憂鬱先生
てにどう
ザ・ポケット(東京都)
2010/06/09 (水) ~ 2010/06/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
苦悩する可愛らしい夏目
夏目は英語研究のためにロンドンに滞在していた2年間余りの中で4回も下宿先を変えていました。最後の下宿先で、夏目は部屋にこもりきりで研究に没頭します。今まで付き合いのあった留学生仲間とも疎遠になり、下宿屋の女主人からも心配されるほど猛烈な神経衰弱に陥りました。その最後の下宿先でのお話。
今回の芝居で見られる舞台セット、美術、衣装、ものすっごくセンスが良いです。特に着物の柄とカラーの選び方が素晴らしいです。衣装担当は吉澤奈月。いい仕事をしてました。
キャストらは全員がしっかりした演技力で総合的に素晴らしい舞台だと思う。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
最後の下宿先で夏目は暗い部屋に閉じこもって、もんもんと妄想の世界に入り込んでいた。現実と過去に関わった人たちが錯綜するなか、夏目自身が自分を「情けない、臆病、がっかりする、度胸がない」などと己の勇気のなさを評価する。
好きな女に自分の想いを告白出来ない情景がとにかく可笑しくて可愛らしい。笑) 夏目の憂鬱な精神状態を表現している物語なのだが、その描写の仕方がコミカルでコメディなのだ。迷亭との会話の問答も、ゆらゆらと笑える。「男たるもの、女性に尊敬されなきゃいけないし、女性から馬鹿にもされなきゃならない。」なんて哲学に自問自答しながらも友人の細君を想い苦悩する。
それでも、臆病な夏目は「だってそれが僕なんだもの。仕方がない。」と、どーしようもない現状を嘆くのだった。笑
ワタクシは好みの舞台だった。舞台の中の情景は1900年の時代に誘う力があった。素敵な舞台だと思う。
ノア版 桜の園
ノアノオモチャバコ
サンモールスタジオ(東京都)
2010/06/10 (木) ~ 2010/06/14 (月)公演終了
満足度★★★★
美しい演出
全体的にスタッフが創作した器は情緒溢れるもので、器の中で演じられた芝居はゼンマイ仕掛けの人形を見ているような感覚。斬新でもあった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
誰でもご存知だろうけれど、物語のあらすじをまずかきこ・・・南ロシアの地主であるラネーフスカヤ夫人は夫と死別後、愛人とパリで暮らしていたが、愛人に裏切られ、経済的にもいきづまって、娘のアーニャとともにパリから領地の桜の園の屋敷に帰ってくる。だが、その領地も抵当に入っており、破産は目前である。しかし、没落貴族である夫人や、兄のガーエフは、自らの窮状を受容しているようでいても、浮世離れした彼らには現実が見えてこない。他人の金で生かされていることに気がつかないのだ。
農奴の息子で今は成金となっているロパーヒンの建設的な提案にも耳を貸さず、結局屋敷は競売に付され、競売に競り勝ったのが、ロパーヒンであることが判明する。ロバーヒンはここに別荘を作って売り出す、という。領地の桜の木が切り倒される音が聞こえる中、彼らが屋敷を出て行く。
美しい「桜の園」を舞台に、旧地主・貴族階級の没落とそれに取ってかわる新興ブルジョワジーの台頭を描く。
この物語をノア版はあえて日本に置き換えて上演する。だから登場人物も日本名だ。しかし、「桜の園」に限っては日本に置き換える必要もなかったような気がするのだ。粗筋は殆ど変えてないものの、土岐という老女中のキャラクターそのものが失敗だったような気がする。土岐を笑のネタにしたかったのだろうが、殆ど笑えない。折角の「桜の園」の情景が台無しになってしまう恐れさえあった。
そうして毎回の奇怪なダンスシーンのバックにそびえ立つ桜の巨木のセット。実に美しいです。誰もあんなふうに桜を表現すること自体、気がつかないと思う。芸術でした。その桜を押し出すような導入音楽と照明。素晴らしいです。確か前回の照明さんも今西理恵ではなかったか?終盤の桜の巨木をバックに桜の華吹雪が舞う演出はもう、お見事!と拍手してしまいたいような春欄漫で、その演出に惚れぼれし、とにかくスタッフが秀逸でした。
ただ、今回の舞台は初心者にはむかないような気がする。「桜の園」を読んだ事がない方は何がなんだか理解できないかも知れないからだ。
この作品の特徴は大きな事件というほどのイベントは競売くらいしか起こらないし、恋愛が破綻したり成就する訳でもなく、大団円を迎えることなく幕が下りる。にもかかわらず、見終わった後で、人間に対する認識が深まったように感じられるのがチェーホフ劇の魅力なのかも知れない。
堕ちてゆくなまもの
劇団わらく
中野スタジオあくとれ(東京都)
2010/06/09 (水) ~ 2010/06/13 (日)公演終了
満足度★★★★
屈折したまま
三つ子の魂百までも・・・じゃあないけれど、人の運命はその属性によって決まる。どんな土地でうまれたのか、どんな種類の人間の中で育ったのか、その生活の中でどういう世界の見方を覚えて来たのか。それで生き方の半分は決まる。不条理劇の部類に入るのだろうか?屈折した心の闇を抱えたまま幸せになれなかった男のお話。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台は優一郎が自殺するシーンから始まる。そのまわりにうろつく「見ざる聞かざる言わざる」のように耳や口や目を押さえた無関心な人間たち。その場面は都会のあちこちでの情景だ。
優一郎は6歳のときに母に捨てられた。母は父からのDVにたまりかねて家出してしまったのだった。母に恋焦がれる優一郎はその想いがある時点に達すると母に捨てられたという感情が憎悪となって増幅してしまうのだった。その後、父は酒に溺れ自害し、優一郎は施設に預けられる。
優一郎が高校生のとき17歳の少女・弓子と付き合うが、彼女は家族にも友人にも優一郎と付き合うことを反対される。彼女は孤立してしまい、家出してしまうが、頼った見知らぬ男・中谷が悪かった。優一郎は弓子に戻るように説得するも弓子は「貴方のことは好きでもなんでもないの。可哀想だと思ったから付き合った。同情だったの。」と優一郎に爆弾発言を放つ。そうして中谷と一緒に暮らし始めたが、中谷はサドの気のある障害をもっており、弓子に暴力をした挙句、首を絞めて殺害してしまう。
その後、優一郎は綾という恋人が出来るも、彼女を心の底から信用できなかった。この女も母と同じように、いつか自分の目の前からいなくなってしまうのではないか?あるいは自分と付き合ってくれるのは同情からではないか?そんな不安が常に付きまとい、誰も信用できなかった。そうして彼女の命を懸けた誠意にも応えられないまま、彼女を殺してしまう。
過去に優一郎が関わった人たちを走馬灯のように思い出し、自分の中の闇を消化できないまま、優一郎は実の母が既に他界してしまった事実を知ってしまう。実の妹とは会えるものの、屈折した心はまっすぐにならないままに自害してしまうのだった。
この物語に「希望」という文字はない。だけれど、最後の時に彼と関わった人たちが実に優しい。死の間際に温かな人たちに触れただけでも彼の魂は柔らかな母の魂と一緒になれたのだと理解したい。
見方によっては評価は割れると思う。キャストらの演技力、易占いに集る優しい人たちの情景は温かみがあった。特に中谷のサドの演技の壮絶さは見もの。
なまじ、繊細な心を持ってしまったばかりに愛することに臆病になってしまった男の物語。
眠れぬ夜の1×8レクイエム
水木英昭プロデュース
紀伊國屋ホール(東京都)
2010/06/09 (水) ~ 2010/06/15 (火)公演終了
満足度★★★★
躍動的で楽しい舞台
終盤のチャンバラはお見事。美しい一枚の画になるほど芸術的だった。更に同じ終盤で魅せる越川一馬(青柳塁斗)の演技も素晴らしい。タダのアイドルじゃあない!
惜しむらくは、小松彩夏演じるももちゃんのキャラクターがウザイ。とにかくウザイ。このキャラは失敗だったかも?
それでも全体的には躍動的に魅せてくれたお芝居だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
犯罪多発地域のパトロール、及び捜査、摘発の為に秘密裏に組織されたこの部隊・特殊巡回機動隊(ネイキッドポリス)は、犯罪歴があってもその能力が認められた者や、隊員の強い推挙をうけた者は特別採用するという特別な隊だった。ここに一人の青年・越川一馬(青柳塁斗)が配属される。スキルの向上、チームワークの強化を目的とし、開始される事となった極秘訓練。
人里離れた廃校に閉じ込められ、司令に基づき模擬犯罪に立ち向かうのだが、この密閉された空間で、何故か隊員が一人づつ消えていってしまう。訓練というには、余りにも危機迫る展開に正気を失う隊員。実弾入りの銃を発砲するもの。逃げる事しか出来ない越川。集団になればおのずと派閥が出来上がり闘争する両者。この壮絶なバトルの中、浮き彫りにされた真実は、警官の汚職、薬物中毒警官、そして多重人格障害だった越川一馬。
これらが入り乱れ物語はクライマックスに突入していくなか、ももちゃんのキャラクターだけが浮きまくってしまっていた。他のキャラクターは日本刀での格闘シーンや多重人格障害の越川一馬らの白熱した演技が見事だったのにだ。中でも越川一馬の多重人格が表に出たときの演技は何ともいえない壮絶な場面だった。惚れ惚れするほど・・。
たぶん、ももちゃんキャラがなかったら間違いなく星5つの作品。惜しい。
真夜中の取調室
演劇集団アーバンフォレスト
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2010/06/04 (金) ~ 2010/06/13 (日)公演終了
満足度★★★★
仕組まれた罠
志村刑事役の迫田圭司が実に素晴らしい演技をしていた。彼だけがずば抜けていい。物語は序盤の出だしといい、コメディ感、溢れちゃってワタクシ好み! 後半でミステリーな展開とともにシリアスになっていくが、終盤の収束に向かっていく演技力に迫力がない。ちょっと惜しい。サスペンスコメディー。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ちっさなジャズバーで起きた殺人現場の事情聴取の為に、志村刑事は現場に居合わせた5人の証言を取るも、全員が全く違った証言をする。彼ら5人の証言の情景を考慮しながら志村刑事が犯人役となって再現する場面がとにかく可笑しい。コメディなのだ。笑
そんな5場面をそれぞれのパターンで馬鹿馬鹿しくも巧妙に再現する志村。しかし、そんな5人の証言に疑問を抱いた志村はバーテンの稲葉が置き忘れた鍵を届けにジャズバーに行ってみると、他人同士のはずの証言者の3人が集っていたのだった。そこで事件の真相が暴かれる。
つまり、ジャズバーの客と証言していた4人とバーテンの稲葉はかつての「劇団ホワイトアップル」の座員だったのだ。そして殺された加藤は、その劇団の座長だった。殺人犯の高木(やはり座員だった)は加藤から借金をしており、その返済を迫られたので、思い余って殺してしまったという。
証言者ら5人は死に際の加藤からの言葉、「高木を助けてやれ・・。」という最後の意を汲んで高木をかばっていた。という筋だった。これを受けて刑事は高木のアパートへ向かい、加藤の血痕の付いたシャツを確認、逮捕し事件は解明されたのだった。
物語は「これにて一件落着!」なんつって、晴天の真っ青な空をバックに桜吹雪なんか飛び交って、ついでに、桜の刺青をしたちょんまげ姿のバカ殿様が、抜いたこともない刀を杖代わりにして得意そうに満面の笑顔をして立ってる姿を想像したが、事件はちっとも解決していなかった。
要は、これまでの刑事を巻き込んだ筋は全て死んだ加藤が書いた台本どおりに座員が演技をしていたのだ。加藤は加藤の妻が自殺した原因が高木の暴行によるものと知り、高木にその制裁を加える為に自分の命を犠牲にしてまでも演じたシナリオだった。加藤は自分で腹を刺し、その血痕を高木が泥酔して寝ている隙に付けて来たという。全ては高木を犯人にする為に仕組んだ罠だった。という筋。
結局薬局、事件の真相は闇の中のままだ。後半の殆どは笑いはない。これを本で読むなら、きっと東野圭吾バリバリのサスペンスなのだろう・・、だけれど、舞台で見せるには、すこ~しばかり迫力に欠けた。たぶん、演技力と音響の問題かも知れない。前半コメディ、後半サスペンス。
テンペスト
劇団俳小
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/06/05 (土) ~ 2010/06/13 (日)公演終了
満足度★★★
[テンペスト」とは「嵐」の意
和解をテーマにしたロマン劇。入場するなり、既にキャンセル待ち続出。小劇場でこんなに観客が押し寄せた情景はかつて観たことがない。会場にはパイプ椅子が増設され、桟敷席も作り、更に立ち見まで出る始末。スタッフのアナウンスでは「外に並んでるお客様がまだ20名ほどおります。もしお客様の中で他の日にチェンジしても良い、という方がいらっしゃいましたら、他の方と交換して頂けますか?」なんてお願いする放送あり。そんなこんなでものすっごく良い芝居かも?なんて期待していたが軽く裏切られました。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ナポリ王アロンゾー、ミラノ大公アントーニオらを乗せた船が大嵐に遭い難破、一行は絶海の孤島に漂着する。その島には12年前に弟アントーニオによって大公の地位を追われ追放されたプロスペローと娘ミランダが魔法と学問を研究して暮らしていた。船を襲った嵐は、12年前の復讐をするために、プロスペローが手下の妖精アリエルに命じて用いた魔法の力によるものだった。
ここで難破の場面や嵐の音として壮大な音楽の導入があってもよさそうな情景なのに静か。せめてベートーヴェンのピアノソナタ第17番くらいは流してよ。と言いたかった。
王の一行と離れ離れになったナポリ王子ファーディナンドは、プロスペローの思惑どおりミランダに出会い、2人は一目で恋に落ちる。プロスペローに課された試練を勝ち抜いたファーディナンドはミランダとの結婚を許される。
ここでのファーディナンドの演技がいまいち。相変わらず音楽の導入はなく静か。更に「テンペスト」の舞台をされるならもうちょっと、それなりのセットが必要だと感じた。セットはグレーの壁のみでまるで収容所のような部屋を連想してしまう。
一方、更なる出世を目論むアントーニオは王の弟を唆して王殺害を計り、また、島に住む怪獣キャリバンは漂着した賄い方と道化を味方につけプロスペローを殺そうとする。しかし、いずれの計画もアリエルの力によって未遂に終わる。
序盤から登場の多いアリエルは風の妖精なのだから、衣装はもっと妖精らしいものが良かったとも思う。しかしながら今回のキャストの中では村松が一番の良い表情をしながら、演技は秀逸だった。アリエル(村松)のコミカルな演技力でもってこの芝居は生きたように思う。
魔法によって錯乱状態となるアロンゾー一行。だが、プロスペローは更なる復讐を思いとどまり、過去の罪を悔い改めさせ、赦すことを決意する。和解する一同。若い二人の婚礼を執り行った後に、ナポリに帰ることになる。
最後に、魔法の力を捨て、アリエルを自由の身にしたプロスペローは観客に語りかける。自分を島にとどめるのもナポリに帰すのも観客の気持ち次第。どうか拍手によっていましめを解き、自由にしてくれ、と。
しかし、ワタクシは拍手をしなかった。大抵、納得できない芝居には拍手をしたことがない。逆に素晴らしい舞台を見せてくれたときは感激のあまり涙ぐんで拍手を惜しまないし、満面の笑顔で手から血が出るほど拍手しちゃう。
つまり、この劇に不満だった理由は「テンペスト」の音楽導入がなかったこと。チャイコフスキーの「幻想序曲」の中の一曲『テンペスト』は必須条件だとも思うし、シェイクスピアを公演するなら、それなりのセットがないと観客はそっちの世界に入りきれないということ。そして肝心の衣装、照明、風のざわめき、それらが一体となってシュエキスピアは完成するのだとも思う。
舞台は微妙な静けさと独特の間があり、それが全体的に舞台を堕落させていた。
女の雨情
イマカラメガネ
OFF OFFシアター(東京都)
2010/06/03 (木) ~ 2010/06/06 (日)公演終了
満足度★★★★
期待していなかったが
楽しい舞台だった。3人の女のそれぞれだったが、途中から4人の女のそれぞれだった。笑)
女の友情物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
三人の女たち、範子、リコ、希はユニットを組んでいた。翻訳をしてリーディングし、出版社に持ち込む仕事だ。3人の中でずば抜けて、才能があったのはリコだった。彼女が翻訳した日本語の感性は美しく情緒があった。しかし、希はリコの彼を以前から好きだったこともあり、横取りして結婚してしまう。
こうして仲違いしてしまった三人の女たちから、希が一抜けして、新たに後輩の松山絵美が加わる。希に彼を奪われたリコはショックからか、翻訳の仕事を一切しなくなってしまう。出版社の担当・室田はリコの才能を買っていただけに残念がるが、そういう状況を熟知し、また自分には才能がないと知っていた範子は自分の身体を室田に差し出して仕事を繋ぎとめる。
こういった範子のやり方を哀れだとか卑怯だとかは思わない。生きていくうえで仕方のないことと割り切ったのかも知れない。そんな範子の気持ちを察していながら自分の仕事に都合よく範子を利用する室田。彼は家庭のある男だ。しかし、男女の関係は他人には解らない部分があるように室田は範子が室田に対する愛を重すぎると感じてしまう。そして別れたいと思うようになる。
男の気持ちが自分から離れれば離れるほど、焦る女・範子は室田からの仕事をこなすために絵美に翻訳の仕事を手伝って貰う。それでも室田が居なくなったら仕事が全く回ってこないのじゃないかと不安に駆られ、知人友人に「ユニットを組んで仕事を一緒やろう。」なんて触れ回ってしまう。
そんな折、仲たがいの「きっかけ」を作ったもう一人の女・希が現れる。希はずっとリコを気にしていたのだった。だから毎日、リコに会いに通い、リコの好きな不二屋のシュークリームを買ってくる。希は希なりにリコに詫びたいのだった。
4人4艘、それぞれの乗った船はまるで大海原を自分の力だけでどうにか漕ごうとはしている。ヨタヨタ、ヨタヨタ・・・と沈没しそうになりながらもだ。生きるのが下手というより、きっと誰もがこんなように生きてる気がする。そのうちに4人はやんやかんや・・と騒ぎながらも仲良く、翻訳コンニャクみたいに皆で訳している場面で幕は降りるのだ。
要するに色々あったけれど、仲良しに戻った設定だった。だから、彼女らを嫌いにはなれない。
北村メーカー
劇団虎のこ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/06/02 (水) ~ 2010/06/13 (日)公演終了
満足度★★
Queen北村を観た
正直申し上げて好みではなかった芝居。ワタクシの観た回は主役の西慶子が噛みまくり、かちゅぜつ悪まくりだった。本はコメディとはかなり遠い内容。ちょっとザンネンな芝居だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
地球のテロや戦争を避けるために地球ではない惑星に住居型宇宙船「たまご」に乗ってやってきたロボット5体がシェルターの中で1000年の命を持て余しながらも、密室だからこそ、暇な時間をゲームやら研究やらに打ち込み、ギャーギャーと騒ぎながらの小芝居。
以外にくだらない。序盤は騒がしいだけで本の練りも甘く、ぐちゃぐちゃだな・・。と感じた。後半になって事の内容が呑み込めたものの、コメディとは名ばかりであまり面白くもない。キャストらの演技がどうこうではなくて、本の内容がどうでもいいような些細な事に拘り過ぎていたため、全体的なロマンが欠けていた。
また脚本家や役者らは自分たちの作ったお芝居だから、愛してやまないのかも知れないが、一度観客として観た方が全体的な欠点も解るのではないか?とも思う。「劇団虎のこ 」は過去に一度、観劇したことがあるが、あの舞台の方が良かった。つまりはチーム別として、King北村◇Queen北村◇Joker北村の3パターンを公演するには力不足だとも感じた。
シビアな意見だがこういった意見も今後の為に役立ててほしいと思う。ちなみにワタクシはタダの一般観劇者なので何処の劇団に対しても媚びもなければ思惑もない。外からの外圧もなければ抑制もない。だから、毎回、素直な意見を自由に述べてるつもりだ。誤解なきよう・・。
わたしたちの白梅事変
黒ヰ乙姫団
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2010/06/04 (金) ~ 2010/06/06 (日)公演終了
満足度★★★
いつもとは、趣向を変えまして...
のとおり、いつもとは違う。けれど、いつもの方が好きだった。
挿入話「越後のふしぎ 白梅観音のおはなし」は個人的に好みだった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
三名の被験者たちは無作為抽出によって選ばれ、「忘却剤」なる物騒なものを服用させられ記憶を無くしてしまう。記憶を無くした3人は時には仲良く時には叱咤罵声しながらも、オブザーバーの指示通りに実験なるものをこなしていくが、最終的に記憶を取り戻してしまう。
その記憶とは加害者の家族と被害者の家族だったことだ。こんな絶望的な思いをするなら、いっそ、記憶喪失のままのほうが幸せだ。という結論に至る。
プリティこと江実なつこが吉祥が語る挿入話に聞き入ってる表情がなんとも可笑しい。「ぷッ!!」なんつって本気で笑ってるさまを見て、なんだかツボにハマって、笑いがこみ上げてきて困った。ワタクシの笑いの殆どは江実の表情にあった。
公演そのものはちょっと地味。キャストが殆ど椅子に座ってる状態なのだ。こういった場合、余程、物語に練りこみがないと、観客の気持ちが離れてしまうのだと思う。
次回はいつもの舞台を観たいなぁ。。
恋女房達
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/06/03 (木) ~ 2010/06/08 (火)公演終了
満足度★★★★★
面白い!
オープニングが可愛らしい。ポップな音楽とともに登場するキャストらのコミカルなダンスもハイテンションでいいな・・。なんてリズムで、こっちの表情もニコニコしちゃう。いいじゃな~~~い!!♪
結婚して後悔するのと、結婚しないで後悔するのと、どちらがいいのだろうか・・。笑)
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
「恋女房」
一人の夫に複数の女房。ちょっとしたハーレムだ。笑) しかも女房の年齢は若いのから熟女までさまざま。そこにサニー生命の営業マン・田中が営業にくるが、キョトン!とした彼の表情がいい。更に、これらの女房たちが、かつての担当だった芹沢とも関係があったかのように臭わせる状況に愕然とする田中の仕草が可笑しかった。
「燃えないゴミ」
ゴミの日に集った近所の主婦らの会話劇。リアルな中にも近隣住民のとのつきあいの難しさをも露呈した作品。「燃えないゴミ、燃えない会話、燃えないアナタ、遠い森の中に捨てた。」などと、夫との冷めた関係を絶妙なもじりかたで表現する。
「スープの味」
どうやら妻は亡くなったらしい。その妻が霊となって夫が作ったスープのあれこれを夫の愚痴を聞きながら過ごすつかの間の幸せな光景。序盤、「あなた顔色が悪いわよ。最近、痩せたし。」なんて妻のセリフから夫を殺そうとしてスープに毒でも盛ってるのではないか?と懸念したが、真相は亡くなった妻が夫を恋しさに夜な夜な現われる悠久のレンアイ物語。妻の吐くセリフ、「貴方の事が凄く好きになって、嫌いになって、大嫌いになって、死んだら好きになって、そして大好きになって、忘れられなくなった。」が切なくグッとくる。
「押しかけ女房」
キャリアウーマン・木下がある日、帰宅すると女房がいた。至れり尽せりの女房は木下にとって、心地いい存在だった。しかし、女房は不倫相手の藤川の本当の女房だったことがわかり、ついでに藤川が複数の女性とも不倫していたことがバレル。孤独なキャリアウーマンが持つ独特の表情を木下が絶妙に演じる。とてもいい。
「赤い糸」
付き合っていた男女の女子のほうに突如、小指に赤い糸がつながっている。彼女は今カレと別れる決意をし、糸を手繰り寄せると、そこにはイケメンが居た。彼女はそこに希望を見るが、あっさりとイケメンに糸を切られてしまう。笑
結局薬局、高みは無理だと諦め、今カレと鞘に納まる。
「末永い夜」
呆けた姑を軸に家族らが織り成す情景。ここでの妻と夫の関係が坂道を転がる様に最悪になっていく。しかし、弟と妻の関係に何かありそうな空気もある。ちょっと辛口なスパイスを加えた物語。
相変わらず、キャストらにはかせるセリフ回しが素敵だ。小夏にはこういった独特のセリフが魅力だが、愛も変わらず、キャストらがいい。それぞれのパンチの効いた物語のスパイスはすべてが好みだった。
Zyklon B (再演)
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2010/06/02 (水) ~ 2010/06/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
それぞれの正義
過去に観た「劇団 海賊ハイジャック」の公演の中で一番の熱演だったと思う。ちょっと噛んだキャストやかちゅぜつの悪い箇所はあったものの、まあ、生身の人間だから、仕方がないかな・・、とは思う。舞台のセットがキャストらを大きく見せていた。音楽、照明、演出・・・どれをとっても秀逸だった。それにも増して、いきなり衝撃的なシーンからの幕開けは芸術的だった。
余談だが制作さんの前説はモヒカンに似合わずガチガチに緊張しており、かわいらしかった。笑
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
アンリ・バレリ大尉はユダヤ人たちを救った功績から「諸国民の中の正義の人」として賞賛を得た。しかし、その影には人肉を喰らう殺人鬼・ウォレスが兄・アンリの全ての罪をかぶった由の上に成り立った事柄だった。それはアンリがユダヤ人亡命の手助けをした時に彼らの財産を自分のものにしたことだった。
これを知らない町民は、 彼を英雄と慕うなか、一方では影の英雄が存在していた。おりしも、突如として町に異国の女が現れる。 彼女の名をヴィヴィアンという。彼女は特異な体質を持ち、女に近づくと 死ぬという。物語の後半で解明されるがヴィヴィアンはチクロンB(毒ガス)の後遺症によって、このような体質になってしまっていた。だから彼女はずっと孤独だった。こんな彼女を2mの長さの鎖で繋ぐウォレス。
奇異な事件と殺人鬼の恋を絡ませながらも、ウォレスが結果的には異国の女・ヴィヴィアンを拉致し山小屋に監禁しながらも町民とヴィヴィアンを守る。
チクロンB(毒ガス)の謎や軍の不正、Drモンローの考えや行動、犠牲になった人からのワクチン採取など物語は怒涛な展開で、息もつかぬまにまに時間を忘れさせ、特異な空間へと誘う。不条理を噛み締めながらも折れるティファニー大尉の表情が忘れられない。そうして、ウォレスの最後の死の場面、絵画のような情景はキリストの死となぜか重なり美しく気高い絵だった。
見事な演出と頑張ったキャストら。拍手を送りたい。素直にそう思う。
ア ペンション・プリーズ
ウワサノ…
こった創作空間(東京都)
2010/06/03 (木) ~ 2010/06/06 (日)公演終了
満足度★★★
女のきもち男のきもち
シチュエーションコメディってほどじゃあないにせよ、中々緩く、なんとなくクスッって笑ってしまうような芝居。夫婦にありがちな心のすれ違いの法則をありきたりにも表現するところは、今更なのだけれど、まあ、それも緩さの強み。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
「高校教師」のような導入歌が流れ、まんま、「先生!」「みちるちゃん!」なんつって、ドロドロ感漂う男女がお互いの小指に赤い糸を結んでペンションに泊まりに来る。笑
この女こそが後に登場する石渡の妻なのだけれど、どうやら、夫が仕事や接待にかまけて自分を見てくれない。自分と向き合ってくれないから満たされない。不満だ・・。と、塾の生徒と不倫旅行に来てしまったのだった。しかし不倫といってもこの場合プラトニックらしく、まだエッチはしてない。その妻を追ってペンションにやってきた夫。
ペンションの従業員もそれぞれ訳ありで、これらの人間関係を交差させながらも、大きな勘違いと思惑、思い込みと、思いやりから大騒動が巻き起こってしまう。
後半になって、みちるの死と最後のどんでん返しにはちょっとドン引きしてしまったが、もし、コメディという部分を露呈させるなら、あくまでもお笑いで勝負してもらいたかったところ。どれも中途半端な展開なのだ。
しかし、なんとなく憎めない登場人物って、こういうキャストらの事だとも思う。笑
「嘘でもいいから恥じらって…紅」公演無事終了しました。たくさんのお客様のご来場ありがとうございました。次回は、王子小劇場で、11月の4週目にやります!!
サルとピストル
小劇場 楽園(東京都)
2010/06/02 (水) ~ 2010/06/06 (日)公演終了
満足度★★★★
恥というより、変態モードな芝居
エロ感蔓延るAVの格闘技みたいな最中、物語はまんまAVの世界。笑
さて、観客の座り位置だが、入って右側前列がやはりお得です。得は得でも徳ではなく、説得の説くでもなく、どちらかというと蕩けるような溶く。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
現場はAVを撮影する監督とADが意気込んでAV女優を撮るシーンから。勿論、絡む男優は必要不可欠で、男優・小池は以前から、伝説のAV女優の涼子のファンだった。そんな想いが膨らんだ小池は既に下半身も膨らんで、絡みのシーンはバッチリ!そんな体の関係からか、小池は妻帯者だというのに、涼子に交際を申し込んじゃった!
涼子は涼子で、「ま、いっか・・、暇だし・・。」なんて付き合ったものの、小池は涼子にDV三昧で殴る蹴るのカウンターパンチを繰り出すも、涼子はそんなハイテンション過ぎるDVをセックスよりも気持ちい~~い!なんつって嬉しがり喘ぐ・・喘ぐ。「青紫に変色した皮膚も吹き出る血も愛しい。」なんて言いながら、つまりは性癖が異常だった涼子はそんな小池がお気に入りだった訳だ。
そんな折、毎回DVを受けながら悲鳴をあげる涼子に同情した隣の住人・秋人は小池を殺してしまう。男女の仲とは不思議なもので、いつしか涼子を深く愛してしまった秋人だったが涼子の過去(AV女優だった)を知るとセックスが出来ない。数多くの男とセックスしまくった涼子と自分とのバランスに拘ってしまう。つまり、自分自身もAV男優になって初めてバランスが良いと考えるのだった。
一方で秋人と涼子の住んでいる家に転がり込んだプーの元カノのひじこ。涼子が不在のときに、秋人はひじこに「おっぱい、揉む?」「いや、いい。」「揉んどけ、揉んどけーー、男の子は好きでしょ?おっぱい。」なんつって、誰とでも寝るひじこと、セックスしてしまう。ひじこは秋人にとって涼子の代用品だった。
これらの物語をAVにもストーリーが必要だと拘る43歳の監督。
「AVなんてのはヤリまくってるところだけ撮ってりゃいいんだよ。AVなんてのは映画じゃないんだぞ。解ってんのかっ!エロだけ撮ってりゃいいんだよっ。」なんつって、のたまうAVメーカーの社員。
舞台をAV女優の過去と現在を錯綜させながら、AV女優側と撮影隊の両方を主軸とした物語だった。歪な純愛と特異な性癖と屈折した人たちの変態物語。笑
バカバカしさと屈折さが絶妙だったけれど、途中、回転の遅い箇所が気になった。初心者には向かないけれど、面白い舞台だと思う。
木をめぐる抽象
モナカ興業
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/06/02 (水) ~ 2010/06/08 (火)公演終了
満足度★★★★
タイトルがタイトルだけに・・
[木をめぐる抽象」なんてタイトルはあまりにも抽象すぎてなんすか?ソレ。なんて疑問符だけど、説明を読んでいよいよ、更に抽象的で、「なんだかなー、芝居も抽象的なんだろか?」なんて考えたのもつかのま、マジでおもろい。これといって大きなうねりも大きな展開もないのだけれど、淡々と社会を営む人間関係がそこにはあって、そこはかとなくオカシイのだった。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
明日は毎年行っている小林の会社の新卒採用説明会。そのセッティングから受付までの会場手配を請け負っているのが、多田、犬上、内村の会社。ミスすることなく学生の誘導から受付、クライアントの接待までをこなすことが重要。その前日から当日、会の終了までの28時間を会社の人間関係を浮き彫りにしながら、それぞれ個人の家庭環境までも取り込みながら舞台化し描写したもの。
ここで登場する女性陣のキャラクターの立ち上がりがとにかく面白い。キャリアウーマンの小林(飛谷映里)はとにかくカッコイイのひとこと!立ち振る舞い、歩き方、男のような座り方。どれをとってもホレボレするほど。
対照的に内村(横綱晃子)の独特な雰囲気と毒舌は一見の価値があった。思わずほくそえむ。はたまた、ミッキーというお釜風味の妖しいキャラクターの登場は結構バカバカしくて吐くセリフもどことなくコメディだ。笑
物語はリアルな会社の情景を写しながらも、家に帰ると似たようなストレスが家族の中でもあって、人が息づく集合体には多かれ少なかれストレスはつきものなんだよねー。家庭だからって論外ではない。笑
酒井和哉 が何人もの役をこなしていたけれど、服装がまったく同じ。役によってジャケットを羽織るとか、帽子で区別させるとかしないと、解り辛いかも。
全体的に笑う箇所が多くて楽しい舞台だった。
CONVENTION HAZARD 奇行遊戯
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2010/05/26 (水) ~ 2010/06/02 (水)公演終了
満足度★★★★★
衝撃的な完成度
物凄いものを観た。2時間45分休憩なしの演劇だったが、長さを感じさせないほどに引き込まれた。表現力の高さといい、照明、音楽、キャストらの演技にかける熱意が伝わってきて心地よい衝撃だった。久しぶりの衝撃!たぶん、ワタクシの観劇数の中で今年の一位を記録すると思う。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
前半、大分のとある漁港の町でのお話。まつたかを主軸にまつたかが小学校5年に学校でいじめられた事をきっかけに物語を貢いでいく。苛めはまつたかの爺ちゃんの南京大虐殺の話を起因とする。途中、ナレーションが入り、演技での表現に説明も加わり、文献、民話、経済、歴史、諸大陸の習慣をも含め、脚本家の博学さに驚かされる。勿論、ニュースや新聞での報道や本を読めば解る事柄なのだけれど、これらを取り込んだ芝居を制作するという次元がやはり普通ではない。だから2時間45分は必要不可欠なのだと、つくづく思う。
当時のまつたかがいじめを苦に逃げるようにしてヨーロッパに留学し転々としついにオーストラリアから帰国してからを舞台化する。現在のまつたかが営むバーでの客はかつての幼馴染や同級生らや従姉妹らだ。彼らの小学生5年当時の情景を大人になった彼らの会話で描写する。
一方でありさという女にまつたかの出生の秘密を暴露され、まつたかは妾の子で実父は名前を明かせないほどの国家の要人だったことが解り、実父の莫大な遺産が転がり込むことになる。これを資金にしてまつたかは将来の動向を予想してマグロ養殖に投資し、これが当たり、寿司チェーンも展開させる。そしてかねてからの夢だった月旅行にも行くことになる。この月旅行での命がけのエピソードでまつたかはありさへの愛を強いほど確認し結婚することになる。
後半、セットは一変し、数十年後の情景。まつたからが立ち上げた会社が軌道に乗り、かつての同級生らがそれぞれ重要なポストに就く。社内ではまつたかの従姉妹のリコの不倫をきっかけに離婚の話やら政治の話、中国との国家の利益の問題などを露呈し、一企業としての商談の風景をも描写する。ここで残念だったのはまつたか他、男性キャストがメイクやヅラで加齢させてるのに、女性キャストは加齢が感じられない。役者には綺麗に魅せるうんぬんより、演技力を期待するほうなので、もっと工夫して欲しかった。
経済と地位と過去の人間関係に揺さぶられながらも社長となったまつたかが一企業の利益よりも国家の利益を優先させる冷静な判断や説得の仕方は観ているこちらも圧倒され唸るばかりだった。生きた馬の目をも抜かれるような状況でまつたかの唯一の癒しはありすへの愛情だったが、このありすが異母兄弟だったと知り絶望に打ちひしがれるも、それでもありすのまつたかに対するひたむきな愛は変わらず、その愛は清く美しく潔かった。
まつたかの手に仕掛けられた時限爆弾の装置をありさがまつたかの手首ごと切り落とすシーンは迫真の演技で、息をつめて見守ってしまった為、なんだか息苦しくなってしまったが、血の色があまりにも赤すぎる。血糊はもっとどす黒い赤だし(下北沢に血糊が売ってますのでそれを使ってください)もっと流れてもいいと思う。
それにしても・・・重すぎるほどの物語だ。しかし観客を飽きさせることもなく、世界をまたにかけたようなテーマだった。もうこれは・・・舞台と言うより、生の映画を観ているような感覚だった。それほど箱の中は濃密な世界観に溢れていた。エンゲキの神様を観た気分。
憂鬱な午後
劇団なのぐらむ
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2010/05/26 (水) ~ 2010/05/30 (日)公演終了
満足度★★★
長く感じた
近く座席に座ったバカップルが開演前も開演してからも「氷結ZERO]と「いなり寿司」なんか喰ってる。ワタクシだって・・お腹減っちゃうじゃん!!!・・でもって座席にオツムの軽そうなオンナのバッグを置いちゃって堂々としてるww。常識のない観客もたまには居てるので、スタッフはちゃ~~んと注意したほうがいいと思う。客入れはダラダラと下手でした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
「憂鬱な午後」という本の原本を見るオフ会に集まった14人。本の表紙と同じオカルト的な内装の館で一人ずつ神隠しにあってしまう。残された数人は自分達もかき消されてしまうのではないか・・、と疑心暗鬼になってびびりまくる。そのうち本の中身が白紙だったにも拘らず、いつの間にか、文字が浮かび上がり物語が始まってしまう。
その内容は、「憂鬱は人間のみの感情だから、憂鬱を失くす為には人間を辞めて、森の中で息づく動物となり、最後のたった一人が不死神として残る」といった筋。
何らかの救いを求めて集まった彼らは森の動物になってしまう恐怖と戦いながらも、ケムンパスネタは笑えたし、面白かった。しかし、これ以外ももっと笑いのネタは欲しいところ。物語が全体的に単調で、しかも、それほどホラーでもコメディというほどでもないものだから、90分が長く感じる。
キャストらは怯えた風に演技してはいるのだが、一方でこちら側の観客は冷め切ってしまっていた。音楽の導入も全くなく、オドロオドロしい演出もそれほどない。もっと、大きな音や雷のシーンや、照明で工夫したらオカルト感が演出できたように思う。
結局薬局、神になりたかったという最後に残った一人は当たりくじを引いたかのように思えたが、「憂鬱な午後」を伝える本になってしまったというオチ。
欲張りすぎて一番、悪いクジをひいたという、黄門さまのような最後!笑
闘え!マイティくん!!! 【ご来場ありがとうございました】
青春事情
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/05/26 (水) ~ 2010/05/30 (日)公演終了
満足度★★★
長すぎ!
この程度の物語で2時間は長すぎ。序盤は面白く観ていたが、物語に大きなうねりがないから、流石に飽きる。もうちょっと笑いが欲しかったところ。
ちなみに「戦えマイティ君!」のあらすじは、世界最強の武術・爆裂拳。その正当伝承者、雪村舞人。通称マイティ君は両親、兄をブラックゴッド率いる悪の組織ブラックマテリアルの殺され、唯一の肉親であるおじ爺によって育てられる。しかし、そのお爺さえもブラックマテリアルによって殺されてしまう。マイティ君は仇を討つため厳しい修行の旅に出る。その途中、様々な出会いや別れを経て友情と強さを勝ち得ていくマイティ君。そして、ついにブラックマテリアルが主催するメガバックストーナメントへ出場する。果たして、マイティくんを待ち受ける運命とは・・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
このアニメ作家・泉秀人がどんな風に「戦え!マイティ君!!!」を制作していき、これに関わるアシスタント、担当編集者、そして新人アシスタントらの情景を描いた作品だったが、わりにヌルイ演劇だった。
アニメ作家を主軸に進めていく物語は想像の判定内で、バカバカしくもあり滑稽なのだが、その描写の仕方が古い。作家がマイティ君になり、アシスタントらに敵役をさせて戦うシーンはもうちょっと弾けても良かったような気がする。どこまでもベタな芝居だったが、折角のアニメネタなのだから、もっとセリフで笑わせるシーンも欲しかったところ。
「青春事情」って男ばかりの劇団らしいけれど、きっとサークルみたいにバカ騒ぎしながら仲良く楽しく和気藹々とやってるんだろうな、とは思う。だけれど当人らが「楽しい」だけの作品作りでは、やっぱサークルから抜け出せない。ワタクシはこの劇団は初見だったけれど、インパクトのない物語だと感じた。
物語の合間に映像でマイティ君のイラストを見せるアイデアは良かったんだけどなぁ・・。
天国
株式会社AIM
しもきた空間リバティ(東京都)
2010/05/28 (金) ~ 2010/05/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
あっぱれ!!
現代を生きる人間の悲恋のお話。「天国」というタイトルから、ちょと違うイメージをしていたのだが見事に裏切られる。サスペンス、コメディ、醜態、渇望、強欲、バイオレンス、絶望・・・それらが入り混じった満足感満点の舞台だった。
脚本といいキャストらといい魅せた!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
自動車工場に期間工員として働く一時的な滞在者らの、しばしの憩いの場がマヤママが開く小さな居酒屋だった。しかし、このマヤの過去が段々と暴かれていくうちに、期間工の二人サトウとトモノが過去のマヤと関わっていたことも露呈される。夫からDVを受けていたマヤは夫殺しをサトウに依頼し、これを受けてサトウはマヤの夫を殺すも、直後、マヤは夫の保険金を抱えて居なくなってしまう。その後、マヤは整形をしてまんまと居酒屋のママに納まっていた、という筋。
そんな居酒屋に集まる期間工らはそれぞれ、人に言えない過去を持っていた。ここでの登場人物のキャラクターの立ち上がりが実に絶妙でインパクトがあり、観ていて楽しい。そこそこ笑いも誘いながら、見たからにヤクザです!ってな感じのでっかいお兄さんが登場する場面から、舞台の空気圧は一気に不穏な方向へと上昇しながらも「なんなんだ、こいつの威圧感は・・。」なんて心で呟きながら、こいつの名前が「アキヤマ」ってんだから、ふ、ふ、普通じゃん!笑)
せめて権藤とか、神宮とか、辰藤とか、竜神とか、ゴンザレスとか・・・そういった名前の方が迫力あんじゃん?なんつってアルマジロが獲物を威嚇した時のような鋭い目を持ったヤクザをしみじみ見ちゃったわさ。
でもってそのヤクザ風のアルマジロはマヤの殺された元夫の弟だってんだから、物語は壮絶なクライマックスとなり、兄の敵討ちの標的はマヤ本人なのだけれど、マヤ自身はそんな敵討ちなんか、への河童状態で、図太くアザケリ笑いながらも、他人の誰をも愛をも信用せず、マヤがひたむきに信じてやまないのは金だけなのであった。
男の純情を踏みにじって人を殺してまでも、留まるところを知らない悪女ッぷりは、あっぱれもので、むしろ清々しいのだから、オンナって素敵だわっ!!!笑
寝台特急”君のいるところ”号
中野成樹+フランケンズ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/05/20 (木) ~ 2010/05/30 (日)公演終了
満足度★★★
なんですかねー?
学芸会を観てるような感覚そのもの。せめてボーイはパリッとした制服が必要だったんではないでしょか?
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
同じ寝台特急に乗り合わせた人々がニューヨークからシカゴへと向かう鉄道での情景や人間関係を描写した劇。
ワタクシは原作を読んでいない。だから偉そうにごちゃごちゃと言える立場ではないが、あくまでも面白かったかどうかに視点を注いでの感想だ。
舞台はパイプいすのみを使用しての演出。壁に白い布ボードを貼り付けて列車の窓や線路などを想像させるようにしているが、実にちゃっちい。たまにゴトンゴトン・・・、という音が流れるが列車の中の観客は公園の砂場にでも遊びに来てるような服装で、ヨーロッパの寝台特急での客層とエラク違う。アメリカの寝台特急ってスリランカの寝台列車のさまなのだろうか?そんなだからイメージが合わず物語に溶け込めない。
途中で、役者にワザと、とちらせ相手キャストが「やってらんない」とふてくされて素に戻らせ、劇を中断させる個所は元々の原本通りなのだろうか?この場面は必要ないような気がするのだ。折角の物語がこの展開で本当に中断されてしまって更に感情が移入出来なかった。そこそこの演技のうすっぺらさはワザとなのだろうか?
列車の別室では、旅行している途中で妻が心臓発作で死んでしまうが、彼女は天国へ登る階段の手前で、背中にちっさな白い翼を付けた天使と何やら秘密めいた内緒話をしてる場面がオモチロ可笑しかった。あの世とこの世の狭間での密談!この情景はアニメちっくで可愛かった。
更に列車の旅の最後の場面で、運命の赤い糸で結ばれる男女が登場するあたりは「おお~、良かったね!」なんつって単純にオメデタクほのぼのとした気分にさせられるのだが、列車の中は通常の世界を小さくしたようなもので、世界ー国ー都市ー地域ーコロニーー列車・・・なんて枠をちっさくしていくと、そこには天に召させるものも、結婚されるものも、子供を出産するものも、ありとあらゆるものがあっていいはずで、列車の中のドラマはどうってことない普通の出来事でした。
PARTYせよ
東京おいっす!
「劇」小劇場(東京都)
2010/05/25 (火) ~ 2010/06/01 (火)公演終了
満足度★★★★
恋のいろは
なんてタイトルを書くと随分と高貴なイメージがあるがここでの「いろは」は世俗的だ。だからこそ、コメディやら焦燥感を練り込めるのかも知れない。隣の芝生も同じ色!笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語の序盤、三宅のタドタドシイ英語から始まる。そしてぶちゅーーー!%#?$なんつって、ぶたさんのような口付け!綺麗とか美しいとか絵にもかけないとかとは程遠い世にもオゾマシイキッス!笑
ワタクシ、一瞬、なんかの魔よけの儀式かと思った!!しかしキッスのお相手はモンゴル風の三宅の女房。このきちゃないキッス男・三宅と隣の家のダンナ・小瀬が不倫していることから織り成す物語。
どちらの不倫男も影の主である妻にばれないようにひた隠しに隠しながらオンナと不倫しているつもりだったが、小瀬の妻は夫の不貞を知っている。が、知らぬふりを装っている。それは当の妻も一度だけ伊吹という男と不倫したからだった。つまり夫婦揃ってのダブル不倫というやつだ。その妻が妊娠しどうやら、伊吹の子供らしいが、夫は自分の子だと思って妻を労わる。
一方で三宅の愛人が三宅家の葬式に現れ、驚いた三宅は隣の小瀬家に一時避難させる。別れたい男たちと別れたくないオンナたちが小競り合いをしながら、結局薬局、不倫カップルは別れることで収まるが、小瀬の妻は家を出て行ってしまう。当然の結果なのだが、何も知らない夫は目の前の色とりどりの花火に一喜一憂しながら、おおはしゃぎしてる場面で終わる。
トコトコとボストンバックを転がして去っていく妻と無神経な夫の感情の違いがあまりにも哀れで悲しい最後だったが、心が離れてしまった夫婦が一緒に居る事自体、意味がないように思えて、ってか、不倫した時点で一緒に居る事の意味があるのだろうか?そんな風に考えながらも、不倫を「ケースバイケース」で片付ける男たちのグダグダ感や、オタオタ感が絶妙でこの世はオンナで持ってるんじゃないか?なんて思ったりもした。
だって世界ってそうじゃな~~い!!笑