1
九十九 -つくも-
壱劇屋
壱劇屋 東京支部さん。
どの作品も見どころたっぷりなんですが、自分はワードレスのほうがより好み。
今作、九十九(つくも)は、東京進出されてから、本公演で初の、ワードレス殺陣芝居の”新作”なのです(セリフ有りだと、パラデュールがある)。
主演に抜擢された若手の、黒田ひとみさんと淡海優さんは期待に十分に応えていたと思います。素晴らしかった。
出し惜しみ一切無しで、東京支部さんならではの、圧倒的な身体表現が連続して、舞台上は目まぐるしく転換して。舞台上だけに留まらず客席通路を走り回り戦って、客の頭上に波濤が広がる。
セリフ以外は何でもアリです。
(カーテンコールの時の竹村さんの言葉であったのですが、ノンバーバル(言葉によらないコミュ)じゃなくてワードレス。聞こえないけど作中で会話によるコミュは行われてる、だからワードレスらしいです。)
守りたいもの一途に守るシンプルな物語は、実に竹村さんらしく。
一生を終えるときに、訪れる福音とゆうか、頑張ったことへのご褒美には、何とも言えない心地にされました。
東京支部さんの、ワードレス殺陣芝居は、ほんと唯一無二。
2
ポラリス
キキタガリ
これは素晴らしかった。
ヨドミの舞台劇を実力派の声優陣中心により朗読劇に……。
っていう朗読企画なんですが、朗読っていう範疇の作品じゃなかった。
演者は台本こそ持ってるけど、朗読とゆうよりは激しく立ち位置を変えながら、客席に語り掛けるような芝居をしていて。
衣装を含めた美術や音響も素晴らしく。
一つの新しいジャンルを観たような印象がありました。
現代に生まれた古典のような凄み。
2日間4公演しかなかったのが本当に惜しい。
もっと大勢の目に触れてほしいなって思えた公演でした。
3
エアスイミング
カリンカ
自分の体内に残ってる鮮烈さって意味だと、今のところ今年一番はこれ。
楽園とゆう癖のある劇場をここまで使いこなせば、こんな空間が現出するんだって。
役者、美術、音響、すべてがめくるめく幻燈でした。
4
かげきなデイリープレイス
演劇集団イヌッコロ
駄洒落でしかないけど、ヤクザとヤクシャは確かに同じ語感だなって。
演劇集団イヌッコロは、役者仲間の草野球チームから発生した団体で。
作・演出の佐野瑞樹さんは、”羽仁修(はにしゅう)”として、長年覆面作家でやってきました。
(自分は正体を知らずにファンになった一人です)
今作は、正体を明かしてから初めての、イヌッコロ本公演での新作公演にして、一応、イヌッコロ・フィナーレ作品。
笑えるシチュエーションコメディとしては、知る人ぞ知る団体で、定評があります。
今作は、イヌッコロを観てきた人にとっては、琴線に触れる場面やセリフが散りばめられているのですが、それに溺れることなく、単体の作品として今まで以上にダンスや殺陣も盛り込んだ一大エンタメ・シットコムとして快作でした。
勘違い、スレ違いは名人芸で、どんどんと笑いの渦が大きくなっていくイヌッコロの芝居。
イヌッコロのメンバーは、みんなほんと個性的で面白く、客演の方々も素晴らしかった。
一応、ひと段落。
イヌッコロのみんなのこれからのご活躍、期待しております。
5
白魔来るーハクマキタルー
ラビット番長
あらかじめホラー、スプラッター要素アリってアナウンスあったので、それなりに覚悟して行ったのですが、それでも凄惨な描写に息を飲む壮絶さでした。
自分は、メルヴィルの白鯨を思い出したりしたんですが。
生と死、善性って何だろ?、正気と狂気。
ただ、怖いだけじゃなくて、色んなこと考えられる深みもあると思います。
凄い芝居だった。
6
雑種 小夜の月
あやめ十八番
今年も総合点だと、あやめ十八番。
劇場に入った瞬間、舞台美術を見た瞬間から引き込まれた。
鳥居に、竹藪(楽隊はここ)、綺麗な丁寧な素舞台。その空間をはさむ二面の客席。
頭上には神社の屋根(言い方あるのかしら?)
ああ、ここに日本の夏があるって。
演者や楽隊の素晴らしさは言うに及ばず。
場面転換の見事さに、ため息がでた。
通路とゆうか、舞台から降りて周回するような演出もうまく調和してたし、演者がすぐそばに来るのはテンション上がりますね。
4回観ましたが、毎回、入り込んであっという間でした。
ホームドラマとか、そんな好きじゃないはずなのになあ。
7
燈のあたらない川に流れる人魚(ペンギン)
一般社団法人深海洋燈
あの夢のピューロランドがある多摩センターに、鏡合わせのように出現したテント公演。
悪夢のピューロランドって言いたくなってしまう。
テントの中には川が流れ、席によってはびしょ濡れレベルで頭から水を被った。
ああ、楽しかったなあって追憶が今も。
8
健脚
フム
今年は、けっこう、松森モヘーさんの作・演出を観たのですが、これが一番お気に入りです。
劇場空間である、ときわ座の唯一無二さを存分に。
二人の演者による二人芝居ってフォーマットもぴったりで、その二人も魅力的で。
必ずしも回収される必要はないけど、ちゃんと閉じる物語はやはり後味は良いものになったし(結末は痛ましいですが)
没入した観劇になりました。
9
柏原照観展
牡丹茶房
今年の観劇を振り返っていて、ああ、これは良かったって手を打った。
大作だったりすごいテーマ性があったりでは無いんですが。
芸術に宿る魔力みたいなのを不気味なホラーとして、架空のアトリエ空間に現出させてた。
締めになる、最後のスマイルは本当に印象的だった。
終演後、舞台になった展覧会を鑑賞出来るのも、洒落てるなって。
10
レッドホットセックスピストルニルヴァーナ
MCR
これ、めちゃんこ面白かったんだよな。
素舞台ですらないスズナリを舞台に、おじさん二人がキャッチボールしてる。
そして、恋にときめこうとする。
誰が得するんだ、興味惹かれるんだって……汗かく二人のおじさん、めちゃめちゃ面白かったです。