グランディ氏の穏やかな遺言
電動夏子安置システム
駅前劇場(東京都)
2017/08/02 (水) ~ 2017/08/06 (日)公演終了
満足度★★★★
■110分弱■
これまで観た電夏の中でも屈指のややこしさ。複雑な話に食らいついていくのに必死で、あんまり笑ってる余裕もありませんでしたが、可笑しなシーンも多々あったという朧ろな記憶が。。
しかし詰め込んだなぁ、今回は。
真夏の短編集「榊原さんは永遠に憂鬱なのかもしれない」
ホットポットクッキング
劇場MOMO(東京都)
2017/07/26 (水) ~ 2017/08/02 (水)公演終了
満足度★★★
■『こってり地獄編』鑑賞/約100分■
連作短編集色はこちらのほうが強く、話が相互干渉している楽しさやラストまで観てようやくわかる面白さはあったものの、諸作品の出来映えは天国編が上。
『通勤急行大爆破』がとりわけ残念な出来。発想に新味がない上だらだら長くて締まりを欠き、しかもわかりづらい。たぶん書き手は年上だろうが、演出の吹原さんは心を鬼にし、改稿を命じるか潔くボツにすべきでした。
真夏の短編集「榊原さんは永遠に憂鬱なのかもしれない」
ホットポットクッキング
劇場MOMO(東京都)
2017/07/26 (水) ~ 2017/08/02 (水)公演終了
満足度★★★★
■『うっかり天国編』鑑賞/約105分■
公演の説明文から、各編がもっと緊密につながった連作短編集的なものを想像していたところ、一貫性はさほどでもなく、その点は拍子抜けしたものの、バカバカしくも心和む話から夏っぽい奇譚まで多彩な諸作を盛り合わせ、なおかつ効果的に配列していて魅せる仕上がり。橋本瑠果さんが面白かった。
ワンマン・ショー
やっせそ企画
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/08/02 (水) ~ 2017/08/06 (日)公演終了
スーパースーハー
かえるP
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/07/26 (水) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
■約60分■
タイトルの『スーパースーハー』は呼吸音をもじったもの。当ダンスユニットのメンバー2人は公演の当日パンフに連名でこう書いている。
「普段無意識のうちにしている呼吸。意識しようとすると途端になにかが滞ってしまうのはなぜでしょう。しかし、その滞りこそ、先に至るために大事なものだと思いたい。(中略)意識された呼吸のその先を目指したい。」
意識すると滞ってしまうのは呼吸だけではない。呼吸と不可分に結びついた身体もしかり。当公演『スーパースーハー』は、常人よりも自在に動けるダンサーたちが高い身体能力にあえて制約をかけ、その“滞る身体”を表現した逆説的な試みだったと言えるだろう。
ある者は腹這いになって床を滑るアクションを何度も繰り返し、そのような動きしかできない架空の生き物の生態を模写しているかのよう。そうかと思えば、まるで溶接されたかのように膝頭をぴったりくっつけたままぎこちなく横歩きしたり、裏返されて起き直ろうともがくセミさながらの動きを集団で表現したり。
不自由と格闘しながら動こうと頑張る姿は、這い這いでたどたどしく移動したり渾身の力でつかまり立ちをしたりする赤ちゃんを思わせて、感動と同時に微笑ましさをおぼえながら鑑賞。
赤ちゃんはむろんのこと、人間全般へと普遍化できる。
無理をすれば痛む身体、おいそれとは変造できない顔、有機物であることに由来する様々な欲求…そうした障壁と闘いながら滑稽に、またがむしゃらに日々を生きる不自由極まりない我々の鏡像をまざまざと見せつけてくれるからこそ、かえるPのこの舞台は感動を呼ぶのだ。
きゅうりの花
Cucumber
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2017/07/28 (金) ~ 2017/08/06 (日)公演終了
満足度★★★
■約110分■
地方都市の衰退を描くのなら、ここは新作を書き下ろすべきだった。18年前の初演時、15年前の再演時から状況はますます悪化し、その背後に、新自由主義を背景とする地方軽視、生産性の高い地域をさらに富ませ地方を見限る棄民政策という名の意図的無策が見透かせる今、地方の退潮と国政との関係が描かれない本作はどうしたって物足りなく思われる。
預言者Q太郎の一生
(劇)ヤリナゲ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/07/14 (金) ~ 2017/07/23 (日)公演終了
満足度★★★★
■80分強■
おふざけが過ぎる感もあったけれど、脱線もちゃんと可笑しく演出されていたし、芯になるエピソードもそれはそれでしっかりと見せてくれて琴線を揺すってくれたし、イイ感じに心がほぐれた80分。
Q太郎の3倍くらい負担のかかる大変な役を振られながらコミカルなシーンからシリアスな場面までを生き生きと演じきった永井久喜の熱演、朴訥すぎて奇人扱いされる純真青年をリアルに演じた男優X(興を殺ぐので名は秘す)の巧演に見惚れた。
ただ、預言者の話だったかと問われれば、大きな疑問符が浮かぶ。
預言者の物語を期待する向きには、正直言って物足らないかもしれない。
「すがれる」2012/2017
鳥公園
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/07/06 (木) ~ 2017/07/12 (水)公演終了
今が、オールタイムベスト
玉田企画
アトリエヘリコプター(東京都)
2017/06/27 (火) ~ 2017/07/04 (火)公演終了
満足度★★★★★
■100分弱■
玉田企画作品の安定感は、視点のブレなさに由来するのだと本作を観てようやく気づいた。本作含めどの作品も、序幕から終幕まで一貫して、多感な中学生男子の目線で描かれている。それも、少しひねた草食系中学生の目線で。
これまで主に中学生や高校生、大学生の生活世界、すなわちほぼほぼ等身大の世界を描いてきた中学生がこのたび活写するのは、自分を取り巻く大人の世界。
その大人たちのやり取りが、学生たちのそれと同様、子供っぽくて滑稽なものとして描かれるのは、人生で最も目の利く中学生の視界に、大人たちがガキ同然に幼く映っているからに他なるまい。中学生時代の私の目にも、大人はそんなふうに見えていたと今になって思い出す。
タイトルと内容に齟齬があるのはいつものこと。従来通り“あるある”な可笑しみ、共感を誘う可笑しみに満ちた楽しい作品でありながら、内容はタイトルほどノーテンキじゃなく、複雑な思いを抱えて劇場を後にした。
それにつけても、人間の綾を細やかに描出した精緻な脚本は相変わらずの素晴らしさ。玉田主宰は、そろそろ名のある戯曲賞を与えられてもいい頃なのでは?
さよならだけが人生か
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2017/06/22 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了
-平成緊縛官能奇譚-『血花血縄』
吉野翼企画
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/06/22 (木) ~ 2017/06/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
■約100分■
性的シーンは互いが互いのバリエーションにすぎず、冗漫で面白くなかったが、ウーマンリブ演劇としてこの上ない完成度! 原作小説が書かれた頃には「ウーマンリブ」という言葉、まだ生きていたはずである。
それにつけても、演出・吉野翼の完全主義が生み出す、統制美に貫かれた演技や合唱は毎度ながらの素晴らしさ。
ドア
ユニットR
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/06/26 (月) ~ 2017/06/29 (木)公演終了
満足度★★
■約75分■
弛緩した演出が緊密に書かれた原戯曲を台無しにしている。動きや声を揃えるべきシーンで揃っていなかったり、失笑を誘うほどに小道具がチャチかったり、これでは素人芝居。
プライバシーの尊さを主張する原作を共謀罪法施行後の世界に結びつけたり、脚本面では努力が感じられたが。
ブリッジ
サンプル
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2017/06/14 (水) ~ 2017/06/25 (日)公演終了
宵待草
おででこ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/07/01 (土) ~ 2017/07/02 (日)公演終了
満足度★★★
■約80分■
『糸地獄』に向けたワークショップ用の作品とあって、習作の印象は否めず、脚本にさらなる錬磨や粉飾の余地があると感じた。
狂女を鬼気迫る演技で表現した須川主宰のお芝居は見事でした。
月経ファンタスティック
美貴ヲの劇
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2017/06/29 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了
満足度★★★★
■ノーマル編鑑賞/約85分■
女にしか来ない「月経」がタイトルに入っていても、描かれるのは誰彼なく自意識と自尊心を持つ人間固有の、性差を超越した苦しみ。「アタシはあのコよりマシ!」とか「あんな奴に見下された!」とか、そうした方面のことを扱うとジメジメと陰湿な劇になるのは避けがたく、本作も例外ではなかった。
作者の乾いた作風をもってすれば自意識問題も笑いの種に変えられると思ったし、事実、同種のテーマを扱った前作『ブスも美人も死ねば土』ではそのことに成功し、多くの笑いを取っていたのに、自意識問題にまつわる湿気をユーモアで蒸発させて笑いに変えることが本作でかなわなかったのは、前作よりもヒロインに近いところに身を置きながら作者が作劇を進めたせいか?
主役に寄り添うような立ち位置で書き進めるのは別に問題ない。
ただ、主役以下劇中人物全員を鳥の目で冷ややかに見下ろし突き放すような立場をも同時に保持しつつ書かないと、笑える作品は生み出せない。
むろん鳥の目も持ってはいるのだが、報われないヒロインに感情移入しすぎて鳥の目を忘れているシーンが多々あったように私には見受けられた。
思うに、作者は自分に近い人物をヒロインに据えてしまい、最後の最後まで“突き放しきる”ことができなかったのではないか?
突き放して対象と距離を置かねば対象を笑うことはできないし、距離がなければ対象に乾いた大風を送ることもままならない。
もちろん対象が自分の分身であろうとも、頑張れば突き放すことは可能なはず。
WORM HOLEワームホール
はなもとゆか×マツキモエ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/06/15 (木) ~ 2017/06/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
■最近の舞台芸術、『威風堂々』に頼りすぎてないか??/約60分■
メンバー2人に客演2名を加えた女性ダンサー4名が、アラサー女子の恋愛観から宇宙物理学まで、ミクロからマクロまでをダンスで表現…したかったのだろうが、セリフへの依存度が小さくなく、踊りだけで表現しきれていたかは大いに疑問。
とはいえ、マツキモエさんのこまめな衣装替え、客演陣の奇抜なビジュアル、大がかりな美術と、視覚面を中心に様々な趣向が凝らしてある上、女子4人によるダンスパフォーマンスは生き生きとしてなまめかしく、また随所に関西女子流の茶目っ気、イタズラっ気がうかがえて、片時も退屈せずにとても楽しく観た。
仮にいま私が幼児で、親に連れられてこれを観たとしても、きっと楽しんだのではないだろうか?
そういう、プリミティブな娯楽性に満ちあふれた公演でした。
こq『地底妖精』
Q
SCOOL(東京都)
2017/06/10 (土) ~ 2017/06/11 (日)公演終了
満足度★★★
■約95分■
幼女的万能感・唯我独尊感、さらには、その裏返しとしての排他主義・非社会性・他責的態度が強く打ち出されていた数年前の作品と比べ、世界に対して、社会に対して、一歩踏み込んでいた印象。
雨と猫といくつかの嘘
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2017/05/23 (火) ~ 2017/06/04 (日)公演終了
満足度★★★
■B(=『雨と猫といくつかの嘘』華やぎの香り、猫組ver.)鑑賞/約70分■
ストーリーも脚本も雨編に同じも、こちらのほうが座組は好み。
ところで、スタンプラリーはやる必要があったのか? 一回一回の景品はお菓子ひと袋、ならぬ一個きり。4演目を制覇しても台本、劇団Tシャツといった特別なプレゼントはなく、それまで通りお菓子一個がもらえるばかり。期待を大きく下回る景品に当惑しているのは、私だけではないように見受けられた。
雨と猫といくつかの嘘
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2017/05/23 (火) ~ 2017/06/04 (日)公演終了
満足度★★★
■A(=『雨と猫といくつかの嘘』いぶし銀の味、雨組ver.)鑑賞/約70分■
老境の孤独と郷愁を情緒豊かにきめ細かく描いているが、逆に言うと、それ以上の広がりがない小品。
雨と猫といくつかの嘘
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2017/05/23 (火) ~ 2017/06/04 (日)公演終了
満足度★★★
■D(=『幸福の王子・野ばら・あおぐみライブ』)鑑賞/約70分■
短くはない人生、それなりに辛酸も舐めてきたろうに、なぜ主宰の吉田小夏は他の同世代女性のように世間ズレせず、こんなにも明るく健やかでいられるのか? その思いを強くした公演。あおぐみLIVEでは目をキラキラさせて楽しげにしゃべり、歌い、リーディング劇『幸福の王子』からは、万民がしあわせで笑いの絶えない世界の到来を主宰が本気で願っていることがひしひしと伝わってくる。かわいいユーモアを織り交ぜて生き生きと演じられるこの青☆組版『幸福の王子』は子供にも楽しめるはず。この演目を引っさげて学校巡業を行えば、きっと上々の反応が得られるのではないだろうか?
ただ、前述のあおぐみLIVEは内輪ノリが強く、あるていど距離を置いてこの団体に接している私には楽しみきれなかった。