シャイヨの狂女
劇団つばめ組
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/10/06 (木) ~ 2022/10/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2022/10/08 (土) 13:00
まずチラシに目を奪われた。上半分に女性の横顔、下半分にはエッフェル塔をバックにヒトラーを中心にしてナチスの一団が配置されている。どういう物語が展開するのかワクワクさせる。
ジャン・ジロドゥの作品は8月下旬にシアター風姿花伝で人間劇場という団体の「トロイ戦争は起こらない」という秀逸な上演を観たばかりであり、またこの「シャイヨの狂女」という作品は第二次世界大戦時にドイツ軍占領下のパリで書かれたジロドゥの遺作だということもあって、4年前には「ジャン・ジロドゥの思い出」という作品を上演したつばめ座だけに、大いに期待していたのだが、その分失望も大きかった。
(以下、ネタバレBOXへ)
新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス
NICE STALKER
スタジオ空洞(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/09/24 (土) 19:30
わが国でも何度か上演されているが、新訳版として翻訳し、令和の時代にあった言語感覚で「観やすい」古典として再構築し全編上演するという試みの「途中過程」としての公開だということだったが、はっきり言って今回のワークインプログレスを観た限りにおいては、何をしたいのかわからない。まともに正面から取り組みたいのか、コメディとして構成したいのか。
序盤において、台詞廻しがあまりにも大仰でわざとらしさに満ちており、ここでまず意欲が削がれる。
これだったら、明治大学が年に1回、全学をあげて取り組み上演している明治大学シェイクスピア・プロジェクトの方が、大学院生による翻訳も現代語を交えてわかりやすく、演技にしても演劇サークル以外の学生も参加している関係上から全員が上手いという訳ではないものの、観ていてすんなりと舞台世界に入っていける。
ただ、進行役と神父、そして妹アナベラの乳母を演じた東京ドム子は、私は初めて観たのだが、魅力的な役者だった。殊にジョバンニとアナベラが演じるラブシーンを舞台上手端に着席して観ている時の半ば陶然とした表情に心惹かれた。
真っ赤なブルー
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/09/15 (木) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/09/18 (日) 19:00
U-33projectの脚本・演出を担当する結城ケン三と、route.©︎の脚本・演出を担当する平安咲貴が、お互いの脚本をチェンジして演出するというコラボ企画。真逆のようで似ている、似ているようで真逆な両団体をぶつけるとのことだったのだが、私は両団体とも未見であり、この公演を観た限りにおいては、脚本も演出もどちらも似たような内容で、その違いというのが見極められなかった。
2編で16名に及ぶ出演者(全員が女性)の中にも、「U」でお化け屋敷の従業員・猫屋敷を演じた松下芽萌里以外には、これといって惹かれるものを見出せなかった。松下は舞台上手奥に正座して、前方で主人公・正見らが演じている姿をじっと見ている上目遣いが本当に妖しく、この役者だけは他の舞台に出ている姿を観てみたいと思わせたのだった。
笑顔の砦
庭劇団ペニノ
吉祥寺シアター(東京都)
2022/09/10 (土) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/09/13 (火) 19:00
この作品は2019年にKAAT神奈川芸術劇場で観ているが、昨年の海外公演を経て、今回が国内最終公演だという。最終公演となるのは、2015年初演の岸田國士賞受賞作品「地獄谷温泉 無明ノ宿」(私は17年の冬にやはりKAATで観て打ちのめされた)が18年のフランス公演の後に老朽化したセットを焼却して封印されたのと同じく、セットの老朽化が理由らしい。
全自由席だが、最前列のセンターに座ることができ、実に幸運。
開演前は舞台前面に黒幕が下りているが、そこには北斎の「神奈川沖浪裏」のような波が描かれ、入場時から客席にはかもめの鳴き声が流されている。
(ネタバレBOXに続く)
舞台「学徒隊」
NPO法人文化活動支援会まつり
南大塚ホール(東京都)
2022/09/09 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
A4サイズの当日パンフの縦半分いっぱいに「この物語はフィクションであり、実在の人物 圑体 事件とは一切關係ない。現実はより過酷 で凄惨であり 再現など到底出來ない。」という言葉が書かれている。この言葉(特に後段)と舞台序盤の展開から、この作品は沖縄戦における少年・少女たちのことを描くのだと思っていたのだが…。
(ネタバレBOXへ続く)
伯爵のおるすばん
Mrs.fictions
吉祥寺シアター(東京都)
2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/26 (金) 19:00
主人公はサンジェルマン伯爵。不死の秘薬を持ち、12ヶ国語を流暢に操り、テレパシーで人の心を読み、あらゆる学問についての膨大な知識を持ち(作曲家兼ヴァイオリン奏者として活躍していた時代もあったという)、時代を超えて時の権力者の前に現れる謎の人物だ。レオナルド・ダ・ヴィンチですらサンジェルマン伯爵の仮の姿だったのではないかという説すらある。半村良の「石の血脈」や髙橋克彦の「総門谷」などの伝奇SF大長編にも登場しているが、何にせよ時を超えて歴史の裏側で暗躍する怪人なのだ。
そんなサンジェルマン伯爵を主人公としたこの公演には「Mrs.fictionsが2020年のお約束を果たす公演」と銘打たれているが、前説で登場した中嶋康太が「2年前のお約束」と繰り返していたのも、2年前の4月にこの作品を劇団4ドル50セントとのコラボ公演として上演予定だったのをコロナ感染拡大という当時の社会情勢を鑑みて延期したままになっていたのが余程気がかりだったのだろう。
(以下、ネタバレBOXへ続く)
銀河鉄道の夜
東京演劇アンサンブル
池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)
2022/08/26 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/28 (日) 19:00
この劇団の持ち劇場として以前武蔵関にあったブレヒトの芝居小屋で観た時とは別物と思えるほど印象が異なり、素晴らしい一夜の夢を見た。
新宿の夏の風物詩のひとつに椿組が行なう花園神社野外公演があるように、この「銀河鉄道の夜」の野外公演も池袋の夏の風物詩となればいいなあ。
初演以来40年というこの作品は初の劇化というのみならず、この劇団としての財産的な演目であり、毎年クリスマス期に上演されてきた。劇中音楽の作曲はオペラシアターこんにゃく座の座付き音楽監督・作曲家を務め、新藤兼人監督の映画音楽のほとんども担当した林光である。
その「銀河鉄道の夜」は野外劇として上演されるのは20年ぶりだという。東京芸術劇場の前にある西口公園に野外劇場グローバルリングシアターが設置されて3年近くなるが、杮落とし公演は雨で断念したし、ここで演劇を観るのは初めての経験。
ただ雨天でも傘を使用することはできないので雨合羽を持参せねばならず、前夜半から時折激しさを増す雨にどうしようか考えていたのだが、午後から雨もあがって雲量も50%程度に。池袋駅で降りて公演へ向かうと風が心地よく、数日前までの猛暑続きが嘘のように肌寒さすら感じさせる。
(以下、ネタバレBOXに続く)
下山 ~親鸞の覚悟~
文化芸術教育支援センター
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/08/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/20 (土) 18:00
主催者である文化芸術教育支援センターというのは特定非営利活動法人いわゆるNPO法人であるらしいし、公演のタイトルからも何となく説教臭い内容なのではないかと多少の危惧があったのだが、(私自身は信仰していないものの)実家の宗派は浄土真宗だということもあって、劇場へ。
貴族の家に生まれながらも平家による暗殺を避けるためもあって9歳で出家した親鸞が、厳しい修行と煩悩の果てに自力修行の限界を感じ、29歳で命の危険を冒して比叡山を下りて法然の弟子となるまでの物語だが、3人の奏者による和洋の楽器を用いた生演奏を加えての舞台は緊密で面白かったし、勉強にもなった。
「観たい!」に書いた2009年の前進座公演「法然と親鸞」の何倍も素晴らしい出来だった。
山本タク演出の舞台はいくつも観ているが、私が観てきた中ではこの作品が彼の演出の最高傑作に思える。
土曜日夜の回で客入りは6~7割といったところだったが、題名やチラシ等から宗教色を減じれば、もっと多くの人に観てもらえたのではないか。
上演時間2時間5分。
ハリウッド版 ラ・ラ・ランド ザ・ステージ
パルコ・プロデュース
東京国際フォーラム ホールA(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
13、000円のS席(15列目上手側ブロック)で鑑賞。
途中休憩20分を含めて2時間半のステージだが、はっきり言って始まって30分程度でもうがっかり。
既存のフィルム・コンサートとは一線を画すとの触れ込みだったが、80名超のフルオーケストラと60名の合唱団による演奏も、最近の音響効果が進歩した映画館と比較すればそれほどの迫力は感じないし、12名のダンサーにしても、ダンス・テクニックの点でも(さらにカメラワークの効果も加味すれば)どうしてもスクリーンで上映されている映画本編の方に目がいってしまう。売り物のひとつだった花火にしても2つのシーンでステージ両脇で3m程度の高さの火花があがるだけで、それほどスゴイとも感じない。
これで13,000円とは何たるぼったくり!
第74回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
内幸町ホール(東京都)
2022/08/09 (火) ~ 2022/08/09 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/08/09 (火) 19:00
様々なジャンルのパフォーマンスが一堂に会し、それらのパフォーマンスの間に連作の短編芝居を挟み込むという形態の「a・la・ALA・Live」は今年で15周年、今回で74回目となる。以前は江戸川橋の絵空箱が会場だったのだが、最近は大きな空間に進出したようで、前回公演は250~300人が入れる座・高円寺2、そして今回は内幸町ホールでの開催だ。
私が観たのは夜の回だったのだが、188人というキャパを持つ内幸町ホールの客席には20人前後しか入っていない。確かにコロナ感染対策としては十分すぎる間隔がとれるし、贅沢といえば贅沢この上ないものの、これで興行として成り立つんだろうかと心配になってくる。昼の回はどのくらいの客が入っていたのだろう。
今回の出演者はパントマイムの清水きよし、マリンバデュオのReon(りおん)、江戸太神楽の十三代家元が率いる丸一仙翁社中から仙若・鈴仙・若遥、そしてこれらに主宰の荒山昌子とポップンマッシュルームチキン野郎の増田赤カブトがコンビを組むあらやますだが短編芝居を挟み込む予定だったのだが、増田の体調不良で急遽荒山が一人芝居で演じることになったという。実は今回はこの増田こそ観たかった最右翼だっただけに残念。
清水のパントマイムの1本は「凧あげ」とタイトルが付いているので、われわれ世代にはよくわかるのだが、今の若い人には何をやっているのかよくわからないのではないか。
マリンバデュオは国立音大出身の伊藤碧と渡邊まやの2人が1台のマリンバを演奏するスタイルなのだが、実は私はマリンバの国際コンクールで優勝したことのある30代前半の奏者と知人であり彼女の演奏をよく聴いているので、申し訳ないがさほど感銘をうけなかったし、内容的にも物足りなかった。
江戸太神楽も(夫婦と息子という感じだったが、違うのかもしれない)どことなくぎこちなさが感じられた。
そして荒山の一人芝居だが、増田の降板が急なものだったことはあるものの、不完全さが目についた。せめて声を使い分ける程度のことはやってほしかった。
カーテンコールではタブレッドを使って増田の挨拶も加わったが、久々に増田の動いている姿を見れたのは嬉しかった。
定刻の開演からカーテンコールが終わるまで110分程度。
売春捜査官
natsuki produce
シアター711(東京都)
2022/08/03 (水) ~ 2022/08/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/08/04 (木) 19:00
女優・水野奈月のクラウド・ファンディングによる自主公演。つかこうへいの作品をナイーブスカンパニーの高橋広大が脚色・演出。高橋広大は3月にも月海舞由主演でこの作品を手掛けているが、こちらは未見。
篠原功・森大・新原武の3人は素晴らしいが、水野にそれを圧倒するだけの力がない。
台本も手を入れ過ぎ。水野を際立たせるために伝兵衛と熊田の情愛にも多くの比重をかけたのかもしれないが、水野の成長のためにも、つかのオリジナルに真正面から取り組むべきではなかったろうか。
上演時間1時間45分。
ダイバシティーファミリー
A.R.P
小劇場B1(東京都)
2022/08/03 (水) ~ 2022/08/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/03 (水) 19:00
初めに誤解を解いておきたい。「観たい!」への書き込みを拝見していると幾人かの人が青木ヶ原の樹海を迷い込んだら二度と出てこれない場所と思っておられるようだが、現在では青木ヶ原は観光スポットなのだ。遊歩道があり、遊歩道から外れない限りは一度入ったら出られないような恐ろしい場所ではないし、樹海の中でキャンプする人たちさえいる。近年はそうした観光者によるゴミのポイ捨てに加え、外部から持ち込まれた粗大ゴミや産業廃棄物の不法投棄も多く、これらのゴミは地元住民が定期的に始末しているのだという。従ってそういう際に遺書が発見されることもあるし、遊歩道の傍で自殺する人さえいるそうだ。しかも後述するが、この作品の中では遺書がどうして発見されたかの説明もなされている。
開場して奇異に感じたのは、この劇場だと通常はL字形に客席が設置されているのだが、入口側の客席がなかったこと。が、開演時間になって遅れてきた客の席がなく、慌てて入口側にも客席を作り始め、かと思えば客が着席した後で最前列を外すために移動してもらったりとバタバタ。入口側に新設した客席もほとんど埋まってしまったのだが、予約数と客席数のチェックもしていなかったとは制作スタッフの不手際が甚だしい。で、開演時間に5分遅れで長男・カズヤ役のタカギマコトの前説が始まるが、これまた(場を和ませるためであろうが)不必要なことまで喋るので、結局10分以上遅れて開演。
【ネタバレBOXに続く】
風のサインポール
劇団俳優難民組合
下北沢 スターダスト(東京都)
2022/07/22 (金) ~ 2022/07/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/07/22 (金) 19:00
「観たい!」にも書いているが、4月に上演されたベンチシリーズ第1作の「いかけしごむ」はまず劇場となる3階にあがろうとして、2階の踊り場を過ぎてギョッとしたのは階段に犬の糞が落ちていたこと。が、よく見ると犬の糞に似せたもので、下から上に(3階に向かって)「いかけしごむ」と公演タイトルが形作られているのだ。片隅に黒く焼け焦げたような紙の燃えカスのようなものもある。事程左様に劇場に入る前からムード造りが秀逸で、開演を待つ間も子供の泣き声が流され(私は開演されるまで、それが劇場外から聞こえてくるものだとばかり思っていた)観応えのある舞台を創りあげていた。
今回はそのベンチシリーズ第2作。今回は変な仕掛けはないなと思いながら階段を上ると、入口手前の手すりが「立入禁止」のトラテープ(ポリスラインテープ)で塞がれていた(笑)。
客席と演技スペースとの間にもトラテープが張られ、奥にベンチがある。ベンチの横には床屋のサインポールが立てられ、ベンチの下にはホームベースがある。
やがて、客席前のトラテープが剝がされて開演。
【ネタバレBOXに続く】
自亡自記
セツコの豪遊
新宿眼科画廊(東京都)
2022/07/29 (金) ~ 2022/07/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/31 (日) 16:00
このセツコの豪遊は劇団員が宮村だけという一人劇団だとのことだが、観るのは19年5月に代々木上原のIto・M・Studioで上演された「つぎとまります」に続いて2度目。
今回はコロナ禍再燃中ということもあって、一人だけでも公演ができるようにとスタッフワークも一人でやることにしたとのことで、開演前の挨拶の後、客席後方の場内照明のスイッチを切りに一旦ハケてから再度登場し、サンダルを脱いで開演。衣装はといえば、紺のTシャツとジャージーパンツ。
【ネタバレBOXに続く】
追憶ベイベー!
TOMOIKEプロデュース
駅前劇場(東京都)
2022/07/27 (水) ~ 2022/07/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/29 (金) 19:00
6年半前にシアター711で初演した作品(当時の団体名はチーム進火RONといったらしい)のリメイクだという。
全席が自由席だが、最後列の下手端に着座。
中央にイーゼルに立てられたキャンバスが置かれた舞台で、開演10分前から友池さん(主宰・友池一彦の役者としての名前)と根岸可蓮、えなえ、岡田竜二の4人によるプレトークが始まる。この中でえなえは降板した大森つばさの代役を急遽務めることとなって、1日で台詞を入れたのだという。
【ネタバレboxに続く】