みさの観てきた!クチコミ一覧

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今宵、花の宴の姫君は。

今宵、花の宴の姫君は。

メッテルニッヒ

萬劇場(東京都)

2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

めくるめく源氏物語!
つまりはあれだ。源氏物語の総覇者ならば、登場人物のネーミングも源氏物語のパクリならば内容もこれに準じてる。(苦笑!)
時代設定も平安時代っつーのだから、どこまでも源氏物語でした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

主人公・鵙介は宇宙人に不思議なゲームソフトをもらう。それは『実体化するゲームつくーる』なんちゃってどらえもんバリバリのふざけた名前だ。そんなだからトーゼン、主人公はどらえもんやろ?なんつって期待に胸を反らしちゃったわさ。

そしたらさ、そしたらよ?!(・・!)

主役はどらえもんっつーより、ラーメン好きの鈴木さんみたいなのが出てきた!おそ松君も真っ青です。

そんなラーメン鈴木こと鵙介が作ったのは「ギャルゲー」
いったい「ギャルゲー」とは何ぞや?っつーはなしだけれど、いわゆる「恋愛シュミレーションゲーム」
いあいあ、素敵ざんしょ?シュミレーションで恋愛しまくりなんだからどなたも傷つかないわけよ。しかも夢みられるじゃん!メガネ男子出てくるじゃん!ついでに星の王子さまも登場させちゃる?ターちゃんもいいかも?なんつってやりたい放題、Hしほうだい、好みのキャラ作り放題!もう、何でも出来ちゃうわけよ、ゲームの中なんだから・・。ところがゲームの中にはちゃーんと息づいてるキャラが居たわけ。そんなお話!

ストーリーは源氏物語のような不倫っぽい、はたまた、自分の息子の許婚を帝が取っちゃう~みたいな展開。コメディ仕立て。年齢をわきまえない恋愛ほど燃える話はないよね?そんな恋愛話があちこちで展開され、順風満風な景色かと思いきや、バグって物語は一転して闇の方向へ。
鵙介の作った世界が壊れはじめ、殺し合いが始まってしまう。そんなだから、さっきまでの恋愛うっふ~ん!からいきなり格闘シーンになっちゃう!笑
紅葉(とある宇宙人)は鵙介にコントローラーで現実世界に戻るように説得するも、自分が作った世界の中でみんなが苦しめられているのを知り、ゲームを作った責任を感じた鵙介はこの世界をどうにかしようと考える。

一方でそんなどたばたの最中に紅葉はコントローラーを失くしてしまう。そしてコントローラーを拾った輩が、この世界を壊したい、なんて考えたものだから物語は暗黒さながら憎しみ合いの混沌とした世界になり下がってしまうのだった。そんな世界を鵙介はどうにかしようとジタバタするも、この後に及んでコメディタッチも忘れないから物語は軽く緩い展開にも見える。笑

なんだろねーこの劇団!物語はシリアスな展開なのに、登場人物のキャラ立てが実に愉快なんだよねー笑
そんなだから真面目なのかいいかげんなのか、よく解らなくて、緩くて面白いって感覚だけが残った芝居だった。野分と玉かずらと総角が登場するとなんとなく笑えた。(失礼だけれど・・)

そんな緩くてめくるめくアニメの世界!(^0^)

おまえ、おもろいなぁ2

おまえ、おもろいなぁ2

松竹芸能

しもきた空間リバティ(東京都)

2010/02/28 (日) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

マジでバカバカしい!(^0^)
チケ代 1,200円に魅せられてふらっと入ったトークライブ!
いあいあ、これが実にバカバカしくてぬるい。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

司会進行・徳田しんやがマジに上手い。突っ込みどころ、ボケ、絶妙でパワフル!笑
あまり期待はしてなかったが期待以上のハイレベルに笑い転げる。

パワフルコンビーフ コウタ、カノン 樋山、だいなお だい、ガブル/ガブル ひょうご、竹下ともひろ、ビキチンプロナウン 池城、もりかずき 森、三日月マンハッタン 仲嶺、いち・もく・さん江口、ピーマンズスタンダード吉田、南川

上記の芸人が繰り広げるお笑いネタが半端なくアホらしくてゆるゆる。笑
特に「三日月マンハッタン 仲嶺」の40歳になったら昨日に戻って年齢を逆行ししまいに赤ちゃんになって死ぬ。という説に笑いまくる。

「カノン 樋山」の復讐ノートにかかれた「俺は絶対にアイツに復讐する!」と誓った復習がしょもないほどの情けな~い復讐の数々。笑

「ビキチンプロナウン 池城」が描いてきたアニメは本格的でプロ並みの描写に観惚れる!

いあいあ、次回も観にいこうと思う。実に楽しかったゆるゆるだるトーク!

あなたとわたしのための時間 ツアー2010

あなたとわたしのための時間 ツアー2010

I.Q150

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

「合鍵」を観た!
コメディタッチだけれど、女性特有の心の機微が描かれている場面ではシリアスで意外にこの描写が長かった。もっとコミカルな描写の方が「兄妹」と対比したインパクトがあったかもしれない。

好演後の懇親会がものすっごく楽しかった!(^0^)
劇団のかたがめっさ、気遣ってくれてどなたにも満遍なくお声をかけてくれたのも良かったが、たまたまワタクシが座った席はやけに盛り上がって話が弾みまくった!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

懇親会(飲み会)の席で、周りの男性に「合鍵」と「兄妹」のどちらが好みだったか?と聞いたら、「合鍵」と答えたから男性の視点からは「合鍵」が好みなのが解る。理由は一度壊れた男女の関係が修復する展開が良かったとのこと。一般的に壊れた恋人同士は修復する可能性は少ないから。という言葉に、男性ってそんなふうに考えるのか・・・、と改めて発見する。笑

舞台は家庭を持っている女性が、10年前に付き合っていた(不倫)男性との別れ際に「もし10年経ってお互いの気持ちが変わっていなかったなら、10年後の今日、ここで会おう。俺はここで待ってるよ。」との言葉を思い出した女が当時の合鍵で部屋に入って肉じゃがを作って恋人を待っていた場面から始まる。しかし、帰宅した男性は別人だったことから、話がややこしくなる。つまり、10年前にここに住んでいた鈴木はもう既に居なかったのだ。大家が鍵を変えずに次の入居者にレンタルしたことから、こんな間違いが起こる。

そんなややこしい部屋に2日前に別れた女が入って来た事から男は誤解されまくる。この場面でのセトトモコのマシンガンを撃ちまくるように男を詰るセリフが絶妙!実にコミカルで楽しい!ついでに見せパンチーを惜しげなく見せまくって観客サービスするのも嬉しい。どうせなら、脱いじゃってよ。ストッキングの下はノーパンってどうよ?みたいな心持になって舞台にかぶりつきたくもなるが、そこは大人な理性が全面に押し出て本来の感情を隠す。笑

大きな誤解を受けていたたまれなくなった男は弟を部屋に呼びつけるも結局薬局、弟にも誤解される。で、最終的に合鍵で侵入した女性が説明をして一件落着になるが、ここでの女性特有の、「母親としての役割以外に夫から女として接して欲しかった。秀雄(10年前の不倫相手)は私を女として扱ってくれた。」とのたまう。このセリフは世の男からみたら、「それで不倫されたらたまらんでしょう?だったらお前は男として俺を見てたのか?」といいたくもなるが、いあ、ワタクシ女ですが。笑
つまりだ、男も女も家庭を持ったら対外的には男でも女でもなくなるのだと思う。それでいいじゃん!って思う。だって既婚者男性を男だと感じたことは一度もないからだ。逆に既婚者を男とか女とかの視点でみたらヤヴァイっしょ?笑

こうして2日前に別れた恋人たちも修復し元の鞘に納まる、ってスンポーだったけれど、意外に好感だったのはセトトモコ演じる女だ。楽天的で直情的で案外、扱い易い。自分の気持ちをストレートに表現する女性って付き合う側からみると解り易くて楽だと思う。単純さが楽なのだ。

そうして舞台終演後、懇親会へと場面は移る。わーー!酒だ酒だーー!!宴会ワッショイ!!


あなたとわたしのための時間 ツアー2010

あなたとわたしのための時間 ツアー2010

I.Q150

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

「兄妹」を観た!
どちらも不器用にしか生きられないさま(恋愛)を二人芝居で淡々と魅せつけながらも、心にじんわりと響く物語だった。
私たちの生きてる世界では本当にあるかもしれない日常だけに深く突き刺さる。決して派手さはないけれど、素晴らしい舞台だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ゴミがちらかって足の踏み場もない妹のマンションに兄が尋ねてくる。妹のだらしない生活を見て、兄は部屋を片付けていく。片付けながら兄は結婚が破談になったと妹に報告するも、どうしてそんな事になったのかを問い詰めて行くと、電化製品や彼女のマンション家賃も兄は貢いだ挙句、男が出来て捨てられたという。

散々彼女に巻き上げられて捨てられた兄のかたを持ち怒る妹。それでも兄は元カノを悪く言わない。「自分が無頓着だった。長いこと一緒に居ると気を遣わない関係になって、それでいいと思い込んでた。だけど幸恵はそれじゃ駄目だったんだ。あいつの気持ちが解らなくて鈍感だった。」と反省する。

熟年離婚のような言葉だ。大抵の夫が妻の気持ちに気づかなかった。みたいな・・。兄にとっては予想外のことだった。

一方でそんなお人よしの兄を妹は「呆れるほどの根性良しバカ!」と詰る。
しかしそんな妹自信も家庭を持った男と不倫をしていた。しかもどうやらその男にとって都合が良い存在になってる妹。「待つ女」なのだ。そうして男が妹のマンションに寄り付かなくなってからというもの、部屋は荒れ放題になる。そんな妹を見かねて「おまえがどんな男を好きになろうと、どんな男に尽そうといいんだけどな・・・、自分の事ももっと大事にしろ。」と諭す。

要するにどちらも恋愛に関して誠実で人が良いのだ。兄の実直で真面目な性格。妹のそこそこ要領がいいけれど好きな男には尽くしてしまう甘さを演出し魅せる。そしてこの二人を生んだ実家の両親もお人よしなのだ。だから観終わった後に人間の温もりに触れたような気になる。どこか深い部分に甘水でも注がれたような心持ちになるのだ。だから・・・、ただただ二人の演じる空間を観られたことが幸せだったりする。

ノーマ・ジーンとマリリン・モンロー

ノーマ・ジーンとマリリン・モンロー

アーティストジャパン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/02/20 (土) ~ 2010/02/25 (木)公演終了

満足度★★

剣幸のワンマンショー
剣幸ほどマリリンを演じて違和感が浮き出る女優も少ないと感じた。どちらかというとマリリンはバカっぽい。胸が大きくてセックスアピールの強い女性ってバカっぽいよね?良かった!胸ちいさくて。笑
反して剣幸は端正な顔立ちで知的な美人だ。化粧もマリリンほど濃くない。
物語の半分を歌で占め、ダンスは殆どない。

だから小劇団マニアには少々物足りない芝居だった。
以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

とにかく観客は剣幸ファンが多い。剣幸が歌えば拍手、踊れば手拍子、はたまたちょっとのセリフで頷く。(・・)(。。)(・・)(。。)うんうん・・と。(苦笑!)

実はワタクシはマリリンを良く知らない。彼女の映画も観たことはないし、知ってるのは空気溝の上に立ったマリリンのスカートがめくれるシーンのCMと、アメリカ大統領の誕生日に歌うシーンだけだ。勿論、マリリンの噂をする友人も居ない。マリリンは時代とともに完璧に風化してるのかも知れない。だからひじょうに興味はあったのだけれど、この物語から受けた印象はマリリンっていう人は物凄く虫のいいやつだった。ということだ。笑

私生児として生まれたノーマは母が精神病院に入院している理由で孤児院で育つ。その後、親戚をたらいまわしにされながら成人し結婚するも、いつしか女優として有名になりたい、多くの人に愛されたいとアメリカンドリームを夢見て、その夢の為に夫に離婚を申し出る。その後、ノーマは成功しマリリンとして、まさにアメリカンドリームを手に入れ、夢は叶ったのだった。この夢を実現するためにマリリンは多くの男に抱かれる。そこに愛がなくても野望の為に抱かれたのだ。

ところが夢が叶うと今度は多くの人から愛されたいと願って止まなかった夢が自分の本来望んでいたものは真実の愛なのだ。たった一人の人から愛されたいのだと渇望するようにもなる。

「じゃあ、女優を辞めて普通の女に戻りなよ。」なんてワタクシは思うのだが、そこはおバカで野心家のマリリン。両方欲しいのだった。恋も欲しい。仕事も欲しい。誰からも愛されたいという業の塊のようなマリリンの元から男たちは去っていく。当然だと思った。男性側から見れば結婚という形態は妻が欲しいのであって家事もせず常に男の匂いをさせてる女優と暮らしたいわけではないのだ。

しか~し、マリリンは嘆く「夢が叶うたびに誰かが居なくなる。たった一つの愛も素敵だけど、大勢の皆からも愛されたいの。」こう、逃げた男の幻影を見つめながらひとりつぶやく。

つまりだ。あれもこれもそれも欲しかったマリリンは薬漬けになって死んだのだけれど、はっきりいって、「何だよソレ。」と思った。容赦のない渇望に自分自身の身動きがとれなくなって死んだようなものだ。

これらを歌中心に淡々とストーリー仕立てした薄っぺらな芝居だったから、何をかくそう、つまらなかったのだった。結局薬局、「たった一つの愛も素敵だけど、大勢の皆からも愛されたいの。」と言ったマリリンはたった一つの愛も自ら手放して、瞬間的には皆からも愛されたけれど、民衆の愛なんて薄っぺらなんだよね。。

『世界の終わり』を囲む短編

『世界の終わり』を囲む短編

Minami Produce

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/02/23 (火) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

Bコースを観た!
芥川龍之介の作品を題材にした物語はここのところ、良く観ている。だから予習としてはバッチリだ。
「羅生門」にしても、「鼻」にしても「竜」にしても「地獄変」のあのおどろおどろしさは敵うものではない。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

そんなだから、「地獄変」の中の良秀が燃え上がる牛車の中で焼け死ぬ実娘の姿を書き加えるまでの経緯をいったいどんな風に演出するのかが楽しみだった。

まさか「ギャラリーLE DECO 」を火事にするわけないしなぁ・・。なんてほくそえんでた訳よね。

わが娘の苦しみ身もだえしつつ、焼け焦がれていく姿を陶酔しつつ事の成り行きを見守る父である良秀の恐ろしさ、絵師良秀の執念を、ここでは夫婦に置き換えていた。その場面はちょっとインパクトに欠けたかな?とも思う。血肉を分けたわが子が焼かれるシーンと、妻が夫を殺した瞬間の風景とは受ける感情の重みが違うと思うのだ。

絵を献上した数日後、良秀は部屋で縊死するが、ここでは失踪して行方が解らないと閉じている。だから全体的にどの短編も芥川の香りは楽しめたがその真髄には届いていない気がする。それでもスリルはそれなりに味わえた。


ふすまとぐち

ふすまとぐち

劇団野の上

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/02/19 (金) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

劇団自体が宗教団体のさま
会場に入ると見なれない観客がわんさか!この時点でいつもと違う雰囲気にのまれる。要は会場に津軽の皆様が応援に来てる。まるで教祖さまが演じてるようなさま。
しかも公演中でもジーー、キュル、ジーー、キュル・・・となんやら夏でもないのに蝉の、今にも死にそうな鳴き声。ワタクシ、思わずキョロキョロした。

そしたらさ、そしたらよ?!(・・!)

一眼レフカメラみたいなメッポウ大げさなカメラでパシャパシャ!!と舞台を撮ってるじゃん。「はんずめて東京さきたから東京タワーでも撮ってけえるべ。」みたいなノリで・・。
いあいあ、ワタクシ、修学旅行にでも来ちゃったか?って思ったよ!(苦笑!)

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

んなわけで、津軽弁丸出しのキヨさんがしゃべりまくってるシーンから始まる。よく解らないけれど、なんとなく解る。しかもこの津軽弁がなかなかいい。
方言ってホント、いいよね?「渡辺源四郎商店」の公演の時も感じた心地よさをここでも味わう。

だけれど辺源の芝居の空気感とは真逆の雰囲気がある。姑キヨの強烈な嫁いびりにより桜子は押入れの中に閉じこもったまま出てこない。この物語は「家族」を題材に太古の昔から延々と続き、そしてこれからも変わることなく続くであろう嫁姑の問題とその板挟みになって苦しむ長男らを真正面から取り組んだ作品。

キヨはスーパーバイザーの金本君(営業)の口車に乗ってトルマリン羽根布団を購入したり、はたまた、「早起きの会」という怪しげな宗教の人たちと付き合っている。これらは何となく田舎の高齢者がひっかかるような情景だ。そんな姑の様子を押し入れの中で聞き耳をたてる桜子。嫁・姑・小姑の関係性が面白い。

そして一見おとなしくふがいなさそうに見える長男の姿も描かれるが、これも一般的だと感じた。嫁と姑の間に立つ場合は母親の側については事態がいっそうこじれるだけだという知恵は誰にでもあるだろうけれど、それでも大抵の男性はこういった場面ではこんな風に第三者の立場に逃げて遠目で見ている感じなのだろうと思う。(苦笑)

それぞれの人間の業がぶつかり合い、理想と違うその現実が轟音を立ててその姿を変えていくような芝居は見ていて滑稽であるとともに、恐怖でもある。嫌味をいう母親や引きこもって出てこない嫁も現実とは思えなく信じられないトモノリ(長男)は、いったんどこかに退き、万事が落ち着いてから出直したい気分になってしまったのだと思う。だからそんな現実逃避に身を置くべくトモノリは自分だけ引っ越すと言い出す。「どうして俺がこんなおもいをしなければならないのか・・。」と疑問を覚えるように。

口だけ達者な姑、籠って外部の全てを遮断し話し合おうともしない嫁、現実逃避の感覚を引きずりながら説得する努力をしない長男、甘えてる小姑。

これらの人間関係を絶妙にダーク色濃く演出した物語だった。そして姑が倒れ入院すると家族の関係は大幅に逆転する。こうやって家族は疲労感をも覚えながら脈々と次の時代に受け継がれていくようだ。物語は笑いも滲ませながらなるべく悲惨にならないように構成されており、感覚はコメディの部類に入ると思う。ワタクシ達他人は面白可笑しく見たけれど、男性の観客は少し視点が違うのだろうか・・?

次回は8月とのことだから、また観に行きたいと思う。
シャルルとアンヌと社長の死体

シャルルとアンヌと社長の死体

劇団NLT

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★

30年前の活劇を観てるかのよう
ストーリー展開がありがちでギャグのセンスも古っ。もしカントリー的な舞台を見せたいのだったら、思い切ってもっと昭和初期あたりの日本の風景のほうが受けた気がする。キャスト陣が一生懸命、頑張っていたのが手に取るように解り、むしろ哀れだった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

脚本が古い。輪をかけてギャグのセンスも古いものだから笑えない。そんなだから会場に大爆笑はない。勿論、ワタクシも笑えない。眠くなる一方で、何回大あくびをしたことやら・・・。布団かぶって寝てやれば良かったと悔やむ。

会場は割に高齢者が多い。もし、本をこの人たちに合わせて書いているのなら、それは脚本家の商業的なものだろうから観劇者としては文句を言う筋合いもない。しかし、ワタクシはチケット代を支払って観に行ったのだから、少々、ほんのすこぉ~し言わせてもらう。

死んだ支配人を後ろから操って生きてるように見せる芝居って、いったいいつの時代なのだろうか?ギャグというより滑稽で観ていて呆れた。もうこの時点からワタクシはこの芝居を見放しちゃったものだから、芝居上に登場する「くだらない台本」という行があったが、まさに台本通りのくだらなさで仰け反ってしまった。ただ一か所笑えたのは、ピエロが「ジジイの格好をしていただけだ。」といってヅラを取るシーン。しかしヅラを取ってもジジイはジジイで何ら変わらない。この展開は笑ったというよりも、失笑の部類。

キャストらは一生懸命でその部分が観ていて好ましかったが、本がイケナイ。

僕等のチカラで世界があと何回救えたか【作:高羽彩×演:青木豪】

僕等のチカラで世界があと何回救えたか【作:高羽彩×演:青木豪】

ネルケプランニング

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

凄い!と素直に感じた
流石に高羽の脚本だけあって、あの名作「プール」の世界観に似てる。そこに青木の演出が加味されて学校の校外の描写が懐かしい風景と共に広がる・・。
RUN&GUNの4名のそれぞれのキャラクターの立ちかたは秀逸で更に優秀な出演者陣が加わったのだから、観ている方はタマラナイ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

丸子坂下中学校に集まってきた教育実習生4人が、織り成す群像劇。
かつての同級生が教育実習として中学校にやってきた。序盤、彼らのそれぞれのキャラクターの見せ方が上手い。すぐにスイッチが入り熱血になるミキヒサ。ナイフのような狂気を隠しながらもやる気のないカジシマ。案外いいかげんだけれども、一番上手に世間を渡って行きそうな輩・・。

これらの4人が忘れられない出来事・・・、それは彼らの同級生で7年前に殺人を犯した榊原の存在だった。特にカジシマは自分の可能性について異常なほど過敏になっており、榊原を「あいつは14で人を殺して14という誰でもない特別な存在になった!」とある種の宗教の教祖のような存在として捕らえていた。

そんなカジシマは14歳のとき、豊という知能障害を持つ同級生を沼で頻繁に暴行を加えていた。ボコって教育、または遊びと称するいじめだ。一歩間違えたら自分が榊原になってたかも知れないと考え、一方で榊原になれなかった自分を「特別になれなかった」と悔やむ。

「子供って凶悪なものなのだ。」と語る用務員の言葉がズシン!と響く。こんな言葉を吐かせる高羽は凄い!と素直に思う。「子供って残酷なものだ。」というのがワタクシの持論だが、「凶悪」という言葉をあてはめた事はなかった。こんなセリフを役者という媒体を使って吐かせ、こんな物語を描く高羽はやはり人並み外れた才能があると思う。早稲田を卒業して初の社会演劇を王子小劇場で発表した「プール」はなんと2008年5月のことだ。それからたった2年弱で紀伊国屋ホールで公演するという快進撃に目を見張る。

ナイフで切り裂くなら、斜めからえぐるように切り込んでくるのが高羽だと思う。そんな凶悪な子供が教育や世間を流していく事で、真っ当な人間になると高羽は考えるのだろうか?それとも大人になるにしたがって誰にでもある狂気を奥のずっと見えないところにしまって秘めておく。ということなのだろうか・・?

不登校で14歳の武の原がかつてのカジシマと同様に豊に「遊ぶ」と称して暴行を加え続けるが、彼の存在はまさしくミニカジシマだ。「死にたい」と思っているカジシマは死ぬ勇気さえなく「殺してくれ!」と仲間に訴えるも、そいつは「悪い、俺、お前を殺してやるほどお前を好きじゃない。」というセリフもグサリと刺さる!

この世はどこか底なしで、何処にも特別はないかもしれないけれど、その時に生きた時間が彼らの生きてる証なのだと思う。だから・・、特別じゃなくてもいいのだと思う。過去と向き合い、大人へと成長する彼らの絶望と温もりを繊細かつ骨太な質感で照らしていく舞台だったと思う。笑いもそこここに散りばめられ、その言葉のセンスも素晴らしい!「プール!」好きな人にはお勧め。

全員の演技が素晴らしかったが特に豊役のキャストが秀逸!
最近、榊原を題材にしたエンゲキが多いが何か社会的な風評でもあるのだろうか・・?



踊るワン‐パラグラフ2010

踊るワン‐パラグラフ2010

ニットキャップシアター

ザ・スズナリ(東京都)

2010/02/18 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

その手を貸さない息子
コメディというよりサスペンス色が濃い。序盤に張った伏線を終盤できちんと回収する作業は解り易かった。「ごまのはえ」の意味を知りたくて終演後、主宰に聞きに行ったら「どろぼうの名前」だって・・。笑
で、「アンケートを書いてください。」っつーから、「こりっちにUPしますから見て下さい。」っつったら、「こりっちは見たことがない。」ってww・・・。
ワタクシ、腹では「エンゲキ人なら見ろよ!」って叫んだけれど、外面は「そうですか・・・、では今日から見てください。」っつって大人なやりとりを・・。笑
そしたらさ、そしたらよ?(@@!)
今度は主宰と話してる紳士が「・・・・、・・こりっちでも宣伝させて頂きます!」っつーて聞こえた!ふ?!っと振り返るとなにやら営業スマイルを爆発させちゃってる紳士!!ワタクシ、ワザとのろのろとコートを着ながら、顔はあっちの方を向いて左の耳はダンボ状態!で聞き耳をたてる。

どうやら、こりっちの営業マンらしい。こりっちの営業マンを初生見!
いやー、営業してるんだねっ。いいなー、芝居をただで観られて・・・。ワタクシ就職したい・・。笑

以下はネタばれBOXにて。。(まだまだ書きます!)

ネタバレBOX

舞台は序盤、トロピカルな音楽で始まる。なんだかパラダイスな南国に行ったような気分に。最初、ドタバタ劇かな?って思った。だって「シチュエーション“ミステリー”コメディ」って括りだったから。

しか~し、物語中盤頃から、段々と明かされる死んだ教祖の15年前の真相。その真相を糾弾し、復讐する為に、新聞記者に変装してやってきた教祖の愛人。そして同じ目的でやってきたカメラガールに変装した教祖の失踪した実娘。父親のマンションを撤去させる為に地上げ屋に加担した息子ら。登場人物のそれぞれが野次馬のように装いながらも、心理的には目的を持っていた。

教祖の死因を解明するうちにマンションオーナー(父親)の15年前の当日の不審な行動が浮上する。事実を知ろうとする息子・辰巳の心はどうしようもない絶望感に侵食されながらも、「あの日、父さんが教祖を殺したんじゃないか・・?」と父親に対しての根深い普遍的な猜疑心をも舞台上で表現する。その「もしかしたら・・」が「やっぱり・・」に変化し確信になった時に、父親が差し伸べた手を掴む事はなかった。

この物語は、マンションの掲示板に張り紙をした「象復活!(象の足跡という教団)」から始まった出来事だったが、その張り紙をした犯人を捜していたオーナーは「犯人がみつかったぞーーー!!」と叫ぶがその言葉も空しく滑稽だった。

カールスモーキー石井のコンサートの場面はバックに映像でも流して欲しかったなぁ・・。それからクライマックスの場面でバック音楽に打ち消されてセリフが聴き辛かった。それでも全体的には好みの作品だった。息子のオドオドした自信のない仕草は全て15年前の事件から。というのが終盤になって理解できる。一方でマンションに教祖が道場を作ってしまった事でオーナーは経済的に苦労を強いられ、ついに教祖を殺って自殺に見せかけたというのも終盤で解る。物語は復讐を誓った人間対殺した人間との対峙になるが、その対峙の仕方が案外バカバカしい。笑いはちょっとずつ散りばめられ、終盤、一気に解き放たれるがその放し方も秀逸だと感じた。

天晴スープレックス5

天晴スープレックス5

ブラボーカンパニー

小劇場 楽園(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

ゆるくてバカバカしい
もう、これしか言いようのないアホらしさ!(^0^)
大の大人が公園で遊んでるようなショートコントでした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

タイトルの全部に「変」が付くという「変」シリーズ。
◎「変化」覚醒剤の山を取り調べるデカが指で白い粉を舐める場面。
・・・しかし、舐め過ぎて己がラリる!笑

「心変わり」京大に落ちてしまった高校生が実は東大には受かってるのに、京大に行きたかった、と自殺しようとする。2人の刑事がこれを止めようとするも、高校生の話を聞けば聞くほど、刑事らは自身の境遇を不条理と感じ始める。

「変わらない」脱サラをした屋台ラーメンのオヤジの話を聞くリーマン2人。脱サラとは名ばかりのリーマン根性が抜けないオヤジ。

「一風変わった」立ち退きを迫るヤクザが住人に脅しをかけるも、その脅し方があまりにも迫力がなくガキのお遊びのレベル。

◎「変えられる」生徒に先生たちの演劇を見せようと集まった教師らが、「浦島太郎」は生徒の教育に良くないという理由で、どんどん話をすり替えていく。その理由とやらが「亀にマタガッタ浦島太郎は卑猥だ。」と真剣に話す。

◎「変遷」刑事らの会話劇。

「変」白タイツで登場した男が「体で覚える現代用語」なんつって演じるが実はこれがまるで面白くない!苦笑!

「変わってしまう」ヤマト戦艦ネタ。真面目におバカ。

◎「変えなければならない」ロシア人がアメリカ人をみならってアメリカンジョークの練習をする。つまんないジョークを言ったヤツは罰ゲームにコサックダンスを強要させられる。

「変更後」浦島太郎の物語を変更した結果。

◎「豹変」日テレの小林まおの外面と内面の豹変ぶり。

「変」白タイツで登場した男が「体で覚える現代用語」の二発目。まったき面白くない!

◎「変革」マイクロソフト社のプレゼンの風景。

◎「状況が変わる」ヤバイを連発する輩が状況によって「ヤバイ」の持つ意味が違ってくるさま。

「変な○○」コンプレックスゴレンジャーが戦うシーン。あまりにもコンプレックスが強すぎて思考が内向きになり弱っちい・・。笑


とにかくアホな世界にどっぷり浸かりました。◎印のついた項目がお好みだった。ゆるくて楽しい。。


アーリークロス

アーリークロス

9-States

OFF OFFシアター(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

今後に期待!(^0^)
相変わらずのキャラの濃い面々。どんだけ濃いんだよっ。っつって久しぶりに仰け反る!飲み屋というより、「ようこそ動物園!」って感じ。
実直な感想としては・・・渋谷と芝ってどこが違うんでしょか・・?

男性は中央前列に座ると美味しいです。(親切な告知)


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

アイカワ商店街の面々が飲み屋に溜まって繰り広げるドタバタ劇。何処にもありそうな日常だ。そしてどこの商店街でも似たような悩みを抱えている。近隣に大手スーパー・ジャスコが開店してから、地元の商店街は寂れる一方。そんな商店街にTVクルーが入るというから、商店街の動物たちは大騒ぎ。

布団屋のメガネザル、妻大好きの酒屋のバク、そのまんまヤクザを地で行くゴリラ、靴屋のミニラ(たぶんカテゴリーは怪獣)、プロデューサーのキリン・・・etc

こんな輩が妙にハイテンションで繰り広げるコメディだが、笑いにはどっか~ん!!という笑ではなく、妙に詰まった笑い。つまり・・クスッ。っという場面が散りばめられてる。ママ役の前田の存在感は流石!ワタクシの好きな女優の一人だ。彼女の演技は本当に自然だ。そして序盤で寝転んで寛ぐ渋谷の演技も自然だ。ってか、渋谷の場合は常にこーやって寛いじゃってる気がする。(´-ノo-`)ボソッ...

だから、ワタクシはこの動物ランドが好きだ。

物語そのものは大した大きなうねりも反転もない。その緩さの中でダラダラとついぞまとまりそうもない集会をする。その集会は馴染みの連中が集まる口実だ。実際は集会と言い訳しながら、大の大人が延々と呑んだくれて遊んでいる光景だ。これは芝居だ。芝居なんだと言い聞かせながらも、これらの動物たちが毎晩、似たようなことをしているのが透けて見えるようだった。
かげぜん

かげぜん

dash

あうるすぽっと(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/25 (木)公演終了

満足度★★★★

タイトル誤り
タイトルが「かせげん」となってるが、「かげぜん」の誤りです。
後日、管理人が訂正するだろうけれど・・。

人が温かな心に触れて本来の精神を取り戻していく物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

口減らしの為に他家へ養子に出された神代大吾は貰われた家からも捨てられ天涯孤独となる。そんな環境から生きていく為には人殺し以外は何でもやって命を繋いできた。結果、大吾は詐欺師となる。

今度のやまは大金を持参しているという老婦人の孫・ショウジのふりをして老婦人の自宅に潜り込み、大金を奪うことだった。しかし、彼女の家で暮らすうちに、彼自身が持っている本来の優しさが見え隠れするようになる。孤独感やこれまでの境遇からすさんでいた大吾の心が氷解していくかのように改心していくのだった。これに加味して、ひょんなことから見合い相手となった河野たえの太陽のような存在も大吾の心を潤す。

一方で大吾がしてきた罪を天から罰せられるようにショウジ宛てに召集令状が届く。これを蹴って逃げる事も出来たが、大吾はあえてショウジとなって令状を受けて戦地に行く。残された老婦人・みつは彼の為に「かげぜん」を備える。

時は流れて3年後、大吾は戦地から無事帰還していたが、今までの罪滅ぼしの為に、騙し取った金を被害者に返し、そして晴れて老婦人のもとに帰ってくる。帰る家があるという癒しは大吾がショウジではないと知った老婦人とたえが待つ家だ。守るものがあるのは素晴らしいのだ。

妹を騙した大吾を屈服させ暴力で支配しようと、とことん追い詰める刑事も詐欺師らも、そうしなければ生きられなかった境遇を思うと哀れで物悲しいが、終戦間際の混乱期では珍しくなかったのだとも思う。キャストの演技力も演出も秀逸でした。初日だった為か、老婦人がセリフをカム場面が多かったが、それでも素晴らしい舞台だった。。

プリン

プリン

かやくごはん

「劇」小劇場(東京都)

2010/02/10 (水) ~ 2010/02/17 (水)公演終了

満足度★★★

インパクトが薄い
最後のどんでん返しは、おっ!(@@!)っとしたが、全体的には無難なながれ。もうちょっと爆発的なコメディ部分があっても良かったかと・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語はスイーツの店「La vie」、ってか、ケーキ屋ですわっ。
昨今ではスイーツなんつって上品に言っちゃってるけれど、要はケーキ屋で起こる騒動劇。

「La vie」にクーゴ共和国のSPとやらが特別なプリンを作って欲しいと依頼に来た。聞けば大統領はある食材のアレルギー持ちだったことから、指定された食材だけを使ってプリンを作ってほしいという依頼だった。弟が食品アレルギーで亡くなった過去を持つパティシエは、大統領に同情し、また、弟のような犠牲を出してはいけないという信念でこの依頼を受ける事になる。

しかし、SPの事の真相は、大統領を裏切って大統領暗殺のテロリスト側に就き、そのプリンに大統領が拒絶しているアレルギー薬を少しずつ混入させて殺してしまおう、というのが狙いだった。この計画をじっくりと実行するSP。そんなことは知りもしない「La vie」の人々と彼らを取り巻く人たち、そしてそんなテロリストを阻止する刑事。

結果的にはSPは捕まり、やれやれ・・と思ったが、従業員で、どこか抜けたような栗山が実はそのテロリストだったという見掛け倒しのオチと、停電の間に栗山が例の薬をプリンに仕込んだ!って、これまた予想を反する展開に唖然!とした。

が、終わってみれば、大場こと奈良谷優李の演技と存在と、独特のキャラクターに圧倒された芝居でした。物語は無難にまとめたものの、大場のコメディがなかったら、まったき記憶に残らない物語です。

センディアナの女&アブグレイブ

センディアナの女&アブグレイブ

タイニイアリス

タイニイアリス(東京都)

2010/02/11 (木) ~ 2010/02/15 (月)公演終了

満足度★★★

セノグラフィー演劇とは
いったいどんなものか?なんて興味津津で観に行ったけれど、特別な演劇でもなんでもなくて「セリフでなく体で伝える演劇」。これって日本の演劇界でもよく観られるし特別なものじゃあない。
けれど・・・、

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

この物語は事実に基づいた芝居ってんだから、あっち側の世界はすさまじいですわ。

「Abu Ghraib—アブグレイブ刑務所」
2004年1月、アメリカ軍兵士による虐待、拷問の写真がマスコミに報道されて一挙に有名になったアブグレイブ刑務所だが、実はサッダーム・フセイン政権時代でも反政府とみなされた無実の人々がここに収容され拷問、処刑が行われていたのだった。

そのフセイン政権時代にとある音楽活動家が捕らえられてアブグレイブに入所したが、後に、はれて釈放されるも、今度はアメリカ軍に捕らえられて獄中で死んだ男の物語。

舞台上はヘリのプロペラが回る音が響く。冒頭、看守が囚人の名前を点呼する。全部で15人。

その中で音楽家はでっぷりと太った看守に殴るけるの暴行を受けるシーンがあるが、この暴行のシーンを看守の靴で演出する。靴の上には人間は居ない。だから音楽家役の男が看守の靴を持って、自らの脇腹を靴でたたいたり、頭の上を靴で踏ませたりしながら、暴行を受けてるかのように演出する。

一方で、でっぷりと太った看守は別の囚人を苛め詰りいたぶり大声で笑いながら虐待する。そんな中、音楽家はチェーンでがんじがらめに巻かれたサクソホンを奏でようとするが出来ない。悲しそうにする音楽家。チェロも同じようにビニールで巻かれて弾くことが出来ないが、それでも音楽家はチェロを抱えて愛しそうに頬にあてる。ここでの演出は音楽家が獄中でも音楽に対する意欲だけは失うことはなかったが、その希望も叶えられずに苦悩の末に死んだ描写だ。

やがて看守はのたうちまわる囚人にダストチューブを投げつける場面があるが、これは死んだ囚人をダストチューブに放り込む演出なのだろうか?あまりにもダイナミックな演出だった。そしてそこに横たわる囚人は既に人間ではなかった。物だったのだ。

そして一日が終わる時に看守は囚人の点呼をする。全部で5人。
つまり、15人のうち5人だけが生き残ったという計算だ。
セリフは全くなかったが、その表現力はやはり素晴らしかった。きちんとストーリーが出来上がっているのだ。



「Woman Sindyan-センディアナの女」
アラブの世界で生きて、男から物扱いしかされなかった女性への差別を表現した舞台。こちらは台詞があって字幕付き。かつての日本だってそんな時代があったのだから、なにもアラブだけの問題ではないが、「チェニジアの女性は自ら立ち上がって自由を勝ち取った!」と誇らしげに話していたのが印象的だった。
日本同様、チェニジアの女性も逞しいな。と実感した一コマ。笑


たゆたう、もえる

たゆたう、もえる

マームとジプシー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/02/13 (土) ~ 2010/02/16 (火)公演終了

満足度★★★★★

物凄い!渾身の一作!
こんなに感動したのは今年になって初めてかもしれない。しかしこの感動は爆発的なものではない。あの「F」のようなじんわり感じる繊細さだ。物語は優しげで温かみがあって日向でうずくまる猫のいる家を思い起こさせる。だけれどもその家族の風景は誰もが記憶の中にある一コマとして持っているものだと思う。だから・・・、確実にワタクシの記憶にリンクして、心に突き刺さった。間違いなく今年の一押しだ。登場する全てのキャストが秀逸なのも作品を盛り上げた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤、ある家族のちっさい姉妹らのシーンから始まる。あさ(ゆうの姉)、ゆう、しんやの3人兄弟の風景。そこに泊まりに来たななちゃんや同級生らが絡む。これらのシーンが実に懐かしく可愛らしい描写だ。

これらに幼い頃のゆうの心の動きが加わる。物事をはっきり表現するあさ。お姉ちゃんとしての自覚が芽生え全てを仕切りたがるあさ。一方で弟の面倒をちゃんと見ているものの、姉の仕切り方に戸惑いつつ、言いたいことが言えないゆう。この場面でのゆうの心の内が痛いほど分かって切なくなる。ゆうはゆうなりに懸命にそして健気にななちゃんとの微妙な距離を保とうとする。しかし、その中に姉が土足で入ってくると感じてしまうゆう。

どうしても受け入れることができない、許すことができない理不尽さがゆうの心にびっしり蔓延り、一層ゆうは自分自身を閉じてしまう。その閉じ方が子供ゆえにイジケたり捻くれたりしてしまう。

これらの家族の風景と近所、同級生らと関わりの描写を時代とともに追っていく手法だが、この見せ方が素晴らしい。序盤に張ったいくつもの複線を角度を変えて同じ場面を何度も魅せる。まるで円形劇場で回転している舞台を観てるような感覚になる。場面場面の、描写と時代の異なったシーンを、複雑に交差させながら、作中に生きる人物たちの情景を同時進行に描く手法だから、一見複雑そうに見えるが物語の進行は単純で解り易い。その手法は撒いた伏線を回収するものではなく、撒いた伏線をパズルのように組み合わせ、また散ばせるような感覚がある。

だから・・・記憶の断片は常に空中で待機してるような感じだ。

ちょっと納得できないことや容認できないことが起きるとフラフープに逃げるゆう。自分の胸にわだかまってる重苦しい霧を表現する場面だ。ここでのフラフープがゆうの心の繊細な襞のようにクルクル回って揺れる。愛しいと思った。ゆうも、弟のしんやも、そしてあさも、穏やかな両親も、そうたも、はなも・・・。登場人物の全てに共感できる。

大人になったそれぞれはいつか自分を振り返り過ごした時間に時代という言葉を冠するときがくる。青の時代があり、そして赤の時代があり、そしてその全てを受け入れる。

大人になった彼らも家族という新しい形態が出来上がり、それぞれ家族の距離を保ちながらも、両親の介護のシーンも登場する。父さんがよろよろの字で「しなせてください。」と書いた情景に、思わず涙する。そして残された母親の介護の場面でもあさの心意気が見える。今だに独身で8年間も家に寄りつかなかったゆうを気遣うあさと、しんやの描写も素敵だ。ゆうが幼馴染から借りた10万の借財の理由が、堕胎する為と解った瞬間の「上手に生きられないゆう」を思うとなんだか、ズシン!と突き刺さる。

「いつでも帰っておいで。大丈夫だから。待ってるから。」とゆうに伝えるあさの言葉も素敵だ。

ゆうの同級生、しのちゃんが登場した時には殺されるかと思ったくらい爆笑した。何あれ?(苦笑!)パンツのお尻のほっぺたに何やら貼り付いてるもの・・、そして人形をおぶったしのちゃん。もう、ワタクシ、理性という線がプッツリ切れてしまって、笑いを堪えようとすればするほど可笑しくて・・、どーしようもなく可笑しくて、とうとう切れた!笑

観終わった後、胸が温かい甘水に満たされたようなこころもちになった。そしてこの素敵な物語をいったいどうやって表現したらいいのか、なんだかとっても重要な気がして何回も消しては書いたけれど、まあ、ワタクシの表現能力はこんなものなのです。素晴らしい!ってことだけ解ってもらえたら嬉しいのだけれど・・。

ゴージャスな雰囲気/めんどくさい人(千秋楽満員御礼で終了しました・感謝!御感想お待ちしています)

ゴージャスな雰囲気/めんどくさい人(千秋楽満員御礼で終了しました・感謝!御感想お待ちしています)

MU

OFF OFFシアター(東京都)

2010/02/03 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

Cバージョンを観た!
ベースは愛だ!とにかく面白い。これだけ面白かったら他のバージョンはどうなんだろうと興味が沸いた。しかし、既に他の予定が入っており、もっと早く観ておけば・・・と悔やむ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

『ゴージャスな雰囲気』

女子高生が自殺するかもしれない、と知ったナルシスト達はなんとか女子高生を死なせまいと努力する。なんとか時間を繋げようとする場面での「足の臭い王様」の小ネタがナルシストらしくない風景。笑
しかも、当ビルが火事になっても、全面ガラスから自分たちのナルシストぶりを、「ナルーナルーー!!」と発揮する場面はバカ丸出しだ。命がけでナルシストぶりをアピールするその先には彼らの死が近づいているが、死んでもナルシストっぷりっぷりは健在だ。笑
そんなアホクサイナルシストらが他人を救おうとする精神の根底は愛だ。



『めんどくさい人』
『ゴージャスな雰囲気』よりも、こっちの方が好みだった作品。
川添美和の意外性を発見!彼女はコメディのほうが似合う女優じゃないかと思ったほど物凄い爆発力だった。笑

タイトルが真逆になったようなゴージャスな雰囲気を持った花恵は男を買う。恋愛なんてメンドクサイと言いながら淡々とセックスする。金があれば大抵のことは手に入る。しかし手に入らないもの。それは「本当の愛だ」と心底、花恵は思っていた。だから高校生の敦史からも勝からも愛を告白されたって信じない。信じられない。金持ち特有の人間が考える「金目当て」だと勘ぐるからだ。そして幸せの象徴「青い鳥」を生きたまま捕獲する事はままならないが、大枚をはたいて、死んでしまっている「青い鳥」を冷凍庫保存している。

たぶんマダムは金はあるけれど、それほど幸せじゃないと考えてるようだ。マダムが幸せと感じる瞬間はどうやら「本当の愛」らしい。だから、敦史の愛を受け入れようとしたマダムは、「私にお金がなくなっても愛してくれるの?」とメンドクサイ女に成り下がる。つまり愛とはメンドクサイものなのだ。しかし、このメンドクサイ営みは崇高で楽しくて幸せなメンドクサイだ。時には疑心暗鬼になりながらも・・。だから、愛に囚われてメンドクサイ人間になったとしてもそんなメンドクサイ人たちがワタクシは好きだ。

ここで登場するキャラクターの立ち上がりは全員が秀逸だった。身体を張っての二面由希のダイナマイトボディから発揮される魂は普通じゃないし、どいつもこいつも物凄いキャラだった。

いちいちテーブルからベッドに変える瞬間の作業も面白いと思った。メンドクサイ作業なのに・・。笑


はい、奥田製作所。

はい、奥田製作所。

劇団銅鑼

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2010/02/09 (火) ~ 2010/02/13 (土)公演終了

満足度★★★★

ベタな人情劇
とにかく解り易くて観易い。大衆向きだと思った。だからいつものように脳をフル回転させる必要はなくての~んびり楽しんだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

大田区のちっさな町工場を舞台にそこで働く従業員、家族、地域の人たちを巻き込んだ人情劇。

頑固一徹で人情家の「奥田製作所」の社長が倒れて、実質的に社長になった息子の鉄彦は工場を受け継いでみて、始めて内情が火の車だったことに気づく。このままオヤジのやり方で経営していたら倒産してしまう、と感じた鉄彦は徹底的にコスト削減に乗り出すことに尽力する。しかしコスト削減するためには今までの外注先をそぎ落とし新規に安く発注できる外注先が必要だった。そしてオヤジが採用した新入社員もクビにすることに・・。

しかし、そんなコスト削減を図って安く仕入れた先から、納品された部品に不良品が出てしまう。発注先を元に戻し、クビにした社員を元に戻すようにと、激しく反対する従業員との確執が浮上する。また心身ともに疲れきってる状況の中、鉄彦は自分の家族との関係もおなざりになってしまう。ここまでの場面の苦悩した表情を鉄彦演じる横手が好演する。安心して観られる舞台とは何もベタだけではないのだなー。なんて初歩的なことに感心してしまう。
一方で鉄彦が高校生の頃の場面を舞台上で現在の鉄彦とリンクさせる。その頃の友人や家族との関わりを通じて、現在の鉄彦の心境や行動を改めさせる手段のように・・。

やがて鉄彦が自分の行動が間違っていたことを認め従業員に謝るシーンから物語は好転したように良い方向に転がり始まる。つまり従業員一同、力をあわせ、会社の存続の為に一丸となって、営業に出向く。また今まで付き合いのあった町工場の人たちが奥田の為に、仕事の受注を取ってくる。どうやら「奥田製作所」は立ち直っていく展開で収束する。。

物語の収束の仕方も登場する人間関係なども想像の範疇だ。だけれど、こういった人情ものには毎回、涙を流すし感動する。それはたぶん、綺麗に収まる物語が現実的にありえないことだと解っている。解っているからこそ、そうあって欲しいという思いに「黄門の印籠」のごとくスパッと打ち振るわれる「打出のコヅチ」に感動するのかも知れないし、そのこと自体に失いかけた希望を見出すのだと思う。


リバーシブル

リバーシブル

レイヨンヴェール

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/02/09 (火) ~ 2010/02/11 (木)公演終了

満足度★★

床運動のナリ
はっきり言って舞踊はまったく解らない。解らないけれど美しいとか、繊細だなとか、躍動的だなってくらいは解ってるつもりだ。しかし、今回の舞踊は中学生で教わる器械体操みたいな風景でワタクシにとって退屈そのものだった。で、半分くらい観たら飽きて2階の演奏を眺めたり客席をウオッチしていたら・・・、な、なんと?!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「サンタクロース会議」に出演してた島田曜蔵がいてるではないですかっ!
( ´;゜;ё;゜).;'.、.;'.、ゴフッ!!

し、しかも座布団2枚分くらいのスペースをとって胡坐かいてます!でもって両サイドには両手に花じゃあないけれど、同じく「サンタクロース会議」に出演していた女性をはべらせて殿様のようなナリ。まあ、彼の場合は普通に座っててもクジラのような迫力がある。
いあいあ、これはオイシイゾ!ってひとりほくそ笑んじゃった!

客席は「リバーシブル」という演目にちなんで対面席になってたから、ワタクシが座ってた席から島田が良く見える。ついでに視線を右に動かしていくと・・・、あれ?!殆どが青年団でしょか?ってな感じ。「F」の出演者も、また他の公演の出演者も総出の勢い!(´- `)フッ
かりだされたんでしょか???(´-ノo-`)ボソッ...

しかし、みんな観ている表情に特に変わった様子はない。
で、視線をまた島田に戻すと、
巨豚!いあ、キョトン!
鳩が豆鉄砲をくらったようにキョトンとして観てる。

アワワワ((((゜ □ ゜ ) ゜ □ ゜))))アワワワ

いあ、島田、この場合、キョトン!はどうよ?
違うとおもうぞ。先生は違うとおもうぞ!
って言ってやりたかった!
しかし島田はそのキョトン!の表情を一部始終崩さず、ある意味鉄のような強い意志でもって舞台で動いてるキャストから視線を外すことなく、キョトン!の表情のまま顔だけが左右に動いてるのでした。(*..)φ)) 

かくゆうワタクシは島田のキョトン!を眺めながらも、なんだか観てることが精一杯!ってナリの島田と1on1のサシ勝負をしてるようで、この勝負が終わらない限りこの空間からは脱出はできないんだ!みたいな感覚に陥ってました。

そんなこっち側の気持ちも知らずに島田は終盤になっても相変わらずキョトン!は崩さず、その根性にこっち側は卒倒しそうになりながらも、「神だ!」と思いました。シシ神さまの森には、大抵あんな神が宿ってます。トトロだな、きっと・・。そうだ!トトロだ。
納得しまくり。
_机_┗┐(-c_,-。)y-~ ふぅ

好きです、島田!
☆2個は君のものだぁー。


60兆の追放者 ご来場下さいましてありがとうございました。

60兆の追放者 ご来場下さいましてありがとうございました。

ルナ・パンク・ヴァリエーションズ

萬劇場(東京都)

2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

カ・ン・ぺ・キ!!
もう、これ以上の褒め言葉が見つからないほどのストーリーと演技力!ハードボイルドでこれ以上の芝居をついぞ観た事があっただろうか・・?
今回は照明、音楽、導入歌、登場キャラクター、演出、舞台セット、全てが満点だと感じた。そして重要な物語性も脱帽するくらいの出来!泣いて笑って・・、そして数々のアクション!
しかも今回は女性がそのアクションにも挑む。素晴らしい!本当に素晴らしい舞台でした。欠点はただ一つ、ワタクシの椅子からは横たわったファイ・ユが観られなかったことだ。それでも完璧!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

敵国サイナは創造された「完全な暗殺者」、つまり改造された兵士を捕らえる為に自ら改造した兵士を追っていた。改造とは、敵の捕虜を自分たちの支配下におく為に情報操作をしたチップを彼らの脳に埋め込み意のままに動かせる兵士だった。ところが一部の兵士に「殺人者としての自覚」がまだ完全ではない兵士がいた。殺し屋クー・ザラノだった。そしてナンバ。

二人はサイナ人に追われながらも、殺し屋クーはナンバを庇い自分は腕に傷を負う。「奴らは俺が惹きつける。行け!死ぬな!」とナンバを逃がす。

一方で逃げたナンバはそんな記憶が途切れ途切れで釈然としないものの、ヤクザを装った公安局らに殴られていたSF作家のクラスを助ける。ここでもナンバの戦闘能力は素晴らしく、人間を超越していたのだった。ここでヤクザが経営しているキャバレーで後にナンバが好意を寄せることになる歌手兼ダンサーのユリに出会うが、彼女の歌声が実にいい。素敵な声だと心から思う。また、ヤクザのボスのカメイ・ヴァスコ(川根有子)も歌うが彼女の歌も独特で実に素晴らしいのだ。ヴァスコのキャラはなんだろ?観客を圧する何かが潜んでて、物凄い女優だとつくづく感じる。ワタクシの中では一、二を争う大女優なのだ!ったらなのなのだ!笑

やがてナンバはクラスを自分の家に連れて帰り、ここから友情が芽生える。しかし執拗な追っ手に見つかりナンバはサイナに殺されてしまうも、機密情報が消滅するのを恐れた公安局はナンバの脳チップを今度はラ・ロッサに埋め込むことに成功したのだった。結果、ラ・ロッサはナンバと同様の高い戦闘能力を持つこととなる。

そして、ラ・ロッサはやがてクー・ザラノに出会う事となり、彼女は彼の身体に刻まれた傷跡の記憶を思い出す。そのことを知っている人間は、この世には数人しか存在していないはずなのに・・・。と絶句するクー。おりしもクーとラ・ロッサを追うサイナ人陸軍のファイ・ユは彼らを見つけるがここでもクーはラ・ロッサを庇い負傷する。そして「奴らは俺が惹きつける。行け!死ぬな!」と助けるのだった。序盤の伏線がここでしっかりと繋がる。小気味よい展開だ。

瞬間、ラ・ロッサは「そうだ、あの時も君は僕を助けてくれた。」とその場面と同じ光景をみて記憶を甦らせる。自分の記憶がないクーは彼女に「捕虜になる前、俺はどんな人間だった?」と尋ねる。「君は誰よりも勇敢で優しくて僕の大切な親友だったんだよ。」とセリフるラ・ロッサ。

記憶とは生きてきた証だと思う。人間を人間たらしめるのは遠い過去からの記憶の蓄積であり、その蓄積を認識できる精神のみなのだと、つくづく思う。気の遠くなるような無数の過去によって世界は成り立っているのだ。
だから記憶が無い。思い出せないってことは虚無なのだと漠然と感じる。

終盤、死んだナンバと同じく殺されて死んだクラスが抱き合うシーンがあるが、人生を昇華した後の抱擁は美しく威厳に満ちていた。

どのキャストも本当に素晴らしかった。特にアクションでは手を抜かず悪役に徹した丘崎杏の強い眼差しが素敵だった。一方で登場しただけでインパクト満点の川根、アクションで魅せた川渕かおり、中島広貴、本田英一郎。
全ての人たちが秀逸でした。乾杯!!


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