みさの観てきた!クチコミ一覧

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あとは野となれ山となれ

あとは野となれ山となれ

トム・プロジェクト

本多劇場(東京都)

2011/10/04 (火) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★

あまり好きな描写ではなかったなぁ
大衆演劇をこよなく愛する主婦、赤城万里子が離婚覚悟で家を飛び出した先は大衆演劇の旅一座だった。三人だけの同居生活が始まる。という筋だが、専業主婦歴30年の万里子の夫はプロゴルファーで、特に万里子に対して離婚を申し渡してる訳でもなく、いつでも家に帰れる状態なのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

旅一座の練習風景の中で、大衆演劇とはなんぞやを語り合いながらかつての大衆演劇で一世を風靡した脚本家や著名な舞台を羅列していたが、あまりピンとこなかった。
それもそのはず、大衆演劇や旅一座にとんと縁がない。しかも、丑松とか観たことないし。きっと団塊の世代より上の観客は楽しかったに違いない。

万里子の夫は愛人と暮らしており、万里子は30歳の息子と豪邸に二人暮らしという設定だ。その息子がフリーターの上、全く家事が出来ないというのにも嫌気をさして、自分の人生を見つめなおす手段として旅一座に入ったというのだから、お気楽なマダムの趣味みたいな感覚を受けた。このことからたぶん夫は万里子が家出したのにも気づいていないはずだ。そして肝心の息子だが、家出した万里子は心配になって息子に様子うかがいの電話をかけている。

つまり息子の教育に失敗した万里子は息子が30歳になってから、はたと気づき、好きな大衆演劇の世界に逃げてきたような格好だ。座長が金がない為にアルバイトをしてくれと申し出ると、「私にアルバイトは無理だから(今まで労働をしたことがない)これをつかってください」と100万円をポンと寄付してしまう。

あれれ~?やっぱ有閑マダムのお遊び?

みたいな感覚になってしまうのだ。
岸田茜のバレエが美しい。
感動したのはそれくらい。
やっぱ小劇場の舞台のほうが脚本、構成力は素晴らしいな。と改めて感じた次第。
「BABALESQUE~ババレスク~」大入りにて終了しました。ご来場の皆さまありがとうございました。

「BABALESQUE~ババレスク~」大入りにて終了しました。ご来場の皆さまありがとうございました。

junkiesista×junkiebros.

六本木BEE HIVE(東京都)

2011/10/05 (水) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

バケモノたちのレクイエム
相変わらずキレのあるダンスで観客を楽しめた。今回もコメディ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

それなりのお年頃の女性5人は原結婚相談所に入会した。彼女達は訳有りで結婚できないでいたのだった。
のぞみ38歳は十数年間もカレシに青春と肉体を捧げ続けた挙句、フラレ、20歳の女と結婚された。ただこ19歳は持って生まれた老け顔の為、到底、19歳には見られない。
さやか29歳、ゆきこ41歳、カオル81歳と多彩な顔ぶれだが、過去を払拭して結婚して幸せになりた~~い!症候群のご一行様たちだった。

原結婚相談所はそんな女性達の希望を叶えるべく、全身整形を勧める。まず、綺麗になってから結婚相手をゲットしよう!という魂胆だった。5人の女性達はこれに賛同し、整形して綺麗になったものの、何故か、幸せになれなかった。

やっぱり元に戻りたい。彼女達は今の自分達は本当の自分じゃないと気付き、ささやかな幸せで良かったのだと元に戻す決意をするも、彼女達の鼻や目や髪等のパーツが落ちて腐ってしまうのだった。つまり、整形手術の失敗で使用前よりも酷い状態になって、まるでバケモノだった。彼女達は怒り狂い、原を殺してしまう。という物語だ。

ホラーコメディのような感じだったが、コメディとダンスの融合は充分に楽しかった。
次回も是非に観たい。ダンスはキレキレ!!

『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

青年団国際演劇交流プロジェクト

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/05 (水)公演終了

満足度★★

『Rosa, seulement』を観た
まず、演者が観客にローザ・ルクセンブルクの写真を見せる。そして彼女が辿った歴史の写真も何枚か見せるが、演者は言葉の壁を察してか何も説明は加えず、言葉も発しない。この時点でローザの顔を知らない観客は「なんだろ?」となるのだ。ワタクシがいつも言ってることだが、演劇は観客に解ってナンボの世界なのだから、こういった場合は先に映像とテロップで説明しておくべきだと思う。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ローザは、ポーランドに生まれドイツで活動したマルクス主義の政治理論家、哲学者、革命家。彼女はポーランド王国社会民主党の理論家であり、のちにドイツ社会民主党、ドイツ独立社会民主党に関わるようになった。機関紙『Die Rote Fahne(赤旗)』を発刊し、革命組織スパルタクス団を母体としてドイツ共産党を創設、1919年1月にはベルリンでドイツ革命に続いて1月蜂起を指導するが、国防軍の残党やフライコール(義勇軍、Freicorps)との衝突の中で数百人の仲間とともに逮捕、虐殺される。死後、多くのマルクス主義者や社会主義者のあいだでは、同じく虐殺された盟友のカール・リープクネヒトとともに、革命の象徴的存在とされている。後にその思想はルクセンブルク主義とも呼ばれる。

今回は、闘争の果てに命を落としたローザ・ルクセンブルクの言葉をとらえ、彼女の肉体、 彼女の思考に入り込み、その言語を舞台に表出するための身体を獲得し描きだす、というパフォーマンスだった。今回の演者のアピールは600にも及ぶシーンの中からその日の感覚によって選び出し上演する形をとっているのだが、演者の機械的な動きはどのシーンを選んでもまったく同じで、セリフだけが違うという変わり映えのしない舞台だった。

しかも演者の吐くセリフと字幕が合ってない箇所がいくつもあり、更に字幕に誤字があった。苦笑!継いで女性演者はセリフを忘れて誤魔化していた場面もあって、なんだか全体的にしょもない舞台だった。勉強不足な舞台。
『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

青年団国際演劇交流プロジェクト

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/05 (水)公演終了

満足度

『DAIKAIJU EIGA』を観た
この舞台で唯一、素晴らしいと感じたのは壁のアート。ゴジラをやりたい、というダルさ全開のやる気のない工藤倫子が台本を見ながらリーディングする。およそ芝居とは程遠い情景で説得力のカケラもない。ゴジラの映画のタイトルを羅列する工藤自身が陶酔しちゃってる分、観客は睡魔から目覚めることもない。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

これでカネ取れんのか?!とこれをプロデュースした輩のネクタイを捩じ上げてアンダーから一発殴ってやりたい気分。学芸会レベル以下の公演を観たのは逆に久しぶりなのだが、年間支援会員からの集金で成り立ってる青年団というシステム自体に疑問を抱いた日でもあった。たぶん、外の(一般の)世界で頑張っている役者や劇団は、施設使用料もタダ、練習場もタダという生温い環境は信じられないほど羨ましいことだとも思う。

この環境に甘んじて役者もプロデュースも全ての青年団に関ってる人たちが切磋琢磨することなく飼い猫のように陽だまりの中でヌクヌクしてはいないか。そんな風に思えるのだった。そもそも青年団とは役者になる為の養成所のようなものだと勘違いしていたワタクシは10年以上も青年団に所属している役者らを見ると不思議だった。何年居ても良いらしいシステムは青年団という、支援会員を募集して大きくなった劇団みたいなものだ。そんな風に思った時間だった。評価はマイナス点を付けたいくらい。そのくらいヘタ。



オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り

石井光三オフィス

世田谷パブリックシアター(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/12 (水)公演終了

満足度★★★★

ファンタジー
この大作を舞台化するのはひじょうに難関かとも思うが、画像を使って巧みに表現していたと思う。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台となるのは荻島と呼ばれる小さな孤島だ。150年ものあいだ、外界との交流のいっさいを絶った、孤立した小さな閉鎖社会である。物語は、主人公の「僕」こと伊藤(吉沢悠)がこの荻島にあるアパートの一室で目覚めるところからはじまる。5年間勤めてきたソフトウェア会社をやめ、仕事一筋に生きる恋人とも別れてしまった彼は、ヤケを起こしてコンビニ強盗未遂をしでかしたあげく、本土では警察に追われる身となっていた。いったい、何のために自分はこの島に連れてこられたのか。日比野と名乗る男の案内で島の様子をいろいろ見てまわった伊藤は、そこで優午と出会うことになる。150年前につくられ、この世のあらゆる情報を知り、そして未来のことさえ見通す力をもつ優午は、人間の言葉を話す「生きたカカシ」として、島の人々から崇められていた。

どこかリアリティに欠けるところのある荻島の世界は、おとぎ話めいた雰囲気をもっている。「不思議な国のアリス」めいて非現実的なのだ。反対のことしか喋らない変人画家、あまりに太りすぎたために、そこから一歩も動くことができなくなった市場の女性うさぎ、島で唯一、人を殺すことを認められている本を読んでばかりいる青年・桜。だが、「生きたカカシ」である優午は伊藤が島にやってきた次の日には、何者かの手によって殺されてしまうのである。

先のことを正しく予測することができ、神ともいうべき力をもった優午が、なぜ自分が殺されるのを予測できなかったのか? しかも、まるでそれを待ち構えていたかのように、伊藤と同じ「外」からきた人間である曽根川が殺されているのが発見される。こういったミステリを解き明かすために存在していた優午だったが、結果的には誰も救わない。

優午のジレンマは、すべてを知りながら、自分では何をすることもできない存在なのだ。物語におけるすべての謎があきらかになったとき、すべての小さな伏線が、それこそ島民のそれぞれの性癖から、伊藤の元恋人である静香や、小さい頃からの伊藤の知り合いで、悪魔的な加虐趣味の持ち主である警察、城山の存在をも利用して、ひとつの大きな目的に向かって見事に収束していくのをまのあたりにすることになる。そしてその裏に、何者かの小さな意思が働いていた、ということも。

オーデュボンとは、17世紀の動物学者で、当時、アメリカ大陸に生息するリョコウバトを発見した人物でもある。かつては二十億という、とてつもない数の群れで何日も空を覆い尽くしたリョコウバトは、人間の乱獲によって絶滅した。彼はリョコウバトの絶滅を予測した。だが、ついにリョコウバトを絶滅から救うことはできなかった。「オーデュボンの祈り」とは、すべてを知りながらどうすることもできなかった彼が、唯一できたことでもある。

荻島に住む人間は、誰もが何かの欠けた状態に甘んじて生きている。そして外からやってきた伊藤は常に目の前の困難から逃げてばかりいる人間であり、静香は常に人から必要とされているという思いに飢えているし、城山には「罰されること」が決定的に欠けている。この世には私たちにはどうすることもできないことは多いにある。だが、虚構を許される舞台の世界くらい、すべてが丸く収まるような結末を導き出してほしい。ワタクシが感じたのは、まさにそんな「祈り」の声だ。

柿喰う客の玉置玲央が警察官・城山と桜の二役。小劇場の舞台とは箱の大きさが違うので発声を心配していたが、なんの、箱に見合った聞き取りやすい発声で実に堂々と演じてた。どっちの役も秀逸で同じキャストが演じてると思えないほどキャラクターの立ち上がりが絶妙だった。ああ、立派な役者になったな・・と感無量で嬉しかった。
しかし、城山が桜に射殺されるシーンは画像で映し出され、演出が安直だった。

相変わらず筒井道隆の演技も素敵だ。静かな説得力を持って爆発していた。日比野役の河原雅彦のキャラクターが本との違和感があったもののすぐに馴染めたが、彼ほど舞台そのものの空間を自分のものにしちゃってる役者も珍しい。また吉沢悠が噛みすぎ。主役なのに・・。苦笑

この舞台を観る前に本を読んでおくと解りやすいと思う。荻島の情景は舞台で映し出されていたが、終盤にかけての「祈り」の部分が舞台化したことで希薄に感じられた。まあ、玉置玲央を観に行ったようなものだから、別にいいけど。笑

ヤングフォーエバー

ヤングフォーエバー

壁ノ花団

王子小劇場(東京都)

2011/09/29 (木) ~ 2011/10/02 (日)公演終了

満足度★★★

観客に解ってナンボ
シュールとか難解とか表現は様々だが、舞台人にとって観客の反応が出やすい舞台は成功といえる。それは評価云々よりも観客に伝わったという時点で表現者として勝ちなのだ。しかし、今回の舞台は???だった。中盤まではコミカルなセリフやキャストの動きで笑えたが中盤以降は王子が死んだり生き返ったりで良く理解出来なかった。リーディングのような舞台。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤、耳なし男の話から。ナンセンスコメディのような不思議な話だが、これにあまり意味はない。しかし物語そのものはクスッと笑える。
次いで、王と王妃と門番らがスワステカの所にやってきた場面から。良く眠る王と眠らない王妃の話から移民だったスワステカが王妃に恋した過去の情景を映し出す。それを受けるかのように王妃はスワステカから犯される自分を想像し、エロチックなセリフで更に妄想してしまい、こんなことから王妃はスワステカをまんざらでもないように思ってるように見える。

更に王様が王妃に行う足を傷つけ血を見て興奮する性癖は王妃の嫌いとするところで、この為、洗濯機の中に入れて王を殺してしまうのだが、その後の展開では王の性癖を懐かしむような行動も描写するのだった。つまり、この王妃はMでスワステカからも犯される妄想と王からのSにも期待していた節があるのだが、その後の展開ではどうやら、全ての荒筋はスワステカの妄想の中での出来事だったのかが、解らないままなのだ。

人間を減らしたり猫を減らしたり、猫が減れば鼠が増えたりと、国を創造するにはバランスが必要なのだが、そういった仕組みを表現したかったのか、はたまた、訴えるものなど何もなくてその場面、場面の駒を楽しんで!という舞台だったのかはやはり解らない。苦笑!

沈み愛 / #garadama

沈み愛 / #garadama

ガラス玉遊戯

「劇」小劇場(東京都)

2011/09/28 (水) ~ 2011/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★

すれ違い
大橋秀和の本が好きだ。彼は人間本来が持っている裏側の誰にも見せたくない部分。ひっそり沈んだ深層心理を描くのが上手い。今回の舞台も計らずも被害者と加害者になってしまった友人達の負い目を描いた作品だった。毎回のことながら龍田知美の表情の演技が秀逸で心を打たれる。その演技がこれまた、あまりにも自然なため、まったく違和感がないのだ。それよりも何よりも彼女の声が好きだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ダイビングの事故で友人達を助けたが為に失明した正登(星野恵亮)。逆に正登に助けられた友人達は生涯、正登に負い目を抱き苦悩することになってしまう。正登の元カノは罪悪感に苛まれると同時に捻くれて屈折していく正登に嫌気がさして別れるも、正登を受け継ぐ感じで盲目の正登と結婚したサトコ(龍田知美)。一見、仲むつまじい夫婦に見えたが、視力を失ってから正登は人間が変わったように性格が歪んでしまう。友人たちが自分を気遣う反面、気詰まりとなって友人達との楽しい会話に入れない情景が描写され、正登自身の被害者意識と友人らの罪悪感が重なり合う展開だ。そしてサトコにも冷たい態度を取る。

一方で、愛故か同情故か、はたまた負い目からか、自分を助ける為に視力を失った正登と結婚したサトコは正登の投げやりな態度から逃れるように、元彼の宮島と不倫している。ここでの3人の人間関係は鬱積した感情を吐き出すかのような場面だ。盲目だが妻と宮田の関係を知ってるような感情もみせる正登。そして弟・正登の犠牲によって幸せに暮らしているのに弟を敬遠するようになった友人達に絡む正登の姉・幸江。ここでの押し付けがましいウザさは身内を庇う感覚だ。

これらの感情が渦巻きながらぶつかり合うも、全ての苦しみや引け目や罪悪感や気まずさが盲目になったことで過敏になった正登の心にぶつかり、跳ね返る。そしてそのままサトコに激突し、その欠片が友人達にも波紋のように広がるのだった。

物語は真正面からみると重苦しい。しかし一人ひとりの感情に置き換えて考えたときに彼らは弱い。登場人物の誰もが弱い。だからこの重圧に耐え切れなくなって自滅的になる。究極の愛は同情から生まれるとも言うが、正登の希望で離婚したサトコは正登に「本当に好きだった。」と告白する。これに対し正登は「自分は好きじゃなかった。見えなくなった目の代わりに誰かを不幸にしてやりたかった。」と吐く。

素晴らしい舞台だった。主軸は友人達と正登だが、友人たちの苦しみと正登の苦しみの感覚の差を、サトコの弟・幸平とその恋人・志保の係わり合いで解らせる。二つの負い目を背負った者たちの描写だ。直線的な構成だが実は多角面から舞台を見た構想だ。いい舞台だったと思う。惜しむらくはキャストと役柄が当日パンフに載っていない。素晴らしい演技をされた役者の名前は極力、書いてやりたいので、載せて欲しい。
次回も観たい。

短編集:エドゥアルド・ウルリヒ教授の鎮痛剤/他【チケットプレゼントあります】

短編集:エドゥアルド・ウルリヒ教授の鎮痛剤/他【チケットプレゼントあります】

バンタムクラスステージ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2011/09/29 (木) ~ 2011/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

独特の世界感を持った三つの短篇
劇団の持つ作風として非情で暴力に満ち溢れた幸薄い世界らしいが、最後の短編などはコメディかと思ったくらい生温かいコミカルな場面で笑った。どの作品も内容の濃い見応えのある作品で大満足でした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

No1 暗殺者の預言と預言者の暗殺(再演)
東京都某所の拘置所で、女の容疑者が政治犯として扱われ取調べを受けている。しかし女には、そのように扱われる覚えがない。一方、取調べ官は「予言者」を自称し、「容疑者」を精神的に追いつめていく。、「容疑者」から、作戦中止の暗号を吐かせるまでは、この拷問は続くと言う。しかし、どうやら遥か昔から同じことを繰り返してきたらしく、それが彼らの意思だとも言う。つまり、時空を彷徨いながら3人はこの展開から逃れられない運命なのだ。ちょっと不思議な異次元の物語。


No.2 エドゥアルド・ウルリヒ教授の鎮痛剤(新作)
ドイツ、ハイデルベルク郊外の大学の一室。派閥闘争に敗れて、引退し田舎に引っ越す準備を進めているウルリヒ教授の元に訪れた女学生・アビゲイルと、聴講生・マルセル。マルセルはCIAに所属していた傍ら、秘密裏にウルリヒ教授がGメンルートという革命家であることを突き止める。
マルセルの任務はGメンルート7人の潜伏先を調査することだった。マルセルはウルリヒ教授が気を許した隙に、数分後に致死するという薬物注射を刺し、解毒剤を用意しながら、教授に全てを吐かせる目論みだった。しかし教授は毒薬の特性を充分に熟知した計算でこれに対抗し、アビゲイルにマルセルを射殺させる。教授の本当の目的は革命家の協力者として人材を育て上げることだったのだ。教授の本当の名をペインキラーという。


No.3 タナトス行政府(再演)
関西の下町に暮らす家族と、その家族を見守る「行政府の役人」の物語。身体が弱く入院を控えた長女・かの子。勝手に大学を辞めると言い出す長男。ここで鎮座する祖父・重清(殿村ゆたか)の演技が実に素敵だ。
かの子の容態が急変したあたりから、「行政府の役人」の3人、つまり、死神が病院のベッドで息絶え絶えになってるかの子に「お迎えにあがりました。」と手を差し伸べる。
半分ソッチ側に行ってる祖父が、これを見て「行くな、かの子。お前はまだ早い。」と言って、祖父自身が死神の差し伸べた手を握り締める。笑
こうして、かくゆう、かの子の代理に祖父が死んだというお話。
めちゃくちゃ、面白かった。温かみのあるナンセンスコメディ。

3篇とも見事な演出と演技力で素晴らしい作品だった。導入音楽も素敵だった。
この劇団は次も観たい。
【東京バンビ】ピクルス ご来場ありがとうございました☆

【東京バンビ】ピクルス ご来場ありがとうございました☆

元東京バンビ

OFF OFFシアター(東京都)

2011/09/28 (水) ~ 2011/10/03 (月)公演終了

満足度★★★★

明日も生きなきゃなんない
こんなタイトルが似合いそうな舞台。ピクルスはあんま関係ないような描写だった。むしろマクドから宣伝費を戴けるんじゃないかと・・。笑)
アダチヒロキが今回の役作りの為に8kgダイエットしたとのこと、役者って素晴らしいですね。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

藤田(はやし大輔)の部屋にぐだぐだと集る友人ら。そんな場所に桐島多恵子(町田歩美)が兄・桐島(アダチヒロキ)から頼まれたといって藤田に100万円を持ってくる。そんな大枚を貰ういわれはないと藤田は話すも、桐島の伝言は小学生時代に仲良くしてもらったから、と言う。しかし藤田は同級生であるはずの桐島をあまり覚えていないのだった。

そんな折、桐島が入院しているという病院に様子を見に行くことになった藤田は桐島と自分の小学生時代の関わりを知ることになる。苛められっこだった桐島はあれからずっと引きこもりだったが最近になって末期がんを宣告され余命2ヶ月だとも言う。だから桐島は小学生時代に藤田から「花火大会に一緒に行こう。」と話しかけてもらった事が唯一の思い出だったのだ。しかし、あの頃の藤田は桐島を苛めていたことが、同級生のさなえ(佐々木千恵)の言葉で思い出す。つまり、苛めていた方はすっかり忘れていたのだった。

今回の舞台は今までの作品群よりもコメディ色が控えめだが、その代わり、桐島と藤田の友人としての曖昧さや、苦い記憶、鬱積、屈折を押し出していたように思う。 はやし大輔とアダチヒロキの演技が絶妙。とにかく二人の表情がいい。 アダチヒロキがデリヘル嬢を見た時の鹿のようなツブラナ瞳が可愛い。なのに瞬間、「チェンジ!」と言う。笑

一方でコンビニでのさなえと藤田のやりとりも面白い。佐々木千恵は何をやらせても上手い。

ちなみに引きこもりって運動不足の為に太ってる輩が多いが、ここでの桐島は末期がんなので痩せなくてはいけなかったのだろうか?
継ぎはぎChopperギャングスタ★

継ぎはぎChopperギャングスタ★

オッセルズ

シアター711(東京都)

2011/09/28 (水) ~ 2011/10/03 (月)公演終了

満足度★★★★

確かにつきはぎ!!笑
相変わらずオープニングがカッコイイ。そして導入音楽も素敵だ。序盤からノリノリで楽しめたものの、役者のアドリブで失敗していた。土壇場の実力ってヤツでしょか。笑)
今回、斉藤コータが良い。コメディユニット磯川家の中では周りのキャラに押され気味だが。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤、ドラえもんのネタから。幼い頃、好きな女の子に「私に告白するなんて40年早いわよ!」と、とことんフラレテ恥をかいた男は40年後の自分を見せて見返してやろう、との怨みで頑張ってきた。しかし、その女に40年後の自分を見せることなく、女は死んでしまっていたのだった。

今回の物語は彼と関係のある人たちの40年の歴史を断片的に描写したコントのようだ。寿司ネタの場面でスベッタものの、ラーメン屋のコントはひじょうに面白かったし、将棋試合の情景では次の打ち手までの時間制限が長い為か、確かに旅行くらい行けそうだし。

ただ今回は前作のようなハイテンションさやスピード感はなかったし、笑いの部分でも、すこぉ~し、こじんまりとしちゃった感はあったけれど、ワタクシはこの劇団の笑いは好きだ。ってか、元々ナンセンスコメディが好きなのだ。だから充分楽しめたし笑った!
GO! GO! ジュピター

GO! GO! ジュピター

劇団S.W.A.T!

本多劇場(東京都)

2011/09/24 (土) ~ 2011/10/02 (日)公演終了

満足度★★

舞台装置は素晴らしい
スペース内を想定させるセットはこれから始まる物語がものすっごく素敵なんじゃないかとワクワクドキドキする。まるでディズニーのアトラクションのような感じ。しかし、いざ芝居が始まると期待は崩れ見かけ倒しで終わった舞台だった。本が酷い。劇場はガラガラでした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

説明はいかにも壮大な宇宙物語のさまだけれど、実際はキャストらが作業服を着て有人木星探査船「ハゲタカ」の中で緊張感も無しにぐだぐだ、だらだらとくだらない遊びに耽ってるような情景。
そんなだから、JAPPAだろうが、「ハゲタカ」だろうが、その船に乗ってる感覚は毛頭なく、どっか近所のキッチンで作業服を着てうだうだしてるような風景なのだ。

まあ、S.W.A.T!の特徴として緩いコメディなのだけれど、それにしても笑えないネタってどうよ?どんだけ昭和なんだよ!って突っ込みたくなるような古臭いテキスト。しかも「ハゲタカ」に猫の毛のようなものを発見したことから、エイリアンじゃないか!って大騒ぎになるのだけれど、エイリアンどころかキャストが猫の着ぐるみを着た猫そのもので、「あれ?ワタクシ、キティランドに来ちゃった?」みたいなナリ。

なんすか、コレ。
しかもその猫が子供まで産んじゃう。失笑!
でもって長江健次の演技がヘタ過ぎ。

結局薬局、どうやって、このくだらない芝居を終焉させるんだろ?なんつって傍観していたら、木星に向けて、旅立たせたはずの「ハゲタカ」は仮想空間でのシュミレーションとして約6か月の模擬訓練をしていただけ。ってオチだった。
つまり、四大海流SF純情ファンタジーでもなく、「ハゲタカ」は無事、木星に辿り着けるどころか飛び立ってもいない芝居でした。

チケット代はドブに捨てたと諦めさせられた呆れた芝居。観れば解る。
雑音

雑音

オイスターズ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/09/24 (土) ~ 2011/09/27 (火)公演終了

満足度★★★★

ナンセンスコメディ
とにもかくにもめちゃくちゃ可笑しい。僕が友人に引っ掻き回されるナンセンスコメディだ。その友人はまるでアヒルが沼を優雅に泳ぎながらも、その実、その足で沼底の泥をかき回して濁してるような感じ。笑
次回もまた、東京に来て欲しい。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


僕は友人から大事な話があるからと呼び出され、何事かと急いで友人のところに訪れば、友人は屋根裏に鼠が居るらしいと話す。僕はそんなどーでもいい話が大事な話なのかと落胆するが、友人が撮ったというデジカメの画像には海をバックにピースする友人の妹の画像が現れる。

一見して普通の記念写真のような画像だったが、友人の話を聞くうちにその妹はその時刻にそこに存在しないことが明らかになる。なら、妹は死んでるのか?と考えたが友人の話では生きてるという。つまり僕も友人も生霊のような心霊写真を見てしまったわけだが、この心霊写真をきっかけに居酒屋の店長と店員を巻き込み大騒動となる。

それだけでは収まらず、友人は妹の知り合いだったパン屋にも半ば強制的に妹に愛の告白をさせ、その結果、妹に振られてしまう。どんだけ迷惑なんだよ。って、無駄な行動パターンをさせられたパン屋に追い討ちをかけるように友人は「人の意見に左右されるな」なんつって説教する始末だ。笑

その上、無駄に走らせたタクシー代も僕が払わせられそうになったりと、支離滅裂なコメディなのだが、いかんせん、僕が経験する不条理が爆発的に可笑しいのだ。一見、僕はまともな人間なのだが、奇妙な人間関係の中で味わう閉塞感を何度も経験しているうちに自分自身もこっち側の人間なんじゃないかと錯覚してしまう。

友人と僕の関係は喪失しそうだけれど、どこかで繋がっていて切ることが出来ないさまが滑稽で可笑しい。二人の関係はまったく収拾がつかないのだが、恐ろしいほどにギクシャクしながらも、ぐにゃりと歪んだ世界感のなかで上手く収まってしまうのだ。僕はきっと、これからもずっと友人から離れられないだろう。という未来まで見えてしまう舞台なのだ。
イケテル。
今宵見上げし荒城の月 酔ひてうとうも月のみぞ知る

今宵見上げし荒城の月 酔ひてうとうも月のみぞ知る

劇団SHOW&GO FESTIVAL

OFF OFFシアター(東京都)

2011/09/21 (水) ~ 2011/09/26 (月)公演終了

満足度★★★★★

観客を飽きさせない絶妙さ!
舞台セットがリアル。劇場に入場した途端、なんだかウキウキしてしまう。会津若松の老舗酒蔵の酒蔵で繰り広げられるシチューエーションコメディ。
会津と長州の歴史や「飯盛山の誓い」を絡めひじょうに解りやすくて楽しかった。中でも小金丸ふみ役の都築知沙のキャラクターが素晴らしい。ふみに絡むキャストとのセリフの応酬の絶妙な間があまりにも素敵だ。一方で都築と真逆のキャラクターでお色気たっぷりのジェニファーことMaMaRieがキュートだった。この劇団のキャラ設定が素晴らしい。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


老舗の宮泉酒造の長男である宮森康太郎が現社長だったが気弱な性格の上に決断力が鈍い為、次男の健太郎が社長を支えながらも頭角を現す。康太郎は健太郎が社長になった方が適任だと密かに考え、一方で健太郎はそんな兄を気遣いながら宮泉酒造を盛りたてている。

健太郎はそんな男気のある性質だったが女には滅法弱く女たらしで酒蔵の影で従業員の美和とHをしちゃう。その後に入った従業員の雪の誘いにも乗って同じようにHをしちゃう。つまり酒蔵は健太郎の性の捌け口なのだった。笑

そんな健太郎には、家督を継ぐ者だけに見えるという守護霊の間瀬岩五郎利直が憑いていて健太郎の全ての行いを見守ってるというか、盗み見ている守護霊で、勿論、オナゴとのセックスのあらましも一部始終、見ちゃってるというのだから、健太郎としてはひじょうに遣り難いのであった。笑

これらのコミカルな情景を武器に、そして小金丸ふみの恋バナを盛り込みながら、物語はテンポ良く進められる。そして会津酒造の全てを揺るがすような不祥事も絡ませながら宮泉酒造の買収を目論むビターメディア(株)の企みも押し出す一方で、これを止めるかつての仲間。

兄弟愛や友情、過去の懺悔、利直が聞いた不穏な会話など盛りだくさんな内容だったが、全体的な構成が巧みだった為に、序盤から終盤までぶれずに見事な舞台だった。惜しむらくは内輪で受けていた安部井源吉(サモ☆ハン)のキャラ設定が居ても居なくてもどっちでもよかったし、与えられたようなアドリブ場面のウケがいまひとつ。
 ダイアナ

ダイアナ

天然果実

guru-guru中野(東京都)

2011/09/23 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★

ポール・アンカの「ダイアナ」
これは弟のベビーシッターへの片思いを綴った曲だが、この物語も友人の母親に想いを馳せるという内容。正直言って「Water-Cooler」 の作・ 広瀬格(DART'S/Smokers) ×演出 津島わかな のタッグとはカラーがあまりにも違いすぎた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

こじやんは幼い頃からの親友、ひがちゃんをバーに呼び出しひがちゃんの母親との恋を打ち明けようとするも、こじやんが付き合ってた前カノがひがちゃんの今カノだと知る。しかもこの女は自分から126万円もの大枚を借りたまま、トンズラしてしまったのだった。そんな女がひがちゃんと結婚するって聞いて、騙されてると勘繰るこじやん。

しかし、こじやんはそんな事よりもひがちゃんの母親との結婚をひがちゃんに認めて貰いたいのだった。しかし、話の流れから、ひがちゃんの父親が癌だと知る。ひがちゃんはオヤジのこれからを思いやり、こじやんに母親と別れてくれと頼む。しかし、ひがちゃん母親を愛してしまったこじやんは、その頼みを飲めない。ひがちゃんから母親との手切れ金、1500万円も提示されるが、ガンとして飲めない。しかし、そんな時にひがちゃん母親から一本の電話がかかってくる。癌だと知った夫を放っておけないようだった。

こうして二人は良い思い出としてお互い別れようと話し合い、美しい思い出のまま別れることに・・。

ちょっと、ってか、すこ~し、ってか、いくぶん腹の出てるこじやんが「とし子さん、愛してる」なんて言う行は、今から喜劇でも始まるんかい?なんて思った。更に「恋って不思議だね」なんつって恋モード全開のカバさんが放つオーラは不思議というより、シチュエーションコメディまんまで、どこにもブレズにストレートプレイなのだ。

だから、物語そのものはシンプルで解りやすい。しかし、それだけなのだ。カバさんことこじやんが今以上のポジションに発展することもなく、今以下に落ちぶれささくれ立つこともない。だから何だ?って話なのだけれど、要はポール・アンカの「ダイアナ」なのだ。そんだけ。
桃太郎

桃太郎

the CRAZY ANGEL COMPANY

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2011/09/17 (土) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★

セリフのない音楽劇
舞台では、それぞれのキャストがトランペットやクラリネット、フルート、トロンボーンなどの管弦打楽器の生演奏をし、次いでダンス、殺陣、フラッグなどのパフォーマンを披露しながら無声で登場人物を演じることで物語を形作っていた。しかし、これだけでは物語がどんな風に進んでいくのかは解らない。その補充をするかのように、舞台上にはストーリー(解説)のテロップを流し、当日パンフには登場人物の関係図と、1~20項目のエピソードが載っており、これを読むのを怠ると、隣のバカップルのように「よく解んないけど、ダンスを観てるだけで楽しい~!(^0^喜)」なんつって喜ぶはめになる。
衣装、メイク、小道具で魅せたが、殺陣はイマイチ。パフォーマンスに不可欠の表情で魅せなければいけない演技力にも少々欠けた。90分。休憩15分。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


昔々の物語。大和の吉備という国に温羅(ウラ)と名乗りし者が現れる。呪術を使うことで、大和の民たちを苦しめ、彼が引き連れてきた民たちは近隣を支配していった。いつしか温羅は大和の民より「鬼」と呼ばれようになる。朝廷では、その事態を憂いに思い、3人の若者に大和の運命を託した。侍の犬飼。巫女である夕雅。そして桃太郎であった。温羅の住む鬼ノ城を目指し、3人は旅を始める。道中では山賊の頭領・猿田彦と、船乗りの鳥海を仲間に迎え、いよいよ鬼が島へと船を漕ぎ出したのであった。

最近の公演でこういった鬼が島を舞台に繰り広げられる桃太郎で思い出すのは、X-QUEST の舞台だが、彼らの舞台のド迫力な殺陣までは無理としても、それに近いレベルまで見せて貰わないと納得出来ないものがある。セリフのないパフォーマンスだからこそそういった外堀から魅せる舞台を作らないと本丸までたどり着けないのだ。だから案外、あっけなく、あっさりと終わった感が強い。

それでもダンスと生音楽に魅了されたエンタメではあった。


30&40

30&40

劇団東京ドラマハウス

萬劇場(東京都)

2011/09/22 (木) ~ 2011/09/26 (月)公演終了

満足度★★★★

それぞれの人生
孔子の言葉として、「三十にして立つ。四十にして惑わず。」って有名だけれど、案外、人の一生は年齢に関係なく、迷いっぱなしなのではなかろうか。しかも年齢に関係なく人間って幼稚だし・・。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

超高層マンションの一室に30代の同級会流れのグループが集まり、想い出話に花を咲かせるも、それぞれの事情が浮かび上がる。起業して年収3000万円もの大枚を稼ぐも孤独な男。いけないと思いながらも不倫している女、しがないサラリーマンながらも普通の幸せを手に入れた男など・・。

別の一室には恩師の葬儀帰りの40代が集っているが、かつて一世を風靡し今は落ちぶれた離婚男、夫に浮気されてる主婦(この夫と30の不倫女がリンクする)、子供が出来ない夫婦、独身女、かつての不登校児などだ。

それなりの年齢まで生きてれば喜怒哀楽の全てを経験し、人生の辛辣さや、しんどさも舐めてきている輩たちだが、多岐多様に渡りそれらを素直にきっちり表現していた。たぶん、そうそう!なんて頭を縦に振りながら共感していた観客も多かったのではないだろうか。

舞台は30と40の場面を交互に交錯させていたが、流れのテンポは絶妙で飽きることなく観る事ができた。また終盤にホロリ・・・、とさせる場面もきっちり設けてあり、解りやすく良い舞台だった。北川真美子役の大木美野のFカップ並のボインに目が釘付け。舞台には関係ないけど・・。
Dogs 7days

Dogs 7days

Double Spin

pit北/区域(東京都)

2011/09/22 (木) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★

想定内の物語
ヨーロッパ諸国、ドイツ、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどの多くの先進国では日本のようにペットショップでの生体展示販売をしていないので、この物語は日本の独特な制度から発したものだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


郊外にある動物愛護センターの檻の中には、捕獲された9匹の犬が収容されていた。序盤、彼らはどうしてここに捕獲されているのかさえも解らなかったが、そのうちに長老犬の経験から、自分達は死ぬ運命だと悟り始める。絶望の渕を綱渡りしながら、それでも主人が迎えに来ると信じ、いくらかの希望を抱いたまま、処分されるのだ。この恐怖はきっと犬に限らず死刑囚も似たようなものなのかも知れないが、ここに登場するのは犬のみだ。

あくまでも捕獲された犬の気持ちを描写した舞台だったが、物語はワタクシの想定の範囲内で、パンチ力に少々欠けた。これに人間が関り、犬と人間のバトルな展開があったなら奇想天外で面白かったように思う。ちょっと残念だった。

また、ここに登場する犬はペットらしく全ての犬がビーグルやマルチーズなどの血統的な純血犬だ。つまり金持ちの日本人がペットとして買ったものの、飼い主の事情で怠慢にもペットを手放した事例だが、そもそも犬を家族ではなくペットと扱う書き方は、やはり日本的な舞台なのだった。
【御礼-公演終了!】Blue Bird Baby

【御礼-公演終了!】Blue Bird Baby

劇団MAHOROBA+α

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2011/09/23 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★

本の削ぎ落としが甘い
公演時間は1時間45分なのに凄く長く感じた。たぶん、それは観客を引き付ける脚本の吸引力が弱いのだ。元々、ワタクシはファンタジーは大好物なのにだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


物語は「青い鳥」と「幸福な王子」をMIXしたようなもの。
「青い鳥」は2人兄妹のチルチルとミチルが、夢の中で過去や未来の国に幸福の象徴である青い鳥を探しに行くが、結局のところそれは自分達に最も手近なところにある、鳥籠の中にあったという物語だ。

一方で「幸福な王子」は、金箔の王子像が、あちこちを飛び回っていろんな話をしてくれるツバメと共に、さまざまな苦労や悲しみの中にある人々のために博愛の心で自分の持っている宝石や自分の体を覆っている金箔を分け与えていくという自己犠牲の物語。最後は、金箔の剥がれたみすぼらしい姿になった王子と、南に渡っていくチャンスを逃して寒さに凍え死んだツバメが残る。皮肉と哀愁を秘めた象徴性の高い作品だ。

今回の物語は世界にたった一つしかない「青い鳥」を我が手中に収めれば必ず幸せになれると信じて疑わなかった輩が、いざ、「青い鳥」を見つけても幸せになれないさまを土台に、人が作った「青い鳥」伝説の信憑性や人間本来の持つ残酷さを問い正した物語りで「青い鳥」のBBを主軸に舞台展開していた。

BBが母親と一緒に居ることが幸せだと望むことや、ラビス王子がラズリ姫を犠牲的精神で支えるあたりは「幸福な王子」の中の王子はまさにラビス王子そのもので、ラズリ姫を献身的に守るのである。

結局薬局、幸福とは親子愛や兄弟愛を描写していたことから、家族を幸福の象徴としていたようだ。考えてみれば、なんとなく背中を押されて生きている、といった塩梅の味気ない独り暮らしをしている輩は案外多い。家族がいればこそ、誰かを喜ばせる為に、懸命に働くというものだ。家族がいないということは、そういう逃げ腰の生き方に慣れて板についてしまっているのかもしれないのだ。

この物語はそういった悲哀と滑稽さを交え、本来の幸福の価値観を描写したかったのかも知れないが、役者に吐かせるセリフの無駄が多い。もっと完結にまとめたほうが、より解りやすかったように思う。初見の劇団だったが、その点が実に惜しい舞台だった。
山

劇団ヨロタミ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/09/21 (水) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★

民バージョンを観た
まず、セットの作りこみが素敵だ。片田舎の家庭のある風景。
舞台は全体的に楽しかったのだが、物語自体はシリアスなはずなのに、やたらと笑いを取ろうとする為に、舞台がコミカル化してしまった感は否めない。この本なら、特にコミカルに仕上げなくても良かったような気もするのだが・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


物語はイチ子の少女期に相思相愛だった相手、賢太郎の思想が赤だった為に、憲兵から睨まれ賢太郎の家族は辛い思いをしていた。そんな折、賢太郎は家族の為に、赤ではない証拠として入隊に志願する。こうして離れ離れになってしまった二人だったが、賢太郎は戦死し、残されたイチ子は別の男性、藤崎と結婚し子供も生まれたのだった。

一見、平凡な幸せを掴み取ったかのようなイチ子だったが、イチ子は死んだ賢太郎を忘れるどころか今なお、鮮やかに思い焦がれるのであった。

そんなイチ子の心を知りながら生活をしていた夫・藤崎だったが、イチ子の賢太郎への恋慕の心に耐えることが出来なかった藤崎は離婚を申し出る。このとき、藤崎は「自分自身に勝てなかった」と己を攻めるも、イチ子はこの申し出を受け入れ、そしてなお、かつて賢太郎とハイキングに行った四季折々の山の風景を何枚も描き続けるのであった。まるで山が賢太郎の身代わりのように・・。

一途に一人の男性を想い続けて、他者に自分の隙間を決して見せなかった女・イチ子の一生を綴った物語だったが、彼女に関る郵便屋や孫、お手伝い、父の留吉があまりにもコメディだった為に泣けるシーンで泣けなかった。苦笑!

また、留吉役の河嶋健太のセリフカミが目だって、その度に、舞台上の空気が遮断されて残念だった。更に一部のキャストの演技力がイマイチ。一方で、少女期イチ子役の水谷千尋、賢太郎役の大矢三四郎の二人の演技力があまりにも素晴らしく、二人の淡い恋が引き裂かれる場面では完全にその世界にどっぷりと浸かれて感動のあまり、うるうる・・とした。また、水谷が歌う「カチューシャの歌」のなんと美しいことよ。天使の声。

こうして時が過ぎ、やがてイチ子は終わりのときを迎える。しかし、郵便屋や遊びに来ていた孫たちに囲まれてイチ子は幸せそうなのだ。ずっと想い続けた思いは天に昇華して山の風景に溶け込む。

愛が殺せとささやいた

愛が殺せとささやいた

ドリームプラス株式会社

草月ホール(東京都)

2011/09/16 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★

見応えたっぷり
大女優・鶴田愛子(水沢アキ)が何者かに殺害された。すぐに刑事がやってきて現場検証が始まる。一見、皆が愛の死を悼んでいるかのように見えるが・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


刑事らは愛の実の息子と思われている愛が所属する会社の社員である竜太(松本慎也)、愛と双子の今は亡き妹の長男で製薬会社社員の幸一郎(藤田玲)、その弟で精神薄弱の省二郎(鈴木拡樹)、愛の専属脚本家の三条安孝(宮川一朗太)、幸一郎の婚約者で女優の富永ルリ子(原絵里)の全員に愛を殺したい動機とアリバイを追求していくが、このシーンで容疑者全員が愛を殺した場面のシュミレーションが行われる。この展開で水沢アキはなんと、5回も死ぬわけだが、よくよく考えたら、水沢アキの死んだシーンしか覚えていない。笑

そんな強烈な印象の死の場面で必ず、落雷の音がドドーーン!と鳴り響く。つまり、5回、殺されるシーンに5回の落雷の音だ。笑

そんな舞台で5人の容疑者はそれぞれの屈折した精神を見せ付ける。それは15年前に起きた愛の妹・芽衣子の死の謎が解き明かされた時から、この物語は始まるのだが、なんと、あの時殺されたのは大女優の愛の方だったのだ。殺した犯人は当事10歳の愛の実の息子・幸一郎だった。ここでこんがらがらないように整理するが、殺された愛に芽衣子が入れ替わっていたので、芽衣子の実の息子は竜太で、愛の実の息子は幸一郎と省二郎だ。

当事の愛は大女優という職業柄、二人の息子に愛情を注ぐことが出来なかった。その結果、愛情に飢えていた幸一郎は自らの母を殺し、代理母として芽衣子おばさんに愛情を注いでもらおうとしたのだった。こうして愛と偽って女優の座に収まった芽衣子は、かつての愛と同じように忙しくなってしまう。大女優・愛を取り巻く醜い人間模様を描写しながら、2人の兄弟は母を殺した代償に受け取るはずだった渇望した愛情さえも実らないまま、芽衣子も誰かに殺されてしまったのだ。

5人全員に殺す動機があり、結論は見えないまま、舞台は終わるが、刑事は「君たちにどんな脚本を作られるか解ったものじゃない。」と吐いて終焉するサスペンスドラマだ。
勿論、全員のキャストの演技力は素晴らしい。特に精神薄弱の省二郎を演じた鈴木拡樹が秀逸だった。素晴らしい!

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