満足度★★★★★
3.11に印象が多少変わったのだろうけれど
原発事故を通じて、
その場、その時間に生きることの感触が
伝わってくる舞台でした。
どうしても、震災のことがあって、
伝わってくるものの色が染まってしまう部分もありましたが、
でも、それとは関係ない
たくさんの想いにも満たされました。
ネタバレBOX
観終わって、作品のシーンがランダムに思い出されると、
写真の時間を過ごした村人たち一人ずつへの愛おしさと、
その時間の繋ぎ止めようのないことへの切なさが
ゆっくりと降りてきます。
その感覚は曖昧なものなのですが、
ずっと居座りつづけていて・・・。
写真の使い方も秀逸、
役者はそれぞれにきちんと人間なり猫なりを
その場に住まわせる力があって。
中でも、終盤の堀奈津美さんのお芝居には
狂気を凌駕してその世界に観る側を導くだけの切っ先があって
言葉を失いました。
場外で編み上げる物語
いろんな態がしっかりと作られていて、
離婚式そのものではなく、
その周辺にドラマをしたたかに作って・・・。
作劇のセンスに溢れる作品でした。
満足度★★★★★
ほどけていく時間の秀逸な表現
一つのシーンから、
閉塞していく時間のほどけていく感覚が
しなやかに溢れて。
作り手の描くものの切り出し方と
その表現の広がりに
今回も深く浸潤されました。
ネタバレBOX
夏の海岸の一シーンから、
しなやかに紡ぎだされる登場人物たちの
その時間に、
これまでの作品とは一味違った実存感があって。
精緻に息をつめるように作り上げられた表現だけではなく、
役者達の身体から発する熱やリズムが
表現に新しい間口を作り出していたように思います。
それらは、この作品の秀逸を支えるに留まらず、
彼らの表現に更なる可能性を生み出しているようにおもえるのです。
満足度★★★★★
これまでの作品と視点の置き所が変わって
今までの作品とは異なる、
その時間から見える先が伝わってきて。
これまでの作り手の作品とは違った、
視座での作品の広がりを体験することができました。
ネタバレBOX
卓袱台に近い丸い食卓から、
その家族の時間が解け、
広がっていきます。
その場所に束ねられた記憶の質感、
今という時間のリアリティ。
ビターなのですが、
でも、その場所の温度を感じる慰安も表現されていて。
作り手の表現にも更なる広がりを感じました。
満足度★★★★
冒頭の空気を貫く力
シチュエーションに対して、
無理な空気をつくらず、
冒頭からの空気をしっかり生かしたことで、
作品から浮かんでくるものがあって。
この集団の語り口を感じ
惹かれました。
ネタバレBOX
巨大隕石が落ちてくるというなかで
それを超能力でなんとかしようというところが
素敵にとほほなのですが、
その設定だからこそ描き得た、
キャラクターたちの個性に不思議な実存感があって。
超能力も虚々実々、
怪しいものから現役の幽霊までが同じ空気のなかに描かれていく。
そのなかで、演出も出演者も、
冒頭の空気から飛躍せず、
現れるものを踏ん張って現れるがごとく表現していく中で、
それぞれの普段着の個性がしなやかに見えてくる。
個性たちの自然体のすがたが
醸し出す空気は
冒頭とは変化しているのですが、
その変化には物語の設定のようなあざとさがなくて、
ふっと作品の仕組みの秀逸に気づくのです。
自称宇宙人の青年はもう至芸の域、
幽霊を隠す女子高生の
ばれ方が可笑しくて・・・。
でも、そういうべたさも包み込んでしまうような
空間がしっかりと作られている。
15minutesで名をはせた集団ですが、
それとは別に
彼らだから描きえる世界をしっかりと持っていることを
証明した作品。
企画の能力はもちろんのこと
彼らが自らの創作のなかでがっつりと描き出す世界も
もっとたくさん見たくなりました。
満足度★★★★
かっちょいい
マチネを拝見。
秀逸な舞台美術が醸し出すちょっと荒んだ雰囲気に
役者たちの作りこんだキャラクターが見事にはまって。
いろんな切り口からかっちょいいお芝居であり、
暑気が吹っ飛ぶほどおもしろかった。
また、初進出という紀伊國屋ホールの空間が
とても生きた芝居だと思いました。
ネタバレBOX
冒頭のシークエンスに一気に取り込まれる。
そこから、メンバーたちの集まる前半、
あわてることなく、それぞれのキャラクターを
じっくりと観る側に植え付けながら
物語が進んでいきます。
昔の事件がしたたかに織りこまれつつ、
計画が練られる。
舞台で語られる事実には
観る側に物語の展開を予想させる余白がしたたかにつくられていて
適宜差し込まれる笑いや苛立ちにも
テンションがあって、観る側をそらさない。
冒頭のシークエンスが再びやってきて
物語の時間にメリハリがつけられて。
後半に移ると、計画の結末が提示されていきます。
なんだろ、観る側が
常に展開の選択枝を持たされているような感じで
嵌る。
舞台の広さが絶妙なのですよ。
役者が醸し出す個性も窮屈にならず、
存分に広がりを持つような感じもあって。
銃撃のアクションにも概念を超えたリアリティが生まれる。
終盤、疑心暗鬼が闊歩する中での、
それぞれのハードボイルドっぽい空気が
ぞくっとくるほどにかっこいい。
残った4人、
さらには結末シーンのの二人の空気に
観る側も前のめりにさせられて。
終わり方にもぞくっとさせられた。
実は、暑さにへろへろで劇場に着いたのですが、
そんなことは開演10分で忘れてしまい
終演時には累積した夏バテまでふっとんでしまうほどに
舞台の密度に引き込まれてしまいました。
こういう言い方は、なにか的外れな気もするのですが、
すくなくとも私には
最高の暑気払いとなった一作、
極上のエンターティメントでありました。
*** *** ***
終演後のPPT、
双数姉妹の野口かおるさんの激走りに愕然。
ラストシーンを突っ込み倒し
劇団主宰の応戦をさらに振り切って、
劇団立ち上げ時のエピソードから
当時標榜していたという、
「エログロ・・・」の作風までを一気に暴露されておりました。
まあ、止めるのに主宰ともう一人のゲストであるJACROW中村氏、
さらには司会の西山氏の3人がかりで、
場内大爆笑。
ただ、ふっと思ったのですが
野口さんの展開って、
ある意味本編の構造をどこかトレースしているようにも思えて。
これって考え過ぎですかねぇ。
満足度★★★★
演じるリズム
ニッポンの河川は、ルデコで観た公演に続いて2回目。
このフォーマット、なにか癖になるようなリズムを内包していて
観る側にとって嵌り物になってしまうような力を感じました
ネタバレBOX
物語自体もそれほど複雑なものではないのですが、
観る側が流れに身を任せていると
自由に展開していってしまうような感じ。
いくつかのラインが行きつ戻りつしながら
絡まっていくような印象があって・・・。
役者自らのフットスイッチで切り替わっていく照明や
カセットテープを投げる音に
慣れてくると
演者と観る側のリズムがシンクロしてくるようになり
よしんば物語が入り組んでも
それが流れるのではなく
次第に膨らむ感覚が芽生えてくる。
役者のひとりずつに
そのオペレーションを崩れずに支ええるだけの
足腰の強さがあり、
刹那ごとの感情の色もきちんと作られていて。
このフォーマット、な
にか嵌ってしまいそうな強い魅力を感じたことでした。
満足度★★★★
夏バテ気味の観客に
いつもと少し違う夏、
酷暑の中で
こういう、気楽に入りこめて
グイっと楽しめるお芝居はありがたい。
人馬一体のしなやかさにとりこまれて
たっぷりと楽しむことができました。
ネタバレBOX
人と馬の重なりや切り分けがとてもしたたかで、
役者たちのダブルロール(?)が
そのまま舞台のふくよかさに変わっていくような部分があって。
木で作られたジンプルな椅子の重なりで
パドックが生まれ厩舎の雰囲気が醸し出されていく。
馬主や調教師、予想屋や観客の風情が
ちょっとコミカルに、でもどこかぞくっとするようなリアリティを持って
描かれていて・・・。
人間がまねる馬の仕草が、
気がつけば、馬の人間臭さにまで進化していて目を瞠る。
まあ、馬の世界も人の世界も
いろいろとあるよなぁみたいな。
覚めたりすねたりの心持も
達観や諦観、闘争心も
知らず知らずのうちに観る側に置かれている。
だから、丸亀の競馬場で
ずっと海を見ている馬たちの気持ちがわかるような気がする。
そりゃ、馬たちの会話は作りごとだけれど、
海を見詰める心情には
観る側が重ね合わせたくなるなにかがあって。
さらには、ジャケットを着込んだ馬たちの態度や会話にも
サラリーマンたちのありようや心情がしたたかに
移しこまれていることにも気づくのです。
だからこそ、より一層、馬たちのレースに対する姿勢ややり方なども
ぞくっとするほどにリアルに感じられる。
ゲートが開くときの馬(?)たちの走り出し方にも
個性があっておもしろい。
ロートルの馬に活躍の場がうまれたり、
中央から外された馬のプライドが悲劇を招いたり。
ぐいぐいのめりこんでしまうような派手さはないのですが
作り手の寓意が観る側を飽きさせることなく
日々の俯瞰へと導いていく。
酷暑が続くなかで、個人的にちっとばてているのかも知れなくて
大上段に振りかぶられるお芝居は
観ていてもちょっとだけつらいことがある昨今ですが、
そんな観客にこういう口当たりのお芝居は
とても優しい感じもして。
この時期にこういうお芝居を上演してくれるのも
作り手のセンスなのかなぁと感心したり。
満足度★★★★★
それぞれの時間たちに組み上げられた籠に抱かれたような
三鷹の広い空間を得て
これまでの青☆組の凝縮された洗練とはことなる
広がりをもった質感を感じることができました。
街の風情を組み上げる、
登場人物たちのいくつもの時間の流れに
したたかに抱かれ
浸潤されました。
ネタバレBOX
場内に足を踏み入れると
舞台上にはすでに、
物語のテンションがあって。
しっかりと時が舞台に流れている。
トンネル、コンクリートの階段状の坂、
裏町の風情、
そして人々。
それぞれのキャラクターが紡ぐ時間に
因果があって
それが街の風情として
しっかりと組み上がっていきます。
時の流れが舫を解かれ
繊細で緻密なだけではない、
切っ先をしっかりと持った語り口で
描かれる時間たちが
それぞれの歩みをを浮かび上がらせて。
気が付けば
その街の空気で呼吸をして、
その時間に浸され、
大仰な言い方ですが、
生きることの質感に深く浸潤されてしましました。
満足度★★★★
完成度の高さを感じる舞台
役者の動きにしても、物語の組みあがりにしても
くっきりとしていて、
観る側を取り込むに足りる奥行きがつくられていて・・・。
高い完成度を作品に感じることができました。
でも、なにか、この劇団を観尽くしていないような感覚も残りました。
ネタバレBOX
作り手には観る側を取り込んで
しっかりと運ぶ底力を感じる。
それは役者達の力でもあるとは思うのですが、
知っているはずの「黒猫」の物語に、
次の展開を期待してしまうような
舞台の空間の魅力があって。
そりゃ、有名な原作だし、
ベースもおもしろいのでしょうけれど、
よい語り手とは
面白いものを、観る側の面白さへの記憶ではなく
その時間に満ちた面白さで表現するわけで、
よしんば次の展開を知っていたとしても
舞台の刹那のひとかけらずつに
がっつりと引き込まれてしまいました。
ただ、なんというか、
秀逸な舞台ではあったのですが、
この劇団の魅力を味わい尽くしたような達成感は
あまりやってきませんでした。
それは、作品が彼らの手の内にあることでかもし出された
安定感のなせる技かもしれません。
ただ、もっと奥深い部分に置かれた
別の色をした彼らの力が、
今回に関しては封印されていたような印象もありました。
満足度★★★★
同じテイストと逆のベクトル
居心地の良い空間でのお芝居でした。
とても緻密に作られた
女性たちのデフォルメされた自然体の姿に
リラックスして取り込まれてしまいました。
ネタバレBOX
二つの作品とも表見的なテイストは同じ。
ワワフラミンゴスタイルみたいなものが
安定的につくられていて。
でも、一方で
登場人物の外とのかかわりのベクトルは
真逆に思えました。
両方とも
男が持ち合わせ得ないような感覚が伝わってくる。
ラフで断片的でたっぷりバイアスがかかっているのにありながら、
男が共通化して消化できないような緻密さを持った
女性のナチュラルな肌触りがつたわってくるのです。
しいて言えば、男性にとっては
秀逸な少女コミックを読むような面白さなのですが、
当然にやってくるものの深度は、
コミックなどとは比較にならないくらい深い。
特に「野バラ」などでは
思わず笑ってしまうようなシーンもしっかりと仕込まれているのですが、
でも、男の笑いと女性の笑いは
同じシーンでありながらポイントが違うような感じもする。
見終わって
作品の間口の広さというか
息を詰めるほどの緻密さを感じつつ
それを見る側に緩い感じで流し込む。
作り手の才と、それを実体化する役者たちのお芝居の秀逸が
じわっとやってきたことでした。
満足度★★★★★
ちゃんと突き抜けて
説明の言葉に偽りなし。
観終わって解放された気分がちゃんとやってきました。
下世話な部分も、恣意的に薄っぺらな部分もあったのですが、
それらが単なる表層に置かれない
ベースが編み込まれていて。
ラストには、解放に至るだけの
作り手の覚悟のようなものも伝わってきたことでした。
ネタバレBOX
初日を拝見。
ボクシングの3兄弟や
芸能事務所ネタなど
あからさまに新旧の話題もからめて・・・。
ただ、その笑いが散った後に
しっかりとしたニュアンスが残る。
終盤には、
さらにそれらが昇華して
観る側をがっつりと引っ張っていってくれます。
なんだろ、劇団としての覚悟もしっかりと伝わってきて。
舞台に満ちた高揚感にがっつりとやられました。
満足度★★★★
掴まれる
両バージョンを拝見。
どこか抽象画を観るような感覚もあるのですが、
一方でぞくっとくるような生々しさも感じる。
形は違っても、両それぞれの色で
心を捉えられるものがありました。
満足度★★★★
散らばらない感覚
冒頭から暫くは、
ただ刹那を追うような感覚でしたが
目をそらさせない質量のようなものが舞台にあって
終演時には「今」の風景に包まれておりました。
ネタバレBOX
父が茶の間に荒野を観るシーンがとても印象的。
そこから、舞台に綴られたいろんなシーンが
すっとリアリティをもって立ちあがってくるような感じがあって。
作り手の質感の作り方と
それを支える役者たちのお芝居の精緻さに
しっかりと捉えられました。
満足度★★★★
おもしろうて、やがてとても自然に
シチュエーションの浮かび上がり方の鮮やかさ。
デフォルメされたシーンたちであっても、
ニュアンスに縫い込めれられたリアリティにとり込まれ、
おもしろくて、引き込まれて
さらにそのもう一歩奥の
人間の心境を肌で感じることができました。
ネタバレBOX
どんな一人芝居でも
そこには演劇的な嘘が無いと成り立たない。
でも、上演された3作には
あからさまなたくらみがありながら
その嘘を感じさせる匂いをすっと消し去るよな力があって。
間違いなく一人芝居なのですが、
観ているうちに
そのことを忘れさせるような
人物のバックグラウンドがしなやかに浮かんでくる。
紡ぎこまれた昔馴染みのヒット曲が
べたではなく、でも絶妙に作品の色となって
観る側を取り込んでくれる。
しかも、それが作品としての目的地ではなく
ベースになっていて。
一人の人物のありようが伝わってくる。
作り手の秀逸な踏み込み方と演じ方に
癖になるようなやられ方をして。
塩梅というか
いろんな力加減の常ならぬ洗練を感じる。
おもしろかったです。
満足度★★★★
恣意的なばらつきのしたたかさ
冒頭に感じる空気のばらつきが
そのまま物語を浮かび上がらせる武器になっていく。
作り手のしたたかさが、
役者の作り込むそれぞれのテイストを、
しなやかに機能させて・・・。
ラストシーンにもしっかりと取り込まれました
ネタバレBOX
場内にはいると、舞台上に積み上げられた紙屑が目につきます。
舞台の後方と、それから机の下にも・・・。
冒頭、男女二人から物語は始まります。
入口はどこか、ちょっとコミカルに・・・。
書斎机で作家が死んだらしいことがなんとなく暗示されて。
シーンが変わってそこに出版社の女性が現れる。
ソファーに座った二人。そして冒頭の女性。
最初は二人で作家を訪れているのかと思う。
会話がなんとなく噛み合わない印象があって。
初日だから、ちょっと合わない部分があるのかなぁとすら思った。
実際のところ、すこしお芝居の硬さもあったとは思うのですが、
構造的にも、
実際に舞台に演じられていくことに、根拠のわからないずれを感じる。
たとえば、別の出版社の人間が現れた時に
男に出されたように見えた麦茶がテーブルから取り去られ
以降彼に供されることがないことにも違和感を覚えたり。
物語自体も観客にはなかなか伝わってきません。
その作家が自殺したらしいこと。そして舞台上の設定がその49日に当たること。
作家がとても寡作であったこと・・・。
そこに、他の出版社の担当や学生時代の友人、
さらには彼に貸しがあるという人物、
結婚前に作家と関係があったという女性や
泥棒と見まごう人物、
さらには近くに住む、自称一番弟子という女性も現れて・・・。
ひとりずつがそれぞれに作家との関係を感じさせるなにかを持っている。
その重なりのなかから
登場しない作家の人物像が観る側に浮かんでもくる・・。
でも、それは観る側にとって散発的な、
極めて平面的な事象にしかすぎない。
ましてや、それらが、後半鮮やかに有機的につながっていくなんて
想像もできない。
変わり目は、始まりのころに出版社の女性とともにいた男が
誰かがわかった時。
そこから、観る側にとってのこの舞台の様相が一変します。
「あっ!」と思う。
実は冒頭にかなり不自然に思えた麦茶のことが
当たり前に変わる。
そこから、観る側に、
ばらついていた前半のエピソードへの
別の角度からの視座が芽生え始める、
まるで頂きだけが見えていた山並に稜線が現れるように
死んだ作家とキャラクターたちの関わりが浮かんでくるのです。
一人ずつの「嘘」、というよりは、
むしろそれは隠し事に近い感覚の事実が露わになるたびに
前半、バラバラにおかれたキャラクターたちが
作家の真実を現わすための道程に組み込まれていくのです。
キャラクターたちの使われ方も多彩でしたたか。
それぞれが、
自殺したという作家の姿を浮かび上がらせるツールとなってはいくのですが、
そこには役者たちの作り上げる
個々の人間臭さが
統一感のない、でもシーンにとって絶妙な強さで縫い込まれていて。
それが、前半は投げっぱにされたままのバラツキのように感じられるのですが、
キャラクターたちの物語への立ち位置への曖昧さが取り払われた刹那に、
役者たちがそれぞれになすお芝居に必然が現れ、
物語の骨格やエピソードをわたしてく橋脚として機能していく。
男と麦茶の関係の如く、
伏線が翻りに理を与え
その展開の切っ先に前のめりになって取り込まれてしまうのです。
最後に登場した女学生の存在が
物語にさらなる一歩の踏みだしを作る。
ラストシーンが、物語をしなやかに包括して
観る側に供されます。
置かれたピースのそれぞれが腑に落ちて、
ふっと物語が始まった時の感覚との落差に思い当たり、
作り手の魔法の手練に舌を巻く。
台本も上手いと思うのです。
加えて、
きっと本を読ませてもらう機会があったとしても
それだけでは浮かんでこないようなニュアンスが
演出や役者たちによってしっかりと作り込まれていて。
もう、がっつりとのせられてしまいました。
ほんと、面白かったです。
満足度★★★★★
この可笑しさは・・・
初日を拝見。
がっつりとやられました。
ぐいぐいと面白かったです。
ネタバレBOX
再々演とのことですが私は初見。
一人ずつを観ていると、極めて人間臭くて
いろんな部分でデフォルメされていても
その雰囲気はどこか馴染みを感じるような部分があって。
それらが、重なりあうグルーブ感に魅了される。
3人芝居の冒頭から
ジャブやボディブローのように
そこはかとなく行き場のない感じの可笑しさに舞台は満ち、
4人目、男子生徒、先生たちと
そこに登場人物が加えられてキャラクターが増していくごとに
場にいろんな重なりのずれが生み出され、
個性が枠を超えて観る側に流れこんできて
歯止めが利かない面白さの化学反応が生まれていく。
終盤の教育実習生が引きこもった生徒に説得する時の
訳のわからない自己完結の凄さ。
上級生たちの良い人ぶりなど
冷静に単品で観るときっとたわいのない戯言なのに
作り込まれたものの上に重ねられると
そこまでの建前が全部崩れて
破壊的に可笑しい。
ほんと、ナカゴーおそるべしです。
満足度★★★★
くっきりとした妄想のリアリティ
心を去来するものがくっきりと表れて
幾重にも組みあがっていく。
記憶と妄想のボーダーの明確さと曖昧さの
組みあがり方が実にしたたかで・・・。
妄想のエッジをクリアに意識しながら
その一方で妄想の「実存」にどっぷりと浸されてしまう。
終わってみれば、
その世界の抜けられない深さに
しっかりと捕まえられておりました。
ネタバレBOX
個々の役者たちが作り上げる
心に去来するものの品質が非常にくっきりとしていて、
単純な妄想譚という枠をすっと外してしまう。
いろんなデフォルメと現実の端境が
シームレスにつながりループしていきます。
妄想自体はどこかシンプルで
観る側をも圧倒するような色と下世話さがあるのですが、
そこには妄想する側とされる側の秀逸な演技から
キャラクターの心の揺らぎもしたたかに織り込まれていく。
幾重にも重なり、
深さを作り繰り返されていく時間が
妄想の質感にとどまらず
その一つ外側の妄想に捉えられる男の
ぞくっとくるような実存感を観る側に流し込んでくれるのです。
二人の女優の醸し出す
男にとっての全くベクトルの異なる慰安感に息を呑み
そこへ取り込まれる男の姿の自然な感触と
一方で垣間見える現実との距離感の認識の描き方に
この作り手だからこそ現わし得るであろう感覚が生まれ、
さらに引き込まれる。
薄っぺらくない、
逃げられないような下世話さが
さらに赤裸々でナチュラルな
出口を失った思いの巡りを浮かび上がらせて・・・
それほど尺の長い作品ではないにも関わらず
厚みをもった見応えに
しっかりと閉じ込められてしまいました。
満足度★★★★★
普遍性を感じる舞台
内容的に、3.11のことをオーバラップさせることなく
観るのが難しい舞台ではありました。
でも、この舞台には、単に地震からの立ち直りに留まらない、
もう一歩踏み込んだ普遍的なものが込められているように感じました。
ネタバレBOX
震災前から、上演は決まっていたそう。
どうしても、地震のことと今がオーバーラップしてしまうのは
観ているほうとしてもやむ終えないのですが、
この物語には単なる地震との係わり合いに留まらない
もっと根の方に
ある種の普遍性があるように感じました。
ねじれの質感がとても丁寧に描かれていて、
だからこそ、一層震災後の空気と重なる。
かさなるから、同じく今の感性で
その捩れが戻っていく感覚も受け取ることができる。
そこには、地震からの復興ということにとどまらない
なにかを抱えたときの閉塞とそこからの解放を
しっかりと感じることが出来て。
役者達の作りこむものも、
とてもビビッドで、
デフォルメされてはいても
一人ずつの心情をしっかりと受け取ることができて。
とても、いろんなことを感じ、
考えるきっかけとなる作品でした
満足度★★★★
インパクトがある3作品
短篇3本なのですが、色が被ることなくそれぞれの作品にインパクトがありました。
ネタバレBOX
のほほんとみているような作品ではなかった。
個々の作品にしっかりとしたエッジがあって
気が付けばそれぞれの作品に別の筋肉を使いつつ
向き合って舞台に取り込まれておりました。
どの作品にも
もう少し見続けたいような魅力もあって・・・。
二人芝居という縛りも良い方に上手く活かされていて、
観終わった後にいろんな充実感が残りました。