舞台「学徒隊」 公演情報 NPO法人文化活動支援会まつり「舞台「学徒隊」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    A4サイズの当日パンフの縦半分いっぱいに「この物語はフィクションであり、実在の人物 圑体 事件とは一切關係ない。現実はより過酷 で凄惨であり 再現など到底出來ない。」という言葉が書かれている。この言葉(特に後段)と舞台序盤の展開から、この作品は沖縄戦における少年・少女たちのことを描くのだと思っていたのだが…。

    (ネタバレBOXへ続く)

    ネタバレBOX

    第一部は華やかな結婚式の場面から始まり、一転して少年・少女たちの、次第に戦争が迫ってくる緊迫感も秘めた日常の描写であり、15分の休憩を挟んだ第二部では「本土決戦に備えて」という台詞からもわかるように、本土から離れた島における日本で唯一の地上戦(厳密には「唯一の」は正しくない)での目を背けたくなる悲惨な状況を描き出す。

    ただ、沖縄で少年・少女を動員して作られた部隊で「学徒隊」という名前が付くのはひめゆり部隊として有名なものを含む「女子学徒隊」(従軍の看護助手として配属)のみであり、少年たちのものは「鉄血勤皇隊」「防衛隊」「護郷隊」などである。だから正確には題名は「学徒隊」ではなく「学徒兵」とすべきだろう。
    また、やたらと「帝国軍」「帝国」という言葉が発せられるが、当時の沖縄では「大日本帝国陸軍」「大日本帝国」でなければならないし、「帝国の国民として」という言葉も「大日本帝国(もしくは天皇陛下)の臣民として」でないとおかしい。最初は「スター・ウォーズ」の影響かと思ったほど耳障りだ。
    避難壕というのもお墓(実際に見てみるとよくわかるが、本土のものと異なり、かなり大きい)かガマ(自然洞窟)であろうが、そういった説明もない。

    が、冒頭に書いた当日パンフの言葉からてっきり沖縄の地上戦を描いているのだと思っていたのが、次第にこれは沖縄のことではないのかもしれないと思い始めたのは、沖縄の地名が一切出てこないし、「敵」というだけで「米軍」とか「鬼畜米英」なんて言葉も一切用いられないからだ(沖縄に上陸したのは米軍のみではなく、英国軍も加わっている)。また「天皇陛下万歳」と叫んで死ぬ者もいない。
    そして終盤の少年兵が振る旗が赤白が反転した日章旗であることで、これは沖縄に模した架空の場所での戦闘の話なのだと確信した。
    だから結婚式の場面で(冒頭の場面が、死にゆく直前の仲宗根の妄想だったという形で終盤にうまく結びついているのではあるが)純白のウェディングドレスだったのだ。当時の沖縄ではそんなものありえないし、いくら仲宗根の妄想だとしても純白のウェディングドレスなんて知りもしないのだから思いつく訳がない。少年兵が履いている靴がマジックテープ式の黒いスニーカーなのも気になる。マジックテープが発明されたのは第二次世界大戦後のことだ。

    だが、そうしたことも含めて全てが沖縄ではない架空の場所なのだとしたら、当日パンフにああも大きく誤解を招くような言葉を書くべきではないし、そもそも沖縄として描かなかった理由は何なのか。役者陣は熱演だったのだが、どうにもスッキリしない。

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    2022/09/13 06:30

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