マイルドにしぬ
プロペラ犬
赤坂RED/THEATER(東京都)
2007/11/27 (火) ~ 2007/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
水野美紀が消えて水野美紀が生まれ・・・。
水野美紀がこれまで演じ築いてきたイメージが見事に崩れ、一方で非常に魅力的な水野美紀という女優に遭遇したような90分でした。
河原雅彦も彼女をサポートするというよりはガチンコで挑んでいくような感じで・・・。
ちょっといびつな楠野演出がなぜか二人のテイストにはまって、不可思議に斬新なえぐおもしろ空間が構築されていて・・・。
予想外に刺激的で、ほんと堪能しました。
コントローラー
北京蝶々
早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)
2007/11/16 (金) ~ 2007/11/23 (金)公演終了
満足度★★★★
帯金の力、帯金を支える力、追い込む力
PCをゲートウェイにして展開される二つの世界、底から浮かび上がってくる人間の根源的や欲望、役者の力が二つの世界を見事にひとつの世界として表現したことで個々の登場人物が抱えるものが見事に浮かび上がっていました。
役者では帯金ゆかりの演技が秀逸・・・、ひとつの小さな動作や台詞にしっかりと彼女が観ている色や感じている重さを観客に伝えていました。鈴木麻美の狂気も心に残る演技で・・・。でもその背景で二人に絶妙なトスをあげ続けたバイプレイヤーたちの演技が光った舞台でもありました。
絶妙の塩加減のペペロンチーノを想起させるような出来・・・、12月にアナザーバージョンがあるそうで、これも観たくなりました。
美しきファーム
マシンガンデニーロ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2007/11/09 (金) ~ 2007/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
物語の先にベクトルをもう一本
渋谷ルデコの閉塞感が高い空間での3人芝居・・。
役者たちに気負いがなくまるで水が流れるように進んでいく物語。
水彩画をみるような透明感とどこか淡白に流れる時間のなかで、気がつけば人生の尺までも感じるような巧妙な仕掛けが隠されている・・・。
派手さはないけれど、間違いなく深い部分で心に残る佳品でした。
恐れを知らぬ川上音二郎一座
東宝
シアタークリエ(東京都)
2007/11/07 (水) ~ 2007/12/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
三谷幸喜の円熟を感じました
前売りチケット争奪戦にあえなく敗退して、だめかとおもっていたのですが、当日券整理番号分が電話一発でつながってプレビュー2日目をみることができました。
すごくよく出来た話で、観ていてぐいぐいとひっぱられる感じ。時間をまったく感じない。飽きない。一幕が終わってけっこう満腹な内容であるにもかかわらずもっともっと観たいと思ってしまう。三谷作劇の真骨頂を見たように思います。これなら木戸銭にも納得、お買い得感さえありました。
慈善 MUST BE DIE / マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック
MCR
ザ・ポケット(東京都)
2007/10/03 (水) ~ 2007/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★
すっとはまるMCR作劇
MCRは昨年の本公演以来。
重い話を軽妙な展開に乗せて、軽いこだわりを重く演じて・・・、
重さのデフォルメとリアルさの出しいれて濃淡を作っていくドリルこと
櫻井の手法は昨年の本公演より磨きがかかったような・・・。
あひるなんちゃらの黒岩三佳のテイストと櫻井がベースに持つ
慧眼と繊細さの混在がしっかりと感じられた作品で
見ていてはまりました。
なんというか麻薬のようなひきつけられ方をするのですよね、この劇団・・・。
アメノクニ/ヤマトブミ~Children Of The Sun~あまてらすうみのこたち
innerchild
吉祥寺シアター(東京都)
2007/08/31 (金) ~ 2007/09/09 (日)公演終了
満足度★★★★
史観を梃子に真理を見せる力
歴史を梃子に真理を見せる力にはとても非凡なものを感じました。野田MAPなどにも見られる手法ですが、時間軸のとり方が大きく、なおかつ物語の語り部としての小手氏にはその時間軸を維持できるだけの物語構築力があるのだと思います。、
役者にもある種の切れがあり、多少複雑な物語でありながら風通しのよさを感じたし、時間の流れをコントロールできる力量(これは演出の力?)もあり、時間を忘れて物語に浸ることができました。
穢れ知らず
空間ゼリー
ザムザ阿佐谷(東京都)
2007/08/31 (金) ~ 2007/09/09 (日)公演終了
満足度★★★★
炭が熾り、燃え崩れるような・・・
台本がとても緻密で、しかも役者の表現に力みがなく、すっと伝わってくる感じの舞台でした。構造的にはやや複雑な部分もあるのですが、順番にカードが開いていくような展開なのでその複雑さが次のシーンへの興味につながり、ますます引き込まれてしまったような気がします。
求心力豊かな、出色の舞台だと感じました。
Rental GIRL'S BOX 箱入り彼女展示会
NICE STALKER
新宿眼科画廊(東京都)
2007/08/15 (水) ~ 2007/08/17 (金)公演終了
満足度★★★★
女優陣の力
HPなどには多少煽情的なキャッチもありましたが
内容はよく作りこまれた3つの物語をコアにして
物語の外側にいろんな工夫を凝らした
きわめて演劇的に内容の濃い作品でした。
3人の女優たちの演じるキャラクターが
まるで浮かび上がってくるがごとくで
彼女たちの実力に脱帽。
伊藤さんもしゃんとした演技で女優陣の力を最大限に引き出していたし
小杉さんの体を張った半スタッフ的な演技も
物語を貫く枠組みのようなものをしっかりと作って見せたと思います
素直に面白かったし、男女間の真理のようなものも
考えてしまう深さを持ち合わせた作品でもありました
ひーはー
Piper
本多劇場(東京都)
2007/07/26 (木) ~ 2007/08/12 (日)公演終了
満足度★★★★
本当にモアスプーキーハウスだ・・・
2年ぐらい前に上演されたスプーキーハウスの一番最後にごとうひろひとさんが「モアスププーキーハウスでお会いしましょう」とおっしゃっていたのですがそのとおりの公演になりました。
いい加減な割には律儀な思い違いや掛け違いがてんこ盛りで、しかもそれらがちゃんと機能している・・・。
見所もたくさんあって、客を楽しませるという気持ちもういっぱいで・・・。
小難しい演劇もよいけれど、こういう芝居って本当に楽しい。
見て幸せになる芝居かと思います
砂利
劇団ダンダンブエノ
スパイラルホール(東京都)
2007/07/21 (土) ~ 2007/07/31 (火)公演終了
満足度★★★★
本谷的「0」の発見?
さすが大和屋というか板東三津五郎の「静」の演技が生きて、本谷脚本に描かれた精神的虚数というか「0」の概念のようなものが見事に具現化されていました。
倉持演出で登場人物の性格がくっきりと見えた分、本谷の描く「0」が明確になっていて思わずひと膝乗り出しました。
本谷さんはこの作品でなにげに新しい武器を手に入れたような感じがします。
THE BEE
NODA・MAP
シアタートラム(東京都)
2007/06/22 (金) ~ 2007/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
同じ内容からことなるニュアンス
日本版に続いてロンドン版をみました。
まったく同じ戯曲なのに、ニュアンスが若干ちがうのが興味深い。
まあ、観ていてただではすまない芝居でしたが、日本版とあわせてみていると同じ横顔も右からと左からではかなり違うように、観た感じがかなり違っていておもしろかった。
どちらにしてもありえないほど演劇的なレベルは高いとはおもいましたが、どちらがすきかといわれると日本語版のほうが若干好きかもしれません
THE BEE
NODA・MAP
シアタートラム(東京都)
2007/06/22 (金) ~ 2007/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
ハイビジョンで観るような
筒井康隆氏の原作を踏襲してはいるのですが、それを踏み越えた世界が舞台に展開してしてました。
ある意味シンプルな構成なのにそこからたちあがって来る狂気はまるでハイビジョンを観るように細密で…。
その衝撃はしばらくあとを引くような…。
ロンドンバージョンも楽しみになりました。
毒と音楽
あひるなんちゃら
王子小劇場(東京都)
2007/06/20 (水) ~ 2007/06/25 (月)公演終了
満足度★★★★
価値観をちょこっとすりかえて・・・♪
価値観をすこしだけずらして、あとは物語をころがしていくだけ・・・。
でも、それだけで事象の表皮と内側がちゃんと見えてくる不思議さ・・。
脳をちょっとだけくちゅっとマッサージされて脳内麻薬を搾り出されたような・・・。
癖になるなにかを持ったお芝居でした
スピンオフ
マシンガンデニーロ
萬劇場(東京都)
2007/06/14 (木) ~ 2007/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
引っ張る力は十分、
前回公演が初見で今回は2回目。演技にムラのようなものがなくなり、スムーズに物語が運ぶようになった。
暴力的なシーンもあるのだが、舞台全体のトーンがきちんと仕上がっていたので、それらのシーンが物語のなかにうまく取り込まれていた。
主演の松崎に限らず、他の役者が想いを適切な力で表現できていたのが作品の説得力につながったと思う。
松崎の演技もさることながら、前回同様船木の演技がよく芝居のトーンを支えていた。他の役者も舞台の空気の質量のようなものをうまくコントロールできていて、観客が一気にひきこまれてしまった
ワンマン・ショー
森崎事務所M&Oplays
シアタートラム(東京都)
2007/06/07 (木) ~ 2007/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
重いお話に重さのないシーン
不思議な感覚のお芝居でした。
自らより発して自らに戻る仮想世界の表現は、本来深く重いものなのに、描かれるそれぞれのシーンには重さがあまり感じられません。
まるでセロファンを重ねられるように積み重ねられていくシーン。
本当に不可思議な感触をもったお芝居です。
ドラマ進化論 ※5/31-6/6に公演延期
北京蝶々
早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)
2007/05/31 (木) ~ 2007/06/06 (水)公演終了
満足度★★★★
単に進化させただけじゃない・・・
β版からくらべて、物語のスキームは同じなのですが、一番気になっていたラスト部分の見せ方も含めてずいぶんと改良されていたと思います。
しかも、改良していく中で、物語にこめられたモチーフというか表現したいものもなにげに変化していたような…。
この作品って「アンケートによって物語を改良していきます」というだけではなく、β版と今回の両方を観た観客にとっては演劇の表現メソッドに関するしたたかな実験結果の発表会という側面もあるのではないかという気がします。
芝居としても素直によく出来た作品だと思うし、1時間強の芝居としては映像の使い方や役者の演技も含めて秀逸な内容だったと感じるのですが、それだけでは収まらないなにかがこの2回上演芝居にはあるような感じがしました
サロ・ギュラ
zupa
小劇場 楽園(東京都)
2007/05/25 (金) ~ 2007/05/29 (火)公演終了
満足度★★★
魅力はたくさんあるのだけれど・・・
楽園という空間が、この芝居には実にマッチしていたと思います。
空間が持つべき緊張と開放、透明感・・・。
時間がすこしゆがんで見えて、女性の一番そこに眠っている気持ちが
すこしみじろぎをして見せて・・・。
上演時間はとても短く感じられました。
基本的にはすきなタイプの芝居だと思います。
ただ・・・、サロメやカリギュラの概念によって釣り上げられるはずの気持ちが、芝居のなかで定まっていないような感じをうけるのです。
古典文学の粘度が現実の気持ちにしっかりからんでいかないというか、
それぞれのシーンが完全に混ざり合わないというか・・・。
観終わって充実感を感じる反面、なにかみたされない気持ちを持って劇場をあとにしたことでした。
役者では藤谷みきがとても魅力的。柏原直人の物語を進める推進力のようなものも魅力てきでした。
チューブラルーム
双数姉妹
新宿シアタートップス(東京都)
2007/05/26 (土) ~ 2007/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★
役者が支えあって・・・
他の方も書かれていましたが、美術はやっぱりすごい・・・。
自分がシアタートップスにいるのを完全に忘れてしまいました。
内容も、3つの物語の関係性がとても見事に機能していて、時間をまったく感じることなく引き込まれてた・・・。
役者の方、みんな演技としては十分足りたっていたのですが、新人の方のパワーっていうのはこれからついていくのかな・・・て気がします。
やっぱり吉田麻起子がでてくると、他の新人たちはかすんでしまうし、吉田も、毎回レベルは上がっているのだけれど、今林、井上、小林、五味といったところの演技から見ると荒さがでてしまう。
ただ、新人をぶっちぎるのではなく、しっかり受ける演技が先輩達の随所に見られて、それが舞台のふくらみにもつながっていたように思います。
こころにふっとしみるシーンがいくつもあって、益々次が楽しみになりました。
犬は鎖につなぐべからず
ナイロン100℃
青山円形劇場(東京都)
2007/05/10 (木) ~ 2007/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
時間を滑らせる力
戯曲の普遍性というものは当然にあるのですが、それらの見せ方にケラマジックがある・・・。
ダンスや着物なので、劇場全体の時間を滑らせてしまう感じ・・・。
大正から昭和にかけてのモダンさが、いまの粋とかわらないことが
実感として感じられる・・・。
役者もよいし・・・、ゆっくりとやってくる満足に3時間にわたって
ゆっくりと浸る感じ・・・。
ベテランの役者も幅が広がり、新人と呼ばれていた役者もしっかりと力をつけて・・・。
ケラさん万々歳ではないでしょうか・・・。
血の婚礼
アトリエ・ダンカン
東京グローブ座(東京都)
2007/05/03 (木) ~ 2007/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★
熱と重さを持った舞台
ストーリーはシンプルなのですが、登場人物一人一人の思いが重なり合うと舞台に熱が生まれていくような台本です。
役者の力量が問われる作品でもあり、役者達も好演で見ごたえは十分です。
森山未來のダンスステップは見る価値十分だし、江波杏子の怪演に加えてソニンや浅見れいな尾上紫なども繊細でありながらも力をもった演技・・・。
上演時間はそれほど長くないのですが、観劇後ずっしりくるようななにかを持った作品でした。