1
アンティゴネ ~時を超える送り火~
SPAC・静岡県舞台芸術センター
(5/6)
この世のものと思えない、衣装・水上舞台・生演奏・ことばと身体を分ける演出が、すっかり世界観にはまる、魂送りの儀式のような舞台。
慎重に丁寧に踊られる盆踊りを、全身を使って魂を送る動作だと感じる。
そして、現実社会に対して表現は無力なのか。
(あの衣装を見た時、ウルトラセブンのガッツ星人を思い出しました)
日本から世界に勇躍する演劇の代表格。
2
劇王Ⅺ~アジア大会~
長久手市文化の家
(9/16)
香港代表、日本と異なる価値観の提示と磨かれた役者の身体のよさ。
北海道代表、台詞が回収されるカタルシスと今そこでやる役者の存在感。
甲信越代表、コントから演劇へもう一歩か。
中国代表、定番のアングラ感がかえって印象薄く…
日本各地+世界数カ国から短編劇が集結。
私が観れたのは予選3ブロック中1つのみ、決勝も観れなかったが、それでも地域性あるバラエティぶり。
3
つぐない
劇団あおきりみかん
(7/13)
数年前の『よく聞く。』を思わせる、上質の密室サスペンス心理劇。普通に小説として出版できそう。
自己暗示、認知の歪み、呪縛…つくづく本人にもままならない人の精神を、シャーマンの如く解体・再構成して救う舞台。
エンターテインメント系の団体なのに、感想を書くとしばしば「フィリップ・K・ディック」「シャーマン」といった、精神に切り込むフレーズが出る…
4
短編集「ふたり、目玉焼き、その他のささいな日常」
空宙空地
(11/12)
団体のこれまでの積み重ねを結晶させた珠玉の短編集。
巧みな構成や語り口で、死と寄り添う人生を見つめる優しさやせつなさをたたえる話たち。一人芝居の形式化を最大限に活用する演出。
客演含み役者もみな見事。
愛知のごく小さな団体が、全国でこつこつと積み重ねた活動の集大成。
5
腹話術師たち、口角泡を飛ばす
SPAC・静岡県舞台芸術センター
(5/6)
演者から分離した身体・ボディを有する仮面「人形」の周囲に渦巻く、演者たちの妬み嫉み、劣等感、精神外傷、分裂症…建前、本音、深層、様々な心理をも象徴。
人形という仮面を付けて本心をさらけ出す人々。人形を外して社会性という仮面をつけ直す人々。
人類史に寄り添う「人形劇」の本質に迫る、実は人間心理劇。
6
バットシェバ舞踊団/オハッド・ナハリン『LAST WORK - ラスト・ワーク』
愛知県芸術劇場
(11/3)
個人と集団の総合力。振付されつつ各ダンサーに根ざすムーブメント、ズレから次第に関わりが強まる関係性、次から次へ出る手札の謎と解釈の余地の大きさ。
ラストのテープのシーンは目が潤みそうに。
プレミアム席は舞台を見上げて観にくかったのが無念、、、
世界最高峰のダンスカンパニー。
7
『それからの街』
愛知県芸術劇場
(10/22)
最初15分眠かったが、、、それ以降俄然明晰な意識で観れた。
(既知の台詞が次はどうなるかに興味?体がこの舞台の観方を会得した?)
繰り返される言葉のダンスに伴う身体。身の詰まった質の高い有意義な不可解。美術は見えるものも見えないものも見せる、抽象の極致。
AAF戯曲賞受賞作を、審査員でもある鳴海康平氏が美術作品のごとく演出。
8
鈴木忠志の世界 昭和篇『サド侯爵夫人(第二幕)』
SCOT
(9/2)
初めて戯曲を読んだ時の衝撃が素直に蘇る、限定したシンプルな演出。
メイン女優二人の、役に沿うというよりも個性の際立った配役が、キャラクターという命を吹き込む。
行動は共通しても価値観は相容れない二人の、私はルネに共感…(キャーッHENTAI)
日本有数の、力強い戯曲を力強い演出家が扱う。
9
身毒丸
演劇実験室◎万有引力
(3/19)
怪しくも楽しい奇想天外が詰め込まれたあっという間の二時間。
見世物の場面では、視界のあらゆる所で何かが起こって見逃す贅沢さww
妖しく悲しき主筋は、実は頭に入らなくてもOK。直感的に受け入れて、周囲のディテールを楽しむ。それも、主筋の民俗的骨太さあればこそ。
(卒塔婆の殺陣が、宇宙刑事のレーザーブレードにも見えた)
伝説の演劇人の作品を、その直系の団体が再演。
10
うちやまつり
オイスターズ
(4/24)
表面に見せない分厚さを感じる深津戯曲を、いじり回さずに言葉で空気を伝える平塚さんの演出で舞台に。
日常と不穏さの並立する、霞がかかったように果ての見えない、穏やかな悪夢。
人物というか役者が色々とエロくて、とてもよい。
関西の伝説的劇作家と東海の個性的演出家の、不条理な出会い。