タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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SILVER to BLACK

SILVER to BLACK

HyouRe Theatre Company

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2015/04/11 (土) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★

壮大な物語
場内の真ん中に高さ2mほど,四方が6~7mの立体舞台が設置されており、その上部に象を形取ったオブジェがある。また四方の舞台中心部は蚊帳で囲んでおり、そのありようが余臭を感じさせる。表現的には不適切かもしれないが、前近代もしくは後進国をイメージさせる。しかし、物語(原作は宮沢賢治「オツベルと象」)が訴える内容は、千古不易のように思える。

ネタバレBOX

キャストは3名(女性2名、男性1名)で、オツベル、象、月、百姓をコンテンポラリーダンスで表現する。そしてダンスはその佳境において、「心」の真偽もしくは虚実をマスクの有無で表現している。その舞踊は実に幻想的、妖艶的であり、観応えがあった。
しかし、自分は最前列に着席したことから、見上げるようなことになり、観ずらいところもあった(自分の責任であるが)。もう少し後ろの階段席から俯瞰する、もしくは上方から眺めるようなイメージで観れればと残念であった。
そう、キャストは舞台中央部に上部へ通じる階段があり、その昇降が河の中での浮沈をイメージしていたと思えるから...。

だだ、自分の感性も問題であろうが、少し抽象的、観念的な描き方になっていたような気がしており、原作の主張なりが伝わり難くなっていたと思う。
次回公演も楽しみにしております。
「空翔ける雷鳴の夜に」-再演-

「空翔ける雷鳴の夜に」-再演-

GEKIIKE

シアター風姿花伝(東京都)

2015/04/10 (金) ~ 2015/04/20 (月)公演終了

満足度★★★★

難しいチーム名...「霹靂神(はたたがみ)」の下に集いし若者
登場人物はそれほど難しくない。どちらかと言うとストレートな性格の持ち主ばかりだろう。
さて、公演はイケメンを揃えた青春群像劇...その観応えある演技は、もちろん”よさこい演舞”である。見所は2回で、主人公がその魅力にとりつかれた場面、もう一か所は...、

主人公が絶望の淵から立ち直るという設定であるが、その絶望した内容に切実感がない。真面目に考え、生きようとすれば多くの若者が経験する就職活動...それが自殺の動機としては弱い。

ネタバレBOX

主人公は面接どころかエントリーシートの段階で不採用通知がくる。自殺を考えるが、その決心もつかない。そんな折、原宿の”よさこい祭り”で見た演舞に憧れた。しかし、既に団体は解散しており、紆余曲折の末、自分がリーダーになり、”よさこい祭り”にチャレンジ枠(賞の対象外)で出場を果たす。その若者の成長過程を描いた青春ドラマの王道作品。脚本は予定調和であるが、やはり”よさこい演舞”は迫力があり、男の色気を感じさせる。そう言えば、女性客の方が多く、終演してから有料パンフレットにサインをもらっていた。
制作はストレートであるが、演出・演技は観せる、そして魅せるという手堅さがあり、楽しめた。細かい点...例えば、あんなに多くのコンビニ場面の必要性や先に記した主人公の挫折動機の弱さはあるが、それを凌駕する面白さがあり、再演も頷ける。
次回公演(新作を希望)も楽しみにしております。
『スカイ』 次回ノーチラスは7/24(金)~29(水)

『スカイ』 次回ノーチラスは7/24(金)~29(水)

シアターノーチラス

シアター711(東京都)

2015/04/08 (水) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

本当に奇妙な群像劇
社会人サークルを通してみた人心の影のようなもの、またはサークル内での人間関係など、自身も含めたパラノイアを描いた物語。
舞台セットは、上手に「UFO」を呼ぶための「塔」のようなオブジェが作られ、小高い丘に立たせている、というシチュエーションは雰囲気があった。

ネタバレBOX

「UFOを呼ぶ会」というサ-クルに集う人たちとサークル主宰者の思惑が交錯する。サークルという仲間を通じて自身が抱える悩みからの逃避、人的交流で解消させたいと願う気持ち。一方、主宰者はサークル会費徴収という金銭欲に目が眩み詐欺まがいの行動を起こす。
序盤は緩いテンポから段々とテンポアップしていく。その間に登場人物の性格付け、家庭環境・状況、過去事件への苦悩などが説明され、”UFO”という虚実を絡めた人間関係を浮き彫りにしストーリーを膨らませながら展開させる手腕は秀逸であった。
主筋か脇筋か判別できないが、苛めの問題も内在させている。主宰者が詐欺まがいの出来事に信憑性を持たせるために呼んだ男...実は小・中学時代に主宰者を苛めていたが、今は逆転した立場になっている。苛める側にいても、その行為によって友達が離れていくという、妙にリアリティのある説明は面白かった。
そして、結末...サークルにいる元カレを探しにきた女性を口論の末に刺傷する事件を起こす。少し急展開であったが観応えがあった。
なお、主宰の詐欺まがいの言い訳に、国家も国民に対して”幸福にする”という名目で税金を徴税していると...論理のこじ付け、強引という印象である。公演に対して社会性という世界観の広がりを持たせたかったのだろうが、白々しい台詞の羅列になったのが残念である。

次回公演も楽しみにしております。
なぜ ヘカベ

なぜ ヘカベ

東京演劇集団風

レパートリーシアターKAZE(東京都)

2015/04/03 (金) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

やはり”風”の公演は素晴らしい!
浅学の悲しさ…ヘカベを知らなかった。正確には思い出せなかった。高校の世界史の授業の課題図書「イーリアス」に登場する王妃の名前だということ。このトロイ戦争を題材にした本には有名な戦士が多く登場する。当時は、軍記ものとして読んだ記憶がある。それにも関わらず、悠久のロマンを感じてしまう。やはり、シュリーマンの古代遺跡発掘の印象が強い。

さて、戦記の目線になるが、物語の時代背景のようなものは分かる。しかし本公演に描かれた戦争という愚かな行為…それを現代と繋げて考えるという視点から描いた芝居は、素晴らしいの一言である。

物語の史実原形のようなものが、脚本になっていると思える。よって卓越した演出について書かせていただく。

ネタバレBOX

この公演タイトル「なぜ ヘカベ」ていう“問い”の言葉がついているのか。ここに、演出家・江原早哉香 氏の強かな計算があるように感じた。この芝居は、劇中劇のような構成になっている。古代と現代は、神々の世界時間からすれば、火を付けて吹き消すまでのほんの僅かな間であろう。

この虚構にして現実の二元性...神々による人間を舞台にした一種の虚構と、長いと思われた物語は、旅人が休んだほんの一晩で語られたという現実。この展開は雑然と混沌とした中で人間の悲しいまでの”生”への執着が垣間見える。神々の神聖さと人間の醜悪さが均衡と不均衡のように描かれ、演技としては役者の肉体の緊張に中に陶酔するような色気が観て取れる。
そして、この禍々しい夢物語は色褪せることなく、旅人の脳裏へ...さぁ出発しよう!

本当に素晴らしい公演でした。
次回も大いに期待しております。
歌劇「Rapunzel-3058」

歌劇「Rapunzel-3058」

国立オペラ・カンパニー 青いサカナ団

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/04/04 (土) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★

好きな公演です
本公演は新作書下ろし作品で、テーマ性に優れた内容であった。オフィシャルチラシには、SFオペラと印刷されており、当初から「すみだパークスタジオ倉」でのオペラ公演を案内している。もちろんこの劇場がオペラ劇場でないことを承知の上で公演している。当日配布パンフ中で、原作・脚本・作曲・演出担当の神田慶一 氏が「オペラ劇場を離れ、敢えて様々な挑戦の可能性を秘めた芝居小屋で上演するオペラとして様々な挑戦を行っている新作を創り出しました。オペラには不向きな環境かもしれませんが、今までにない形でのオペラ創作のアプローチとして、新たな刺激と魅力と、更にはこのジャンルの可能性を提供する...」と記している。この試みに敬意を表したい。

もともと日本にはオペラ上演する劇場が少なく、あっても東京を始めとした大都市に集中している。地方でオペラを観たいと思っても、その機会が少ないであろう。そういう意味で普通の芝居小屋での挑戦...好きである。

このオペラ劇場ではない小屋で、舞台上手にオーケストラピットを設置し、最低限の編成(14楽器?)で、音楽を奏でていた。本来のオーケストラピットがあれば指揮者は正面から芝居の進行状況に応じてタクトを振ることが出来るが、本公演では難しい。それゆえ指揮者から舞台が見えるよう斜めに指揮台を設置している。先に書いたが、敢えて...の苦心した点であろう。

公演の内容は、現代社会に対する問題提起が鋭い。寓話を装いながら、その描く心底...実に感銘を受けた。
純粋に公演内容だけみれば、いくつか気になる点はあるが、それ以上にテーマ性とそれを演出した力量は素晴らしい。

ネタバレBOX

本が開き、物語の世界から白雪姫、魔女、小人達が現れる、というファンタジー豊かなプロローグ。この物語は、本の世界から始まるが、物語に入り込むと「詩(ウタ)」がなくなり、「本」は不要な想像力を喚起するという理由で禁止されている。その世界は「ヴェルト」という支配階級が暮らしており、優等遺伝子交配によって生まれた子供たちを電脳学習させている。そして優秀ではない、とされる労働者階級はID端末を腕に装着され管理されている。

外界は環境危険という名目で、安全なシェルター内で暮らすことを強要する支配層。一方、労働者階級は酒場に集まっては宴を...そんな中に白雪姫の物語を挿入してSF風に仕上げている。

現代に繋がるかもしれない核汚染、優性交配(もしくは出産前検診)、無機質な学習形態、貧富の差、一見安全だ、という「ユートピア(理想郷)」を思わせるが、実は自由という人間にとって大事な権利を奪うという「ディストピア(非理想郷)」の物語になっている。この不合理な内容を教訓的な”くさい”芝居にせず、老若男女が楽しめるように創作したところが素晴らしい。

演技については、メインキャストとそれ以外では技量に相当の差があり、キャスティングは一考が必要である(特に子供たち)。

本格的なオペラ志向には物足りないだろうが、もともとそれを承知しての制作サイドであり、少なくとも自分は十分楽しんだ。そして、できればこの規模の劇場での試みを続け、オペラを観る機会が増えれば...そんな思いを持っている。

最後に苦言になるが、会場ロビーが使用できないようになっている以上、出演者とその関係者(主には家族と思われる)が、出入り口に集まっていると、一般観客には迷惑になる。この点は配慮、改善が必要であろう。

次回公演も楽しみにしております。
ほな、また。

ほな、また。

ポールシフト

TACCS1179(東京都)

2015/04/02 (木) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★

きたで~ この素晴らしい公演が...
既視化したような内容であるが、それを凌駕し改めて感動を与える力のある公演であった。まさしく”時間を越えて、見るもの全ての真実へ変わってゆく...そんなハートフルドラマである。

当日パンフに本作の作・演出の日野祥太 氏の挨拶「...『夢は叶わない』これが普通です。でも『夢を叶えよう』とする時間が何よりも人に『輝き』を与えるんだということを、この作品を持って証明したいと思います」と...。

そう、少し自分の理屈を書かせていただければ、「夢」は叶えようと努力を惜しまないかもしれないし、もし叶ったら次の夢に向かうのでしょうか。一方「希望」は望めば叶うかもしれません。「夢」と「希望」の間にあるのは費やす「時間」でしょうか。そしてその時間の多さが「輝き」を増すのでしょうか。

本公演は素晴らしいと思いますが、より輝きを増してほしいのですが...。

ネタバレBOX

この公演で一番気になったのが、未来のわが子から事故死の日時・場所を知らされながら、妻を助けに行くというシチュエーションである。これだけ気心の知れあった友達、妊娠している妻...この愛すべき人々に事情を話さない理由は何か。すべてを自分で背負い込んだ行動は...結局家族と友達、なにより父親を知らずに生まれてくる子に対する”責任”というものが感じられない。

また、終盤の事情説明は急いだためか、あまりにご都合主義になったと思う。もう少し丁寧な状況説明をして、感動の余韻を持たせる、もしくは膨らませてほしかった。
脚本・演出とも秀逸であるが、キャストの演技なくしては表現できない。今作ではキャストに力量差を感じることなく、素直に感情移入ができた。

希望を持たせた公演だけに、次回作はもう少し時間をかけて夢に近づくようなものを期待しております。

アダムの肋骨

アダムの肋骨

劇団肋骨蜜柑同好会

王子小劇場(東京都)

2015/04/01 (水) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★

少し肋骨は太いほうが良かった
映画「黒い十人の女(和田夏十オリジナル脚本)」を思い出した。もっともその結末は違うが、男とその愛人というモチーフと、人間(女性)の嫉妬、言い換えればエゴの剥き出し...人間の醜悪な側面をあぶり出したところは似ている。

さて、この公演の説明には、男のレクイエム、最後の晩餐、世界の終わり...というような宗教的な言葉が並ぶ。そして、劇中の言葉や動作が聖書に書かれていることを比喩しているところもあって興味深かった。

しかし、その描き方が説明不足または緩慢なところもあり、芝居に集中できなかった。

ネタバレBOX

舞台座席は、入口を入ると逆コの字型になっており、それぞれ3段の雛壇。舞台は長方テーブルと折りたたみのパイプ椅子。それを三方から観るようになる。
公演は、プロローグとエピローグ、そして本編の三部構成のようであるが、本編の前後は男二人の起・結である。冒頭部分は、白衣の精神科医と患者の様相で、興味を持たせる演出としては良かったが、本編も途中まで進んで来ると、その結末が透けてくる。いわば劇中劇か脳内探訪という本編を一気に転換させるもの。本公演もその手法で、エピローグで、それまで演じてきた内容をそんな公演にしたい...という暴露話になった。この展開自体は面白いが、結末へ結びつけるまでの本編が観ていて疲れる。キャストのキャラクターも確立し、その役割も十分説明していた。しかし、ストーリーを展開する上で、次の点が気になった。
第一に、男が女を集める理由が分からない。そして、女の中の一人が自分を救ってくれるという。その救いとは...。
第二に、セリフの”間”が観る集中力を欠くほど無言が続き、芝居の魅力を損なったように思う。

そういえば、男に対しそれぞれの女が、自分の優位性をアピールする場面では、例えば男が住んでいる部屋の家賃の大半を負担し経済的に支えている...という場面の後、テープルにパンが運ばれる...「人はパンのみにて生くるにあらず」
また男性に向かって別の女性が、自分の目に映る姿は、と迫る場面...「自分の目の中の梁に気がつかない」 それまで互いに悪口雑言をならべていたのに。

本公演は、面白い比喩や動作(「最後の晩餐」の様相など)を多くちりばめ、知性の片鱗を見せてくれた。それだけに本編をもう少し見応えのある内容にすれば素晴らしい公演になった、と思うと残念である。

今後の公演に期待しております。
御話-おはなし-

御話-おはなし-

にびいろレシピ

シアター711(東京都)

2015/04/01 (水) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★

雰囲気のある公演
舞台中央にさらに舞台を区切ったような二重構造で、その周りは回廊のような感じである。女性の昔話の内容に沿うように濃密な台詞の応酬がある。

その演出は、舞台中央と回廊のような所を出入りまたは周回し、時にその動きが手足を突っ張ったコンテンポラリーダンス(本当はもう少し適切な表現があるが、差別用語)のようで、少しコミカルに観える。

キャストは全員女性で、その艶のようなものも醸し出される、独特な雰囲気のある芝居であった。

ネタバレBOX

知っているような御話が断片・断編的に展開しているようだ。それがまとまっているのか、それとも御話の繋ぎ合わせが、全体の物語を構成しているのだろうか。単に思考する観方では、その内容を捉えるのが難しいかもしれない。完全に抽象的表現でもなく、かと言って挿話の連なりの御話でもない。そこにテーマ、主張している内容を理解しようとすると理屈の数々を...。

この公演では、意識と無意識の境界を彷徨うイメージである。その不思議な感覚が、自分の中で漠然とした「言葉にならない想い」や「~な感じ」という曖昧な意識に言葉(御話)を当てはめると、その意識の領域が顕在意識に引き上げられるのだろう。その世界感は悠遠・幽遠。その表現は優婉・優艶である。そして、その先には奥深い情動があるのだろうか。

頭で考えるクセがついているため、感じることが退化しているかも。自分の視野、思考の自由度の広がり、発想も豊か、柔軟にしてくれる公演かもしれない。

それでも、観客(自分)は物語(筋)を追い、その描かれた内容をしっかり捉え、その世界観に浸っていたいと思った。やはり心の余裕のようなものがないのかもしれない。浮遊感は不安定で落ち着かない。自由度よりも具現化した表現を求めるのが好みである。

次回公演を楽しみにしております。
満州戦線

満州戦線

タイニイアリス

タイニイアリス(東京都)

2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしかった!
競演 東西南北 AliceFestival 2014の一環として劇団コルモッキル(fromソウル)を招聘し公演したもの。
当日配布のパンフには、現代韓国人のルーツを探る、苦く痛烈なブラックコメディ...との謳い文句が印刷されている。
公演の印象としては、”親日”的であり、戦時中はそうであったのか、という疑問も残るほどだ。同時に、現在の日本メディアによる韓国の日本に対する反日報道に違和感も覚えた。

本公演は観応えがあり、2回劇場へ足を運んだ。2回目は「競演 東西南北 AliceFestival 2014」の最後の公演にして、実質的なタイニイアリス閉館公演になっている。

上演は韓国語であるが、舞台上部に日本語字幕が映し出される。

ネタバレBOX

当日パンフから...1943年3月、満州の首都、新京。 朝鮮から留学し、満州国陸軍軍官学校(実質的に大日本帝国陸軍士官学校)を卒業した飛鳥(アスカ)の卒業を祝うために朝鮮人の友人たちが集う。彼らは満州でそれぞれ患者を診療し、詩を書き、キリスト教を布教し、市役所の公務員として働きながら暮らしている。
卒業祝賀パーティーの最中、飛鳥の妹がコチュジャン、朝鮮味噌などを持って朝鮮からやってくる。しかし、彼らは、祖国独立のために闘う独立運動家たちを匪賊と呼んで憎悪したり、朝鮮の味噌壷は虫がわいて非衛生とこきおろしたり、不倫がばれリンチにあっても日本人と結婚し後ろ指さされることのない日本人の子を生み育てたいとを願ったり...。

そのようなストーリーに、「同期の桜」「君が代」、「旭日旗」「軍刀」「御真影」という極めて日本を象徴する歌や形が道具として使用されていた。特に軍歌や軍旗(現在も使用している)をイメージするものを登場させていることが、現代韓国で上演される場合にどう受け止められるのか...そんな思いもするような公演であった。

そこには逆説的に、日本に対して歴史認識を鋭く突きつけたのでは...そんな思いもするような芝居であった。
いずれにしても考えさせられる内容であり、観応えがあった。それは構成もさることながら役者の演技力が素晴らしい。実に軽妙・重厚という使い分けが良かった。

素晴らしい公演をありがとうございました。
演劇集団/反(韓国)「家を去って」

演劇集団/反(韓国)「家を去って」

一般社団法人 日本演出者協会

タイニイアリス(東京都)

2015/03/14 (土) ~ 2015/03/16 (月)公演終了

満足度★★★★

「家を去って」...また来日して観せて!
競演 東西南北 AliceFestival2014 の一環として演劇集団 反(fromソウル)を招聘し公演したもの。
公演はギリシャ神話をモチーフにした悲喜劇のような話。舞台構成はプロローグ、エピローグと6場から成るが、”場”における時間の長さは随分と違う...そこに描きたい思いの軽重と、それを特長付ける演出の妙があった。

さて、公演の中で印象に残るセリフとして、人間は色々なことを考えるから”戦争”をおこすのだと...。その対比になろうか、人間は考える葦である...という言葉も有名ではないか。

上演は韓国語による。

ネタバレBOX

物語は当日配布のパンフから...ギリシャ神話に託して始まる。自殺した娘の命日、家に居なかった父親が失職して7年ぶりに帰ってきた。そこには、他の男を愛した妻と娘、拳銃を持った息子がいた。家に巻き起こる激しい波風は家族のすべてを破壊し、一人残った息子は家を出て行く、まるでオレステスのように...アガメムノン王、娘のイピゲネイア、そして王の息子オレステスが想起できる。

話は過去に遡る...母と娘は同じ男を愛してしまい、娘は愛した男を撃ち、自殺する。この部分は回想シーンとなっている。そして父親は家に居なかったのではなく、閉じこもっていた...邂逅シーンは最後の6場で怒涛の如く明らかにされる。
この回想シーンを具体的にしているのが2場と5場であり、その間の3場と4場は神話を比喩した芝居になっている。このストーリーは、具体的な場と観念的な場を上手く観せるという演出の巧みさによって印象付が強調された。

本当に面白い公演をありがとうございました。
伯爵令嬢マリツァ

伯爵令嬢マリツァ

東京オペレッタ劇場

内幸町ホール(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

楽しめたオペレッタ...
なんとも直情的に描かれた話...作曲:E.カールマーン 原台本:J.ブランマー&A.グりューンヴァルトで、訳詞/台本:角 岳史 氏である。

ピアノとヴァイオリンの美しい音色にあわせ、情熱的な愛の物語がはじまる。

ネタバレBOX

内幸町ホールという観客が舞台を身近に感じることが出来る手頃な空間で繰り広げられる、熱い恋の物語...借金で無一文になった若き伯爵タシロは、妹の結婚持参金を得るため、身分を隠して農園の管理人として働いていた。農園の主人である伯爵令嬢マリツァは財産目当てに近づいてくる男にうんざりしていた。しかし、真面目に働くタシロが気になり、恋心が芽生える。この二人を中心にマリツァに想いを寄せる男爵やタシロの妹リーザが絡み、コミカルな恋愛物語が進む。

出演者の歌声はもちろん素晴らしいが、それと同じくらいに演技が楽しめた。さて男女の恋の駆け引きと情熱的な訴えは、作品を大いに盛り上げ魅力的なものにした。

次回の公演も楽しみにしております。
frequency/ありふれたこと・波長

frequency/ありふれたこと・波長

Sayeh Iran theater group(テヘラン)

タイニイアリス(東京都)

2015/02/20 (金) ~ 2015/02/22 (日)公演終了

満足度★★★★

国家と平和と想いと...
競演 東西南北 AliceFestivalの一環としてSayeh lran theater groupを招聘し公演したもの。この作品はイラン・アカデミック賞を国内外の演劇祭で10指に余る賞を受賞した新進気鋭 Morteza.Mirmontazemi 氏が演出を担当している。

本公演は、原語上演でペルシャ語の字幕が映し出される。その言語に堪能であれば、すんなり理解できるであろうが...。しかし、当日パンフに粗筋(6情景)が記載された資料が配られる。

これは長い年月 国のために戦い続けた兵士の物語で、今、彼は普通の生活を送っている。彼は生まれ故郷で普通の生活をしている。しかし、その描いている夢物語は...

言葉や映像に書かれていることが分からなくても、その想いは十分に伝わった。

ネタバレBOX

結論は、この男は既に亡くなっており、現世での想いを綴った物語である。

その芝居の冒頭は料理番組かと思うような、野菜を切り刻む。そして突然にゾウの話へ転換する。そのゾウの話は空腹へと繋がる。そして鶏の話へ...鶏の羽を毟り取る。その鶏はチキンとして戦争へ行く。
暗転と比喩の連続であるが、そこには国情の関係で直截できない事情があるのか、もしくは自分の感性が鈍ったか。

殺戮、空虚(空腹)、戦争...戦地に行く兵士がイメージする光景が逆回転するかのようである。その情景がシュールに描かれ、最後は男が横たわった姿になる。そこは墓場…死んでやっと故郷で眠ることができる。その怖いまでの抵抗と平和への願いが心に響く。

実に見事な公演であった。
舞踊劇『葉衣HAGOROMO』

舞踊劇『葉衣HAGOROMO』

千代田区立内幸町ホール

内幸町ホール(東京都)

2015/03/24 (火) ~ 2015/03/25 (水)公演終了

満足度★★★★

樋口一葉作品の持つ”言の葉”の美しさ
樋口一葉の代表作「闇桜」「十三夜」「にごりえ」「たけくらべ」の4作品を、その言葉の独特な美しさと情景をチェロとパーカッションの音色にのせて描いた公演である。
樋口一葉...いわずと知れた明治初期の女流作家であり、その短い生涯に美しくも儚い、そんなイメージの作品を残している。多くが短編であり、本公演はその内容のダイジェストが描かれているので、樋口作品を90分程の上演の中で楽しむことができた。
この原作を芝居と日本舞踊で観せるという贅沢な演出であり、明治という時代の雰囲気を十分醸し出しており、秀逸な公演であると思う。

また、トピックのように、一葉の貧困(生活苦)を描く一方、2004年から発行されている五千円紙幣に肖像が新デザインとして使用されていることを引用し、その時代を経た皮肉...そのユーモアのある演出も楽しめた。

当日配付のパンフから.. 「舞踊・音楽・演劇(朗読)で表現する一葉の世界」は見事に表現出来ていた、と思う。

ちなみに、樋口一葉は現在の千代田区内幸町の長屋で生まれた、そうである。

次回公演も楽しみにしております。

『蝶ゲンボウ』(チョウゲンボウ)

『蝶ゲンボウ』(チョウゲンボウ)

ひげ太夫

テアトルBONBON(東京都)

2015/03/24 (火) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

組体操の見事さ…話は深い
単に組体操という演出の素晴らしさだけではなく、脚本も観応えある内容になっている。

やはり組体操の演出について書かなければならないだろう。河、ジャングル、城など、あらゆる形あるもの、見えるものを体現させる技術は素晴らしい。そして、その情景・情感も表す表現力の巧みさ...舞台上、ほとんど休みなく動き続ける体力と集中力(これが切れたら危ない)には脱帽する。

ストーリーは勧善懲悪であるが、その展開は凝っているが面白く、大人も子供も楽しめるものになっている。劇場には多くの子供も来ており、その演出の珍しさだけではなく、内容も楽しんでいるように見受けられた。

確かな冒険活劇であり、娯楽性に富んでいるから約2時間...その圧倒的な見世物(好い意味)を楽しめる。

次回公演も期待しております。

カテゴリーボックス

カテゴリーボックス

9-States

小劇場B1(東京都)

2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

物語が立ち上がり…(Bエリア)
閉鎖病棟の人間(家族)関係が進まず、堂々巡りをしながら出口が見えない不気味な雰囲気が立ち上がってくる。苛立ち、孤独、悲しみ…色々な感情が入り混じった閉じられた世界感がよく現れていた。
やはり、Bエリア の方が観劇するには適していたと思う。Aエリアに比べ幅広空間(床パネル2枚分、約60~80㌢)は大きく影響していると思う。

ネタバレBOX

芝居において、人間の目は左右の動きには即応できるが、遠近に対しては反応が鈍くなった(自分だけかもしれないが)。その意味では Bエリア の方が観やすかった。まず、役者の動きも舞台奥から現れて Bエリア に並ぶようにして演技する。一方、Aエリア からは、奥行きのある演技を観ることができるが、その動線が一直線上にあるようで変化に乏しい。また舞台セットのソファーがBエリア に面して置いてあることから、Aエリア からは父親(ほとんど腰掛けている)は他の役者の人影で見えないことが多い(特にAエリア下手側:大型モニターが見やすい側)。 
演技の動きにも少し工夫が必要であると思った。

次回公演も楽しみにしております。
カテゴリーボックス

カテゴリーボックス

9-States

小劇場B1(東京都)

2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

差別と区別…(Aエリア)
閉鎖病棟における心的または脳内…彷徨というには、硬質であまりに説明口調だったという印象を持った。この芝居内容であれば、何でもありの世界を描けるから、あまりカテゴリーライズせず、もっと自由に表現してもよかった。

ネタバレBOX

インナーハウスという閉鎖病棟における心療実験的な話は、仮想家族による日常会話の積み重ねである。ところが、その話...例えば皆でピクニックに行く話し合いは遅々として進展しない。いつも曜日は”月曜日”で次の”日曜日”が来ない。
この家族における人間関係(個々人)の距離感が、まさに「仮装」であって自分の本心を曝け出さない。疑心暗鬼で虚々実々の台詞が、ちょっとしたサスペンス風で観応えがある。ただ、多重人格における心理的な描き方は、少し言葉(台詞)遊びのようであり、説明口調になっていたのが残念に思えた。

言葉の概念として、普通、常識、真実...は分かったような気がするが、それを表現しようとすると、案外難しいもの。本公演では、普通を数の論理、常識は枠内・外の区別、真実は...閉鎖病棟だから何が真実かは分からない。話の逆転した思考が面白いが、少しカテゴリーに拘り過ぎたかもしれない。

次回公演も期待しております。
花影

花影

enji

OFF OFFシアター(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

経験差によって観方が違う
現代社会の重要課題にして、人間の尊厳という個人と家族問題でもある。自分は、公演にあったような経験をしているため、胸にこみ上げて来るものがあった。
深刻なシーンもあったが、あまり暗くならないよう演出上の配慮があった。

ネタバレBOX

公演は、2つの話が同時進行し、一人の人物を介して交わる。しかし、それは相当な偶然で強引な結びつけだったと思う。
認知症の女性入居者(元高校教師)とその家族の在りようと、その入居先にいる老人とその息子の確執ある父子関係が描かれる。息子の父親に対する嫌悪(若い頃の自分勝手、女癖の悪さなど)と、事故による車椅子生活に対する苛立ちと失望を抱えた30代男...。
この30代の息子が元高校教師の教え子であるという偶然の再会。さらにこの男が高校時代に起こしたとされる事件が明らかになるが、その事件の被害者と目される女性が施設の職員として働いているという偶然の重なり。もしかしたら女性職員が敢えてこの施設で働いていたかも...。
それぞれの話が交錯しながら、認知症の女性(忘れることで純真さが増す?ような設定)が、周囲の人間を温かく包む姿が愛しい。

既に鬼籍の母親を見るようで胸が締め付けられた。ちなみに元高校教師の夫も癌で余命いくばくもないということであったが、この状況設定も自分の時と重なり、その時の想いがよみがえった。

老いた先にあるものは...ということを改めて考えさせられた。

今後の公演にも期待しております。
コロラド

コロラド

いびき

新宿眼科画廊(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/24 (火)公演終了

満足度

合わなかった(女性バージョン)
自分の感性が鈍ったかもしれないが、本公演は何をテーマまたは主張したかったのか理解できなかった。
説明にあった脱獄シーンに興味を持って観ただけに残念な描き方だった。


ネタバレBOX

監獄内での女性囚人の会話は、普段よく見聞きするような「嫌らしい」「いじわる」「悪口・陰口」の類…別に収監されている状況にしなくてもよい。興味を持った脱獄の手口は、警察内部の手引きという安易な方法。拍子抜けするような話で残念だ。

演技…というよりコントを見ているようだが、わざとらしい笑いネタでは、真に笑えない。ドタバタ騒動は見苦しかった。

次回公演に期待しております。
モルフィンの伽唄

モルフィンの伽唄

企画団体シックスペース

荻窪小劇場(東京都)

2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★

幻想的であるが...
照明は公演全体を通じて薄暗く、時に妖艶もしくは幻想的な雰囲気を醸し出すような色彩光を照射する。そのビジュアル的な観せ方は魅惑的であった。

ネタバレBOX

衣装は妖しげな演出効果を上げるため独特であったが、その統一感があったのだろうか。自分にはその意図が分かりかねた。支配人のチャイナドレス、(紅い花/母親)役の赤い肌襦袢...薬物に侵され堕ちたイメージだろうか。その割には髪は梳いており、襦袢も洗いたてのようだ。

さて、舞台上は、4個のBOXを置いただけで、その組替え、積重ねで現実状況や心象風景を説明する。使用しない場合は隅に寄せ、スペースを広げて舞踊(男性だけの群舞...中毒患者の苦痛表現か)する。群舞姿は力強いが、その苦悩度合いの多くまたは大きさを表現したのだろうか。

ストーリーは、薬物による幻影...そこで繰り広げられる世界観は神学的、哲学的なもの(登場人物名が、エンゼル、アダム。ちなみにモルヒィン、ヘロインもいる)...それは抽象的な表現になっており、その演出も有りかもしれない。しかし、話を進めるための伏線(例えばシャルルの腹にある傷跡)は、その後の話にどう繋がったのか。説明(回収)しきれているのか疑問に思った。

演出上の重要な問題として、上手・下手のそれぞれ中2階に相当する場所(上手では階段途中か踊り場)での演技は、場内両端の客席からは見えない(見切れ)。このようなことは、稽古時にチェックするべきであろう。

今後の公演に期待しております。
鷹と雀

鷹と雀

劇団ORIGINAL COLOR

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★

ふわふわ感
各地の領主が治める街は、「富豪区」と「貧民区」に分かれており、それぞれを「鷹」と「雀」という鳥に比喩し、端的にいえば、羨望・対立の構図になっている。実は、もっと根深い話であろうが、公演の印象としては掘り下げが足りなかったと思う。
比喩は、貧民区の住人が書いた一冊の本...鷹は翼を大きく広げ高く飛ぶ、雀は小さな翼で高く飛べない、と貧富の差を嘆いたもの。
ストーリーはストレート、演出は特色なし、演技はキャストの力量差が見て取れる。
主張したいことは何となくわかるが、芝居としての印象が薄かった。

ネタバレBOX

「富豪区」と「貧民区」の堺は、高い高い壁で隔てられている。この各区域の成り立ちと、その関係性がよく理解できなかった。成り立ちであるが、例えば江戸時代の士農工商のような身分制度、ヒエラルヒーなのか。序盤の会話からすると貧富(イメージ概念は「下町」と山手」)という経済的なことかと思った。終盤になって貧民区の民(叛乱分子)の処刑という話になり、支配・被支配層という対立構図が分かる。貧民区における不自由さ、叛乱を起こす原因・動機は...その描きこみが足りないと思う。
舞台に設けられた窓(枠)...そこから見える富豪区の風景とは、それが観客、少なくとも自分にイメージ出来れば良かった。情緒的な演出ではなく、力強い人間ドラマに仕上てほしかった。

今後の公演に期待しております。

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