みさの観てきた!クチコミ一覧

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鬼灯町鬼灯通り三丁目

鬼灯町鬼灯通り三丁目

トム・プロジェクト

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/09/28 (火) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

それぞれの想い
セットは相変わらずのケレン味溢れる東ワールド。舞台の庭満面に咲き乱れる鬼灯の群生。ここは戦後間もない、昭和21年。多くの引き揚げ者であふれていた博多の街。鬼灯町鬼灯通り三丁目。そこには空襲を免れた一軒の家が建っていた。東の出身地である福岡を舞台に、自分の過去や社会に対して傷を持つ者たちが、その出来事に対面し、それでも生きていくという普遍的なテーマを描く。
富樫真の演技が光る物語。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

復員してきた松尾大吉が妻・弥生の元に帰ると、そこには二人の女・番場と小梅が居候していた。弥生たちは大吉が死んだものと思い込み、既に葬式も済ませていた。さらに弥生が本当に待っていたのは戦争のどさくさで結婚してしまった大吉ではなく、番場の息子・裕介だったことが判明する。

鬼灯に囲まれたその家で、大吉、弥生、番場、小梅はそれぞれの思いを抱えながら共同生活を始めるのだった…。

大吉が帰還したことで縁起が良いと近隣から物資を頂き、「奇跡だ」と崇められ町内会報にも載った大吉。これを利用して金儲けを思いついた番場、小梅に載せられるように「奇跡の男のお守り」の行商をすることになった4人は強かに稼ぐ一方で、祐介を待ちわびる弥生の発狂寸前なまでに病んだ神経と番場の悲壮なまでの胸のうちが物悲しい。

一方でそんな弥生に嫌われ蔑まれても、弥生を愛して止まない大吉の心も痛々しい。そうしてそんな大吉を受け入れるように関係してしまう元女郎の小梅。

そんな4人を取り囲むように橙色の鬼灯の謂れは鬼灯の実を堕胎に使っていたという言い伝えと、墓のないちっちゃい鬼が鬼灯を提灯にしてクリクリクリーーと自分の墓を見つける為に使うという言い伝えを絡ませながら、蛍が鬼灯に入って光らせる小さな提灯を思わせる演出は美しく幽玄の世界だ。

絶対に帰ってくると信じて祐介を待ちわびる弥生、本当は祐介の戦死を知る番場と小梅。一方でそれらの本当の真実を知ってしまった大吉ら、それぞれの心の葛藤に焦点をあてて描写したこの物語はみんなが不幸だけれど、幸せだ。それぞれが思いやり、特に大吉が吐くセリフ「弥生、祐介さんは、お前の祐介さんはぜったいに帰ってくる。ぜったいに帰ってくるんじゃー!」と言って奇跡の男・大吉が泣くシーンはまるで「泣いた赤鬼」のような情景だ。やっぱり泣けた。

終盤、弥生が井戸に落ちるシーンとその後の4人で暮らす展開はワタクシ達に希望を与える作品だったと思う。
悪魔の絵本

悪魔の絵本

Theatre Polyphonic

サンモールスタジオ(東京都)

2010/10/01 (金) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

一言で素晴らしい!それだけ
個人的にDULL-COLORED POPの谷賢一の本は好きだ。彼の描く主人公には必ずといっていいほどの精神の歪みが存在する。しかしその歪みは他者に攻撃する歪みではなく、いつも内向きだと感じる。自らを責めて屈折して歪む。だからストイックまでの歪み具合の描写は観ているこちら側の感受性をを大いに打ち鳴らすのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

セットが素敵だ。合わせて椅子の配置も中々いい。今回の音楽は生西谷国登のバイオリン。やはり生の音楽は美しい。

粗筋は説明に細かく載っているのでかいつまんで。
編集者川田希が「ファクトリー」で作家・瀬田賢二の遺稿を読みながらかつての瀬田と関わりのあった人たちから瀬田との様子を取材し瀬田賢二を描写していく物語。

川田希役の市井紗耶香が緊張していたのか、セリフが聞き取れない部分があって、それがひじょうに惜しい。スピーディにしゃべりまくる役なのだろうか?もっときちんと話しても充分に雰囲気を損なわないような気がするのだが・・。


瀬田賢二には尽くしてくれる恋人が居たが、井佐原茉莉との奇妙な出会いと、茉莉が壁に描いた絵を見た瞬間に恋に落ちてしまった瀬田は以前の恋人と別れる決心をする。茉莉との出会いがなければ作家としても人間としても狂わなかった人生なのだが、茉莉と過ごした生活は瀬田にとって生きてる実感と充実した日々だったのだ。

茉莉が冷蔵庫から首だけ出す情景はドキッとして、ウギャーーー!!と絶叫しそうだった。貞子の到来かと思ったほど。笑
それにしても、岡田あがさには圧倒される。エキゾチックで確かな存在感のある女優だと思う。素晴らしい!

茉莉の過去も描写しながら、DULL-COLORED POPでかつて公演した「小部屋の中のマリー」を登場させる脚本は、その公演を観ているワタクシにとってはあの時の情景も思い出され、それらとリンクさせながら観る事が出来るのだから、より深く感じるところはある。

瀬田は茉莉に出会ってから今までの作風と一変し茉莉の絵を取り込んだ絵本作家となるも、彼女の才能をもっと開花しようと焦ったうえに、茉莉に対しても描くということに強制的になってしまう。そして親友の織田(瀬田の出版を担当)を信頼し、茉莉の海外進出の手助け兼、同行を頼むも、いつしか茉莉と織田が男女の関係になってしまうのだった。

それを知った瀬田は茉莉との共同合作の絵本「小部屋の中のマリー」の最後の行、「そしてマリーは幸せに暮らしました。」を「その後、マリーは何処へ行ったのか誰にも解りませんでした。」に書き直して出版してしまう。それは茉莉との永遠の別れを意味するものだった。それというのも茉莉との合作の絵本には魔力のようなものがあり、絵本で描いた物語がそのまま本当の物語として現実に起こってしまう力があったのだ。そのまま「悪魔の絵本」だ。

やがて茉莉は行方不明になり、瀬田は、右で字を書くことが出来ない疾病症(鬱病)になり苦悩し屈折し、六万枚の未発表原稿を残して、失踪する。失踪する直前の瀬田の病んだ演技が素晴らしい。大絶賛!



好みの作風だった。序盤撒かれた伏線をきっちり回収し、謎共々すっきりさせ、終盤、「雲の上に隠した大切な宝物」として茉莉が描くべき絵の部分を白紙にしておく隙間が素敵だった。やがて茉莉は登場するのだが、茉莉に吐かせるセリフも素敵だ。
田村真の迫真の演技にも魅了されたが、勿論、他のキャストらの演技力にも震えた舞台だった。
ああ、舞台って素晴らしい!
異種をあわれむ歌

異種をあわれむ歌

ルナ・パンク・ヴァリエーションズ

笹塚ファクトリー(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★★

素晴らしい星にするために。
今回も終盤泣かされた。大切な人を守るためには自らの犠牲は省みない、という犠牲的精神と男気のあるジョダギリの姿に感動して落涙するのだ。アクションあり、コメディあり、感動ありのてんこ盛りだったが、今回はコメディの部分でスベリが多かったように思う。脚本がしっかりしてるのだから、コメディに囚われなくても良いと思うがいかがでしょう?

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

粗筋は説明に載っているので補足と感想のみを。とある田舎の鉱山街が舞台。「突如として自ら異星人だと名乗る胡散臭い二人組があらわれた」とあるが、一人はジャスミンというエイリアンでいずれ滅びることになる地球を調査するためにやってきたのだった。もう一人は歴史学者の塩堂教授だが、地球を支配する革命政府に論文で戦いを挑み暗殺された人物だ。塩堂を助けたジャスミンはヒューマロイドとして命を与え、ジョダギリと名乗る。

この鉱山街は悪徳鉱山経営者が牛耳っており、無法地帯と化していたが、ジョダギリとジャスミンがこれらと革命政府に戦いを挑みかつての素晴らしい星に変えていく、という物語だ。と、同時にジョダギリの元妻のコジョウ・ミサとの揺るぎない愛と親子愛、裏切り、信頼、レジスタンスの動向などを盛り込み、アクションでも魅せる。

物語が進むうちにこの世を支配する誰が悪で誰が善なのかも、絡まった糸が解けるようにすんなりと明確になり、やがて、コジョウは一人娘を助けるために命を張り、ジョダギリはコジョウを助ける為に自ら銃弾の中に飛び込んでゆく。そうして、彼が吐く最後のセリフに胸打たれてワタクシは、シクシクと泣いたのだ。ああ、愛ってなんて素敵なんでしょ。

やがて・・、幾年かの時が過ぎ、ジャスミンは地球を訪れる。人々は幸せそうに微笑み穏やかに暮らしている。先の丘には白く可愛いらしい小さなジャスミンの花が咲き乱れ、美しい光景だった。ジャスミンの花はジャスミンの名づけ親だ。彼は思う。「素晴らしい星だ。」と。

良く出来た脚本だと思う。しかし必要ない部分もあり、そこを削るともっとパンチが効いたとも思う。シリアスのみでも充分イケル物語だけに、パンチのないギャグがちょっと痛かったが、アクションでも演技力でも魅せられた舞台だった。

ジャスミンがちょっとおとなし過ぎかなー?バイカーの三井は相変わらずアクションでもキャラでも魅せた。本多もしかり。キズ役の牧野も相変わらずのインパクトありまくりで、おっさん役が良く似合う。笑
Root Beers-ルートビアーズ-

Root Beers-ルートビアーズ-

劇団東京ヴォードヴィルショー

ザ・ポケット(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

大事なもの
やっぱり桑原裕子(KAKUTA)の本がいい。そして今回の全てのキャストの演技がいい。どれもこれもいい。要するに観客を飽きさせない展開も絶妙だった。高山奈央子の巨乳があまりにもエロ!笑


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ロサンゼルスのコリアンモーテルでは暴力団の皆の衆が寝泊りしている。目的は松島を殺すためだ。しかし暴力団のアタマ・二堂欽次は妹の冬子が死んだことを聞かされショックでふらふらと道路に飛び出して事故に遭ってしまう。その車を運転していた戸川はコリアンモーテルに連れてこられ、同じくライターの尾灯は暴力団のこれまでを知りすぎたという理由で痛い目に遭い監禁されることになる。

しかし、欽次は「Root Beer」を飲んで突如として記憶喪失になり、人が変わったように良い人になってしまう。飲む前のヤクザの親分と飲んだ後の良い人のギャップがあまりにも絶妙でむしろ楽しかった。

一方でコリアンモーテルで起きる人身売買や、それに関わる輩、暴力団の悪、売春、恋愛を題材に時にはコミカルに時にはシリアスに描写していく。そうして一方では欽次が夢見る冬子との時間軸のずれも交差させながら、本当の欽次の心理をもえぐるように過去の冬子の言葉「意地張ってたら、いつか本当になくしちゃうから。大事なもの・・。」を思い出す。大事なもの。これがこの芝居のテーマとも言えそうだ。

欽次の記憶は記憶喪失になった今が本当の自分なのだと連呼する。

こうして、欽次は戸川と尾灯と共に現況から逃げて冬子が居ると思い込んでいる過去の記憶と共に冬子の元に行こうと提案するも、旅立ちに乾杯!と尾灯に進められた「Root Beer」を飲んで、元の凶悪な欽次に戻ってしまうのだった。

記憶を取り戻した欽次はファミリーを連れて松島をヤルために命を張って出陣してしまう。そして「もし自分の記憶が戻って戸川と尾灯との約束を忘れてしまっていたら、これを尾灯に渡してくれ。」とチルに頼んであった書類によって尾灯と戸川の命は助かりこのモーテルから脱出出来た。という筋だった。

舞台セットといい、本といい、キャストといい、全く欠点はなく素晴らしい舞台だった。キャラクターの立ち上がりもこの本にぴったりで役者らの秀逸な演技力に惜しみない拍手を送りたい。いつまでも・・。


バニラ

バニラ

643ノゲッツー

OFF OFFシアター(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/05 (火)公演終了

満足度★★★★

白組を観た
今回の643ノゲッツーはひじょうにオモロイ。会場に入ってどの席が一番観易いか?と聞いたら「一番奥の端っこが良い。」との事だったので、信用して端っこに座ったら、入り口付近でも寸劇を公演するから、奥に座ってしまうと全く観えない。ここが惜しいところ。だから座る位置は全体を観るならやはり入り口付近から中央が宜しいかと。。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台はみのりと菊池が運営するロッジでの情景。宿泊客の高橋はロッジを借りたものの、なんやかんや言って女性客の3人が高橋の部屋にやってきて我が物顔に居座ってしまう。この時の運営側と高橋と女子3人のやりとりがとにかくバカバカしくて緩い。吐かれるセリフも絶妙だ。思わず笑ってしまう。ここでの展開は高橋にとっては不条理以外の何ものでもないのだが、気弱な性格から他人にとことん押されてしまう。笑

一方で高橋の友人もこのロッジにやってくるがロッジに辿り着くまでの経緯を入り口付近のスペースで寸劇として繰り広げるがちゃんと観えたなら面白いと思う。

全体的にははちゃめちゃな面白さだが、今回の絶賛どころはなんと言っても高橋演じる伊藤だ。伊藤のシリアスな表情、困った表情、歪んだ表情、エロに満ちた表情。全てが満点なのだ。そんなだからいちいちワタクシも可笑しくて可笑しくて大爆笑してしまった。笑

しかし、物語はお笑いだけではない。みのりの妹は、みのりの知り合いの内田のドライブ中に事故に遭い死んでしまった過去をも描写する。このショックでみのりは宗教に走り完璧にマインドコントロールされたみのりはロッジに訪れる観光客の血を飲んで復活するというオゾマシイ血肉復活祭に挑む為に観光客を犠牲にしたお祭りを催す。

ホラーとコミカルな要素を絶妙に織り交ぜ、ワクワクゲラゲラの舞台だった。大満足な舞台だった。出来たら赤組も観たい。内容は同じなのだろうか?
東京バーグ 【舞台盤】&【映像盤】

東京バーグ 【舞台盤】&【映像盤】

円盤ライダー

【舞台盤】東京バーグ【映像盤】上野毛アクオス(東京都)

2010/09/24 (金) ~ 2010/12/23 (木)公演終了

満足度★★★

勘違いからの悪魔騒がせ
悪魔が登場しました。笑
心温まるハートフルコメディといった感じの芝居でした。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

レストラン「東京ハンバーグ」ではウエイターが悪魔らしい。笑
物語は結婚が決まり本当は惹かれあった男女なのに男は女が自分の死んだ友人を愛しているのではないかと疑い、女はそんな男の気持ちを知っているが為に、自分の記憶から死んだ友人の記憶を消して欲しいと願う。

女はとあるレストランの裏メニューとしてある「望みを叶える取引」の為にここにやってきたのだった。制服を着た悪魔は「望みを叶えるためには記憶の一部を消す」というのだ。女は死んだ友人の記憶を消したいので願ったり叶ったりだったのだが、そんな折、男は女が結婚したいのは死んだ友人のケビンだと思い込み「ケビンを生き返らせて欲しい。」と悪魔に頼みに来る。

ケビンは生き返ったが男は引き換えに、全ての記憶を失って廃人同様になってしまう。そんな男を見た女と生き返ったケビンは絶望的になるも、今度はケビンが自分の命を差し出す代わりに、男を元に戻してくれと、悪魔に取引を持ちかける。悪魔は快く了承し、ついでにおまけとしてケビンの希望をもう一つ叶えようと提案し、ケビンは「自分の好きな人たちが楽しく生きられますように。」と望んで死んでいく、という物語だった。

こういった筋はよくあると思うが、一組の男女の勘違いから起こった悪魔を巻き込んだ芝居だった。笑
コミカルな展開と言葉で楽しめる芝居だと思う。

美しい手

美しい手

スポンジ

サンモールスタジオ(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

演出その他の構成も素晴らしい!
初見の劇団ということもあり、また前情報(過去の評価)もないことから、期待してなかっただけに物凄い衝撃を受けました。とにかく素晴らしい。大絶賛なのです!現実と妄想の時間軸が交差する場面ではぐにゃりと歪んだずれが絶妙で、はたまた妄想から現実の世界に戻る展開はビデオテープが逆走しているような感覚の描写が巧みでした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語はとあるジャズ喫茶での風景。セットがまさに現実味を帯びていて素晴らしい!

生き馬の目を抜くようなファッションデザインの業界「アンダーグラウンド」ではデザイナーのカリスマ的存在の高崎を筆頭に業績を伸ばしてきたが、その裏ではデザイナーとして力のない井上が試行錯誤を繰り返しながら苦しんでいた。

そんな折、ジャズ喫茶に訪れた同じファッション界の江尻にデザイン画を見てほしいと自分を売り込んだ井上は高崎のデザインをパクッた画を出してしまう。

後日、高崎に呼び出された井上は高崎に詰られ罵倒された腹いせに高崎が大麻を吸っている事を暴露してしまう。「大麻を吸いながらデザインをしてるお前の方がよっぽどクソだ!」と言いのける。それを聞いていた喫茶店の客が記者だと知った井上は他言しないように頼むも、マスコミの餌食にされ高崎は留置所送りとなってしまう。

罪悪感に苛まれながら苦しむ井上は、ついつい悪い方に悪い方にと妄想し捻じれ歪んでしまう。更に高崎が警察沙汰になってからというもの「アンダーグラウンド」の業績は落ち込む一方で遂に井上は解雇されてしまう羽目になるのだが、この時点でも井上は自分が高崎を陥れたという罪悪感からか、抵抗はしない。

ところが喫茶店に集まった「アンダーグラウンド」の面々から高崎を警察にタレこんだのは一ノ瀬だったことが解る。一ノ瀬に掴み掛る井上。もう一方では江尻と揉み合う高崎と井上。このジャズ喫茶では血の気の多い連中が毎回、何らかの騒ぎを起こしているのだが、いちいちその設定が面白い。沸点に達した江尻は包丁を持って殴り掛かろうとするも包丁はサックリと高崎のギプスに突き刺さる。笑

高崎を売ったのは自分ではないか。と罪悪感に苛まれた日々を振り返ると井上は自分が知らない現実はこの世に沢山あることに気付く。やがて井上はファッション業界から身を引き、まったく違う職種に就くのだが、井上がかつてデザインした蝉のTシャツを着た若者が井上をカリスマ的に扱う場面ではホッとさせる温度がある。

そして、物語の最後の終わり方があまりにも素敵でため息が出るほどだった。

今回の芝居で感じたことはキャストらの演技力が秀逸だったこと、須賀谷の照明が生かされていたこと、それに加味して演出が際立って素晴らしかったこと、更にこの物語を引き締めたのは店主・大熊役を演じた牧野はやとだと思う。彼の演技は出すぎず引きすぎずで、静かなパンチ力があった。
【公式ブログにて結果発表中!】何にも知らないわけではない

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パセリス

OFF OFFシアター(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/27 (月)公演終了

満足度★★★

観客は芝居の中の観客
アミューズメントスポットの中の「オブザービングルーム」の中の人間模様を観客が「人間観察」として楽しむ、観客参加型のアトラクションだったが、こういった物語はよくある。
確か、映画でもアニメでもあった。もっとも、映画やアニメで観た「オブザービングルーム」の中の人間たちは生きるか死ぬかの壮絶な脱出ゲームだったから、もっと人間の中の悪の部分が露呈していた。だからこそ、今回の物語でも、もうちょっと突き抜けた「人間の底知れぬ罪悪」をみせて欲しかった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「オブザービングルーム」の中の6人の女子はリアル脱出ゲームに参加する。脱出できると5万円が支給されるという触れ込みから序盤、楽しそうにゲームに参加していたものの、本当にこの部屋から脱出することが出来るのだろうか?と疑心暗鬼になってしまう。そうなると、他人を疑い始める。一度疑い始めるとその心は留まることを知らないほど、膨れ上がって友人だった人間関係をも崩れてしまう。

看守が出す指令も当初は、「この中で一番可愛い子を選べ」だったのが、終盤では「このナイフを誰か一人に突き刺す」になり、やがて「この拳銃で誰かに一人を撃ってください」に変わり、指令は段々と過激になっていく。

と同時に切羽詰った6人は恐怖に慄きながらもサックリと躊躇なく刺したり、撃ったりする場面が意外にもあっさりし過ぎて苦悩感が見えなかった。だから6人のキャラクターのどれにも共感が出来なかったのかも知れない。

例えばその中の一人でもサターン的なキャラクターが居たならば、きっと本物の悪魔は「いざというときの君の気持ちは解るよ。だってそれが人間だもの。生きてる間の僅かな時間だけでも自分を守るのは当然さ。」などと甘い言葉をかけながら、魔法をかけて、蜃気楼を見せて、叶うはずのない夢まで見せてから奈落の底に突き落としてしまうのだろうなぁ。とも思う。

妬み、嫉み、僻み、ネガティブな感情は様々あれど、それが人間というものの本質でもある。そんな人間の心理を描写した作品だった。
レストランじゃないっ!!!【終了いたしました。ご来場ありがとうございました!!!】

レストランじゃないっ!!!【終了いたしました。ご来場ありがとうございました!!!】

コメディユニット磯川家

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★

関西のノリ、ベタベタなコメディ!
流石に関西コメディは凄いです。シュールさとか、そこはかとなくとか、微妙なとか、そんなむず痒い曖昧なコミカルさは一切ない!笑
とことんバカバカしくてとことんはちゃめちゃなTV的コメディ。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

レストランのセットが素晴らしい。まんま、どこぞのファミレスのよう。皆が働くレストランでは「売り上げが伸びないため閉鎖する。」なんて話をオーナーと店長が話してたのを聞きかじった一人の従業員が他の従業員に漏らしてしまったから、さあ、大変!従業員の間ではレストランの存続よりも、自らの働き口が無くなってしまうのを嘆く。(あくまでも人間らしい)

そんな大騒ぎの展開の中、店長の妻の浮気が発覚し、離婚騒ぎとなる。しかし騒ぐには騒ぐのだが、当の本人は仕事中にアニメを読みふける毎日。(あくまでも人間らしい)

もう一方では一人の従業員が女子従業員の2人と浮気していて、見兼ねた妻がレストランに乗り込んできたかと思いきや夫の監視の為にこのレストランに就職してしまう。夫婦の諍いの間に吐かれるセリフ「家に帰ってから喧嘩の続きをすると抱かれてうやむやにされちゃうから嫌!」という妻(川面千晶 )の言葉がウケル。(あくまでも人間らしい)

川面千晶 は相変わらずのパンチのあるキャラクターだが、ワタクシは彼女のキャラがとっても好きだ。彼女が舞台に登場しただけで、その場の空気が変わるほどのインパクトがある。そのくらい、ワタクシにとってはエロ可愛い存在だ。そんな妻も夫の口車に乗って不倫相手の女子2人共々、手玉にとられてしまう。(あくまでも人間らしい)

「何でお前だけモテルんだよっ。」と恨めしく思う他の男子らはモテナイ要素満点なのに、そのことに気づかない。(あくまでも人間らしい)  しかし、モテ男もゲイからもモテまくると、そんな状況にモテあましてしまうのも人間のサガなのだ。(あくまでも人間らしい)

そんな大げさなドタバタが魅力の人間模様コメディでした。
馬鹿馬鹿しいけど楽しい舞台。また観たい。
ワイルドターキー

ワイルドターキー

ゲキバカ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

宮沢賢治の詩で訴える
「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」は確か、小学生の頃、教科書に載っていたと思う。カタカナが多いこの詩を何だか堅苦しく重く物騒だと子供心に感じていたが、今日、改めてもう一度舞台でなぞられると、この素朴な泥臭い詩は人間が生きるうえでの基本なのだとつくづく感じる。
ワイルドターキーは「2丁拳銃の中山」が賢治と同じ故郷から逃れて東京にやってきて死ぬまでを綴った物語だ。
笑いあり、アドリブありの楽しい舞台だった。終盤ではホロッと泣かせるシーンもあって、その暗転の上手さも見事だった。上演時間がアドリブによって変わる。ちなみに本日は2時間20分。しかし長さを感じない程、楽しい。
更に今回の芝居には「白と黒の世界からやってきた男が辿り着いたのは灰色の街だった。」とか「白い雪の上に赤い絵の具で描いた絵」などとカラーの描写も斬新で、しっかり、そのカラーが脳裏に焼きついてフルフルと震えた。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

片田舎で育った中山は15で母を亡くし、父親は17で死んだ。後に描かれるが、この父親を殺したのは母の連れ子のちかだった。中山の義理の妹に当たる。この日の父は酒の力を借りていつにも増して荒れ狂っていた。そんな暴力親父をちかは包丁で刺したのだった。ちかを庇って黙秘する中山。やがて中山は生活の為に東京に出て、暴力団員となる。

しかし、ヤクザ同士の闘争に巻き込まれ刑務所暮らしを余儀なくされた中山の出所時に加藤組の伊藤がお迎えに来る。中山が構成員だった東城組は加藤組とのドンパチの末に吸収されたのだという。

加藤組の構成員となった中山の周りでは、ヤクザにはお馴染みの金銭トラブルや、刑事の汚職、裏切り、闘争が繰り返され、やがてダニの鈴木(刑事)に言いくるめられた伊藤は組の金を強奪する手助けをしてしまう。怒った加藤組はオトシマエとして伊藤の女でソープ嬢のちか(中山の義妹)を瀕死の状態にさせてしまう。今度は伊藤とばかりに制裁しに来るも、中山は弟分の伊藤を助けるために自ら組長を射殺してしまう。

やがて刑務所に逆戻りした中山を数年後、再び伊藤が迎えに来る。それは桜の花がはらはらと散る春の穏やかな日だった。ちかに伊藤の子が生まれたとの吉報を聞いた中山は「奥さんにもっと幸せになるように。と伝えてくれ」と残す。そうして国に戻って一からやり直そう・・、と心に誓ったその瞬間に一発の銃声が中山の眉間を突き刺したのだった。

桜は相変わらずはらはらと音もなく舞い落ちる。まるで中山の人生を祝福するかのように。そうして中山は暗闇の中で「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」を復唱するのだった。

素晴らしい芝居だった。とにかく中山のキャラクターが役にぴったりで、全身から疼くようなエネルギーを発して孤独と言う荷物を背負った加減が絶妙な演技だった。その動と静の不思議なバランスが中山の真髄なのだとも思う。惜しむらくは2度目の中山の出所シーンで中山を迎える伊藤が図らずも笑ったのだ。シリアスなシーンなのに、何故かクスッと笑った!何故だ?!、ここ大事なとこでしょ。
伊藤は後でおしおきだなっ。

更に今回はいつにも増して照明さんががいい仕事してた。序盤の暗闇から浮き出てくる男たちのシーンは記憶に残る名作となるに等しい。とにもかくにも素晴らしく楽しい舞台だった。観客がノリノリで序盤から拍手喝采してました。観客も素晴らしい!!

追伸:今回はキャスト名と役名が同じだったが分かりやすくてよいと思う。
歌えロレッタ愛のために!

歌えロレッタ愛のために!

秘密結社ブランコ

ART THEATER かもめ座(東京都)

2010/09/22 (水) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★

まったく合わなかった
前回の評価が良かったので期待していたのだけれど、ワタクシは決して面白いと思わなかった。前の方の評価をみると良いようなので、好みの問題なのかも。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

壁から手ヘビが出てきた時には正直いって「をを~!!やってくれるんじゃないのくぁ!?」なんつって期待に胸膨らましちゃったんだけれど、その次の展開がだらだらと、とにかく生ヌルイ。爆笑する箇所もあまりなく、クスっという箇所は全体で3か所くらいだった。

ワタクシが芝居を見る時、キャストが可愛いとか、エロいとか、そういったレベルで演劇を評価していない。総合的なレベルから判断させてもらうと、決して友人には進められないし、ましてや舞台を初めて観る方には言語道断な舞台だった。
淑女冥利

淑女冥利

多少婦人

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/09/22 (水) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★

殆どコメディ。
殆どというのは最初の短編がコメディとは違ったホラー性の含んだ物語だったからだ。しか~し、2編からはいつもの多少婦人らしいコミカルな展開。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「減らす女」ではパスワードを削るゲームから。「ネイル」「感情」「言葉」「衣服」「貯蓄」のワードを順番に削っていくのだが、ちょっとブラックを含んだおどろおどろした情景。目をえぐったり、爪を剥がしたりで「感情」を取られた母親は子供を犠牲に殺させてしまう展開も。

しかしこの「減らす女」とは反対に「増やす女」ではとある安ラブホに男を連れ込んだ既婚者の女が織り成す物語は5つのキーワードを回収するという仕組みで、まんまコメディだった。

「あなた好みの。」では3人の社長秘書が見せる相手によって「好みの女になります」的なコメディ。特に加持を演じたみかんの底なしの演技とキャラクターが観もの。

「いま、ついに私の番」では相手の都合の良いように作られてしまったポジションの律が本当の自分はそうじゃないんだよ。と自己主張して足掻く物語だが、言いたいことも言えなくて周りに流されてしまう律ならではの緩いコミカルな情景だった。最後は彼も出来て上手く纏めるところは流石。

全体的に楽しめた作品。

視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました!

視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました!

視点

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/09/21 (火) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★

三様それぞれ
各劇団の表現力と思考が違えばこその個性溢れる舞台だった。とにかく面白い。テーマは「トランス」ということだけれど、どの劇団にも通じる「精神の屈折」の表現具合が絶妙だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

患者の肋骨を折っていた看護士を描く『スプリー』(ミナモザ)では左手しか動かない患者の虫のような蠢きが面白かったし、患者の動作に対してただただ、「イラっとした」という理由で患者の肋骨を折ろうと企み、ついでに不倫相手にもこうして、あてつけを兼ねる行為をする看護士。一方で患者の担当医ことカサイは厄介な不倫相手と切れようと看護士の人格障害をネタに理由をコネル。笑)
序盤では骨を折られまいと看護士を宥めたりすかしたりしていた患者はバイク事故での相手を殺してしまった告白をすると、「全ての事は意味がある。これは罰だ。生きているものは全て塊で大いなる物の部分に過ぎない。全ての出来事は繋がっている。君の痛みは僕の痛みだ」などと講釈して、看護士に「それじゃあ、私は私の肋骨を折るわ。」と仕向けてしまう。とんだ展開!笑


セクシュアル・マイノリティを連想させるキーワードを含む『クィアK』(鵺的)の描写は相変わらずの屈折さ。この劇団の特徴は卑怯なほどの屈折さが売りだと思っている。笑
ゲイを自称して20年。身体も精神も女が駄目だと思って疑わなかった木谷は女を知ってしまった日から「この女が居ないと生きていけない。」という身体になってしまう。近藤の前では女を奴隷のように扱っていながら、実は木谷の身体は女の奴隷になってしまった。という女に目覚めたゲイのお話。卑屈なほどに女を奴隷扱いしておきながら、終盤の真逆の展開があまりにもお見事!いつも思うことだけれど、平山寛人って「カイジ」に似てる!笑


臨死体験で感じた光を確かめ合う『無い光』(MU)では「光」を信じて三途の川を渡ろうとしている右手が不能になってしまったイラストレーター・理英を死なせまいと足掻く同級生の男たちを描写する。ここでの最大の問題は同情と単なる組み合わせや配分の誤りによって生じているような気がする。後藤と修造は理英が好きで後藤を好きなのは朝子だ。修造と理英が付き合っていると勘違いした後藤は中学生の頃に自殺を試みた。好きな相手が自分を好きではない。というちょっとした組み合わせの違いでぐちゃぐちゃになってしまう。考えてみればこの世界の問題の多くは配分の誤りによって生まれていると言っても過言ではないような気がする。ただの不均衡で。笑
更につきつめると、人は断りもなく自分として生まれさせられ、断りもなくその自分を奪われてしまう。だとしたら自殺するなんて回収の手間が省けるだけ向こうの思う壺だ、と思う。



以上、3つの物語だったが爆発的な屈折さが面白い。短編なので長編ほどの重みはないがそれぞれの嗜好を楽しめると思う。



三億円少女

三億円少女

劇団ゲキハロ

サンシャイン劇場(東京都)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★

アイドルがセリフを間違えても拍手喝采!
大人の麦茶といえば「Berryz工房」と今やセットになってるかの如くな商業演劇。笑)
しか~し「Berryz工房」は意外に見せてくれるので大丈夫だろうと、ドキドキだった。・・というのも前回の大人の麦茶の「タイガー・・」はどうしようもなくつまらなかったからだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

今回も会場はむっさい男どもで満員状態!笑
その中で女のワタクシめは異質なのか、珍しいのか、「前回もいらしてましたよね?」なんつって親近感丸出しのとっちゃんぼうやから声を掛けられる。
そう・・・、なんだかんだ言いながら毎回、観に来てるワタクシめも今や立派なコアな観客の一人なのだ。

しかも、彼らは自分たちの仲間だと解るやいなや、どこからともなく湧いてきたように親しそうに集まっちゃうものだから、ワタクシの周りでちょっとしたドーナツ状態になる。苦笑!

そんなコアな仲間達?はセリフを間違えても拍手、歌うシーンでは右手を掲げてイケイケのノリで一緒に歌っちゃうものだから、仕方な~く、ワタクシだって右手を揚げてフラッグでも持ちそうな勢いで応援しちゃったよ。笑


時は平成22年秋。突然、ずぶ濡れの白バイ姿の少女が現れた。しかし彼女は手に真新しい昭和43年12月10日の新聞を握りしめていた。

物語は「旅館まほろば」での過去に起こった事件と現在の鈴木一郎と雨宮よりこの状況を交錯しながら描写させる。あの未解決事件「三億円事件」を引き起こした雨宮の理由とその後の展開、その事件の影で一郎とよりこの悲しい恋があったこと、更にはタイムスリップしたかのような少女はよりこの孫だったことにも触れながら現実味を帯びてくる。


過去と現在をいったりきたりするさまはロマンを感じ、セットの作りこみも凄く良かったと思う。惜しむらくは時々セリフを間違えた「Berrys工房」と「ハロプロ」の演技力だった。流石に「大人の麦茶」らや小劇団の俳優たちの演技力は抜群だった。中でもセリフを間違えたアイドルに突っ込みを入れる肥後あかねのアドリブは最高でした。パチパチ・・。


クロッキオ~それぞれの夏~

クロッキオ~それぞれの夏~

NO LAUGH NO LIFE

日暮里サニーホール(東京都)

2010/09/19 (日) ~ 2010/09/21 (火)公演終了

満足度★★

本があまりにも単純
で、あまりにも平凡。そんなだから大きなうねりもなく、観ていて飽きた。途中で帰りたいと思ったほど。実際、途中で帰ってしまった観客もいました。ですから、大したネタバレはありません。

スプーン一杯の資本主義

スプーン一杯の資本主義

“創造集団”生活向上委員会

南大塚ホール(東京都)

2010/09/16 (木) ~ 2010/09/20 (月)公演終了

満足度★★★★

コメディかと思ったほど!笑
バブル崩壊後の日本を、東京の蒲田にある小さな町工場を舞台にしたコミカルな人間ドラマ。タイトルにあるように資本主義の矛盾を世界と日本の金の流れや人の流れで描写した経済ドラマでもあった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

町工場・釜中製作所では再開発地域ということで立ち退きの為の嫌がらせを暴力団から受けていた。しかしこの暴力団が実に可笑しい。フラメンコダンサーのような女とテンパッタヤクザとチンピラ一匹。笑)  ここでのテンパッタヤクザを演じた射場みのるのアドリブが楽しい。いちいちアドリブを連発するのだけれど、これがまた、いちいち可笑しいのだ。しかもアドリブを放たれた相方がこれまたテンパッテどうしていいか困った様子も愉快だった。

かと思えばハクション大魔王のようなキャストも居たりして、何がなんだかよく解らないアニメの世界感!笑
ついでに登場しちゃったのがウルトラマン兄弟だったり、めっさ弱そうなスーパーマンだったりで、あれれー?、アニメヒーローものかいな?!と思いきや、今度は鳩山、小沢、管が登場したりとはちゃめちゃ感、満載!笑

もしかして、コメディ一色なんやろか?と思ったのも束の間、釜中製作所が大きな負債を抱えた挙句、注文も入らなくなっていた、という今ドキの経済も描写しながら、これらを従業員、家族が一丸となって支え復活の見込みにまで持っていくというストーリーだった。

「今の日本は人を大切にしない国だ。日本人は今まで大切にしてきたものをちゃんと思い出すべきなんです。」と古き良き日本を再考するように訴えて終盤を迎える辺り、お見事だった。あまりにもはちゃめちゃ感が好みを左右するかも知れないがワタクシ的には○

次回作は「立ち飲みパラダイス」らしいが、また射場のあばれっぷりを観てみたい。笑
にねんいちくみ保護者会≪ご来場ありがとうございました!≫

にねんいちくみ保護者会≪ご来場ありがとうございました!≫

クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)

Heiz Ginza(東京都)

2010/09/11 (土) ~ 2010/09/20 (月)公演終了

満足度★★★★

まるで保護者会に出席したような
感覚になる観客席の設置の仕方。笑
しかも会場も観客も明るい現場での観劇なので気恥ずかしいというか落ち着かない。笑


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

会場に入ると先に座っている観客の視線が一気に自分に注がれてるような錯覚に陥るほどに楕円に観客席が設けられて、その中央に演者らが座る小学校の椅子と机が配置されている。

これ以上、目だってなるものか!とばかりにそそくさと近い座席に座っても照明は明るく一向に暗くならず。太陽の下にでもいるような明るさの中で観客まるごと保護者会に出席したような案配だから、いつものように暗くなってから、ふんずりかえって座るわけにもいかず、おのずと身を硬くして座ってしまう。笑

さてはて、保護者会は始ったものの、保護者らも子供たちとなんら変わりなく自己中な主張の連続。一方で運動会の催しである障害物競走の参加を保護者に募ると逃げてばかりで中々決まらず。なんだかこうなったら子供の方が始末がいいな・・。などと思いながらも、終盤で「親の頑張る姿は子供を支える。」という担任の言葉に動かされた保護者らは自ら障害物競争に参加したい意思を表すのだった。

保護者会での話し合いの中で虐めや各家族の教育の様子なども浮き彫りにされ子供と親の係わり合いも描写される。我侭な保護者に教師が翻弄されながらも子供を扱うように上手くまとめる手法など、面白い。極めつけはプリントを配るタイミングで教師が「先にプリントを配ってしまうと、そちらに気が取られて話し合いにならなくなる。」と言ってのけたセリフはまるで子供に対するセリフではないか。笑

大真面目な議題でのブラックユーモアが爆裂した舞台。笑
キャストらの演技は相変わらず秀逸で文句なしだった。終盤にホロリとさせる展開もこれまた絶妙!
なんかの本で読んだ・・・。 ~日本童話編~

なんかの本で読んだ・・・。 ~日本童話編~

ファルスシアター

荻窪小劇場(東京都)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

満足度★★★

会場は満席でしたが
ちと物足りなかった。
死ぬことを目的に集った男女4人がひょんなことから日本昔話に花が咲く。その話の内容を描写した物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

基本的に見知らぬ他人の4人が鍋を囲みながら話す内容を手前で別のキャストが4人の話す内容どおりに日本昔話を表現していくという内容だった。

お題は「かちかち山」「浦島太郎」。正直申し上げて手前で繰り広げる日本昔話の世界は楽しかった。亀役のキャストの仕草が本当に亀のようで亀人間かと思ったほど!笑)
また狸役には目の周りを黒く塗って欲しかった。

しかーし、死を目的に集った4人のしゃべりのテンポがだらだらと遅く要点を得ない話し方でちょっとだらける。だからむしろ、この4人の話は省いて日本昔話の世界をどっぷりと見せてくれた方が良い舞台になった気がする。

日本昔話よりも4人の話に時間が費やされたのもちと残念だった。要するに日本昔話を充分に観たかったのだ。

草莽崛起

草莽崛起

劇団宇宙キャンパス

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2010/09/17 (金) ~ 2010/09/21 (火)公演終了

満足度★★★

武士として生きるということ
は不条理も受け入れるということだと感じた舞台。
今回はオモチロ可笑しい前説がなかったからワタクシとしては至極残念だった。新しい日本の為に・・、と誰もが日本の未来を良くしたいがために命を賭けて戦った草莽堀起の物語。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

全体を通してみると五郎が経験した過去の記憶を蘇らせて綴った物語だったが、伊之助が主役だったような気がする。物語は高杉晋作の提案によって「奇兵隊」が結成されてから、この「奇兵隊」の総官としてトップに着任した赤根が謂れのない脱隊の罪をきせられ死罪となるまでの伊之助の半生を綴ったもの。

赤根を死罪にさせまいと自身の身を投げ出して戦う伊之助の終盤のシーンは流石に泣けたものの、終盤に誘うまでの舞台情景がおちゃらけてて軽かった為、重厚な時代劇とは想像を逸してしまっていた。無理に笑いを取ろうとするも観客の反応はイマイチ盛り上がらない。

むしろ、そんな小細工は捨ててストレートプレイに徹した方が良かったと思う。終盤の涙を誘う展開と終盤からのキャストらの演技が絶妙だっただけに惜しいと感じた芝居だった。

「人間は2度死ぬ」という説を信じ、死ぬ間際の伊之助が五郎に「俺を忘れないで・・。」と言いながら死んでいった情景は心にズン!と響く得体の知れない何かがあった。人間の命は誰かが自分を覚えている限り記憶の中で生き続けるというロマンは確実なものだとも思う。
☆御来場ありがとうございました☆ サマータイム、グッドバイ

☆御来場ありがとうございました☆ サマータイム、グッドバイ

ガラス玉遊戯

「劇」小劇場(東京都)

2010/09/14 (火) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

満足度★★★★

意地ということ
南の島のゲストハウス「ムーンサファリ」のオーナー峰岸佐紀子を主軸にハウスで働く従業員や近所の若者、東京から逃げるようにやってきた妹・真紀との人間関係を描いた物語。

個々の若者のそれぞれの胸の内を丁寧に描いた作品だった。今風の、現代人が抱えている欝の部分も描写し個人的には姉の佐紀子より妹・真紀の内面にいたく同感した舞台だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ゲストハウス「ムーンサファリ」を上手く回していく為には地域での人間関係を構築していかなければ到底、商売も住むことも不可能な辺鄙な南の島で佐紀子は、地元の若者や、ご近所、従業員と家族のように暮らしていた。

そんな折、妹・真紀が都会の喧騒から逃れるように突如、姉のもとにやってくる。どうやら何か問題を抱えて悩んでいるような表情だ。しかし、真紀は姉のゲストハウスに観光客よりも近所の人々が常に集まってくる状況に驚き、一つも安息出来ない。しかも真紀の心に土足でズンズン入ってくる入江の態度や押し付けがましい宿泊客・恵子もウザいし、何よりも客足が伸びない原因は従業員が働かずハウスが散らかっているさまが気になった。

そこでこの状態や集客の為に改革しようと意気込む真紀だったが、千明の反発をくらい、挙句、ゲストハウスの所有者で土地の有力者の新垣からこの辺一帯を大規模な再開発に伴って大型ホテルを建設するので撤去してほしい旨を打ち明けられる。

一方で「ムーンサファリ」では宿泊客の恵子が「ここで働かせてほしい。」と言いだし、従業員の千明はきっちりした働き方は自分に合わないから辞めたいと言いだし、佐紀子は慌ててしまう。この時の恵子の「自分は家族に必要とされていない。」と訴え報われないと思う感情が痛々しいし、千明の「適当にゆるく働きたい」という主張もバイトならではの正直な感覚かもしれない。

要領のいい千明に対する明日香の「自分は何をやっても上手くいかない。」という欝な感情や、元銀行員だったという脱サラの経緯を話した入江の心の内や、「夫の事は嫌いでした。離婚を考えていた」と告白した佐紀子の心情が見事に冴えわたりこの物語により一層の深みを増していた。そして最後の〆は真紀の「退職します」という電話での決断だ。この物語は生きることにちょっと疲れた人たちが最後に見せる意地のようなものだ。

一方で再開発に反対する女性映画監督・堤が「ムーンサファリ」に目をつけドキュメンタリー映画を餌にオーナー丸ごと巻き込んでいくさまはどのキャラクターよりも強かで鋭い。

「宿泊客にこっちの価値観を押し付けてるだけ。単なる自己満足」という真紀のセリフを、新垣が同じように真紀にぶつけるシーンはなんとも苦い。


物語の進め方はコミカルな部分と柔らかい描写の交差が上手い。キャストらの演技も安定していて十分に見応えのあった作品だった。そして何よりも、この舞台の特徴はたぶん観ている観客が共鳴できるところにあると思う。「あるある、そうゆうのあるある。解る解る、そういうのって重すぎる。ここまではいいけれどそれ以上は私の中に入ってこないで。」そんな曖昧な境界線のない感覚がズン!と心に沁みて響く作品。

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