刻め、我ガ肌ニ君ノ息吹ヲ
ACTOR’S TRASH ASSH
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/04/01 (水) ~ 2009/04/05 (日)公演終了
満足度★★★
マチソワで「我」「刻」を
ホムペの情報から伝奇系時代劇かと思いきや、裏歴史研所属究会に所属する女子大生とその指導教授が鬼伝説の真相を解明するという、ある意味社会派の人間ドラマ。が、鬼伝説のルーツたるものは現代社会にも依然として生き永らえている、という狙い・テーマは良いものの、性急な部分があり展開が唐突に感じられる部分があるのは惜しい。
また、「他人がどう見ているかを気にしながら行動する自分」というテーマがハッキリ提示されるのが終盤なのはちょっともったいない気がする。
なお、主人公・白狐丸とヒロイン・静の関係が「我」ではレオンとマチルダのように感じられ「刻」ではほぼ対等に見える(体格差もその一因か?)ことを筆頭にダブルキャストの面白さもアリ。
なお、座席はマチネがC列12番、ソワレがG列6番と、アップ&引手、引き+下手と2度観るのに理想的な位置。
詞編・レプリカ少女譚
劇団再生
Asagaya / Loft A(東京都)
2009/03/28 (土) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
知的迷宮を彷徨う感覚
かつて複数の少女たちが消息不明となった脳病院を取材する女性記者とその病院の医師、入院患者である少女たちを中心とした物語、今まで観た2作を「基礎編」とすれば今回は「応用編」という感じ。
過去に観た2作と異なり原典のないオリジナル作品で、原典という「手すり」なしに手探りで歩くよう心細さもあったが、手口(笑)がわかっていたのである程度カンが働いた、みたいな?
いたるところに「さぁ、隠されたカギをアナタはいくつ見つけられますか?」「このネタ、わかって頂けたら嬉しいです」というメッセージがあり、それらを探しながら知的迷宮を彷徨う感覚は演ずる側と観る側の丁々発止の頭脳戦(笑)、心地好い脳内疲労とともに観終える。やっぱり面白いわぁ。
終盤、病院内の出来事に一応の決着がついた後でヨウサギが「私のノートはここまでで終わっています。ここから先はあなたが記して下さい」とシルレルに託すのが見事。そこでのヨウサギとシルレルは、まんま作家と観客なワケで…。ここで「ヤラレタぁ~!」と満面の笑み。
キレイなパンチを受けてノックアウトされるボクサーは天国に昇るように気持ち良いというハナシだけれど、こんな感じなのかも?
エスカルゴ
こゆび侍
王子小劇場(東京都)
2009/03/25 (水) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
パンドラの匣?
事前情報から自分の「毒」を浄化するために女性を「くいもの」にする悪いオトコの話かと思っていたら(読解力不足?)さに非ず。
前半の崩壊しかけた家族のドラマは木造の旧家を想起させる装置の醸し出す雰囲気と相俟ってPARCO劇場などで上演される翻訳劇のようで、馬渕英俚可でも出て来るのではないかと…(笑)
後から改めて考えると志保子なんかピッタリだし、するってぇと知果は南沢奈央か?などとも…(『赤い城 黒い砂』気味(笑))
が、最終的に「女性によって浄化される」ことになるワケで「あ、なるほど…確かにぃ」みたいな。いや、浄化されると言うよりはむしろ「膿を出し切って快方に向かう」の方が的確か?
あれもこれも喪ってしまった主人公のもとに5年間浴室に閉じこもっていた(!)妻が「女神降臨」とばかりに降りて来て、徐々に照明が明るくなるラストの表現を「希望」と解釈すれば、あの家はすべてが去ったあとに希望だけが残ったパンドラの匣のようにも思える。(それとも主人公の幻想もしくは願望?)
照明と言えば開演前(と終演後)、舞台上方にあるバスタブ後方の壁に、水面の反射光(らしきもの)がゆらめいており「ありゃ、バスタブには水が張ってあるのか?」と思ったら本編から察するにそのようなことはなく、照明効果だった模様。う~ん、トリッキー。
また、終盤でバスタブ横から消失する自転車もトリッキー。
その直後のシーンで「上に引き上げたのか?でもそんなスペースはなさそうだし…」などと気になってしまった…(笑)
伯父ラジオ
空鼎鬧
「劇」小劇場(東京都)
2009/03/24 (火) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
共感しながら観る
オンエア中のラジオ生番組というタテ軸はありつつエピソードの羅列になってしまい全体を通しての起承転結的な流れに欠けるという憾みはあるものの、こらされた様々なアイデアが良く、かつてラジオをよく聴いていた頃を思い出しつつ共感しながら観る
ロミオとシラノとジュリエット
CAPTAIN CHIMPANZEE
ザ・ポケット(東京都)
2009/03/25 (水) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
欲もあるがこれはこれで…
タイトル通り、ロミジュリの世界にシラノ・ド・ベルジュラックが加わり、両作品の「キモ」を結びつけて構築したストーリー、欲を言えばもう少し原典からの引用があって欲しかった気もしつつ、組み合わせ方が良い上に新機軸も盛り込んで楽しい。
さよならシアタートップス 最後の文化祭:短編オムニバス公演
THEATER/TOPS
新宿シアタートップス(東京都)
2009/03/18 (水) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
去来する様々な想い
かつての上演作品の短縮改訂版だった一跡二跳は中途半端な印象だったが、書き下ろしの泪目銀座と『ラフカット』提供作品セルフカバーのラッパ屋はともによく観ていたこともあり、内容・出演者から呼び起こされ去来する様々な想いと共に堪能
ニューグランドホテル
SHOW-JIN & SORAism company
萬劇場(東京都)
2009/03/17 (火) ~ 2009/03/24 (火)公演終了
満足度★★
開演が30分以上押し
開場は定刻通りながら開演が30分以上押し、しかも場つなぎ役が出てくるのが本来の開演時刻を10分も過ぎてからという不始末のためもあり前半の「慰安旅行」はイマイチと感じたが、後半の「JACK the RIPPER」が前半とのリンクも含めて面白かったのでかろうじて挽回?
評価は空気の読めない場つなぎ役がマイナス1、前半が2、後半が4の平均値
青鬼(あおおに)<当日券あります!>
劇団印象-indian elephant-
相鉄本多劇場(神奈川県)
2009/03/19 (木) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
シュール、ブラック、シニカルなコメディ
主人公夫妻が(食べることを前提に)非合法に入手してマンション自室の生簀(!)で飼っていた「食用イルカ」(笑)がある日突然進化して…という物語、「他者の命を奪って食し生き永らえる」というテーマを内包しながらも、あくまでシュール、ブラック、シニカルなコメディとして楽しめるスタイルは好み。
また、生簀やクローゼットの照明だけでの表現、「もどす」シーンのピンポイント的な照明や、椅子を組み合わせて装置として使うアイデアなども見事。
立体文学 むらさき源氏物語
ストーリーテラーズ
ぎゃらりい茶屋町三番地(東京都)
2009/03/19 (木) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★
古典文学をポップに仕立てる
今まで観たものはネタが児童文学系だったが今回は古典なので、あのユニークな手法と合うのか?と思っていたらそこはさすが、喰わず嫌いな古典文学をこんなにもポップに仕立てるとは!とビックリ。
特に短歌をメロディに乗せてミュージカル風にする部分が秀逸。コテコテの古典とミュージカルという取り合わせが妙にマッチして意外かつ楽しい。(タカラヅカであったような気もするが…<源氏物語でミュージカル)
また、「ヒゲの伴男」(田辺聖子の創作人物とのこと)を前回公演の「オオカミ」で表現したのも愉快。
mixture♯1【当日券有ります】
空間ゼリーLabo
池袋GEKIBA(東京都)
2009/03/17 (火) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
オムニバスの面白さを実感
外部の作家も2名起用しての3本から構成されるオムニバス、ファンタジー寄りの1本を比較的日常に近い「等身大系」2本で挟んだ構成。程よくコミカルな1本の後にホロ苦いオトナの味わい2本を配した流れも含めてオムニバスの面白さを実感。
ふわり
アンクルジャム
ギャラリー悠玄(東京都)
2009/03/20 (金) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★
まさに「ふわり」とした感じ
人間だった頃の記憶をほぼ失った見習い天使と彼が担当することになった5年前に恋人を亡くしてその心の傷がまだ癒えない女性との二人芝居、この設定だけである程度予測できそうな展開ながら、タイトルやフライヤーから察する通り優しく、まさに「ふわり」とした感じが心地好い。
また、保倉大朔の誠実で一所懸命な見習い天使ぶりと嬉しい時の表情、石井悦子(オトコマエな感じ?)の恋人を喪ったことから心に壁を築いて男性に対して(ましてやアヤしげな営業マン(笑)には)つっぱって寄せ付けない感じなど、細かいところも見て取れる小さめのスペースだったのもよかった。
おやすまなさい
カニクラ
アトリエヘリコプター(東京都)
2009/03/18 (水) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★
裏に秘められたモノ
「眠れない女」と「眠りたい女」による70分弱の二人芝居、なにやら象徴的な部分もありつつ、とりあえず表層部分だけでも面白く、がしかし、偶然同じ回を(そして以前の風琴工房版も)ご覧になっていた知人から終演後に裏に秘められたモノを告げられ「そういうコトだったのか」と大いに納得。
観ている間、疑問に思っていたのでアフタートーク用の質問用紙に書いた演出意図までその瞬間にわかっちゃった、ってなモンで。(笑)
水鏡の月
soulstory
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2009/03/17 (火) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
新たなフェイズに突入?
ダンスでストーリーを紡ぐのが特色のこのユニット、前2回と比べて抽象的な表現が増え(とはいえ、蟹、亀、クラゲなどの動きはけっこう写実的)、直接的にストーリーを読み取るのがやや難かしくなった一方、トータルバランスは良くなり、例えばクラシックのバレエ組曲のようなまとまりが出てきたように思う。
また、今回は全曲オリジナルで(しかも一部の公演日を除いて生演奏)、全体的には梶浦由記や上野洋子などを想起させる系統ながら、スパニッシュラテンの曲が1曲入ることでアクセントになっているのもイイ感じ。
アクセントと言えばダンス面でもベリーダンスがフィーチャーされる曲があって、これもよきアクセント。
そんなこんなに、会場が広くなった(前2回は遊空間がざびぃ)こともあわせて新たなフェイズに突入した、な感じ?
あと、終盤での豆球による照明演出も効果的だったなぁ…
怪盗ルパン・満洲奇岩城篇
月蝕歌劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2009/03/11 (水) ~ 2009/03/16 (月)公演終了
満足度★★★★
「ごった煮」どころか「闇鍋」
昔熱中した乱歩の少年探偵シリーズ(とそれから派生したマンガ、ドラマなどの作品群)のニオイに少女歌劇的ノリが加わって好みの2点盛りな上に、虚実取り混ぜ、元ネタを知っていればいるだけ楽しめる「あんな人物やそんな人物」が登場する「ごった煮」どころか「闇鍋」(爆)のような作品、キッチュあるいはチープな感覚も漂って独特の味わいアリ。
また、史実ベースな部分から思いっきりおバカでマンガチックな部分まで振れ幅が広く、その組み合わせ方というか融合具合というか、そこも面白い。
終盤で少年探偵団の団員が東京大空襲で命を落としたり戦死したりなんて秘話が語られるかと思えば、「弾丸を撥ね返す特殊合金製の布」なんてのが出てきたりもするし…(笑)
ただ、直前(開場から開演までの間!)に wikipedia で甘粕正彦について予習したのは大正解ながら川島芳子について怠ったのは片手落ち。なまじ(漠然と)知っている気になっていたのが落とし穴か?いっそ「男装の麗人」だの「東洋のマタ・ハリ」なんてフレーズも知らずにいたら予習したかも…(とほほ)
トワイライト・フォア・クローバー・ジェネシス
進戯団 夢命クラシックス
銀座小劇場(東京都)
2009/03/12 (木) ~ 2009/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
パズルのような構成が鮮やか
はるか昔の姫とお付きの者のリアルな夢を見る女性、人や物の余命を読む能力を持った青年、亡き母と同じ心臓疾患で手術を恐れる少女とその兄、千年にもわたってある女性の魂を守ろうとし続ける謎の男、などバラバラに提示されたピースたちが次第に関連づいてストーリーをカタチ作ってゆき、終盤で「昴」の正体が明らかになる時に最後の一片がピタリとハマって全体が1つにまとまるパズルのような構成が鮮やか。
また、千年の歳月を経て届く1つの想いがロマンティックだし、それを取り巻く人々のいくつかの想いが優しくてイイ。
SPY
劇団Spookies
きゅりあん(品川区立総合区民会館)(東京都)
2009/03/12 (木) ~ 2009/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
余は満足ぢゃ
時は幕末、新撰組にも尊皇攘夷側にもそれぞれ密偵がいて…という香港映画の「某三部作」を想起させるストーリー、まるっきりのフィクションではなく虚実取り交ぜて描いているので歴史の新たな側面を見ている、あるいはパラレルワールドの歴史を見ているようで面白い。
ただ、先述の三部作か、あるいはそのハリウッド・リメイク版を観ていたらより面白かったかもしれないと思うとちょっと残念?(笑)
また、程良く笑いもまぶしてあるし、途中で小出しにしつつ終盤で炸裂する殺陣は迫力があるし、観応え十分の130分、余は満足ぢゃ。
そうそう、殺陣で刀の音などのS.E.を使わないのもイイやね。むしろその方がより迫力を感じさせるような気がする。
ラストの新撰組隊士たちの黙祷は、同時に志に殉じた幕末の若者たちに対する出演者・スタッフのものでもあるのがまたイイ。
彩られたモノ・クローン
劇団名古屋さん。
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2009/03/10 (火) ~ 2009/03/17 (火)公演終了
満足度★★★
眼からウロコが落ちる
遺伝子操作やクローン技術がもう少し進んだホンのちょっとだけ未来のおハナシ。タイトルや公表されているあらすじから想像した真相が当たらずとも遠からずの内容は意外性皆無で「なんだ、やっぱり…」ではあったものの、抽象的に「倫理」で片づけられているクローン人間の問題を具体的に提示して眼からウロコが落ちる、みたいな?
ただ、遺伝子操作によって作られた「××が発光するネズミ」に噛まれた人間も××が光るようになるというギャグはいかがなものか?ウイルス感染じゃあるまいし。そんなに簡単に、しかも異種間で特質が受け継がれるようなら遺伝子操作なんていらねーじゃん。(光るネズミや光る××の見せ方は愉快だったけれども)
また、本人への臓器移植用にクローンを、というアイデアは従前からあった(クローンものでは定番?)が、あの結末はつまりまったく健康なクローンを「つぶして」その臓器を使ったワケで、それもいかがなものか?(とはいえ、考えてみるとこのアイデア自体が健康なクローンを「つぶして」使うことを前提としているワケで…じゃあ、これも眼からウロコか)
ところでああいうラストってことは、舞台となった研究室は知覧にでもあったんでしょうかね? で、彼は宮川三郎少尉の末裔だったとか?(爆)
いやまぁ、初舞台の岩田さゆりを観るのが主眼だったので、芝居全体については片目くらいつぶるけれどサ…(爆)
よーいドン!!死神くん
ポップンマッシュルームチキン野郎
劇場MOMO(東京都)
2009/03/06 (金) ~ 2009/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
リピートしちゃったし
ストーリーの基本部分は一昔前の2時間ドラマあるいは昭和中期の松竹映画のような(そのルーツは近松あたりまで遡る?)ベタな人情ものに他ならないのに、それにドリフのコントのようなギャグやメタフィクション的な部分、それに演劇論までまぶして全く違った印象のものに仕上げていて、生地と柄そのものは良いけれど和服じゃあなぁ…な古着を、和のテイストを残しつつポップなデザインのニューファッションに仕立て直した感じ。
なお、11にE列8番で再見。
風街
北九州芸術劇場
あうるすぽっと(東京都)
2009/03/06 (金) ~ 2009/03/08 (日)公演終了
満足度★★★★
マイルドで小綺麗な桟敷童子(笑)
一言で言えば「マイルドで小綺麗な(あるいはアク抜きをした?(笑))桟敷童子」、客席の横の壁まで装飾されているようなことはなく舞台上だけにとどまっている装置からも予見できたように、一般的な芝居を装いながらも根底に流れるのは東憲司の得意とする「庶民の強さ」。
井上ひさし(の昭和庶民伝)とはまた違ったアプローチながら悲喜こもごもの庶民生活を描き、心の底に秘めた強さやバイタリティを見せてしめくくるのはこの人の真骨頂。(オープニングで主題歌を全員が歌うのも得意なパターン?)
※ 小奇麗に感じたのは桟敷童子の芝居よりも現代に近い60年代を思わせる頃が背景ということもあるか
また、ラストシーンの青空の美しさにはホロリ。
それにしても、中心となる2人の少年役がともに女子大生だったとはオドロキ。小柄だしヘアスタイルやメイクのためもあって、てっきり「子役を使うとは珍しい、でも演技巧いな~」などと思っていたのに…(笑)
特に学役の方はその表情なども桟敷っぽくて、いずれ桟敷童子の舞台でも観ることになるかも?などと思う。
『すべての風景の中にあなたがいます』『光の帝国』
演劇集団キャラメルボックス
新宿FACE(東京都)
2009/03/05 (木) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
『光の帝国』
原作が短編だけに脚色によって膨らませた部分アリ。読後9年の曖昧な記憶のおかげであまり抵抗はなく(若干の違和感程度)、クライマックスである「故人が遺したもの」のくだりに弱点を突かれた(←キャラメルテイスト満載)ので、総合評価としてはこちらの方が好み