その時 胸の奥で鐘が鳴る
劇団やったるDAY!
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2009/01/28 (水) ~ 2009/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
若干甘口で賛否両論かも?
チラシで主人公が余命わずかだと宣告を受ける旨が明かされており「そもそもその設定が卑怯じゃん!(笑)」とか思いつつ観て、事実卑怯ではあった(爆)が、もう1つアタマをかすめた「かなり泣かされそうだな…」という思いは杞憂に終わる。
お涙頂戴にしようと思えばいくらでもできるのにそうせず、湿っぽくならず、残り少ない生を精一杯生き、会社の後輩やかつてのバンド仲間たちなどを逆に勇気付ける主人公の姿をどちらかと言えばサラリ、淡々と描いてサワヤカ。
あくまで個人的な印象で言い切ってしまえば、黑澤映画『生きる』に近い感覚かも。もちろんあんなにシブくなく、笑いも多くて若々しいが、根底に流れるモノが共通、みたいな。
ただ、安易に奇蹟を起こしたりしないのも個人的にはイイと思うし支持するが、その結果、両親を亡くした時のショックから小学生のまま心の成長を止めてしまった妹がそのままになってしまうなど、投げっ放しと感ずるムキもあるかも?
なお、別れたハズの婚約者が部屋にいるシーン、プロポーズのシーン、妹が「今はハンバーグはいらない」と言うシーンなどがツボ。
ROPPONGI NIGHTS 2009
LIVES(ライヴズ)
吉祥寺シアター(東京都)
2009/01/22 (木) ~ 2009/01/25 (日)公演終了
満足度★★★
総じて満足
元ヤクザが心機一転、念願叶ってオーナー店長となったショーパブ開店初日の騒動記。ドタバタ気味で若干まとまりには欠けるものの、勘違いの組み合わせ方や劇中のコーラスグループ(アフロヘアのリーダーが何とも胡散臭い(笑))の脱力系オリジナル曲が愉快で、ラストにちょっとホロリとさせる(ここの常套手段?)のは上手い。
また、(劇中の)ステージでダンスパフォーマンスが行なわれている最中に進行している客側の芝居(動作のみ)もダンスの振り付け風(ミュージカル風?)になっているのも面白く、総じて満足。
はるヲうるひと
ちからわざ
新宿シアタートップス(東京都)
2009/01/20 (火) ~ 2009/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
見応え十分
タイトルの通り、ある島の売春宿が舞台で4人の売春婦と経営者、それに経営者の腹違い(妾の子)の弟・妹による物語。
題材が題材だけに佐藤二朗初監督の『memo』(08年)のソフトタッチとは対照的にハード気味ながら、随所に演技におけるあの独特の間合いと共通のトボケた雰囲気があり、それによって緊張が緩和されるシカケ。(佐藤は脚本のみ、演出は堤泰之)
また、落ち着きのあるリーダー格、アネゴ系ツッコミ、気弱な不器用者、天然系フシギちゃん(笑)、とキッチリ描き分けられた売春婦4人を兎本有紀、今藤洋子、野口かおる、笹野鈴々音なんて「異種格闘技」のような個性派女優たちが演じ、『櫻の園』(07年6月)以来舞台の実績を積みつつある佐藤寛子も病身の女性を好演、そこにこういう役どころだとコワい大高洋夫、意外にも(?)コメディリリーフの太田善也、それに主宰の佐藤二朗といういわば「オールスター戦」で、その演技合戦は見応え十分。
水面下の女達
青ひげマシーン
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/01/21 (水) ~ 2009/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
かなりの上出来作品
金曜夜、会社の休憩ラウンジで繰り広げられる恋愛系会話劇、トレンディドラマ終盤のエピソード系にレディースコミック風味を練り込み、程良く笑いもまぶした70分、全体を通じての会話のテンポの良さ、バカップルのコメディリリーフぶり、それぞれキャラのたった登場人物と役者のハマり具合なども良く、かなりの上出来作品。
それに加えて、唐突な感もありつつ「神様」が登場するシーンのシュールさが独特のアクセントになっていて面白いし、最後に主人公がフッ切るというのもサワヤカで○。
ただ、「けんちゃん」関連で勘違いするネタ、もう少しふくらませることもできたであろうに、あれだけというのは清掃夫・山崎クンのキャラも含めてちょっともったいないかも?
なお、冒頭の主人公とその友人の会話、ツカミはオッケーながら女子更衣室の会話を盗み聞きしているようでちょっとドキドキ。(笑)
パニヒダ
演劇集団アーバンフォレスト
萬劇場(東京都)
2009/01/15 (木) ~ 2009/01/21 (水)公演終了
満足度★★★★★
満足度高し
脚本のラストを残して急死した劇作家の通夜帰りの喫茶店で、翌日から予定されている公演を強行しようとする女性プロデューサー、どちらかと言えば公演中止を望む役者たち、その両者を取り持つ舞台監督といったメンバーが公演をどうすべきか話し合う物語。
前半はそんな切羽詰まった状況で公演はうてるのか?という「ショウ・マスト・ゴー・オン」系、後半は故人が結末をどうしようと考えていたか、から、ほぼ自殺とみられているが真相は違うのではないかという議論に発展して「12人の…」的になるという二段構えの展開で「一粒で二度オイしい」ばかりでなく、笑える要素はもちろん、チェーホフやシェークスピアの引用やネタまで練り込んだ秀作で満足度高し。
DUST
ドリームプラス株式会社
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2009/01/14 (水) ~ 2009/01/27 (火)公演終了
満足度★★
後味はあまりよろしくない
一定期間就労あるいは求職をしていない若者を無人島で強制労働させるという法律が施行されたごく近い未来の物語、ブラックさ満開で救いのない結末は山田悠介の真骨頂?(笑)
が、暮部拓哉のギター生演奏とミュージカル風とはいかないまでも、歌がかなり入るのでそれが緩和されている感じ? とは言え終盤はやはり重苦しく、後味はあまりよろしくない。
ま、渡辺夏菜と別府あゆみを観るという目的は十分達成できたし、劇団SETの田上ひろしが、『スイッチを押すとき』に続いてイヤ~な役どころを好演していたのでそれなりに満足。
アルケー/テロス
激団リジョロ
タイニイアリス(東京都)
2009/01/17 (土) ~ 2009/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★
ジェットコースター的
東京都内での連続爆破事件に端を発する犯罪サスペンス、爆破事件の関連性とその奥に秘められたものに関する「23エニグマ」でツカミはオッケー、以降、謎が謎を呼びながら次第に明かされる真実を経て、在日韓国人の心情も絡めたギリシア悲劇かシェークスピアか、な結末に至るまでの2時間35分を一気に突っ走る。
普通はこんな風にダークでヘヴィーだと実時間よりも長く感じることが多いのに、そんなに長さを感じなかったのはその迫力によるものかあるいは何度も意外な展開があるジェットコースター的なストーリーによるものか?
また、サヴァン症候群の少女を近藤寛子が好演。自閉症児の喋り方や子供がしそうなチョコマカした動きを体現してリアリティあり。
マスカレード
Wit
サンモールスタジオ(東京都)
2009/01/15 (木) ~ 2009/01/19 (月)公演終了
満足度★★★
コメディ版『張り込み』
かつてショーマで上演した三人芝居の登場人物を1人増やして改訂したもので、コメディ版『張り込み』(87年、ジョン・バダム監督)といったオモムキ。逃走中の犯人が立ち寄る可能性のある女性のマンションを張り込みしている刑事2人組が身分をごまかすべくついたウソから展開するストーリー、ラストのショーパブ場面ではコントやヒロインの歌などのアトラクションもあって一粒で二度オイしい、的な魅力アリ。
また、ヒロインを演じた虹組きららが「エンタの神様」でのヅカ系ピン芸とは全く別の顔を見せていてキュートでステキ。
僕たちの町は一ヶ月後ダムに沈む
演劇ユニット3LDK
調布市せんがわ劇場(東京都)
2009/01/16 (金) ~ 2009/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★
同窓会系にハズレなし
あと1ヶ月でダムに沈むことになった分校に中学時代の仲間たちが15年ぶりに集まって同窓会を開くという物語、入場した時点で目に入る教室の装置は大昔の木造校舎のそれらしき雰囲気で、そこからすでに術中にハマったと言っても過言ではなく、そこに徐々にメンバーが集まってくるという出だしからモロに感情移入。
以降甘酸っぱいような懐かしさありホロ苦い現状のキビしさ(?)あり彼らのつながりを明かす過去のシーン(学ランとセーラー服だし(笑))ありで、それに加えてKAKUTAや天然工房のメンバーも出演しておりツボを突かれ、やはり同窓会系にハズレなし。
かつてのメンバーの1人が亡くなっているという設定はズルい(笑)が、兄の死は割り切ったと言い明るく振舞っていた故人の妹がラスト近くで号泣する場面でホロリとしたからイイか。
また、その故人が仕掛けたサプライズにちょっと「そして誰もいなくなった」を連想したりも。
ランプにまつわる物語
KALAMA WAIOLI appearing 工場
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/01/15 (木) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
ミュージカルっぽい仕上がり
1年半前のオリジナル版は、いろんな要素がゴッタ煮のようにつまっていてカオス的なにぎやかさがあったが、今回はそれを整理してシンプルかつストレートにした感じ。また、劇中での歌が多くなりミュージカルっぽい仕上がりになったということもあり、趣を異にするのでそれぞれの面白味アリ。
遙かなる時空の中で 朧草紙
オデッセー
サンシャイン劇場(東京都)
2009/01/04 (日) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
8人も要らなくね?(笑)
ゲームが元で「八葉」という設定を崩すワケにいかないのだろうが、8人のメンバーについてキャラが明確に描き分けられていなのがもどかしい。
一方、主人公・あかねだけでなく、鬼の側の副将も人間と鬼との共存を考えているという設定や、コメディリリーフ的な怨霊3人組が泰明の式神になる結末はアッパレ。
また、『BOM!』や『多摩川少女戦争』の小野麻亜矢が鬼側の「ナンバー3」的役どころで加わったのも嬉しく、次作(あるんだろうなぁ)以降のレギュラー化希望。
動員挿話
三田村組
サンモールスタジオ(東京都)
2009/01/06 (火) ~ 2009/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
リアルに感じられる
普段観ているものが観ているものだけに(爆)理路整然としてスキなくキッチリ組み上げられた作品世界が非常に新鮮(あるいは懐かしい)。その意味で前年末に観た『proof』に近く、しかし日本の明治時代だけにオモムキは異にする、的な。
また、この小屋で観たうちではもっとも具体的な装置も作品世界に合致しており、演技も丁寧でキメ細かいので明治の軍人や馬丁夫婦などがリアルに感じられる。
番外 池田屋・裏
グワィニャオン
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/01/08 (木) ~ 2009/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
バージョンアップ
SPACE107での初演(03年12月)と比べてスケールアップ、レギュラー客演者の技術を活かしたり、和太鼓だけでなくジャンベも使ったり、その延長でラストは女性陣による和装タップだったり(ちなみに初演は和太鼓パフォーマンス)ということで初演を観ていた身としても十分楽しい。
風が強く吹いている
アトリエ・ダンカン
ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)
2009/01/08 (木) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
走りを見せる
費用が格安(ただし老朽化で倒壊寸前)の学生寮に入居するために休部状態の陸上競技部に籍だけ置いている幽霊部員たちが箱根駅伝出場を目指す物語、ダメダメな面々が一念発起して何事かを成し遂げるという好きなパターンであることに加えて、4月から1月(?)までのターニングポイント的な部分を連作短編風に見せ、クライマックスの駅伝シーンで他のスポーツ系劇団と違ったカタチでの走りを見せる構成も○。(だもんで15分の休憩を挟んで3時間もあるとは思えなかった)
中でも主人公の高校時代の友人でもある他校の主将が寮を訪れるエピソードが良かったが、これは原作(未読:早く文庫化してくれい!)の功績か? いや、頭を丸めた(ので誰かと思った)伊藤高史の演技もあるか。
また、主人公を演じた黄川田将也も良く、しかし彼も初舞台だったとはちょっと意外。
なお、目当てのコンちゃんはもともと小柄な上に席が16列だったのでより小さくしか見えず(笑)、やっぱりもっと小さな劇場での公演に出ていただきたいモンです。
冬物語 -新諸国綺談-
project ON THE ROCKS
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2009/01/08 (木) ~ 2009/01/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
いたるところに沙翁っぽさ
3週間ほど前の『空ゼの「夏夢」』に引き続き沙翁作品の翻案。
第一幕は「リア王」などと通ずる自業自得型悲劇、その16年後を描いた第二幕は「十二夜」的奇蹟の巡り会い系ハッピーエンドという原典の構成の巧みさに、シチリアを出羽国羽黒藩、ボヘミアを肥前久島藩に置き換えたことによる方言使用を含めた翻案の面白さやミュージカル風場面(それもラップまで使う)を取り入れた演出の楽しさが加わって「鬼に金棒」状態で2時間40分(10分の休憩込み)の上演時間も全く長さを感じず。
なお、原典は未見だったものの、いたるところに沙翁っぽさが感じられたし、日本の時代劇への翻案ならではの部分(御神託を授かるとか切腹とか)がまた妙に融合していて、脚色の巧みさにも感心。
島へおいでよ
劇団†勇壮淑女
ウッディシアター中目黒(東京都)
2009/01/07 (水) ~ 2009/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
2009年も好調なスタート
島へなかなか来そうにない嫁を獲得すべく計画した集団見合いの物語という事前情報から島興し人情系ラブコメかと思っていたら実は訪れた女性陣は結婚詐欺師グループで、という予想外の展開。
以降、オトコをオトすテクニックや「A型几帳面説の根拠」「モンローのヒール」などのトリビアをちりばめながらの犯罪コメディ、場合によっては後味が悪くなるんじゃないか?などとかすめた不安は杞憂に終わり、終盤での『スティング』ばりの逆転劇を経てしかるべきところにキチンと着地させる脚本が見事。
また、文通ネタや早々に何かに気付いたらしい弥生さんなど伏線(らしきもの)をわかりやすく見せておいてそれを有効に使うとか、終盤で「あれ?選択肢ってもう1つないか?」と思わせておき、その「もう1つの選択肢」で締めくくるとか、観客に優越感(?)を持たせる手口(笑)も上手い。
O嬢
Nojimaji
池袋GEKIBA(東京都)
2008/12/26 (金) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★
「O嬢の物語」の続編
ポーリーヌ・レアージュの「O嬢の物語」の続編を寺山修司が脚色・監督した映画『上海異人娼館』の舞台化。O嬢を中心としながらも他の娼婦や日本軍兵士の物語が絡めてあり軸が定まらない感もアリ。
その一方、かつて女優だったと思いこんでいる娼婦「愛染」を演じた男優の哀しさがにじみ出てくるような演技が印象に残る
また、装置の中央が障子になっていて、時に映像を投影し、時にシルエットで演技を見せ、また時によってはそれを併用する演出も上手い…ってか美しい。
序盤で少年が主人公に関する夢(幻想?)を見るシーンなんて、それが効果的だったなぁ。
双龍無影伝
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/12/26 (金) ~ 2008/12/30 (火)公演終了
満足度★★★★
完結編に相応しい
中国全体を揺るがす史実を背景にシリーズ共通の主人公を絡ませ、さらに始皇帝の亡霊まで登場させてスケール感たっぷり。シリーズ最強の敵の登場やクライマックスでシリーズ第2弾のキャラが駆けつけるなどという展開も完結編に相応しい。
proof
コロブチカ
王子小劇場(東京都)
2008/12/25 (木) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★★
もしかして反動?(笑)
じっくりコトコト煮込んだスープというか、基礎のコンクリート打ちから時間をかけたというか、隅から隅までピシッと筋が通った安定感があり、安心して観ていられる、な感じ?
その昔、労演会員である父親が都合で行けなくなった時にピンチヒッターで観に行った芝居などと共通の「落ち着いた」雰囲気が「芝居芝居している」的、あるいは「戯曲ってのはこういうモンさ」的な。
その意味でコロ主宰が普段柿喰う客で演っているものの真逆とも言え、「え、もしかして反動?」みたいな…(笑)
親子ものが弱点な身としては、第2幕第1場の回想シーンにおける父と娘の会話に顕れた父親の理解・愛情にホロリ。
また、そういえば第1幕の幕切れも鮮やか。ある意味オーソドックスで「あ、ここで休憩かな」とちゃんと予測できたりして。
さらに、数学者の父が、数学に関する才能の片鱗を見せる娘に「お前の悩みの数も数学的だ」などと言うユーモアも外国戯曲的かも。
少女都市からの呼び声
東京倶楽部
芝居砦・満天星(東京都)
2008/12/23 (火) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★
これぞ唐十郎
7月の『二人の女』は、アングラ系芝居なのに小屋が近代的(?)な劇場MOMOで妙にお上品な感なきにしも非ずだったのが、今回は本家たる梁山泊のアトリエということで(テント小屋ほどではないにせよ)雰囲気もバッチリ。
そんな中で繰り広げられる手術中に腹腔から出てきた妹の髪の毛をキッカケに手術台から下りて(!)妹探しに向かった男の物語。
「*とばかり思っていたものが*ではなく#だった」な場面を筆頭にホラーの一歩手前な幻想譚、「夢十夜」とはまた違った悪夢のようで「あぁ、これが唐十郎テイストなのね…」みたいな。(笑)