鍋田(仮)の観てきた!クチコミ一覧

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gymnopedia

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ミヤタユーヤ

中野スタジオあくとれ(東京都)

2013/11/28 (木) ~ 2013/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

煌めく。
まず私はサティについての知識が殆ど無く、その音楽ですら舞台が
始まってから「あぁ、聴いた事がある」というくらいの無知でしたので、
かえって自分なりのサティのイメージが存在しなかったのは
この舞台を楽しむ上では良かったのかも知れません。

良質な舞台に出会えて、ついつい長くなったので続きはネタバレにて。

ネタバレBOX

エリック・サティの物語でありながら、脚本・演出・出演をされている今の
ミヤタさんそのものを表現している舞台なのだと感じました。

「天才」と呼ばれるエリックの人物像は、どちらかと云えば音楽や芸術に
対しては風変わりな面があっても「普通」の青年、と云う描き方をしている
ように思いました。
そんな彼が今、「天才」「奇才」と呼ばれている、その原因となったお話。

彼と、「Erik Satie」を創り上げたピアノの調律師の友人・クリスとの物語。
脚本はシンプルながらも良く練られていて、90分と云う時間が全く
苦にならずに最後まで集中出来ました。舞台上に一人しかいない筈なのに、
転換の間、人物の入れ替わりなども帽子一つで工夫されていて感心。
これは単独公演を続けられてきた素地が、しっかりしている為でしょう。

照明が美しく、中盤までの夜を想わせる青と緑の光の澄んだ美しさと
後半の赤と黄色が混じりあったオレンジの光の、温かさや、強い熱を
感じられる光も印象深かったです。
黒を白を基調とした、シンプルでモダンな印象の舞台装置と衣装を
より引き立たせているように感じました。

音楽は、全編を通してサティのピアノ曲だったようで、心地の良い音と、
その音を奏でるように踊るミヤタさんのダンスが美しかったです。
ストリートダンスは「表音ダンス」と云うそうで、音楽を身体の動きで
表現するダンスだそうですが、作中での「音が舞うよう」と云う台詞を
体現していたと思います。
特にピアノの鍵盤を叩くイメージで、指先を流れるように動かす振りを
多用していたのですが、この指の先まで神経が行き届いたダンスは
とても印象に残りました。
最期のクリスとの別れのシーンでのダンスは、ミヤタさんが泣きながら
踊っていて、その涙の跡が照明に煌めいて、その美しさに胸が詰まりました。

父親への反抗心から自分の名前の綴りを c から kに変えていた
友人のクリスと共に、100年後もエリックの音楽は生き続ける。

Eric だった彼の名前の綴りは、こうして Erik となる。

終演後、ふと目を落とすと、配られたパンフレットの表紙には、控えめに、
そして確かにこの作品のすべてがありました。

舞台には冬の夜のような澄んだ空気が漂っているけれど、その底には
人間の温かみが感じられる。芝居と、ダンス。良質で素敵な作品でした。

カーテンコールでのミヤタさんの言葉にも、深く感銘を受けました。
やはりこの作品はエリック・サティの物語であり、ミヤタユーヤさんの
物語でもあったのだと思いました。
ホチキス最新作「天才高校〜デスペラード〜」

ホチキス最新作「天才高校〜デスペラード〜」

ホチキス

サンモールスタジオ(東京都)

2013/11/23 (土) ~ 2013/12/04 (水)公演終了

満足度★★★★

爽快。
とにかく、何も難しい事は考えずに舞台上で起こる出来事を受け入れて、
笑って、楽しんで、ちょっぴり感動して、最後には清々しい気分で劇場を
後にする。そんな芝居だと思います。

役者さんひとりひとりのポテンシャルが高い。テンションも高い。(笑)
これだけ全編通してギャグコメディな作風だと、下手な人がいたら、
もうそれだけで笑えなくなってしまう。
そう云う意味でも一見の価値のある作品だと思いました。
お目当ての小玉さんのコメディエンヌぶりも突き抜けていて、本当に
素晴らしかったです。

SHADOW GAME-deep-

SHADOW GAME-deep-

DAZZLE

かめありリリオホール(東京都)

2013/09/18 (水) ~ 2013/09/18 (水)公演終了

満足度★★★★★

深く、深く。
初演の時よりもダンスの部分はさらに磨き上げられていて、追加された
シーンも照明の使い方が面白く、美しく、動く影がまるで生きているようでした。
内容的にも、初演の時よりも観る側に委ねた部分・分かり易くなった部分が
あって、より深く作品を理解出来るようになったと思います。
DAZZLEを観る度に、彼らに出会えたことがまるで奇跡のように思えます。
こんなにも舞台で心を揺さぶられる存在に出会えて、幸せだと思いました。

変則短篇集 組曲『空想』

変則短篇集 組曲『空想』

空想組曲

シアター風姿花伝(東京都)

2013/07/06 (土) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

美味しいレストラン。
遅くなりましたが、短く感想を。
美味しいレストランで、バラエティに富んだお料理を堪能できるような
舞台でした。現実にありそうな、そして虚構が混ざりこんだような、
独特の世界観。「人が、ただ一生懸命に料理を食べている」シーンで
あんなに感動したのは初めてです。素敵な作品でした。

ミュージカル『ドラキュラ』オーストリア・グラーツ版

ミュージカル『ドラキュラ』オーストリア・グラーツ版

フジテレビジョン

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2013/08/23 (金) ~ 2013/09/08 (日)公演終了

満足度★★★★

研ぎ澄ます。
まだ公演中なので、ネタバレにて。

ネタバレBOX

再演と云うこともあり、初演キャスト・特に主役のドラキュラ伯爵の和央さんや、ヘルシング教授の鈴木さんの存在感が更に深くなっていたと感じました。
外見上のデコラティヴな部分をシンプルにした分、より内面が伝わりやすくなった気がします。

初演ではルーシーを演じたヒロイン・ミーナの安倍なつみさんの歌声には、彼女の揺れる複雑な女心を観客に届けるだけの表現力があり、ラストシーンのちょっと残念な脚本自体は変わっていないのですが、再演の方がこの物語に説得力があったようにお思いました。

個人的にお目当てだったヴァンパイアのダンスは、妖しく、美しく、危険な獣のようでいて品があり、「ヴァンパイア」と云う「生き物」としての存在感が圧倒的でした。不穏な風のような人とは思えないキレのある動き、空間に留まる時には彫像のようなポーズを取る独特な振り付けやダンスでの身体表現は、まさに長谷川達也さんの真骨頂だと思います。
DAZZLEとはまた違った一面が発見出来て、こんなにも相性の良いハイクオリティな作品で長谷川さんのダンスが再び拝見出来て眼福でした。
ビョードロ 終演いたしました!総動員2097人!どうもありがとうございました!

ビョードロ 終演いたしました!総動員2097人!どうもありがとうございました!

おぼんろ

d-倉庫(東京都)

2013/05/29 (水) ~ 2013/06/16 (日)公演終了

満足度★★★★

月夜の真白い森で。
前回・今回と、おぼんろの公演は千秋楽の一回だけ参加しました。もし可能ならば、おぼんろは前半・中盤・後半と足を運ぶと物語の変化・進化が感じられる劇団なのでは無いかと思います。以下、帰りがけにTwitterで呟いたことを転載。

ネタバレBOX

おぼんろは、前回・今回と観て、ストーリーや脚本の構成の仕方がやっと把握出来た感じ。総参加者動員数は2097名。彼らの物語は切なく美しくあたたかい。応援したいと思う。でも商業的に大きくしたいのなら、問題点も見える。/「観客」である「参加者」と「役者」である「語り部」の、驚くほどの距離の近さや、本番中でもカメラ・ビデオの撮影を許可するのは、もう少し考えた方が良いのでは無いかとも思う。「やりたい事」と、「やらなければならない事」のバランスを見極める時期なのでは無いかと心配になった。 /とりあえず私は弁士さんコーナーに何一つ面白さを見つけられないようだ。過去の回想を人形劇みたいに演じるのは面白いと思うけれど、動きが少ないから長いとややダレる。/ あと演出に歌・ダンスが取り入れられていた。悪くはないけど、演出としての必要性も特には感じないかなぁ。ジョウキゲンのラップ調の歌は明るい曲調が哀しくて良かった。 /彼らの物語は、ラストシーンに参加者の気持ちを引き込む収束力と、目の前に広がる・想像させる映像が素晴らしく美しくて素敵だ。幸せな物語ではないのに、胸に残るのはあたたかくキラキラした宝石のよう。
* ASTERISK (アスタリスク)

* ASTERISK (アスタリスク)

パルコ・プロデュース

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2013/05/18 (土) ~ 2013/05/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

エポック・メイキング。
正にストリートダンス公演のエポック・メイキングと言える舞台でした。

DAZZLEの世界観をベースにしながらも、個性的な団体が見事に
溶け合って一つの幻想的で美しい物語を創り出していました。
ダンスと音楽、そして物語を語るナレーションによって展開される舞台は
今までダンス公演を観た事のない人でも充分に楽しめる。

出演者のダンスへの情熱が、作品全体のクオリティを高い次元で
安定させて、一場面ごとに息を飲み、ため息が漏れる瞬間が訪れた。
Twitterで纏められていた賞賛の声は、決してお世辞でもなければ、
ダンサーだから感じるものではないのだと私は知っています。
なにしろ、全力で一般人の私が言うのです。(笑)

今後の課題としては、こんなに素晴らしい舞台を創造できるストリート
ダンサーや舞台の存在を、どうやってもっと多くのダンサーでは無い
一般の人々にも知ってもらうか、と云うことでしょうか。

来年には第二弾の公演が決定しているようです。流石に気が早いとは
思いつつも、あんなに凄い舞台を魅せられては期待するしかありません。

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

劇団四季

四季劇場[夏](東京都)

2013/04/07 (日) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

海の中。
ディズニーの原作は未見。とにもかくにも「海の中」感が素晴らしい。オープニングで幕が開いた時に目の前に広がった海の深い青と、人魚姫の美しさには鳥肌が立った。フライングやパペットを使っての水中での動きは、まるで舞台の向こう側に本物の水があるかのようなリアルな浮遊感と、鮮やかな色彩。海の中では役者陣が、絶えず泳いでいる姿勢を崩さない。地上での絵本のような美術も楽しい。歌やダンス、それぞれの魚の動きなども素晴らしかった。欲を云えば、人魚姫と王子との関係がやや薄くて、どちらかというと人魚姫と父王との関係が深く描かれている物語のような気がした。もうちょっと王子が活躍してくれれば、好みの脚本だったかも。

虚言の城の王子

虚言の城の王子

空想組曲

吉祥寺シアター(東京都)

2013/03/03 (日) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

丁寧に。
丁寧に作られた舞台だと感じました。まだ公演中なので、一応、ネタバレで。

ネタバレBOX

ダークファンタジー、との事でしたが最後に残ったのは温かな気持ちと希望でした。すり鉢状の奥行と高低のある劇場なので、舞台美術もそれを活かした美しいものでした。特に始まる前に階段の隙間から漏れる光がとても素敵でした。衣装もシンプルながらも現実と虚構を上手く現しているセンスの良いものでした。ストーリー的には、登場人物達の想いは、誰しもどこかで感じた事のある感情に触れるのでは無いかと思います。ただ、個人的には感情移入出来る人物が居なかった為に、役や演技に心を揺さぶられる感動よりも、素晴らしい舞台に出会ったと云う感動の方が大きかったです。主役・脇役を問わず技量のある役者さん達がキチンと脚本・演出を理解して丁寧に演じていたのが素晴らしかったと思います。
DUST SHOOTERS~ダストシューターズ~【金曜マチネ完売しました】

DUST SHOOTERS~ダストシューターズ~【金曜マチネ完売しました】

カプセル兵団

笹塚ファクトリー(東京都)

2013/02/28 (木) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

10年。
10年前に拝見しているのですが、その歳月はすっかり私の記憶を洗い流して「面白かった」と云う感覚しか覚えていなかったので新鮮な気持ちで楽しめました。やはり演出面での進化が一番感じられました。最初のシーンでの音響の使い方は、まさに「飛び出す演劇」を体感出来ます。ストーリー的にも難しい事は考えずに、圧倒的な世界観とパワーを感じられる作品で楽しかったです。欲を言えば役者さんの技量にバラつきがあった事と、時折挟まれる懐かしの漫画ネタのギャグがマニアック過ぎるので、もう少し一般的にも通るネタだったらな…と思うのですが、それはもうカプセル兵団では無いのかも知れない。(笑)主演の長沢美樹さんの格好良い美しさと台詞の通りの良さは流石でした!

SHADOW GAME

SHADOW GAME

DAZZLE

スパイラルホール(東京都)

2013/01/13 (日) ~ 2013/01/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

光と、影と。
ずっと楽しみにしていたDAZZLEの新作です。

一言で表すなら、素晴らしかった。

DAZZLEにしか作り出せない、幻想的で美しい舞台空間に圧倒されました。
緻密に計算され、様々なアイディアを盛り込んだ照明。
独創的な振り付けのダンスと、一体化した音楽。
最初から最後まで意識を吸い取られて、心を揺さぶられ続けました。

ダンスカンパニーでありながら、ダンスを知らない人にもダンスの素晴らしさを
伝えたい、その「伝える方法」を真摯に模索している団体です。

故に、90分に及ぶ公演はダンスだけではなく、そこに物語性の高い
オリジナルのストーリーで展開されます。
様々なメッセージが込められ、多くの解釈が出来る骨太な脚本も魅力。
「ダンス」を最大限に魅せる為に、台詞は背後に字幕のように投影され、
時にはナレーションが入ります。

今回は黒を基調としたスタイリッシュな衣装も、とても素敵でした。

何よりも彼らがダンスに人生を捧げ、生命を燃やして踊っている姿に
胸を打たれ、涙が止まらなかった。
DAZZLEに出会えて、幸せだと思いました。

どうか、ひとりでも多くの方がDAZZLEに気付いて下さいますよう。

花ト囮 Misty Mansion

花ト囮 Misty Mansion

DAZZLE

あうるすぽっと(東京都)

2012/04/11 (水) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

マイ・アワード。
こちらに登録する前に観た舞台ですが、私の中では間違いなく
最も衝撃を受けて、煌めいていた作品。
再演での演出の変更により、一切の妥協のない完璧な美しさと
儚さを湛えた圧倒的な作品となっていました。

ラストシーン。赤い花びらが舞う中での和傘を使った圧巻の群舞。
あの空間・時間・感動を共有できた事を、私は一生の宝物にします。

ダンスカンパニーなので、演劇好きさんの中ではまだご存知ない方も
多いと思われるのが本当に残念です。

からくりサーカス~サーカス編~

からくりサーカス~サーカス編~

カプセル兵団

笹塚ファクトリー(東京都)

2012/11/15 (木) ~ 2012/11/18 (日)公演終了

満足度★★★★

からくりサーカス、閉幕!
物語の完結編でもあるサーカス編を、大変楽しく拝見しました。
3時間超えの長丁場の為に席にはエアクッションが。ありがたかったです。
からくり編も拝見しており、原作のファンでもあります。以下、ネタバレで。

ネタバレBOX

まずは二部作で、あの壮大な漫画原作を舞台化するのが凄いと思いました。
物語の主要エピソードを再構成して「舞台」として面白く魅せる脚本の力と、
それを演じた役者さんのエネルギーに拍手を贈りたいと思います。

キャスティングも良かったのですが、やや技量にバラつきがあったようにも
思いました。声が潰れてしまっていた方がいたのは残念だったと思います。

前半はやや説明台詞が多いようにも思いましたが、後編はアクションが
これでもかと挿入されて、圧倒されました。流石のカプセル兵団です。
所々に挟まれるギャグも楽しく、良い感じに息を吐くことが出来ました。

今回は泣けるシーンも多くて、好きなキャラクターが舞台から退場する
度に泣いていたのですが(フランシーヌ人形、コロンビーヌ、白金の
最期のシーンは特に好きです)舞台版のラストは原作では見ることの
叶わなかった、夢のような光景で号泣しました。
原作と違う!と思われる方もいると思いますが、私は本当に嬉しかった。

主役の勝を演じた林さんの、真っ直ぐで強い瞳と心に響く言葉(台詞)が
本当に素晴らしいと思いました。
ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!

ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!

おぼんろ

ゴベリンドン特設劇場(東京都)

2012/09/11 (火) ~ 2012/10/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

沼の底。
物語の途中で、沼の底に沈んでいる気持ちになった場面があった。
きっとこの物語に参加した人は、沼の底に沈むキラキラとした星の砂を
心にしまって宝物にするのだろう。

以下、帰り道で、ツイッターで呟いたことを転載。

ネタバレBOX

劇団おぼんろ「ゴベリンドンの沼」千秋楽、幕。評判が良いのも分かる。廃工場をフルに使った舞台空間、温かさと切なさを感じさせる脚本。キチンと訓練されたプロ意識の高い役者陣。何より舞台を愛し、客(彼らは参加者と呼ぶ)をとても大切にしているのが感じられて、応援したくなる。
待ち時間に飴を配ったり、桟敷席のスカートの女性に膝掛けを貸し出すなど、至るところに彼らの心配りが感じられて、開演前から温かな気持ちになる。
元々、50人入ればいっぱいな感じの客席のスペースに倍くらい入っていたからか、荷物の預かりなどで開演が20分程押した。ので、この後の公演の制作発表イベントは電車の関係で残念ながら拝見出来ず。
おぼんろは、見世物小屋の延長にある感じの、観客に演劇世界を「体感させる」小劇場らしい作品を作っていると思う。廃工場を使ったのは面白いが、飛び抜けて話の発想が凄いとかではなく、むしろ普遍的な物語だったと思う。でも、センスが良い。言葉の選び方や、衣装、舞台美術にもそれは感じられた。
主役を演じた主宰の拓馬さんは役柄も相俟って「綺麗」と云う印象。外見もスラリとした線の細い美形さんだが(恐らくロングランでかなり痩せられたと思われる)、放つ空気が透明さと鋭さと優しさを感じさせた。
ゴベリンドンを演じていた高橋さんの肉体・声のエネルギーが凄い。ダンサーやアクション俳優のような、体幹をしっかりと作っている身体だと感じた。
とても良い舞台を観たと思う。やはり作り手が観客をしっかりと意識して、自分達を客観的に見る事が出来ている人だと、観る側の心を震わせる作品になると思う。そこに辿り着けている人かどうかは、素人でも観れば分かる。

個人的には「遊び」を取り入れたシーンは戸惑いを覚えたし、背面で演じられるシーンはどうしても無理な体勢になるので、少しだけ集中力を途切れさせる感じがした。

彼らの目標はシアターコクーンだと言う。その夢を一緒に見たい、と多くの参加者に感じさせる事こそが、おぼんろの持つ特別な「力」のように思えた。
オペラ座の怪人

オペラ座の怪人

劇団四季

電通四季劇場[海](東京都)

2011/10/01 (土) ~ 2013/03/31 (日)公演終了

満足度★★★★

安定した舞台。
高井怪人・高木クリス、鈴木ラウルで拝見しました。
歌声は少しお疲れ気味な感じがしましたが、その分、演技に感情が乗っていて
安定感のある素晴らしい舞台でした。
特にラストシーンの緊迫感のある空気がとても良かった。
アンサンブルの方々も、概ね好演。
オーケストラも最初は打楽器の音が大きいように感じましたが、直ぐに
修正されて気持ちよく聴いていられました。

東京福袋

東京福袋

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/09/02 (日) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

競演/狂宴。
9/7に拝見しました。サスペンデッズ、ジエン社、DAZZLE、はえぎわの
4団体。DAZZLE以外は初見の団体でした。
だいぶ個性的な集団が詰まった福袋だと思いました。それぞれの団体の
カラーは短い時間の中でも感じられたので、面白い企画だと思います。
劇場はロビーなども含めて、落ち着いた雰囲気になっていました。
大好きな団体もあれば、意外な団体、肌に合わないと感じるものもありの
まさに「福袋」なお得感のある企画で今後もあれば良いのにと思いました。
以下、それぞれの団体のザックリとした感想です。

ネタバレBOX

DAZZLEは「君と僕の星」を、ダンスナンバーを短縮しての上演。
今回は照明のタイミングが合わずに、紙で書かれたタイトルを掲げる前に
暗転してしまったり、音楽のタイミングとズレたりと、少し消化不良な出来に
思えました。DAZZLEはダンス作品ならではの「音楽」との兼ね合いで、
照明プランも秒単位で計算され緻密に作られているのですが、残念ながら
それが上手く機能していなかったように思います。
でも、作品の完成度と質の高さ、ダンサーさんの熱量は流石でした。
それと身体表現のダンスカンパニーであるDAZZLEが、他団体に比べて
セットや小道具を多く使っていたのも面白かったです。

はえぎわ、はパフォーマンスと演劇が混ざったような印象でした。
最初の二本は既存作品の抜粋で、最後は次回の予告編でしょうか。
役者さんの演技や台詞には笑えるものも多く、肩の力を抜いて観ていると
突然、シリアスが突きつけられたり、またそれが崩れたり。話の繋がりも
脈絡が無かったりで、シュールな夢を見ているような感じでした。

ジエン社は、面白い脚本を書かれるのだなぁ、と思いました。今回の
福袋に合わせた新作でしょうか。きちんと「福袋」の話題が台詞の中に
入って、きっちりと話に組み込まれていました。
過去現在未来が交錯する感覚は新しいけれど、複数の場面が同時に
進行していくので台詞の聞き取りは難しかったです。主役の男性一人に
女性が4人。この人数で30分の芝居を組み立てるそれぞれの役者さんの
技量は凄いと思いました。舞台の使い方も面白かった。
ラストシーンが鮮烈に印象に残る舞台でした。

サスペンデッズは最初のシーンをどう受け取って良いのか戸惑いました。
が、観てゆくうちに「あぁ、こういう事か…」と納得。役者さんがなんとも
自然な感じで演技をしているというか、空気感みたいなものが良かった。
内容的にも一本の話として纏まっていて、個人的には好きなお芝居を
される団体さんでした。
百物語

百物語

ファントマ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2012/08/31 (金) ~ 2012/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

ファントマらしい、涼。
短編ホラー「家」。キャストの皆さんも演技が達者な役者さんばかりで
面白くも戦慄しながら最後まで拝見しました。
前半部分に挟まれるギャグや、そのスベリっぷりが楽しく、物語の中盤から
クライマックスは、それぞれ別の意味で非常に怖かったです。
延命さんのMAX状態が夢でうなされそうなほど怖かったです。(褒めてます)
あわ様を久しぶりに拝見できたのも嬉しかったです。相変わらず、独特な
存在感の素敵な女優さんだと思いました。
そして怖さの中にも「さまざまな人間の想い」が感じられるラストでした。
トークや企画も楽しく、小さい劇場にギュウギュウでしたが(笑)とても濃い
時間を過ごせました。また、劇場側のトラブルもあったようなのですが、
主宰やスタッフの方が丁寧に対応されていたのも好印象でした。
それから照明や音響の使い方が良くて、より怖さを引き立てていました。
また来年の夏、東京でも「百物語」が観られると嬉しいです。

アイーダ

アイーダ

劇団四季

四季劇場 [秋](東京都)

2012/04/14 (土) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

質の高い舞台。
朴さんのアイーダ、阿久津さんのラダメス、光川さんのアムネリスの
バランスがとても良くて、久しぶりに心が震える素晴らしい舞台を
観たと思いました。脇役、アンサンブルもきっちりと作品世界を表現
していました。朴さんアイーダは王女としての凛とした美しさと女性と
しての可愛らしさ、時折見せる無邪気さなど、魅力的なアイーダでした。
歌声も美しく、ローブを纏う場面では凄みすら感じました。
ラダメスは荒々しくも、どこか少年のような印象で、二人の女性が彼に
惹かれるのも納得。ただ、少し歌声がお疲れ気味に感じました。
光川さんのアムネリスは、とにかくスレンダーで華やかで美しい。
王女としての可愛らしさと共に、心に潜む孤独や重圧を見事に表現。
特にラストシーンの、王女から女王へと変わってゆく彼女の切ない覚悟に
涙が止まりませんでした。ダンスシーンも迫力があり、振り付けも
空手の型のような動きがあったりで格好良かったです。
キャッチーで耳に馴染む音楽も素晴らしいと思いました。
舞台美術も、特に照明を使った人物のシルエットを効果的に見せる
手法がとても美しかったです。

組曲『回廊』

組曲『回廊』

空想組曲

OFF OFFシアター(東京都)

2012/07/19 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

回廊の中に。
こちらの劇団は今回初めて拝見させて頂きました。繊細さと優しさと、
少しだけ闇を感じるような緻密な脚本は、役者さんの雰囲気や演技に
ピタリと嵌っていて、まるで宛書きされているかのように思えました。
小説で言うならば短編を繋ぎ合わせて一つの物語を形作っているの
だと思いました。一つ一つが独立しながらも、大きな物語の1ピースと
して存在している。時折、大爆笑出来るようなお話が挟まれるので、
良い具合に肩の力を抜くことが出来ました。話によっては観客すらも
回廊の中の登場人物となる演出も見事。物語の軸となる人物達の
出会うラストシーンは切なくて、温かくて、とても美しいと思いました。
ゲストさんを含めたそれぞれの役者さんの技量が素晴らしく高くて、
きちんと作品を理解して、とても丁寧に演じられていて感動しました。
これからの作品も、楽しみにしています。

ゾンビ×幽霊×宇宙人「オール恐怖大行進!!」【ご来場・応援ありがとうございました! 次回は11月! からくりサーカス~サーカス編~を上演いたします。 乞うご期待!!!】

ゾンビ×幽霊×宇宙人「オール恐怖大行進!!」【ご来場・応援ありがとうございました! 次回は11月! からくりサーカス~サーカス編~を上演いたします。 乞うご期待!!!】

カプセル兵団

ワーサルシアター(東京都)

2012/07/12 (木) ~ 2012/07/22 (日)公演終了

満足度★★★★

演出の力。
一日で2バージョン拝見しました。同じ脚本で、演出・キャストを変えての
新たな試みを、楽しく鑑賞しました。
ストーリーが同じでも、かなり印象の違う作品になっていたと思います。
バカ版では、まず衣装・そしてキャスティングから既にバカを演出して
いる事に感心しました。出演者もノリと演技に対する反射神経の良い
方が多かったと思います。
ただ、カプセル兵団らしい懐かしいアニメや漫画・ゲームのマニアックな
ネタを組み込むシーンが多かったので、分からない人には不親切かも、と
感じました。あと女性的には、下ネタも笑えると云うよりは苦笑気味に。

ノーマルはいつものカプセルらしい感じで、適度にネタや笑いも入れつつ、
最後にはそれぞれの伏線が綺麗に回収されて、ちょっぴり感動も出来る
良い作品だったと思います。役者さんは若手の方が多かったのか、
少しこなれていない(特に台詞)部分が目立ちました。
2バージョン観ると、演出によってここまで違う作品に感じられるのだと
「演劇」の面白さを改めて実感出来る、意義のある試みだと思いました。

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