どこか深淵を見るような(ドゲスバージョン追記つき)
抑えめというかソリッドな表現のエピソードから見えてくる、内心の深淵のようなものに息をのむような・・・。
一度だけではちょっと飽き足らないような深さを感じる作品でありました。
早めに観に行ってよかったと思います。
(ドゲスバージョン)
で、飽き足らなくて10日にドゲスバージョンで再観劇。
ドゲスであることで、作品の表現が強くなった部分があって・・・・。
それと、2回観ることで慣れるよりより深く入り込む感じが強くて・・・。
この作品の懐の深さに改めて感嘆したことでした
ネタバレBOX
役者の演技には表層の中間色の裏側に突き抜けるようなヴィヴィドさが内在されていて・・・。
全員が舞台で演技をするシーンがあって、その構成が実に秀逸。
中盤の人間関係を俯瞰したような表現や終盤のキャラクターの個性がカオスを作り出すようなシーンにはまさに息をのみました。
前回の動転とはちがったトーンながら、凌駕されるような力が作品にあって・・・。
しっかりとあとを引く作品、もう一度見ようと思います。早めに観てよかったです。
ちなみにドゲスバージョン、どうなるのでしょうね。
(で、2度目ドゲスバージョンを観て)
ドゲス部分が素直に笑えてちょっとドキっとして・・・。でも通常バージョンでの舞台のトーンをひっくり返すような作りではなく、むしろ作品のモチーフを強い表現であらわした印象がありました。透明感を少しだけ減じて実存感を強めた感じ・・・。
それより、2度目になると前回それぞれのシーンの色に見入ってしまった部分が物語としてしっかりと見えてきて、今度はシーンを支える作家(兼演出)の慧眼とその表現の質量にぞくっときました。
登場するキャラクターすべてから舞台で演じられない時間までが伝わってくる・・・。その場の雰囲気が演じられるというよりも、キャラクターの重なりからその場が醸成されているような・・・。そこまでの描写力がこまつみちるさんや役者たちにあるから、伝わってくるものにぶれがなく観る者を圧倒していくのでしょね・・・。
観れば観ただけ、はいりこんでいけるような懐の深さがこの作品にはあって・・・。
こりゃ、今後のコマツ企画からも、ますます目が離せなくなりました。
上品な下世話さをもった極上のコメディ
TOPSのキャパにぴったりの極上コメディ。
下世話な話題もないわけではないけれど、上品で良質な笑いにちゃんと転換されていて・・・。
客席の年齢層にもかなり幅がありましたが、それらに左右されない懐の深さと洒脱さがあるお芝居でした。
ネタバレBOX
飯島早苗は昔と変わらない慧眼で、それぞれのキャラクターを描き、あざとさが出ないぎりぎりの線で物語を動かしていきます。
女性の思いを一元に描かず、混沌を残して物語を引っ張って行った所に作家のぞくっとくるような才を感じたことでした。
また、大技小技を取り混ぜて笑いを作り上げているので、笑っても飽きがこない。うまいなぁと思う・・・。こういうセンスってたぶん理屈ではないのだと思います
役者は文句のつけようがない・・。櫻井智也のMCRと変わらない突っ込みに場内が何度もひっくり返されていましたが、その一方で彼の演技からは良い夫であるキャラクターの姿がしっかりと見えてくる。
堀越悦夫が演じる中年独身男の意固地な部分にもちゃんと孤独がやどり、っ塩田卓治の感情の薄さの表現にも、彼の心のぬくもりがキチンと折り込まれていて・・・。
歌川椎子の熟達した演技は主人公のカオスをしっかりとした質量で描き出し・・・。
結果、ブロードウェイばりの洒脱で大人のテイストをもったコメディに仕上がっていました。
きっと、飯島さんの代表作のひとつになるのだろうし、いろんなバリエーションで再演されても面白い作品だと思います。
猫と人の合わせ鏡
サクサクと話がすすむそのスピードの中に、含蓄がたくさんあって・・・。
どこといわれると難しいのですが、でも間違いなく何か納得してしまうようなものをもった作品でした
ネタバレBOX
猫たちの生態をいろいろと語る人々が、どこか猫に近いような行動をしているところがじわっとおもしろくて・。・・。
その家の奥さんの心の動きと旦那の受け入れ方に、ふっと男女の機微をおもってしまいました。
統一感があるよさではなく、どこかばらつきが舞台にあって、でも全体を覆うようなトーンがしっかりと構築されていて・・・。
そのあたりのデザインが何ともいえず魅力的なのです
細密で確かな描写力
豊かな発想力もさることながら、その描写力に瞠目。
それぞれの作品に時間への大きな俯瞰と繊細な内面への描写力を感じました。
時間の曖昧さのなかに確かなリアリティがあって・・・
描かれる世界に潜んだ高い精度と密度に息をのみました
ネタバレBOX
4つの作品それぞれに秀逸な発想があります
(あゆみ)
記憶の断片が次々に浮かんでくるように、子供のころの思い出や今の生活が一本の線上での事象として描かれていきます。家出の記憶、友人の家で遊んだこと、久しぶりに出会ったこと、働く今・・・。照明が当たる部分にあわられれる連続した意識の裏側で、いろんなことが循環していく。
そこに一人の女性の内面が浮かび広がる。概念ではなく、まるでスケッチのように、女性の意識と無意識の領域が描かれていく感じ・・・。
(ハイパーリンくん)
自分の立ち位置から、ミクロとマクロの世界観が広がっていく。そしてその中心にいる自らの浮遊感が観客にやわらかく降りてくる・・・。
リズム感に潜んだ法則性に沸き立つような厳然さを感じ、劇場空間全体をつかったその広がりの表現に浸潤するような浮遊感がやってきます。
形容矛盾ですけれどシンプルで細密な曼荼羅の中に身を置いたような気持ち。
そして、重なるように生徒が先生となり、思索が受け継がれていく時間軸があって、そのなかで空の色の描写がすっと観客の今を満たしたような・・・。
(反復かつ連続)
4人姉妹と母親の朝の時間を一人ずつ重ねていく・・・。
そこに生まれた朝の喧騒のなんと瑞々しいことか・・・。
下世話な日常が何か心地よくて、途中の音楽による調和に吹き出しながらも、不思議な家族のきずなを感じて・・・。
5人の登場人物が描かれたあとに音だけの反復があり・・・。
宴がおわったような空間のその先にあるものに心を優しく締め付けられました。最後にお茶を飲む老婆の表現が秀逸。
その姿に彼女が過ごした日常の積み重ねというか人生の道程が垣間見えて・・・。
ある朝の家族の風景へのいとおしさと彼女の過ごした時間への畏敬のようなものを同時に感じて・・・。
(純粋記憶再生装置)
別れから出会いのころにさかのぼっていく記憶の緻密な描写。ク・ナウカのように語り手と演じ手がシンクロして作り出す世界に、心に浮かぶ風景の細密な描写があって・・・・。役者の動きは観客に記憶の移ろいを感じさせるほどにしなやかで動作と声の主の分離に記憶と現実のやわらかな乖離があって・・・。
演じる法則が時間をさかのぼるに従って崩れていくなかで、記憶のあいまいさがふくらむ。無意識に為される自らの記憶への干渉を感じたりもして・・・。
舞台装置となる白い紙がしっかりと機能していました。
実存したはずの楽しい時間に踊る、雪に見立てた白くなにもかかれていない紙に、たまらないほどの愛しさがやってきて・・・。
ひたすらにその世界に引き込まれ、その透明感をもった切なさに言葉を失いました。
4つの作品に共通しているのは、心の窓からながめた時間の流れで作品が編まれていること。
その流れは絶対的な時間の概念で観ると、ダリのふにゃっとした時計を想起させたりもするのですが、でも、心に去来するものの描写としては精緻でしなやかなリアリティを持っていて。
シュールリアリズムというのは言葉の使い方が違うのかもしれませんが、現代絵画に通じるような鮮やかな時間の切り口と、その発想をささえる精緻な演技にひたすら瞠目。
見終わった後心が満たされて、しかもその世界がさらに大きくふくらみつづけるような作品群でした。
役者の力は十分なれど
見ごたえのあるシーンがたくさんあるし、役者も充実していたと思います。
ただ、シーンごとの空気がうまく舞台上で連続しないというか、作品としてもっと膨らんでもよい素材なのになと、ちょっとおしい気がしました。
ネタバレBOX
なにか舞台の空気がうまくつながっていかない。
洒脱であったり妖艶であったり・・・。よいシーンはたくさんあるし、終盤の物語が融合していく部分にも見ごたえもあるのですが、一つずつのシーンの密度がなにか足りない。
決して悪い作品を見ている印象はないのですが、この物語にこの役者の演技ならもっと巻きこんでいくような力があっても良い気がします。
トークショーで佐野氏が、前半対面客席の反対側で最高6人が寝ていたとおっしゃっていらっしゃいましたが、私も確かに一瞬うとっとしたかもしれません。
物語は繋がっていたので、意識が飛んでいないと思うのですけれど・・・。
ただ、そういう風に佐野氏に指摘させしめるところに、もこの舞台の特に前半部分の密度が示されていると思うのです。
たぶん、同じ場面を映像で再現すれば、それが淡白なものであっても観客をしっかりとらえていたような・・・。物語は染まっても場の空気になにか疎な部分があって・・・。
後半はぐっと舞台の密度が増したようには思いますが・・・。
ちなみに、今回の売りパンフレット、よく作りこまれています。対談が読みたくて購入しましたが、おまけのはずのカレンダーがとても洒脱で・・・。1年間十分使用に耐える一品でありました。
ワークインプログレスを・・・
「ソバージュばあさん」をワークインプログレスで拝見させていただきました。
始まる前は
完成途中のお芝居をみせていただくくらいに
おもっていたのですが、とんでもない
はじまるやいなや
役者の作る密度にあれよあれよと惹きこまれて・・・。
これは、劇場での公演がほんとに楽しみです。
ネタバレBOX
内容は書きませんが
すうっと始まった芝居からは
一気に風景が浮かび、重さが生まれ・・・、
会場の色がドラマの色にかわって
魔法にかかったような気がしました。
終演後、演出の方やスタッフ・役者の方と
お話もさせていただき・・・・・
本当に力を持っている方々っておだやかでしなやかなのですね・・・。
でも、その一方で、不思議なことに
ソバージュばあさんや他のキャラクターの印象が
ますます深まったような・・・
シンプルできゅっと締まったシーンたち
開演前のちょっとゆるい雰囲気作りに油断をしていたら
物語に入ってからのキレを持ったシーン達にやられました。
シンプルなシーンの中で
必要なことがちゃんと物語られ
遊び心があって、
しかもバリを残さず物語がちゃんとつみあがっていく
あれよというまに物語に取り込まれてしまいました。
ネタバレBOX
板倉チヒロの力が大きかったのは紛れも無い事実
しかし、彼が力を出し切る場を作り上げた演出にも瞠目しました。
中高生の教室のシーンのなんてヴィヴィドなこと・・・。
集団の処理の旨さというか、空気の作り方の巧みさに
完全に取り込まれてしまった
物語としてはルーズな不安の中にずっとおかれつづける
人々の淡々とした部分、特に子供達の姿がとても印象的。
それと、人(?)をいとおしいと思う感情の表現を本当に瑞々しく感じた。終盤なにかを超えて溢れ出す想いが舞台上にあって・・・。それはもう理屈じゃなく伝わってきて。
板倉のアクの強い演技からは想像もできないまっすぐなものがやってくる・・・。それに対して観客に受身を取らせないようなしたたかさが、この舞台にはあるのです。
いじめっ子との別れのシーンも凄く心に残りました。女優二人が大好演。
野上の演じる天真爛漫さが本当に生きていて・・・。
終幕の前のシーンからの長い暗転と最後のシーンも旨いなと思いました。
それはもう、終演後、台本等、思わず買ってしまうほど。
本当に観にいってよかったと思います。
無駄なく丁寧な表現
赤堤ビンケ初見・・・
目立たないのですが、物語る部分にメリハリがあって
シーンごとの丁寧なの作り方にじっくりと惹きこまれて・・・・。
最後に見えてくるものにやわらかく深く心を奪われました
ネタバレBOX
開演時の客電の落とし方から始まって
一つずつのシーンがすごく丁寧に作られている印象を持ちました。
物語のコアになる部分は饒舌なほどに、一方不要な部分は極端に絞られているような・・・。
その結果として、タイトルにもなっている四日目のシーン達が実に見ごたえのあるものになっていたように思います。
鼻をかむシーンの繰り返しが最後にしっかりと物語のニュアンスを伝えてくれれる・・・。なにかその部分にすごく惹かれて・・・。同時に鈴木演出の力を感じたことでした。
また、牛水里美さんの演技力も十二分に発揮されてそれを見るだけでも元を取ったよう・・・。
一方で短い出番ではありましたが、大内涼子さんの演技からも、強い印象を受けました。
男優陣もしっかりと舞台を作り上げていて・・・。
あとになにかが残るような見ごたえのある芝居を観せてもらったと思います。
戯曲もすごいけれど演出も・・・
比較的シンプルな舞台に逃げることのできない閉塞感を見事に表現した前半部分、一方箍が外れたような戦後の社会を旨く表した後半部分・・・。
目が覚めるような演出もすごければ、それを舞台に具現化する役者もすごい・・・。
ネタバレBOX
机にぎゅうぎゅう詰めで乗せられた人々の窮屈さと、その中でも凛とした声が開場に響き渡ることのある種の違和感が、時代を見事に表現していたように思います。
赤いボールやチョコレートの本土空襲もわかりやすく鮮烈。
また、終戦のどこか統一性の失した開放感の表現には目から鱗が落ちる思いがしました。
音や光も含めて、終盤まで、見事に芝居を見せきった演出の技に瞠目。
一方で戯曲が内包するテーマの普遍性がルーズになるどころか鮮やかに浮かび上がる演出でもありました。決して奇をてらった表現ではないのです。
前述の通り役者達の力も十分で
ほんと、3時間があっという間でございました。
終演後のおまけ(お正月イベント)も実直で暖かくて・・・。
大満足の新年初観劇でした。
ゆるくても奥行きが・・・
お正月っぽい出し物があったり
遊び心があったり・・・。
ぐたぐたな部分もそれはそれでとても楽しくて。
ザ・ノーバディーズのミニライブもすごく良くて・・・。
六尺堂の見学も含めて、今年もなにかよいお芝居を沢山観れるような
そんな気持ちにさせてくれる会でございました
ネタバレBOX
前田氏作・演出の崩れそうで崩れない舞台、そのあやういバランスがなんかよいのです。お正月の出し物という事実とShow must go onという建前の狭間でゆらゆら揺れている感じが、なんともいえない趣きでした。
岩井氏作・演出の舞台、ちゃげという価値観が生まれた時点ですでにおかしいのですが、そこからの絶妙な展開にはさらに舌を巻きました。
お正月からええもんを見せていただきました。
ザラツキのある舞台の感覚が・・
役者たちの演技がどこかざらついている・・・。
それがちょうどひっかかりのようになって
強い感動を呼び込んでいたように思います
ネタバレBOX
コロの演技には
冒頭から中間
不器用と思えるような感情の出し入れがあって・・・。
それが説得力につながるところに彼女の演じる力を感じたことでした
満足度★★★★
物語の枠が見えたら一気に生々しく魅力的に
ある視点を持った瞬間に
舞台が表現するものが洪水のように
入ってきました。
物語の枠が見えにくい部分があり
ちょっと戸惑う部分があるのですが・・・、
でも、そこには
ドキッとするほど生々しい表現があるとも感じました。
ネタバレBOX
まあ、ある種の妄想落ちなのだとおもいます。
明日結婚式を迎えるカップルの女の子が
結婚式前夜に淡々と小学校のころの肉奴隷体験を話すシーンが
かなり衝撃的で・・・。
そのあと続くシーンを観ていて一時はどうなる事かと思ったのですが
そのカップルが電話でする会話のシーンなどから
すっと物語の枠が現れて・・・。
そこからは表現の生々しさに身をゆだねることができました。
「ロミオとジュリエット」を持ち込むところも最初はあざとく感じたけれど
最後に薬が床に落ちる音を聞いたときに
その表現の秀逸さに息を呑んだことでした。
男女とも個性あふれる役者たちが魅力的・・・。
ただ、お芝居のルールに合わせて観客もスイッチを切り替えないといけない作品でもあり、ちょっとお客を選ぶかも・・・。
原点の時間が豊潤だから・・・
3時間があっという間・・・。
あれよあれよと展開するドラマに笑い惹きこまれて・・・。でも、そのおさまりどころにこそ一番の魅力を感じました。
原点になる時間の瑞々しい表現があるから、そのあとの展開にも心が通うような・・・。なにか心がほっこりとした・・・。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の底力を感じた作品でありました
ネタバレBOX
学生時代の先生をめぐる行き違いのエピソード、カメラマンの転職話など、ちょっとしたトリガーが人生を変えていくところがなんともいえずおかしくもあり・・・、その一方で絶妙なリアリティのさじ加減にも瞠目。
萩原聖人の先生がしっかりとしていて、そこから派生する喜劇にピュアな輪郭があって・・・。学生時代の豊かな表現は同時にコメディとしても実に秀逸。
最後にかんだ鼻水を見せられて、さらっと受け流す高橋ひとみが本当によいのですよ・・・。
余貴美子の演技の厚さには溜息がでるほど・・・。
いままでのKERA MAPとは全く異なる作品ではあるけれど、まあ、大満足でありました。
蝋燭で区切る場面の秀逸
忠臣蔵とつながったオムニバスのようなシーンの連続・・・。陳腐なもの、ユニークなもの、いろんなパターンがありましたが、なんだかんだとたのしめて、お買い得感一杯でした。
ネタバレBOX
松の廊下を殺人現場に仕立てたり、吉良と浅野の同性愛はちょっと陳腐な感じ・・・。
一方で吉良邸の地下で繰り広げられる、百物語風のところはとても面白くで思わず身を乗り出してしまいました。
とくに落ちずに吹き消した蝋燭を付け直すところには笑った・・・。
男だけの舞台だと、こういうギャグもいい味になります。
興味を惹かれたけれど・・・
おもしろいかつまらないかと言われたら、まちがいなく面白かったです。
役者の力も堪能することができました。
しかし、なにか密度が希薄なような・・・。
物語のふくらみがややうすく平板な感じがしました
なぜなのでしょうね・・・
ネタバレBOX
エピソードが順番に提示される感じで、今ひとつつみあがっていかないというか・・・
団塊の世代の方がごらんになると、べつの感慨があり感想がだいぶ違うのかもしれませんけれど。
菊川さんは魅せ方を知っている
Hula-Hooper初見。
べたな言い方ですが本当に楽しかったです。
菊川さんの物語の見せ方が実に秀逸。物語の色というか枠を定めて、そこを足掛かりに気持ちよく彼女の思う世界を作り上げていく感じ・・・。
芝居やダンス、音楽が絶妙に取り入れられていて・・・、それをあの場所で楽しめるなんて・・・、こんなぜいたくがあっても良いのかと思うほど・・・。
ネタバレBOX
大映テレビの世界が後ろにあるのですが、菊川さんは単純にその世界をぶつけるのではなく、彼女的なデフォルメや味付けを随所に生かして、今様のテイストに仕上げていました。
小道具のバルーンワークとか、グロッケンの音とか、小さな味付けが全体の色をポップにして・・・。
客席部分やバルコニーの舞台としての使い方にも彼女的な粋がしっかりと伝わる作品でもありました。
役者がとても近いのもすごく魅力・・・。
ブロードウェイのオフオフの舞台を見ているような・・・。
3時間近い上演時間があっという間・・・。頭が下がるくらい楽しませていただきました。
おかえりなさい、鴻上さん
今回の鴻上作品、
第三舞台の一番切れていたときの匂いがかなり戻ってきたような・・・・。
設定や物語の展開に、再び切れが生まれてきたように思います。
少なくとも一時のように、想いが先行して、観客と乖離していたような作品ではありませんでした。
前回公演と比べて役者たちもすごく育っていたような・・・。
ふらつきの無い演技でパワーを持って観客を舞台側に引き寄せていたと思います。
ネタバレBOX
やはり鴻上さんのお芝居に好々爺のようなあたたかさや癒しはにあわないような・・・。
今回のように冷徹でシニカルな視点があって、初めて彼の作品は観客の心に響くのだろうと思います。
ぞくっとするような現実が最後まで貫かれるから、彼一流の舞台上のテクニックが生きてくる。ダンスや体の動きで表現するその場の空気や真理などが、粒子のように観客席に伝わってくる。
今回の作品には、揺り戻しのようにやってくるマインドコントロールの副作用や、性に関する個々の心情にリアリティがあって・・・。
また、ロミオとジュリエットに登場人物を加えるという発想も、非常にうまく機能していたと思います。
まあ、昨今の秀逸な演劇たちが持つ心理描写のきめの細かさからすると画素は荒いものの、鴻上演劇流の良い表現がたくさん出ていた作品かと・・・。
役者を育てる能力や、物語の構造を裏から照らすような力。彼の才能を本当に何年ぶりかに実感たことでありました。
旨くいえないのですけれどね・・・、作品の感動とは別に、鴻上さんがこの作品を上程出来てほんと良かったなって思った。
終演後、劇場の出口で客出しする鴻上さんに、迷惑も顧みず、「よかったですよ、鴻上さんが戻られたような気がします」と一声かけてしまったことでした。
洗練を感じる・・・
「真夏の夜の夢」の原典に縛られるのではなく、作家の感性で広がりを作り出した作品かと思います。終盤の展開が作家らしく、また、洗練された表現でもありました。
シェークスピアの好き嫌いと関係なくエンタティメントとして一見の価値あり。
楽しめる作品に仕上がっておりました。
ネタバレBOX
江戸の遊郭に所を移すに当たって、作品原典の骨格を生かしながら、冗長な部分を潔く殺ぎ落としたことが作品にスピードと切れを与えたように思います。
役者もそろって好演、斎藤ナツ子さんの力量に瞠目、ジェームス小野田・大林素子さんの演技もしっかり。役者に力不足やあやうさは全く感じませんでした。
ちなみに劇中コント、私が見たときにはタクシーでの否定会話ねたでしたが、あれって日替わりなのでしょうかねぇ・・・。馬鹿におもしろかったですが・・・。
何かがやってくることは確か
作者の意図が全部理解できたとは思えないのですが、物語の混沌とは別に何かが伝わってきたことは確か。
遊び心の暴走も観ていて楽しかったです
ネタバレBOX
最初のダンスがずば抜けていました。
常ならぬものをみせていただいたような・・・。
ハチャメチャな部分はあるものの役者たちのキャラクターが混沌の中にも埋もれることがないので最後まで負担なくみることができました
最初のシーンで・・・
冒頭のシーンがその後の物語をとてもわかりやすくしていました。
上演時間が豊かに感じられた。
また、観にいきたくなるような作品でもありました。
ネタバレBOX
最初のシーンを観ているから、個々のシーンの位置づけがとても明確て、それゆえ、それぞれのシーンに統一感がありました。
物語の中で流れた時間がいとおしくなるような作品でもありました。
大川さんや永山さんのやわらかい演技が物語を豊かに膨らませていました。
役者、すごく質が高かったように思います。