ツノノコ、ハネノコ、ウロコノコ
フロアトポロジー
オメガ東京(東京都)
2019/09/04 (水) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
物語を観たまま受け入れれば国家陰謀による悲劇、ディストピアの世界そのものである。しかし、ラストシーンがどうも気になるが…。物語は重厚・骨太で、その雰囲気を舞台美術、音響・音楽、照明等の効果で上手く引き出している。もちろん架空・仮想世界の出来事であるが、現実にあり得ると思わせるところが怖い。この公演でのテーマが人の生き方そのものを問うような鋭さ。観応え十分な力作だ。
(上演時間1時間45分)2019.9.10追記
歌姫
ことのはbox
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2019/09/05 (木) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
土佐の漁師町にある映画館「オリオン座」の閉館日に上映された「歌姫」。この映画が物語の回想シーンそのもの、そして東京から映画を見に来た母と息子に去来する思いが、ラストの台詞に込められている。台詞は土佐の俚言で喋り、はじめのうちは聞き取り難いが、物語が進むにつれて気にならなくなる。逆に自分がその土地にいるような錯覚、雰囲気に包まれる。もちろん、ことのはBox らしい演出…舞台美術、舞台技術の工夫によるもの。そして映画館らしい時代経過の表示、郷愁と追憶をしっかり紡ぎ出した秀作。
(上演時間2時間) 後日追記
革命を起こすんだ
teamDugØut×マニンゲンプロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2019/09/03 (火) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★
タイトルの「革命」…一般的にイメージする体制権力、組織構造の社会変革といったことを思い描いていると肩透かしだろう。どちらかと言えば、自己変革もしくはそう試みた青春群像劇といった印象である。観終わった後、ある芥川賞受賞小説を連想した(関連は無いのだが何故か…)。
本公演は1980年頃が背景であろうか。そして小説は1964年受賞だから芝居よりも約20年前の時代、まだ学生運動が行われていた頃の作品である。
公演は、何事も真剣に真面目に考え行動しようとした80年代の高校生。もっと青春を謳歌した生き方ができたであろうと思えないこともないが…。「革命」を叫びながら、何かを変革したい、しかし具体的内容を問われると曖昧になる。「漠然とした理想」と「判然とした現実」の気持ちに揺れ動く青春ドラマは少し切ない。
公演では「外の世界に出てみたい」という台詞が何回か聞かれるが、小説にも「人は、自分の世代から抜け出ようと試みることさえできる」という主人公のシニカルな台詞があったと思う。その意味で「革命」=「挑戦」とも思えるような公演は好かった。
(上演時間1時間45分)
ストアハウスコレクション・フィジカルシアター週間
ストアハウス
上野ストアハウス(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
身体表現による語りかけは、国の伝統・文化、国政等の状況によって異なる。当たり前のようだが、台詞のない公演の中で主張したいことをしっかり伝えることは難しい。
日本とタイの舞踊表現は、見た目だけでもその違いは分かる。表層的には、日本の舞踊は躍動的、タイの舞踊は動静的であるが、どちらのダンサーも身体能力は高いと思う。抽象的とも言える身体表現で何を訴えているのか、自分なりの想像を働かせる。そこに舞踊公演の面白さ真骨頂があると思う。
ストアハウスカンパニー1時間、B-Floor1時間10分 途中休憩15分
【ストアハウスカンパニー/B-Floor】
スケルトン・イン・ザ・クローゼット
めがね堂
宮益坂十間スタジオ・Aスタジオ(東京都)
2019/08/29 (木) ~ 2019/08/31 (土)公演終了
満足度★★★★
乾いた空間に、夫婦の瑞々しい会話...そのギャップが不穏な雰囲気を漂わしているように思える。この公演の魅力は独特の演劇空間の表出にある。特に舞台美術があるわけではなく、素舞台に役者のパントマイムでその雰囲気を醸し出す巧みさ。乾いた感じがするのは、ストーリーテラーによる淡々とした語り、それが情況説明と同時に人間観察のようでもあり客観性を際立たせる。一方、夫婦の会話は瑞々しいがどこかよそよそしい感じがする。物語はサスペンス仕立てであるが、心象劇のようでもある。その色々な要素が混ざって独特な空間が…。この公演はどちらかと言えば見巧者向けのような気がする。
(上演時間1時間15分)
パラベルプルプリナ
PINK DRUNK
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/08/29 (木) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
映画の助監督として慌ただしく働く主人公、「もしも違う人生があったなら…」そんなことを思った時、パラレルワールドへ…。もう1つの人生は、移動遊園地「プルプリナ」の支配人で、こちらの世界でも慌ただしく過ごしていた。
公演の魅力は、華やかで楽しい歌やダンスのパフォーマンスとパラレルワールドによって自分がやりたいことの確認と再出発を決意させるような成長譚。映画助監督時代を第1部とすれば、移動遊園地の支配人のパラレル世界は第2部といったところ。第1部はミュージカル仕立てを強調し、第2部はドラマ展開を意識しているようだ。その魅せて観せる演出の妙が巧い。
(上演時間2時間) 後日追記
夏休みの友たち
ハグハグ共和国
萬劇場(東京都)
2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
人生は長いようで短く、短いようで長い。人生における幸せとは、日常の身近なところにあるような。人生は楽しいことばかりではなく、辛く哀しいこともある。その思いを忘れるため、無意識に思い出を閉じ込め記憶から消し去ってしまう。本公演では40年の時を経て、小学6年生当時の自分と邂逅し、忘れてしまった記憶と向き合い、これからの人生を今まで以上に大切に生きて行こうとするヒューマンドラマ。
デジャ-ビュと言いながら山道を登る12歳の小学生と52歳になった中年期のメンバー、過去と現在を往還しながら物語は楽しく展開する。その夏の思い出が、ある出来事(災害)によって記憶を忘却へ。しかしそこから抜け出せない自分、それを夏休みの宿題ノート「夏休みの友」の空白ページを書き、描き埋めることによって今を見つめ直す。ラスト、水月(生粋万鈴サン)が呼びかける…「麓の皆さん見えていますか、こちらからは見えていますよ!」は、生ある人々への見守りのようである。同時に40年前の思い出も大切にしてほしいとの願いであり、まだまだ精一杯生きてほしい、という応援メッセージでもある。舞台となる山小屋「犬井」に咲く露草の話を比喩とするところは上手い。
劇中に頻繁に登場する木霊(葉を付けた衣装)のダンスは、ハグハグ共和国らしい、優しく温かさが溢れており、山霊による見守りをイメージさせる。舞台技術、特に音響(劇中歌も含め)は実に効果的で余韻付けが上手い。自分は、このような芝居が大好きである。
(上演時間1時間40分)
瀬戸の花嫁 再再演
ものづくり計画
ザ・ポケット(東京都)
2019/08/21 (水) ~ 2019/08/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
登場人物はすべて善人で、そこに集った人々の生活環境や状況などを描くことによって都鄙の違いや情景を浮かび上がらせる。島民の減少により活況が乏しくなった状況を説明し、物語の設定へ上手く導く巧みさ。同時に台詞を方言で喋らすことによって、より臨場感が溢れ出し情景の雰囲気を漂わす演出は、観客の感情を揺さぶる。再再演するのも頷ける見事な公演であった。
(上演時間2時間)
ナイゲン(2019年版)
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2019/08/22 (木) ~ 2019/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
「理屈」と「感情」を較べてみれば、感情が先走ってしまう会議。本公演の議論はあちらこちらに漂流し何処に辿り着くのかわからない面白さ。同時に、当初あまりやる気が感じられなかった議長がその責務を果たそうと…その成長譚が清々しい。文化祭を取り仕切る内容限定会議-ナイゲンは表層の面白さだけではなく、そこに潜む会議体や民主主義の問題を考えさせる秀作。
(上演時間2時間)
織姫と彦星 ~宇宙の彼方から御用改めでござる!~
株式会社TATE (東京本社事務局・第1制作部)
なかのZERO 大ホール(東京都)
2019/08/20 (火) ~ 2019/08/20 (火)公演終了
満足度★★★★
舞踊、剣舞、殺陣といった観せ方が違うパフォーマンスと、幕末の騒乱を描いたストレートプレイが融合したような、いわゆるエンターテイメント公演と言えるだろう。音響や照明効果といった舞台技術にも工夫を凝らしており、観客の気を逸らさないよう努めている。何より、役者が広い舞台を縦横無尽に駆け回り、その躍動感がテンポ良く楽しませてくれる。
(上演時間1部:50分、2部90分、途中休憩10分)
「RE:道先案内人~ハジメマシテ死神デス~」 「終・道先案内人~ゴキゲンヨウお別れデス~」
幻奏ボレロ
新宿スターフィールド(東京都)
2019/08/16 (金) ~ 2019/08/23 (金)公演終了
満足度★★★
「終・道先案内人~ゴキゲンヨウお別れデス~」観劇。
彼岸と此岸の間...そのどちらでもない世界(あるいは空間)...黄泉や高天原といった幽冥世界を描いているようであり、他方、夢遊中の自我との葛藤のようにも思える。その不可解な世界に転生といった因縁を持ち込み、死後においても今だ死生観を考えさせるような。
「RE:道先案内人~ハジメマシテ死神デス~」を観ていないこともあり、この世界観が理解しにくい点が、物語で何を伝えたいのかを曖昧にしているようだ。それこそ主張が浮遊し取り留めのない心霊劇のように思えたのが残念だ。
(上演時間1時間40分)
カレイドルーム
ZERO BEAT.
上野ストアハウス(東京都)
2019/08/14 (水) ~ 2019/08/18 (日)公演終了
満足度★★★
色々とご都合的な内容であるが、とにかく観客を笑わせ楽しませようとするシーンが見受けられる。自分はこのグダグダ繰り返すシーンはあまり好きではないが、結構受けていたようだ。
物語的は既視感があり、意外性は感じられなかった。一方、役者陣はキャラクターを立ち上げ、観せようと努めていたことに好感を持った。
(上演時間1時間40分)
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了
満足度★★★★★
第二部「1986年:メビウスの輪」観劇
まだ日本では大きな原発事故が報道されない時代、ある男の原発に対する考え方や思いが状況や立場によって変節する、そうならざるを得ない怖ろしさと滑稽さが伝わる力作。立場(地位)が人を作るという言葉をしみじみ思う。同時に演劇的手法によって、人間も含め全ての生あるものの思い、原子力発電所建設前後の街の風景、それらを俯瞰するような演出が実に上手い。
(上演時間2時間) 後日追記
域地-ikichi-
戯曲本舗
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2019/08/09 (金) ~ 2019/08/11 (日)公演終了
満足度★★★★
中盤まではアニミズムを思わせるような台詞と動作、その雰囲気を高める音楽や照明の妖しい演出効果。一転して後半は登場する人物の懊悩がこの地(山奥)の精霊との不可思議なダイアローグを通じて解放されていく。纏わり付くような不気味さ、それを辛抱強く観続けた先に、”なるほど”そう言うことが描きたかったのかという謎解きにも似た気持にさせる。その意味で、いかに中盤まで興味を持たせられるかが鍵のような公演。
(上演時間1時間25分)
ナツ。キタル。ホタル。
tYphoon一家 (たいふーんいっか)
ザムザ阿佐谷(東京都)
2019/08/01 (木) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★
作家の創作・回想として、ある夏の4日間の冒険物語が紡がれる。オムニバスのような構成であるが、そこには作家の言い知れない故郷への想いが…。
紗幕を使った影絵的な人物描写と風景映写による情景描写を上手く使い分け、抒情的な雰囲気作りは巧み。
(上演時間1時間50分) 後日追記
Theatrical Power-POP
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.
神楽坂セッションハウス(東京都)
2019/08/03 (土) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★
劇団「平泳ぎ本店」の公演は、「第8回せんがわ劇場演劇コンクール」のファイナル作品以来となる観劇。「古今東西、古典から現代まで、演劇の宝物を一つの舞台に閉じ込める。」という説明のとおり、色々な戯曲(約15作か?)のシーンを様式所作や新劇風、ダンスのような身体表現を駆使して観せる。まさしく演劇的手法を奔放に組み合わせ創作している。そこにディバイジングの妙が観てとれる。
(上演時間1時間25分)
ひのくすり
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
上野ストアハウス(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/06 (火)公演終了
満足度★★★★★
2本立てであるが、舞台は同じ東南アジアにある小さな島。視覚による直接的な繋がりはないが、状(情)況や台詞によって連想させる。2つの話は、男優グループと女優グループの競演といった感じであるが、物語の底流にあるのは男女というよりは人間としての寂しさや悲しみ、見栄や欲望といった感情を描く。場面はほとんど動かないが、逆に人の感情の高ぶり揺さぶりが素晴らしい。2本に共通した観せ方であるが、冒頭のモノローグに観客の集中力を高めさせるあたりは巧み。
(上演時間1時間35分) 【❤チーム】 2019.8.10追記
群盗=滅罪
クリム=カルム
シアター711(東京都)
2019/07/24 (水) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★
自由・解放、復讐・報復といった人の心にある善悪のような表現。しかし、そのような2項区分はあまりに表層すぎて、この物語の伝えたいテーマが暈ける。主人公カールの放蕩ぶりは、ある意味「自由への希望」であり「社会秩序」への挑戦だったようだ。「群盗」のリーダになり心の葛藤を呼び起こされる。自分が願った権力への復讐は、同時に法を傷つける。自由は秩序と相容れない不条理、理想と現実のせめぎ合い、そこから生まれる妥協という産物に絶望感が漂うようだ。
この公演、冒頭は取材シーンという現代劇であり、本編になると原作当時(18世紀)のような情景になり時代設定が判然としない。敢えて曖昧にしているのか、気になるところ。また原作と異なり重要な役所を男から女へ変えているが…それであればもう少し男女にした意味があるような展開があってもよかった。
(上演時間1時間50分)
おどる韓国むかしばなし『春春~ボムボム~』
あうるすぽっと
あうるすぽっと(東京都)
2019/07/20 (土) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★
老若男女問わず、多くの人に観て楽しんでもらうよう工夫した公演。同時に韓国と日本の共通したところや逆に異なるところ、その文化的な面白さを感じさせる内容。例えば文化の代表として言葉...「ウンメ~~」は韓国語で牛の鳴き声、日本では美味しいという感動語。隣国でありながら知っているようで知らない、でも共通した人の心もあるようだ。子供(特に小学生=将来の観客)を中心に、ある参加型の試みをするなどの好公演。
(上演時間1時間20分)
下北ショーGEKI夏祭り公演2019
ショーGEKI
「劇」小劇場(東京都)
2019/07/19 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★
1人の女性の半生を漫画や小説の有名なフレーズ(太宰治の「大人とは、裏切られた青年の姿である」等)を借用しながら紡ぐ、まさしく笑劇にして衝撃的な公演。舞台上で使用する小道具は、漫画的な観せ方を意識した心憎い演出だ。笑いと涙は人生そのものを表わすが、この物語に登場する女性はと言えば...。
(上演時間1時間50分)「漫画少女は眠らない」編