かずの観てきた!クチコミ一覧

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スーベニア 騒音の歌姫

スーベニア 騒音の歌姫

「スーベニア」公演実行委員会

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/02/19 (金) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★

盛り上げた脇役たち
70代三田佳子の主演舞台。強烈な音痴なのだが誰よりも歌を、音楽を愛した女性の実話。最後はカーネギーホールでリサイタルをするに至るのだが、音を外して歌い続ける主演女優・三田佳子の力量に惜しみない拍手。しかも、70代でこのパワーである。

この舞台を支えた脇役たちにも注目だ。マネジャー役の京本大我、ピアニスト役の劇団鹿殺し・オレノグラフィティ。特にこの二人はよかった。

舞台は素晴らしいが、「騒音」に引いてしまう人も多いかもしれない。

ネタバレBOX

アフタートークは、かならずあるんでしょうか。
冒頭からゲストによるコンサート仕立てというのも印象的だ。
オーファンズ

オーファンズ

ワタナベエンターテインメント

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/02/10 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

見事な舞台だった
ライル・ケスラーの名作である。あとは舞台の三人が宮田慶子さん演出でどう、これをこなしていくか。

結論から言うと、想像以上に見事な舞台だった。特に、柳下大さんが非常によかったのではないか。パンフレットによると、この演目は、彼が宮田さんを口説いて実現させたという。その意気込みがびんびん伝わってきた。彼はもう、単なるイケメン俳優だけではない。一皮むけたのではないだろうか。

ハロルド役の高橋和也さんはさすがの貫禄だ。見ている方が引き込まれる演技を展開している。もう一人、病弱の弟役平埜生成さんも、しっかり存在感を示していた。柳下の豪快さに負けることなく、一歩一歩自立へと歩んでいく姿を見事に表現していた。

若い二人をして、これだけ完成度の高い舞台に仕上げた、宮田さんの腕前もお見事でした。

ネタバレBOX

舞台が終わったとき、私の席の後ろの女の子が号泣していた。会場はたぶん、柳下大さんらがお目当ての女性で大半だったと思うが、好きな俳優が出るから見に来たというお客さんだから余計に、号泣させる力がこの舞台にあったのではないか。
つまり、それだけ3人の俳優に、客席を物語に引き込む力があったということである。
猥り現(みだりうつつ)

猥り現(みだりうつつ)

TRASHMASTERS

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/02/18 (木) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

今回も冴える中津留ワールド
商店街にあるパキスタン料理店を舞台に強烈な会話劇が進行する。ムスリム、同性愛、貧困。さまざまな個人の事情が交錯し、議論が展開される。荒唐無稽かもしれないが、それぞれの話には説得力がある。

こうした展開で、社会派劇の中津留ワールドが遺憾なく発揮されている。納得できる議論もあるし、「それはちょっと」と引いてしまう場面もある。

きっとこの戯曲でも、語る言葉を探し続けているのだろう。武力で一刀両断する現実が世界各地で絶えない中で、登場人物たちの言葉が宙を舞い、見るものにさまざまな思いを引き出してくる。

会話劇なのでやむを得ないかもしれないが、ムスリムになった女性弁護士のエキセントリックな会話は、もっと抑えた方が。

ネタバレBOX

職務上の発泡の責任を問われ首になった若い巡査が、仕事を見つけられない。「人を殺す自衛隊だけは嫌だ」というシーンが印象深かった。
屋上のペーパームーン

屋上のペーパームーン

オフィスコットーネ

ザ・スズナリ(東京都)

2016/02/10 (水) ~ 2016/02/17 (水)公演終了

満足度★★★

笑えるが、何だがなあ。
そういえば、そんな事件もあったっけ。偽の夜間金庫を作って金を奪おうとした事件。かなりの人がだまされて現金袋を投入したというから、犯罪史上注目すべき事件だった。しかも、犯人は捕まってないし。

この戯曲は、その犯人グループの後日談として創作されている。現金奪取に失敗したグループたちの、何だがしまらない反省会のようにもみえる。コテコテの関西弁の会話はおもしろくて笑えるが、何だがなぁ〜という締めくくりである。わたし的には、冒頭が一番おもしろかった。

ネタバレBOX

ラストは、裸踊りである。出そうで出ない次の展開を、これで無理やり締めてしまったようだ。
奴婢訓

奴婢訓

演劇実験室◎万有引力

座・高円寺1(東京都)

2016/02/05 (金) ~ 2016/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★

寺山の時代を想像した
主人のいない館で狂宴を繰り広げる召使いたち。寺山修司は「天井桟敷」でこんな感じの舞台を作り上げたのか、当時を見ていない私には想像するしかないが、その想像力を大いに刺激する見事な舞台だった。

これは、役者たちの個人の力が試されるパフォーマンスでもある。座高円寺で舞台を広くとり(すなわち、きっと客席数を削っている)、その大きな空間を思う存分使うとともに、客席の空間も活用。さらに、人間の造形美とも評することができる動き、そして、ろうそくの明滅を効果的に活用した演出。

寺山の演出もそうであったのだろうか。万有引力は寺山劇を忠実に受け継いでいるというから、この戯曲は一見の価値がある。座高円寺は結構広い。これを例えば下北沢の小劇場でやったらどうなるのか。帰り際にそんなことも想像してしまった。

ネタバレBOX

劇は既に、お客さんが入場したときから始まっています。この恐怖の館の仕掛けにも注目。上演後には近寄れるので、ちゃんと見てみよう。
光の国から僕らのために―金城哲夫伝―

光の国から僕らのために―金城哲夫伝―

劇団民藝

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2016/02/10 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

沖縄を考える舞台
ウルトラマンが登場する1990年代は既に戦争もなく、人類は国を超えて宇宙からの外敵である怪獣に対処している。沖縄県出身で、先の戦争では沖縄戦の鉄の暴風を生き延びた、ウルトラマンの生みの親、金城哲夫。彼がウルトラマンで描いた世界は、ある意味で人類の理想郷。もちろん、沖縄に米軍基地などない世の中だ。

この戯曲の中で、「我々はまだ、ウルトラマンを超えるヒーローを生み出していない」という作家たちの言葉が出てくる。その言葉の意味の通りなのだが、今も広大な米軍基地が存在し、さらに辺野古には新基地が作られようとしているそんな沖縄の今を思わせるせりふでもある。

光の国から僕らのために、来たぞ我らのウルトラマン。今の世の中にウルトラマンがきてくれたら、と願わざるを得ない、そんな思いで劇場を後にする。

ネタバレBOX

友好珍獣・ピグモンも出てきます。宇宙と人間の懸け橋であるというウルトラマンは、ウチナーンチュとヤマトの懸け橋でありたいと願った金城哲夫の映し鏡でもある。
屋根

屋根

富良野GROUP

新国立劇場 中劇場(東京都)

2016/02/05 (金) ~ 2016/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★

流されて、見る夢
ラストシーンは何だか泣けてきた。朴訥で、一歩一歩踏みしめて生きるような最後の場面に、希望が透けて見える。

生まれ落ちて、家族で助け合って生活し、老いていく。世の中に流されるようにして生きるしかない私たち。その流れに抗するすべもなく、受け入れて生きていく。自分の生きる分だけ稼ぎ、家族と共にいるという、本当にささやかな幸せを願っている。

猟師の言葉が印象的だ。
自分は獲物を殺すが、自分が食べるためだ。戦争は人を殺すが、お前は人を食べるのか。

電気が通り、家財道具が増え、便利になっていく。舞台はそれを真正面から否定はしないが、「身の程」を考えさせる。国土を拡大する、電気を使うために原発を作る。いつの間にか「身の程」はどんどん大きくなっていく。

老夫婦が、縄をなう。材料は子どもたちが「いらない」として捨てた服だ。「この縄を見ると、写真のアルバムのようにその時のことを思い出す」とおばあちゃんは言うのだ。

大量の物品に囲まれるアンチテーゼとして、断捨離などという。
この舞台では、そのいずれも、「身の程」とは違うのではないかとそっと伝えているようだ。

今日が東京公演最終日。カーテンコールで拍手が鳴り止まない中、倉本聰さんが姿を見せた。見てよかった、と思える舞台だった。

同じ夢

同じ夢

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2016/02/05 (金) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★

交わらない6本の線
一見、不思議な関係性を持った6人の登場人物。精肉店の店主とその娘、中年の店員。要介護状態にある先代店主(姿は見せない)を介護しに来るヘルパー。飲み仲間である近所の文房具店主。そして、10年前に交通事故で精肉店の店主の妻を死なせてしまった加害者の男性。

物語はこの6人が出入りする精肉店の居間・ダイニングキッチンで進行する。6人はそれぞれいろいろな背景を抱えているが、その背景が交わりそうですれ違っていく。結局、答えは出ない。私たちの日常生活のさまざまな問題や人間関係に、そう簡単に(舞台が行われている2時間という短時間では、特に)答えは出ないのだから、それでいいのかもしれない。

昨年、「オレアナ」で異彩を放った田中哲司に期待して見に行った。今回はどこにでもいそうな普通のおじさんを、しかし、ちょっと異色とも言える雰囲気を出しながら演じて見せたのはまあ、よかった。それよりも、私生活でも仕事の上でも人には言いづらい日常を抱えるヘルパーを演じた麻生久美子が、出色の出来だったと思う。

ネタバレBOX

答えが出ないのがよいのだ、と書いたが、実はラストシーンで一つだけ解決することがある。光石研がなぜか、片方だけしか靴下をはいていないのだが、それに、きっちり答えが出る。どうでもいいことなんだけど。
青春の門〜放浪篇〜

青春の門〜放浪篇〜

虚構の劇団

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2016/02/03 (水) ~ 2016/02/17 (水)公演終了

満足度★★★★★

世代を超えた微妙な空気
まず最初に思ったのは、この小説はとても演劇的な作品だったと再発見させられたこと。スペース雑遊のような濃密な小空間で上演するのにふさわしい熱量を持った小説だということだった。

原作は昭和30年代の若者たちの群像劇。これを今の若者たちが演じるわけだ。舞台からは当時の若者たちの熱さはガンガンと伝わってくるのだが、何だか微妙な空気感も流れている。何だろう、これは、とずっと思っていた。

帰りの電車でパンフレットに書かれている役者たちの感想を読んだ。この作品(台本)を読んだときの印象が書かれている。おそらくみんな20代の俳優たち。
「何か小難しいことで悩み、議論し合っているのが最初の印象」(三上陽永)
「正直、初めて読んだときは、全然理解できませんでした」(森田ひかり)
「最初はとても難しい本だと思いました。専門用語が出てきたり、時代も古いし」(池之上真菜)
「どうしてここに出てくる人たちはこんなにコロコロと変化し、面倒くさいんだろうと、共感を持てませんでした」(佐川健之輔)

それで分かったぞ。この微妙な空気感。青春の門を演じるとは、そういうことなのだ。この作品の空気感にどっぷり浸かれる世代はもう、今や高齢者である。高齢者には演じられないから、若い世代が引き継ぐわけだが、何とその難しいことか。空気感を受け継ぐというのは至難の業なんだね。

だが、舞台は素直に面白いと思った。この微妙な空気感のずれも楽しめた。濃密空間の小劇場マジックかもしれないが、とても満足できた。

今度は筑豊編から続けてやってほしい。是非とも要望します。

ネタバレBOX

自由席です。前の席より、後ろの中央に座りましょう。左右の見きれと言える場所でも、重要な演技が展開されます。舞台全体を見渡しながら、この演出の妙を楽しみましょう。

黒板を本当に上手に使っている。この演出の一番、気に入ったところ。役者さんたちが白墨で言葉を書くのだが、漢字の書き順がとんでもなく奇想天外だったり(笑)、今時のの学校教育を垣間見る気がしておもしろかった。
三人でシェイクスピア

三人でシェイクスピア

劇団鳥獣戯画

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/02/02 (火) ~ 2016/02/03 (水)公演終了

満足度★★★

シェークスピア祭り
これは、シェークスピア・ライブ・エンターテイメント・ショー。劇団鳥獣戯画の石丸有里子さんによる舞台後の説明では、空いている小劇場を断続的に押さえてこの演目の公演を続けている、とか。チラシにも「跳び跳びロングラン14年目!」とある。

私の興味は、シェークスピア37戯曲をたった3人でどうやって全部上演するのか、というところにあった。実は、そういう切り口で会場に出向くと「何だこれ」、ということになるので、この際、頭を真っ白にして最初から笑いに行くぞ、と会場に行った方がいい。なにせこの舞台は、全編ギャグのてんこ盛りなのだから。

私が帰り際、石丸さんに「もっと上演時間を長くしてもいいから37戯曲をばっちり取り扱ったらどうでしょう」と言うと、「それはちょっとつまらないかもしれませんよ」と彼女は言った。なるほど、自分で言ってみて、確かに彼女の言うとおりかな、とも思った。
でもやっぱり、しっかり取り上げたのがロミオとジュリエットとハムレットだけではちょっと寂しい。劇団鳥獣戯画がやれば、おもいっきり笑えるシェークスピア戯曲はほかにもまだ、ありますから。せっかくのロングランなので、まだ、別の戯曲を取り上げて笑わせるライブ・エンタテイメントを期待したい。

ネタバレBOX

観客参加型なのである。
特に、休憩後の第二幕は、赤星昇一郎さんらにひっぱられて観客が舞台に上がり、ハムレットのせりふを叫ぶ。これが本当におもしろかった。

拍手やおひねりもしっかりあって「今日のお客さんはのりがいいな」と赤星さんは喜んでいたが、私の席の後ろのお客さんは、まさかこの人、サクラなのでは、と勘ぐりたくなるくらい、全編を通して大声で笑っていた。とてもうるさいです(泣)
舞台はせっかくおもしろいので、ちゃんとおもしろいところだけで笑ってくれないとしらけます(笑)
プリズンホテル 夏

プリズンホテル 夏

砂岡事務所

シアター代官山(東京都)

2016/01/21 (木) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★

ヤクザなのに家庭的な雰囲気
浅田次郎原作の舞台化。場面転換も素早く、分かりやすい物語の展開だ。ヤクザの親分が経営し、従業員もお客もその筋の皆さまばかり、という話なのだが、なぜか家族的な雰囲気が流れる。任侠の人たちは強い絆で結ばれているのだから、あまり驚くべきことではないのかもしれないが。

プロデュースは砂岡事務所で、劇団ひまわりの子役たちも出ている。客席には応援の家族か友人たちだろうか。発表会というか、そんな雰囲気も漂った舞台だった。

俺の酒が呑めない

俺の酒が呑めない

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2016/01/22 (金) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★

青年座劇場が酒蔵に
いつもの青年座劇場が、酒蔵に変身している。しかも、そこはかとなく日本酒の香りも漂っていて。客席に向かう通路には木桶や、出荷先の張り出し物など何と芸が細かいこと。

もちろん、舞台にも酔った。福島・会津の造り酒屋を舞台にした家族と仲間の物語。酒蔵の現状や、風評被害で苦しんだ場面も盛り込まれていて、とても丁寧で共感できる脚本だった。作家の古川貴義氏は故郷の言葉会津弁でこれを書き上げて見せた。それを青年座の若手からベテランまでがきれいに演じて見せた。

造り酒屋と言えば杉玉だが、舞台暗転で天井付近の杉玉にスポットが当たる演出がなかなかしゃれている。入り口でこの舞台のモデルになった造り酒屋のお酒の即売会も。そりゃ売れるって、この舞台を見た後なら(笑)

プロキュストの寝台

プロキュストの寝台

Pカンパニー

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/01/27 (水) ~ 2016/02/01 (月)公演終了

満足度★★★★

盗賊は今も、死んではいない
劇作家の嶽本あゆ美は、彼女の名作「太平洋食堂」の取材中からこの物語が生まれた、と言っている。ギリシャの伝説を日本の幕末の村に舞台設定し、そのメッセージを今に伝えた秀作だ。

彼女は「プロキュストは誰でしょう」と問い掛ける。それは時の政府であり、自らの隣人であるかもしれない。電車で隣り合わせた人が、プロキュストだったりする現代社会だ。そこまで空想が及ぶような舞台を演じた、Pカンパニーの力演もすばらしかった。子役の熱演も光った。

一幕ものであるが、この長い物語を一つの舞台の上に象徴的と言ってもよい寝台、まあ、単なる台なのであるけど、これを中央に配置した演出もとても印象的だった。劇作家の思いを、演出が心の底から理解し、演者が強烈なメッセージとして発信する。この流れが本当にうまくでている舞台だった。

壊れたガラス

壊れたガラス

阿佐ヶ谷 Picasso

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2016/01/27 (水) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★

この濃密な舞台空間
アーサー・ミラーのこの戯曲を、濃密な舞台空間に詰め込む。役者たちは演劇集団円などからの実力派だから、客席はその世界に釘付けになる。
戦前のあの時代、ユダヤ人であることが夫婦を縛り付けていたと読めるが、実はもっと違う見えない縄がたくさんあったのではないか。狂気が一瞬にして切れるラストシーンを見ると、その一瞬にいろんな縄が心の中に浮かび上がってきた。

値千金のキャバレー

値千金のキャバレー

ホチキス

座・高円寺1(東京都)

2016/01/23 (土) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★

参加できるライブエンタテインメント
初めて見る人にとっては、想像をはるかに超えるライブエンタテインメントだ。衝撃のラストは観客参加型。体験の価値は、あります。オーバーな言い方だけど、ひょっとしたら、演劇の固定観念を破壊してくれるかも。

歌と踊り、涙と笑いというフレーズは、よくある宣伝文句だろう。座高円寺が出したこの舞台宣伝にもあったと思うが、私はこの舞台の真髄は意外性、驚きだと思う。驚きを先に開陳するわけにはいかないから仕方ないのかもしれないが、これに気づくまでは少し眠い。だが、一旦走り出したら止まらない。
最初から、いや、途中からも今ひとつ乗り損ねてちょっと損したというか、早く真髄に気付かなくてごめんなさい。

ネタバレBOX

紅白歌合戦を体験できます。ホントです。
魔笛

魔笛

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2016/01/24 (日) ~ 2016/01/30 (土)公演終了

満足度★★★★

見どころ満載のオペラ
モーツァルトの最後のオペラという。とても演劇的な舞台だから、視覚を楽しませる工夫が満載だ。新国立劇場の舞台装置だからできる仕掛けも多い。空中を降りてくるゴンドラなどは、テーマパークのようだ。
オーケストラは演出に合わせて少し控え目のようだ。だが、超低音のバスと超高音ソプラノの競演には感動する。

城塞

城塞

劇団俳優座

シアタートラム(東京都)

2016/01/06 (水) ~ 2016/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

この衝撃はすごい
安部公房は初演のパンフレットで「これは喜劇なんです」と書いたという。確かに、見終わってから思い起こすメタファーとしてはそう感じられるところもある。だが、これは父と息子の強烈な舞台だ。時間を止めてしまった父を破壊することで、息子も自らを破壊してしまった。戦争で財を成した家族にとっては、まだ戦争は終わっていないのだ。

特に後半の演出、そして登場する5人の俳優が見事にその仕事をやってのけた。最後の暗転で、座席に釘付けになるような衝撃はすごい。舞台芸術ならではの体験だ。

ネタバレBOX

「儀式」のために呼ばれたストリッパーを演じた野上綾花は、色気だけが自分の引き出しにない、と書いていたが、舞台を重ねて成長したんだろう。狂気が貫く色香を客席に突き刺してみせた。
JAM TOWN

JAM TOWN

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2016/01/13 (水) ~ 2016/01/30 (土)公演終了

満足度★★★

見どころはダンス
ストリートダンスのYOSHIEの振り付けだけあって、見どころはやっぱりダンス。物語の展開はともかく、音楽も切れがよくライブ感覚が満載だ。演出はそのコンセプトにマッチしていてなかなかの出来。横浜という雰囲気が強調され過ぎかとも思うが、テイストは好きです。

王女メディア

王女メディア

幹の会+リリック

東京グローブ座(東京都)

2016/01/09 (土) ~ 2016/01/16 (土)公演終了

満足度★★★★

魂を揺さぶる平幹二朗
一世一代の再演である。平幹二朗の鬼気迫る舞台に客席は静まりかえった。80歳を超えて、この迫力。
演出は、昨年亡くなった高瀬久男さんがタッチしている。
シンプルだが、妥協策を許さない厳しさがある。9人の男性俳優がぶつかり合う。そういう視点で見ると、二人の息子を人形にしたのは効果的だと思う。

やはり、平幹二朗に始まり平幹二朗に終わる舞台。一世一代に立ち会えて幸せだ。

街と飛行船

街と飛行船

劇団昴

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/01/09 (土) ~ 2016/01/13 (水)公演終了

満足度★★★★

現代を映し出す不条理劇
仮装家族とか、レンタル家族とか。今ではそれほど珍しくないお話が、既に別役作品で1970年代に世の中に提示されていた。その先見性に驚くと共に、この作品を鵜山仁演出で、シュールな舞台に仕上げたところは大いに見る価値がある。
劇団昴の生きのいい役者たちが、街の住人たちを演じている。創立メンバーである北村総一朗が高齢の市長役で登場する。小室等作曲で劇の語りとしての音楽が効果的だ。

仮想の街に月のように浮かぶ飛行船が何を表しているのか、というのが観劇後の酒のつまみになるだろう。見る人が十人十色で語ることができるのは、やっぱり別役作品なんである。

ネタバレBOX

劇団昴の人たちが、グッズとして金太郎飴を売ってます。何で金太郎飴?
どこを切っても同じ家族、街の姿だから?
これも想像するだけで、とっても意味深だ。

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