満足度★★★★
■ノーマル編鑑賞/約85分■
女にしか来ない「月経」がタイトルに入っていても、描かれるのは誰彼なく自意識と自尊心を持つ人間固有の、性差を超越した苦しみ。「アタシはあのコよりマシ!」とか「あんな奴に見下された!」とか、そうした方面のことを扱うとジメジメと陰湿な劇になるのは避けがたく、本作も例外ではなかった。
作者の乾いた作風をもってすれば自意識問題も笑いの種に変えられると思ったし、事実、同種のテーマを扱った前作『ブスも美人も死ねば土』ではそのことに成功し、多くの笑いを取っていたのに、自意識問題にまつわる湿気をユーモアで蒸発させて笑いに変えることが本作でかなわなかったのは、前作よりもヒロインに近いところに身を置きながら作者が作劇を進めたせいか?
主役に寄り添うような立ち位置で書き進めるのは別に問題ない。
ただ、主役以下劇中人物全員を鳥の目で冷ややかに見下ろし突き放すような立場をも同時に保持しつつ書かないと、笑える作品は生み出せない。
むろん鳥の目も持ってはいるのだが、報われないヒロインに感情移入しすぎて鳥の目を忘れているシーンが多々あったように私には見受けられた。
思うに、作者は自分に近い人物をヒロインに据えてしまい、最後の最後まで“突き放しきる”ことができなかったのではないか?
突き放して対象と距離を置かねば対象を笑うことはできないし、距離がなければ対象に乾いた大風を送ることもままならない。
もちろん対象が自分の分身であろうとも、頑張れば突き放すことは可能なはず。