1
ナイゲン(2017年版)
feblaboプロデュース
ハラハラドキドキの2時間でした。
文化祭の直前、急遽差し込まれた「節電エコアクション」。中身はなんと、「うちわ配り」と「打ち水」という誰もやりたがらないこの出し物にクラス代表達の押し付け合いが始まります。
真剣に主張すればするほどおかしく展開されていく笑いのセンスが抜群でした。脚本と演出の勝利ですね。しかも登場する言葉が「印象操作」「一党独裁」「言論封鎖」と今の政治の縮図ともとれる面白さ。なんと「浮気発覚」まであり、会場爆笑の渦でした。
また、役者さんそれぞれの風貌や個性が役とマッチしており、人選の大切さを改めて感じた舞台でした。
2
「地獄谷温泉 無明ノ宿」横浜公演
庭劇団ペニノ
公演中ずっとセピア色の異空間の中に居る感覚に包まれ、見終わった後はずっと震えが止まらりませんでした。タニノクロウ氏の世界は凄すぎました。
一郎の抑えた演技と女性陣の奔放さの対比、落ち着いたナレーションも本当に素晴らしかったです。
昨日拝見したのですが、今もずっと頭の中で舞台が回り続けています。
この不思議な感覚、いったい何なんでしょうか。
3
根も葉も漬けて
やみ・あがりシアター
笠原さんの世界観にただただ感心するばかりでした。役者さんたちのテンポあふれる舞台作りも素晴らしかったです。
4
ルート64
ハツビロコウ
あっという間の2時間、終わった後もしばらく震えが止まりませんでした。
舞台では犯行現場を磯子区から綱島に移し(実際は一旦上九一色村に運んだあと新潟・富山・長野県に運んで埋めたようです)、午前3時に一家を殺害し夜明け前に埋めるという時間的な制約を設けることにより、舞台上の緊迫感の醸成に繋がったと思います。また実際は男性6名で犯行に及んだようですが、女性1名を加えた4名にすることにより、(今更ながら)犯罪を完遂できるかどうか危ぶませた感が良かったと思います。
さてタイトルの「ルート64」についてですが、おそらく殺害後車を走らせた道であると思われますが、舞台でどの道なのか具体的に示さなかったことがかえって見知らぬ夜道が与える恐怖を増幅しました(私の推察では綱島からの時間や東名高速利用、観光地や湿地の存在から宮ヶ瀬湖畔を通る神奈川県道64号伊勢原津久井線です)。
また、照明や音響を松本さんや岩野さんが行うことにより「閉ざされた世界」が見事に演出できたと思います。
最後にこの舞台を拝見し、改めてかような最後を遂げた坂本堤さん御一家のご冥福をお祈りしたいと思います。
5
りんぷん手帖
やみ・あがりシアター
最長で10年間時間が違うストーリーを同じ舞台でスタートさせ、展開させていく、という新しい試みにチャレンジされた笠浦静花さんに拍手喝采です。
出だしで、2名の若い女性が現代の若者用語を使っており、同じ舞台の片方では4名の専業主婦と思しき女性達が、スタバカップの蓋の小穴の取り扱い方に戸惑ったり、「バナナ クリーム フラペチーノ」を新商品と言ったり、「掲示板」「オフ会」「ハンドルネーム」という今や決してトレンディと言えない単語が飛び交い、最初私自身2つのドラマの時間的な関連性が見えず、一種の違和感を感じていました。しかしこの違和感は舞台が進むにつれ2名のストーリーは時間を遡っていき、4名のストーリーは時間に沿って進行していくことがわかりました。しかもこの2つのストーリーは電器店の店頭で接点を持ち、その際のやり取りから主人公夫婦のその後が見える、という巧妙さがあり、とても感心しました。これはとても斬新な試みであり、また観客に同じエンディングでも心理的な増幅効果をより強く与えられたのではないかと確信し、敬服いたしました。
6
雨と猫といくつかの嘘
青☆組
吉田小夏さんの世界と演出の素晴らしさに思わず引き込まれました。
7
ますらをの伴
ドナルカ・パッカーン
戦時中のラジオドラマを若い方々により‘舞台演劇’という手法で現在に蘇らせていただいた珠玉の作品です。
冒頭「東京節(パイノパイノパイ)」で始まる下宿屋の一日、妙にハイテンションな下宿屋の女主人、そこには学徒出陣を控えた我が子同様の法文の学生への惜別の悲しさがあったのでした。出陣学生はカラ元気とも思える大きい声で「お国のために」と言いながら「帰るつもりはない」「(理系学生に対し)日本の未来をお願いする」といった死地に赴く無念の言葉が差し挟まれ、また最後まで授業に出る、美術史を学ぶ学生が古都の寺社仏閣をその目に刻みたい、という学生ならではの思いも伝わり、目頭が熱くなりました。
学徒出陣壮行会が神宮外苑で行われた頃には戦況は著しく悪化しておりました。
敗戦への懸念からますます軍部の目も光るこの時期です。
本作品を拝見し、森本薫氏が戦争翼賛の大合唱の中にありながら、ドラマの中に戦争に対する彼自身の気持ちを潜ませ、軍部等から批判が出ないよう巧妙に国民に伝えようとしていたことに驚きを感じました。
学徒出陣直後のご時世にこの作品を作り出した森本薫氏とこれを掘り起こし、今蘇らせていただいた川口典成さん、作品の意図を組みとってラジオドラマを舞台に再現していただいた役者の方々には心から感謝を申し上げたいと思います。また、下宿の女主人とそのお嬢さんを男性が演じたことにより、一層味わい深い舞台に仕上がったと思います。
8
みごとな女
SPIRAL MOON
戦前の会話劇をすっかり堪能させていただきました。
本人の意思や感情よりも職業や年齢といった外形的な部分が結婚の条件となっていた頃の話ですね。
当作品を演じるにあたり、まず大山という演劇の中心地からやや離れた場所は、駅から歩いて行くにつれ、八十年前へのタイムスリップ感がありました。また終始障子を半開きにしていたことが上手く舞台に奥行きを持たせる効果を生み出していると感じました。
あさ子への高まる感情を抑えた大人の医師弘とやや抑えきれない学生収の対比、自分を愛する男たちの気持ちを知るか知らずか天真爛漫に振舞い続けるあさ子、娘の幸福について葛藤する母真紀。この四人の感情が最終局面で交錯し絡み合うところは圧巻でした。
今回秋葉さんは演出も良かったのですが、役者としても、ちょっとした目の動きだけで「場」を産み出すなど、とても素晴らしかったです。
9
バージン・ブルース
うさぎストライプ
二人の名優の素晴らしさを堪能させていただいた舞台でした。志賀さんと中丸さんの味と厚みのある芝居にずっと腹をかかえて笑いっぱなし。最後は涙が止まりませんでした。
10
THINGS I KNOW TO BE TRUE ーこれだけはわかってる-
幻都
年の瀬に素敵な時間を頂戴しました。
定年を過ぎてゆっくりとした時間が持てそうだという実直な夫婦に襲いかかる子供たちの‘やっちゃいました’攻撃。そうこうしていくうちに妻の過去も露見。そして最後は・・・。ひとつひとつの出来事がすごすぎて目が離せませんでした。これをリーディングという制限がかかった舞台で6人の役者さんたちが見事にその空間を描き切っていました。背景の動画も思わず見とれてしまうくらい素晴らしかったです。