない。」
「全部捨てちまえばいいじゃないですか!」
「正しくなくてもいいじゃないか!」
自分が自分を苦しめていることに気付かなくてはいけない。
今、凄く心が弱っている人にお薦め。

ネタバレBOX

3人目の電話から一気に話は映画的に。言葉を口に出そうとしない相談者。受話器を指でコツコツ叩く音だけが響く。モールス信号かと思ったがそこまで複雑なものでもない。「はい」(1回)と「いいえ」(2回)の合図だけを勝手に決め、無言の相手に向かって亀石氏は喋り続ける。自分の半生、トラウマ、悩み、苦しみ、不安、葛藤、孤独、迷い・・・、堰を切ったように怒涛の言葉と感情が氾濫し狭い室内を浸していく。凄い熱気、これを観れただけで充分。

亀石氏の父は東映ニューフェイスの亀石征一郎。盟友伊勢谷友介と映画を製作し、「社会貢献に繋がるアート」を理念に掲げた会社も立ち上げている。

凄く心に響いた独り芝居。それでも自殺する者もいる。自分は自殺は否定しない。スタークラブの名曲、『THE LAST RIGHT(最終権利)』の通り、それも選択肢。西部邁が『死生論』で予告していた通り自死を選んだように。
グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース

Mo’xtra Produce

吉祥寺シアター(東京都)

2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『ビショップ・マーダー・ケース』

死ぬ程面白い。この方法論で古典ミステリーの再生を続けていって頂きたい。幾らでも観れる。とにかく夢中になって読み漁った子供の頃の気分に浸れる。何だろう?この感覚は。役者の出入りのテンポが抜群で、ページを捲るようにシーンが切り替わる。
ソウルやファンクのR&Bが随所に仕込まれていて効果的、華やかに盛り上がる。センス抜群。
脚本・演出の須貝英氏は何者なのか?

1928年ニューヨーク、探偵を開業することを考えている元刑事のサイモン・ブレイ(林田航平氏)。降りた駅で彼を待つ新聞配達の少女アル(中野亜美さん)により、謎の依頼人のもとへと案内される。到着したディラード家には警官が集まって物々しい雰囲気。今まさに殺人事件が発生したのだ。マザーグースの童謡に準えた異様な連続殺人事件が幕を開く。

林田航平氏は勝村政信や寺脇康文、安藤政信に似た長身のイケメン、格好良い。
今作の名探偵ファイロ・ヴァンス役は大塚宣幸氏。オシャレで多趣味な精神分析好き。
地方検事のジョン・F・X・マーカム役は加藤良輔氏、コミカルなワトソンの役割で場を和ませる。
屋敷の主人、バートランド・ディラード(大内厚雄氏)は数理物理学の元教授。杖をついていかめしい。
誰からも愛される教授の姪ベル(佐藤みゆきさん)は男性陣の憧憬の的。
メイドのデイジー役の永田紗茅(さち)さん、強烈な役回りでこのミステリアスな屋敷のスパイスとなる。

ディラード家の隣家、ドラッカー家の母子が強烈。アマチュアだが天才理論物理学者のアドルフ(竹井亮介氏)は脊柱側弯症の子供好き。田中千佳子さん演ずる母、メイは認知症が進行していて横溝正史テイストの無気味な老婆。

MVPは小林少年を思わせる探偵助手として大活躍の中野亜美さん。明るく元気一杯のこういうキャラを創作して挟み込む作家のセンスに唸る。
数学者とチェスプレイヤーが織り成す高度な頭脳戦、ビショップ(司教)の真の目的とは?

ネタバレBOX

原作は名高い『僧正殺人事件』。「見立て殺人」ものの元祖の一つで、アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』、横溝正史『獄門島』『悪魔の手毬唄』等はもろに影響を受けている。何かに準えた異様なヴィジュアルの殺人事件が続くといえば、角川映画×市川崑×横溝正史=金田一耕助。何でわざわざこんな手間が掛かった殺しをしなければいけないのか?と犯人に同情すら覚えたもの。日本人の大好物なミステリー・ジャンル。

今作は声だけの出演(駅に現れる時は日傘で顔を隠している)の謎の女、エレノア・ジョーンズ(声・永宝〈ながとみ〉千晶さん)。ここまで行くと浦沢直樹作『MONSTER』のカリスマ、ヨハン・リーベルトだ。この後、どんな展開を構想しているのか気になる。年一本でいいので続けて頂きたいシリーズ。

分からなかったのはアドルフとベルの遣り取り。「写真を4枚渡した筈だが。」「いえ、3枚だったわ。」、はっとして何かに気が付くアドルフ・・・。この伏線がよく分からなかった。

終演後、グッズ売り場に長蛇の列。かなり男性客も多く、今劇団に対する支持率の高さを実感した。
黒塚~一ツ家の闇

黒塚~一ツ家の闇

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2022/05/13 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

黒塚とは現・福島県二本松市阿武隈川の畔にある鬼婆の墓。奈良時代(726年)に成敗された人肉を喰らう老婆の伝説。

今作では京に上る近道にある険しき山の笛吹峠、そこに鬼婆が棲むとされる。新庄の里の領主・堀兵右衛門(上田和弘氏)は二十年前成敗した筈の鬼婆が未だ現れる噂を聞いて、息子(里見和彦氏)を遣わす。それに同行する弟のような家来(木暮拓矢氏)。峠には三人兄妹が暮らしていた。うえだひろし氏、山下直哉氏、山丸莉菜さん。殺陣がなかなかの見もの。

京に呼び戻される途中のやたら鼻の効く陰陽師・小林七緒さんが大活躍する。
尼僧妙心役の塩野谷正幸氏が素晴らしかった。この人の妖気だけ異様で、違う世界に存在しているような妙な感覚。一人だけ人形のように現実感がなかった。

ネタバレBOX

どうも楽しめなかった。何だろう、感情移入の取っ掛かりが見付からなかったのか。どのキャラも漫画みたいで真剣に肩入れ出来なかった。淡々と死んでいく様。
冒頭、鬼退治に赴く兄弟(うえだひろし氏と山下直哉氏)が惨殺される。彼等が中盤、鬼婆の息子として現れる。一人二役なのか、妖かしの術を使ったのかよく分からない。小さい頃から微量の毒を飲ませてしびれ薬の効かない身体に育てたと言う。斬られても平気?何か設定があやふやで腑に落ちない。

木暮拓矢氏の母が夫の仇討ちに来たところ、鬼婆に返り討ちに遭う。絶命した彼女は妊娠していて、お腹の胎児はまだ生きていた。山丸莉菜さんこそ鬼婆が我が子として育てたその娘であったのだ。
お勢、断行

お勢、断行

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

2017年2月、シアタートラムで上演された『お勢登場』が素晴らしかった。黒木華主演で8本の乱歩の短編小説を一つに纏め上げたピカレスク・ロマン。やはりそれを期待して今作のチケットを取ったが2020年2~3月公演は緊急事態宣言で中止。しかも公演の二日前の発表。そして今回ようやく上演される運びに。無垢で天真爛漫、そして天性の犯罪者。お勢を倉科カナさんがどう演じるのか?

きつい和装美人の大空ゆうひさん、アイドル顔の福本莉子さん、和製ドニー・イェンの梶原善氏、池谷のぶえさんに江口のりこさん・・・、豪華キャストの大盤振る舞い。
金の掛かった舞台美術は上下左右前後に可動。

あるシーンを予告篇のように先に見せる手法。作中でそのシーンが訪れる際、デジャヴを感じて妙な気分になる。「ああ、あの描写はこれだったのか」的な。

福本莉子さんの歌う「明日にするわ」がやたら良かった。

ネタバレBOX

この脚本は・・・、酷い。

可動するセットも余り意味がない。舞台を転換する必然性がないのにガラガラ動くだけ。そもそも芝居にする程の話ではないのに、無理矢理膨らませているような。
『アウトレイジ』のキャッチコピー、「全員悪人」を狙ったのだろうが不発。各人の欲望の目的があやふや。財産目当てなのか、復讐目当てなのか、ただの悪戯なのか。倉科カナさんが福本莉子さんの願いを叶える為に動くのもさっぱり理解出来ない。(せめて彼女だけは確固たる目的があって欲しかった)。
財産目当てで「暗所恐怖症」の主人を無理矢理精神病院に監禁。その金の取り分を巡って仲間割れ、みたいな話。

時系列が前後するので、更に裏に思惑がありそうだが何もない。倉持裕(ゆたか)のオリジナル脚本、江戸川乱歩が如何に凄いのかを再認識させられた。
グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース

Mo’xtra Produce

吉祥寺シアター(東京都)

2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『グリーン・マーダー・ケース』

滅茶苦茶面白い。ミステリー好きなら必見。何か内容は全く関係ないのだが、ファミコンの『ミシシッピー殺人事件』とかをやっていた頃の気分に。どっかり腰を据えて面白いミステリーを腹一杯味わえる。
舞台美術の片平圭衣子さんと衣裳の鶴岡寛恵さんを称えたい。センス抜群、女性支持率100%。ピチカート・ファイヴの小西康陽全盛期を思わせるPARCO調オシャレの極致。全ての役者の衣装に必ずグリーンのアクセント。成程、スタイリッシュとはこういうことか。ウォーレン・ベイティの『ディック・トレイシー』なんかを思い出すレトロでカラフルなステージ。

1926年ニューヨーク、犯人の死によって終わった『グリーン家連続殺人事件』。その屋敷に居合わせた刑事(鍛治本大樹氏)は頭に弾丸をかすめて入院。その後遺症で事件に関する記憶の殆どを失っていた。退院した彼を心理カウンセラー(毛利悟巳〈さとみ〉さん)が治療に当たり、そこで本当は何が起こったのか、失くした記憶を取り戻していく。

MVPは看護婦役の大澤彩未さん、最高に面白い。
女主人役は小玉久仁子さん、豪華な配役。
女中役の小林春世さんも見せ場タップリ。
意地の悪い次女役の今泉舞さんは流石の助演。
毛利悟巳さんはサトエリ似。
名探偵ファイロ・ヴァンス(齊藤陽介氏)の独特なキャラ。
シリアスと笑いの配分が絶妙で、全く長さを感じさせない。

ネタバレBOX

原作は未読なのだが、原作ファンも驚くような二重三重の仕掛けだろう。古典である『グリーン家殺人事件』を今描くとするならばこの手法が正解か。刑事が記憶を取り戻す過程と同時進行して起きる新たな殺人。事件は未だに終わっていなかったのか?

欲を言えばラストの方がゴチャゴチャし過ぎ。何故、刑事がアダ(小口ふみかさん)の次女殺害を必死に止めたのかがよく分からなかった。刑事の目的、心理カウンセラーの目的、アダの目的が三重に連なっている。
雫のバッキャロー!!

雫のバッキャロー!!

株式会社Ask

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/17 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ワイン三部作の完結編。山梨県勝沼の甲州ワインを醸造するワイナリーと山形県蔵王連峰(ざおうれんぽう)のワイナリーとは昔から家族ぐるみの付き合いをしていた。山梨では若くして病魔に倒れ早逝した天才醸造家・久下恭平氏の物語、山形では交通事故で未だに意識不明、入院中の中右遥日(なかうはるか)さんの物語が。(今作での中右さんの出演はない)。久下氏の遺した白ワインと中右さん一家が造り出した赤ワインに心打たれた人々が、二人の足跡とその腕前を世に知らしめるべく動き出す。

主演の久下恭平氏は流石に凄い。あっという間に観客を味方に付け、心を虜にする。生まれついての天賦の才能か。幼馴染の恋人役、音羽美可子さんがまた魅力的。久下恭平氏とのコミカルな遣り取りは宮崎駿作品を思わせるデフォルメの効いた痛快なもの。この空気感は出来そうでなかなか出来ない。かなり面白く密度が濃い人間ドラマ。妹役の水野花梨(かりん)さんがやたらグラマラスなのも気になった。

皆でワインを飲む場面は秀逸。愛好家なら手が震え出すだろう。真摯にワイン醸造家と向き合った真面目な作風。死生観まで広がる世界。

ネタバレBOX

どうも視点が山形県に移ると、説明ばかりでなかなか話が進展しない。ずっと登場人物達の説明を聞かされている印象で停滞するのは勿体ない。中右遥日さんの存在が欲しかった。
ラスト、久下恭平氏が幽霊のように皆の話を聴いているのだが、そこに中右さんも居て欲しい。肉体が目を醒ます少し前に退席する感じで。
『焔 〜おとなのおんなはどこへゆく〜』

『焔 〜おとなのおんなはどこへゆく〜』

下北澤姉妹社

駅前劇場(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

海外戯曲のようなハイソな作風。こういった試みを全面的に支持する。「言いたいこと全てぶち撒けてやる!」との作家の姿勢がカッコイイ。ただその統一感の無さが散漫な印象を与えてしまい、勿体無くもある。かなり真面目な問題提起を掲げており、宗教的社会主義的な蜂起の萌芽すら予感させる程。

超高級タワマンで行われるホームパーティー。和歌を嗜む美人コンシェルジュ(関口秀美さん)が歌い踊りドリンクを運び、ユーモラスにミステリアスに話の鍵を握る。
社会的成功者である精神科医の松岡洋子さんは、事実婚のパートナーである形成外科医・成田浬(かいり)氏の浮気を疑っている。学生時代からの友人で、松岡さんに憧れてタワマンに入居してきた明樹(あかぎ)由佳さんは週刊誌記者の夫(辻輝猛〈てるたけ〉氏)と大学生の娘(裕海さん)がいる。学生時代の後輩、美容師のみょんふぁさんはバツ4で子供が4人。

格差社会、子供のあるなし、女性の幸福の基準、本音と建前、優越感と劣等感、じっと隠してきたものが曝け出される不思議な一夜。めらめらと立ち上る焔(ほむら)。

松岡洋子さん明樹由佳さんみょんふぁさん、主演女優3人はそこに立っているだけで成立する熟練した存在感。何をやらせても巧い。この3人の会話劇だけでも行けた。これは作家も書き甲斐がある。

かなり意識が高い舞台、変わっていて面白いのでお薦め。

ネタバレBOX

現実とリンクした話題がちょこちょこ登場。ゲス不倫をスクープした週刊文文の記者は政界を揺るがす社会的告発を狙っている。「政治家の仕事とは国民から集めた税金の使い途を決めることだ。その一番重要な事に国民は関心を示さない。興味を示すのは有名人のスキャンダルだけ。だから国民に興味を持たせる下世話なネタを暴きつつ、大事な問題へと誘導していかなければならないんだ。」
コンシェルジュに惹かれた男が彼女にアプローチするようなハラハラネタも盛り込みつつ、作家の語り口はかなり巧妙で意図は深い所にあるようだ。

作中、フラメンコのリズムがしばしばカスタネットで奏でられる伏線。いよいよ皆がフラメンコで踊り出す素晴らしい演出。「人生はそれ自体がそもそも法廷であり、己の全てを晒してジャッジを委ねよ」と云うラスト。「さあここからが開廷だ」。

何故、舞台を2018年12月30日にしたのかが分からなかった。翌年の12月から武漢のコロナ騒動が話題にはなったが、まだ誰もマスクなんてしていなかった。多分何か隠された意図がある筈。
衣人館 / 食物園

衣人館 / 食物園

牡丹茶房

ギャラリーLE DECO(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『食物園(しょくぶつえん)』

健康保険料、厚生年金保険料、住民税etc.・・・。未納の代金の催告に現れた区の担当の男(杉本等氏)。ガンガンとドアを叩き鳴り止まぬインターフォン。大家(國枝大介氏)に鍵を開けさせ、怒鳴りながら部屋に侵入。やっと彼等が出て行くと、浴室に息を潜め隠れていたこの部屋の住人(二ツ森恵美〈めぐみ〉さん)が顔を出す。部屋には沢山の土を入れたプランター。テーブル上のIHクッキングヒーターにはスープの入った鍋。仕事を辞めて引き籠もっている彼女のもとに、兄(坂井宏充氏)や学生時代の友人(池島はる香さん)が訪ねて来る。どんどんどんどん彼女の病は悪化する一方だったが・・・。

自分が弱者であることを自覚して、他人の迷惑にならないよう必死に息を潜めて生きてきた女。そうまでしても矢張り社会は排除の手を緩めない。口にするのはスープだけ。只々スープを啜るだけ。

ネタバレBOX

『家政婦は見た!』のように“シロアリ”(赤猫座ちこさん)視点の連作集になりそう。(このマンションにはキチガイしかいないのか?)

上島竜兵氏の自殺のニュースと共に日本中にバラ撒かれた鬱。よりによってこんな日にここまでの鬱舞台を観る羽目になるとは・・・。話に流れる旋律は柳田邦男の『犠牲(サクリファイス)―わが息子の脳死の11日』に似たもの。自己否定の果ての果てに微かに手に触れたのは捻れた自己犠牲の美。誰にも理解されない生き方を選び、緑の大地と青空の真下でカラスにつつかれて死んでいくのだ。
衣人館 / 食物園

衣人館 / 食物園

牡丹茶房

ギャラリーLE DECO(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

昨年8月に演った短編二本立てイベント『うたかた』。その中の一編、「腥(なまぐさ)の壺」〈脚本烏丸棗(なつめ)・演出杉本等〉が素晴らしかった。何か理想の美のバランスを保った作品で作家の一つの到達点だと思う。未だに「何か凄く嫌な夢を見たが堪らなく美しかったなあ」なんて記憶に残る。となると勿論新作にも期待は高まっていく。(あれを観た人は今回全員観に来てる筈)。

『衣人館(いじんかん)』

マンションの一室、無数の可愛い服やアクセサリーが店内のように部屋中に並べられている。住人の石澤希代子さんは“可愛い”に取り憑かれ、それ以外の価値観を拒絶。彼女の憧れの“先生”、丸本陽子さんとお付きの稲葉葉一氏が会いに来てくれる。“先生”はかつてサロンで、彼女に可愛く在る為の心得を講義してくれた。世界中を放浪しているバックパッカーの弟(飯智一達〈かずと〉氏)が御土産を手に帰国して来るのだが・・・。

石澤希代子さんの表情と高い声が狭い室内を狂気で充たしていく。丸本陽子さんの雰囲気も見事。後半のヴィジュアルが鮮烈でラストは美しい。

ネタバレBOX

“シロアリ”と呼ばれ、勝手にいろんなマンションの部屋に入って暮らしている居候型泥棒(赤猫座ちこさん)がキーパーソン。
石澤希代子さんは本当に理想の“可愛い”に変態する為、無数の洋服で繭を作りその中に閉じ籠もる。その手伝いを頼まれるシロアリ。どんどん繭は膨れ上がり、ジョン・メリックのように奇形化。彼女は成虫の時を迎える、それはまるでエド・ゲインのように・・・。

醜形恐怖症の話にも思える。
バケモノの子

バケモノの子

劇団四季

JR東日本四季劇場[秋](東京都)

2022/04/30 (土) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

第一幕70分休憩20分第二幕75分。
最前列は3列目。

細田守の2015年のアニメ映画を何故か今更ミュージカル化。
当時映画館で観たが雑な出来で、「何でわざわざこれを選んだのか?」と不思議に。細田守作品はどこかで見たような話と設定にその場の思い付きのような適当な展開ばかりで、作品に文学性や哲学を感じる事がない。ただどう作品化するのか何となく足を運んだ。

バケモノの暮らす街、「渋天街(じゅうてんがい)」と渋谷の街が実は繋がっていた。母親を事故で亡くした9歳の蓮(石黒巧君)は親戚達にたらい回しにされることを嫌い、一人逃げ出す。偶然出会った熊のバケモノ・熊徹(伊藤潤一郎氏)に付いて行き、弟子になることに。異世界で九太と名付けられた彼の望みは「一人で生きていけるように強くなること」。“強さ”とは果たして何なのか?がテーマ。

猿のバケモノ・多々良役の韓盛治(ハン・ソンチ)氏がアニメ声で味がある。
主人公の石黒巧君が大活躍、孤独に追い詰められた少年がバケモノの世界で自我を取り戻す通過儀礼を見事にこなす。このバトンを受け取ったのが青年期の九太(蓮)役・大鹿礼生(らいき)氏、流石に上手い!
主人公の対となる存在、一郎彦役の笠松哲朗氏の横顔が尾崎豊似。

しょぼい『キャッツ』のようなメイクで開幕、不安がよぎるも、舞台が渋谷に移ってからは素晴らしい出来映え。目眩く可動し回転する半透明のセットが渋谷のビル街の雑踏を見事に表現。プロジェクションマッピングではなく、組立式の立方体が変化変形トランスフォーム。無数の通行人達は流石に劇団四季のアンサンブル、一人ひとりキャラ設定があり、プロの味を披露するレベルの高さ。石黒巧君の負の影が実体化するシーンにはゾッとした。(真っ黒な子供が現れる)。熊徹と猪王山(いおうぜん)の対決シーンは香港の獅子舞を思わせるド迫力。九太に皆で料理を教えるシーンは、ミュージカルの楽しさに溢れている。

映画を叩き台として、今の劇団でやれるアイディアを精一杯詰め込んでいる。漫画のコマ割りの額縁のようにシーンを細分化して分けていくセンスも良い。少なくとも映画よりは全然良かった。自分のような捻くれた人間には「あの映画でここまでやった」と云うのが高評価。

「胸ん中で剣を握るんだよ!あるだろ、胸ん中の剣が!胸ん中の剣が重要なんだよ!」
アナーキーの名曲、『心の銃』を思い出す。
「俺達拳銃なんか持ってないけど
 戦うことを諦めちゃいやしないぜ
 心の銃を使って戦って行くのさ」

ネタバレBOX

クライマックス、白鯨のシーンが最高。無数のシャボン玉が客席に降り注ぐ。幾つにも分割されたスケルトンの白鯨のパーツが縦横無尽にステージを泳ぎ回る。対決時、ヒロインの楓(柴本優澄美さん)の存在は余りに意味がないので別の役回りに変更すべき。(映画内の無駄な設定も出来る限り変えるべきだった)。

両親に捨てられた少年(離婚と死別)。
尊敬する父親のようになれない少年(バケモノと人間の違い)。
親に全ての選択を決められ言いなりにされているだけの少女。
無力な子供達が溜め込んだ鬱屈した狂気が本当のテーマだろう。
「何で全く自分の話を聞いてくれず、勝手な思い込みだけを押し付けてくるんだ?」

“心の闇”とは、世界と自分への憎悪と否定のことで人なら誰もがそれを持つ。“心の闇”に支配されず、その存在を認め受け入れ共存すること。自己を肯定する為にも“胸ん中の剣”が必要となってくる。
ラスト、主人公は“強さ”とは他者との絆だと訴える。(ここがイマイチ、ピンと来ない。共同体からの除け者は心の闇に堕ちるしかないのか?)

世界観が「スター・ウォーズ」っぽい。ライトサイドとダークサイドの戦い。ダークサイド(暗黒面)は強大な力だがそれを許容すると自らが呑み込まれていってしまう。ラストの一撃はルークのXウイングがデス・スターを破壊した場面を彷彿とさせる。(その元ネタは『燃えよドラゴン』)。

多分再演されなさそうなので、今回一度観ても面白いと思う。一応映画はチェックしておいた方が良い。
観劇者(再)

観劇者(再)

ADプロジェクト / サンライズプロモーション東京

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/05/04 (水) ~ 2022/05/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

外岡(とのおか)えりかさんが増々女優として魅力的に。それだけで充分。この人は「た組。」の『壁蝨』やズッキュン娘の『歩いてみやがれ!』などで美人だが性格の悪い苛めっ子ばかり演じる時期があった。顔がアイドル過ぎて役柄が難しいのか。今作の等身大の女性社員役は今後を期待できる魅力に溢れている。ソトオカだと思っていて、何で愛称“とんちゃん”なのか不思議だったがやっと間違いに気付いた。

『痛快活劇「UMA 未確認生物が地球を救う」再演』の舞台を観に来た面々。席は最後列のM列に座った10人の物語。皆人知れぬストーリーを抱えてここにやって来ていた。

席番M列の・・・
⑤林明寛氏
⑥大滝樹さん
⑦清水麻璃亜さん
⑧吉田翔吾氏
⑨毎熊宏介氏
⑩長戸勝彦氏(Wキャスト安芸武司氏)
⑪井上薫さん
⑫外岡えりかさん
⑬岩佐祐樹氏
⑭伊藤あいみさん

略称「UMAスク」の初演を観て、各人それぞれの思い入れを持っている。
「いつかこの舞台が再演される時、主演のツチノコを俺がやるんだ!」
「こんな吐き気がする程、期待に胸が震える仕事に私も関わりたい!」
「推しのサトル君がキラッキラッしている!」

ステージ上段に設置された観客席に座る面々。その上に更に被せる形で各々の姿をプロジェクターで投影。(役者がいなくなってもいいように)。それぞれのエピソードの時だけ役者は下のステージで演じる。それに合わせて投影されたその人の観客席の映像も空席となる。誰が誰だか凄く判り易いし絵的に面白い。

⑥大滝樹さんが「舞台俳優推し活」OLを見事に演じる。ガチヲタあるあるで、観客の共感率はMAX。オペラグラスで他の皆とは違う方向を観ているのがツボ。
⑧吉田翔吾氏はトイレに人が入っていて、行きたいのに行けないまま舞台が始まってしまう悪夢を存分に表現。これぞこの世の地獄。彼を見る度、観客の方もイライラそわそわして気が滅入る。
⑪井上薫さんは流石に上手い。
普通に面白かった。

ネタバレBOX

席番M列の・・・
⑤林明寛氏 良い奴だがかなり抜けている酒屋。マッチングアプリで知り合った⑥に惚れている。
⑥大滝樹さん 推しのサトル君をずっと応援し続けているヲタの鏡。
⑦清水麻璃亜さん 舞台に関わる仕事がしたくて上京した大学生。
⑧吉田翔吾氏 生焼けのホルモンを食べたばっかりに、公演中ずっと尿意と便意に苛まれる地獄の男。「もう舞台は諦めてトイレに行ってくれ!」と観客は祈る思い。
⑨毎熊宏介氏 役者を目指していたが挫折、今はホームセンターでバイト。昔の養成所仲間が主演を張る舞台に足を運ぶ。
⑩長戸勝彦氏(Wキャスト安芸武司氏) 今舞台アンサンブルの父親。昔映画俳優を目指していた。
⑪井上薫さん ⑩の妻。娘の舞台を観に来た。
⑫外岡えりかさん 「真面目すぎてつまらない女」と云うレッテルに落ち込んでいる。普段やらないことをしてみようとふらり当日券で観劇。
⑬岩佐祐樹氏 舞台観劇を人生の中心に置き、その為だけに日夜バイトする男。
⑭伊藤あいみさん 田舎に帰る前の最後の東京の思い出としてこの舞台を観劇。

チケット発売日に取ったのに最後列は酷すぎる。推しのサトル君が河童役なのに、全通しないのはおかしい。(描かれていないだけで全通したのか?)。舞台愛を叫び過ぎるのもどうかと思う。(逆に鼻白む)。エピソードがありきたり、捻りがない。
劇中劇が音声だけで行われているが、正直詰まらない。

矢張り、観劇者10人が一人二役で舞台上も兼ねるべきだったと思う。観客、観ている舞台、それぞれの背負ったエピソードが三つ巴となってグチャグチャのカオスへと登り詰める。(鴻上尚史っぽい)。そしてその昂揚のクライマックスに、ツチノコの名台詞「ここからが本番だ!」が決まる。

再演の度により面白くなりそう。息の長いコンテンツになるのでは。

⑨毎熊宏介氏が観劇後役者への未練を断ち切るのがリアルで斬新。大半はもう一度夢を追ってみるのが通俗的なラスト。「俺じゃ無理だと吹っ切れた」と云うのが嘘臭くなくて良い。⑭伊藤あいみさんのキャラにしてもこの作家のオリジナリティーを感じる。

このページのQRコードです。

拡大