『世界の終わり』を囲む短編
Minami Produce
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/02/23 (火) ~ 2010/02/28 (日)公演終了
満足度★★★
各編ごとに「原典との距離」「接点の多寡」が異なる
全6編のエピソード、プロローグとなる「世界の終わり」(#1)と全体を締めくくる(エピローグというには長い)「幸せな結末」(#6)は両コースで上演、それに挟まれる2編が変わるというスタイルで、各編は芥川龍之介の短篇を「サンプリング」しているが「原典との距離」「接点の多寡」はそれぞれ異なる。
先に観たAコースではまんまとダマされ「ループするようにも、パラレルワールドのようにも解釈できる」「ドグラ・マグラ的な入れ子構造?」「原作の翻案・オマージュというより “その精神的な部分をベースにした” ってこと?」などと誤読(笑)する。
が、Bコースで内容を把握。南主宰と話したところによればそれでも全貌は読めていないそうだけれど、自分なりには納得。
世界の終わりの直前、天使に採用された男が「天使の実地試験(あるいはOJT)」としてパラレルワールドでのいくつかのケースを処理する中、姪が原因で迎えそうになる終末を防ぐ、というのがσ(^-^) の解釈だが、いかが?>ご覧になった方々
ビリビリHAPPY
突劇金魚
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/02/23 (火) ~ 2010/02/24 (水)公演終了
満足度★★★
突拍子のなさが愉快
高校生のスミ子は、隣町にできた大手家電量販店に客をとられて開店休業状態の電器店に1人で暮らしていたが、ある日強盗が入り、しかしひょんなことからその強盗および強盗の彼女であるミドリも同居することになり…という状況から始まる物語。
親が出て行ってしまい1人で暮らす未成年少女という設定は3日前に観たもの、雑居系は1週間前に観たものと、それぞれカブっており(後者は軽くだが)、ホントに集中するなぁ、とオドロく。
以降は何度か訪れる転機によってひらける新たなフェーズの突拍子のなさが愉快で、たとえば「不思議の国のアリス」と通ずる面白さアリ。
また、冒頭でスミ子の語る将来設計を部分的に実践しているミドリの書いている小説の一部を伯爵が実践していて…なリレー式の展開や、強盗とミドリが交わすローレルに関する会話における一般的なケースとの男女の逆転(偏見?)、など、ディテールについても楽しむ。
さらに時々出てくるシロ美はスミ子の妹という設定ながら、実はスミ子の分身というか、別人格というか、心の中のもう1人のスミ子という解釈もできるような気がしたが、深読みあるいは誤読?
そう言えば白いドレスのシロ美と対比させる必要からスミ子が黒いドレスなのは十分理解するも、やはり女子高生役には「記号として」セーラー服を着用していただきたく…(爆)
パニ★ホス
PU-PU-JUICE
ザ・ポケット(東京都)
2010/02/18 (木) ~ 2010/02/28 (日)公演終了
満足度★★★
あと20分ほど削れば…
芥川賞作家でありながら10年以上スランプの作家・西園寺が胃潰瘍で入院した「学園ドラマで言えば落ちこぼればかりが集まるクラス」のような(←劇中表現)問題患者ばかりの病室に、ある夜入院中にもかかわらず病院を抜け出して呑み歩く常習犯である娘・レイが窓から入って来て…な物語。
ドタバタ系コメディに父娘ネタや純愛も絡めて悪くはないが、部分的に既視感があったり、一部コメディパートとハートウォーミングパートが水と油の如く分離していたり、なこともあり、135分近い上演時間(カーテンコール含む)が長く感じられてしまうのが惜しい。あと20分ほど削ればスッキリするのに…。
一方、入院した西園寺(と同室の患者およびそこでサボる医師)が、レイを元気付けるために紡ぐ物語(=執筆中の小説)を劇中劇として本筋とは別の役者たちが演じ(ゆえにカテコでは30人も舞台に並ぶ)、一旦筆を置く表現としてそれまで開いていた本を閉じると作中人物たちが速足でそそくさとハケるのが愉快。
また、小説のクライマックスでのヒロインの言葉が思い浮かばず悩む西園寺がレイにその台詞を考えて貰うことで彼女の「言いたくても言えなかったこと」を引き出し、なおかつ小説内と劇中現実を同じ台詞で締めくくって融合させるツクリは見事。
さらに、本筋パートで2人の人物が逝く時に湿っぽくならないよう象徴的に表現するべく(その時だけ)客席中央の通路を使う(ありゃ、するってぇと客席は冥界なのか?(笑))のも巧い。
女女女ニョニョニョ
グワィニャオン
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2010/02/18 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
西村太佑の新境地
1年契約で顧客に「買われる」職業の女性が存在する「もう1つの日本」、父は金だけ渡して再婚し(後に死亡)母は出て行ったきり戻らずで一人ひきこもる少女が残った金をはたいて「吉田さん」を購入し…。一方、その少女が愛読するホラーマンガの作者(今年になって3本目の女流マンガ家モノだ)はアシスタントとして複数の女性を買って使っており…な物語。
買われる職業に就く女性たちは全員が人を殺した過去を持つ、など珍しくダークな一面もあるものの重くはならず、笑いを交えながらも親としての責任放棄にも言及し、単に「女性のみ(オープニングの生アナウンスのみ通常通り尾形雅宏)のグワィ」ではなく「西村太佑の新境地」といった感じ。
一方、その職業の原点は江戸時代の湯女であるという説明(「本体」が口頭で行なっている設定)を劇中劇風に見せたり、「買われる」側の研修の様子も挿入したり、などのアイデアあふれる見せ方はおなじみの「西村節」で、そういう意味で「一粒で二度オイしい」な感じ。
そんな挿入部分もありつつ、前半は少女の話が中心で、「少女が冷蔵庫に保存していたもの」を明かす直前でマンガ家側のストーリー(前半にも時々挿入されてはいる)に移り、少女が新人の「お試し」的に派遣されると、その日で契約満了となる女性が行方をくらました母であることが判明してクライマックスを迎え「冷蔵庫の中身」も含めてストーリーを収束させる構造がまた見事。
思い返すとクライマックスを中心に哀しい部分も少なからずあり、ホントに新境地。
が、モロモロを含めてテッパンであることに変わりはなく、今回も満足満足ゥ。
なお、タイトルの読みは「にょにょにょ」で、終幕近くに少女がする「姦しい」の読み違い。
SPIRIT
S×Sプロデュース
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2010/02/16 (火) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
問題提起と娯楽性の両立
前々回の『SHOUT!!』、前回の『Smile』と同様「日本の今」を描く「社会派エンタテインメント」、今回はダムやゴルフ場などによる山村開発の是非を問いかける内容。
人口樹林を作るだけ作って放置することによる「緑の砂漠」と呼ばれる状態とか、針葉樹は根が浅く地盤の補強にはあまり役に立たないなどというシリアスな事実や、さびれる一方の山村に開発事業がもたらす影響の是と非なども盛り込みながら、開発反対運動をする若者たちの運動に対する疑問(何のために運動をしているのか・始めた頃と趣旨が変わってきているのではないか・開発は必ずしも悪いことではないのではないか)を描き、リーダー格の青年が想っている相手を危険な目に遭わせたくなくてとった態度によりその相手が山に入ってしまい、起こった山崩れから救うべく彼らが根城としているバリケードの位置を教えるために歌を使う(マクロスかっっ!!!(笑))という劇的な終盤を迎えるという構造は、あたかもR.アッタンボロー監督の『遠い夜明け』(87年)の如く、問題提起と娯楽性を両立させて見事。
ここの作品って、毎回そういったツクリで目からウロコがボロボロ落ちまくり…。
居りんす。(おりんす)
み企画
萬劇場(東京都)
2010/02/18 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★
しっとりとした趣きある大正浪漫
大正時代、吉原の遊郭での人間模様を描いたもので、そう言えば1月の『爾汝の社』や前年11月の『おんな』など、ここのところ遊郭モノが多い…(後者は同じ萬劇場での上演だったし)
前の2本が江戸時代だったのに対してこちらは大正時代という違いはあるのだが。
で、本作。幼い頃の記憶を失った画家が、ある遊女の絵を描いて欲しいという手紙により遊郭を訪れると、彼にやけに親しく接する少女がいるが、彼女の姿は彼と1人の遊女にしか見えていない様子で…という状況から始まる物語。
しっとりとした趣きある大正浪漫(背後にある大正時代のモロモロがにじみ出てくるようでもある)に一抹の切なさや人情の機微的なもの、遊女のプライドなども絡めて鮮やか。
ただ、終盤の火事場面での音楽がやや甘美なのが珠に瑕?
なお、落ち着いた語り口に「昭和のブンガク」的な雰囲気も感じ、思い起こせば先述の2作にもそれはあり、内容もさることながら黒を基調とした装置(3作ともそう)にもその理由があるのか?とも思う。
十二夜
東京シェイクスピア・カンパニー
イワト劇場(東京都)
2010/02/18 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★
大方満足だが大きな減点要素も
かなり昔に観て面白かった記憶はあったもののいくつかの場面と基本設定以外はほとんど忘れており、こうして改めて観たら前年に観た『間違いの喜劇』と設定がソックリなのにニヤリ。
しかしここまで似ていたとは。さすがの沙翁にも「手を変え品を変え」には至らず「手を変えるも品は変えず」あるいは「手は変えず品だけ変え」にとどまった作品があるのね…(笑)
とはいえ、いろんなスタイルの勘違いや想いのスレ違いが交錯する内容はやはり愉快で、兄妹の再会を筆頭にあれこれが丸く収まるハッピーエンドも心地好いのでかなり満足。
おっと、内容だけでなく、動作が独特で歌も巧い道化を筆頭とした出演陣もそれぞれハマっていて見事。
がしかし最近よくある翻案やアレンジものと違って古典的なスタイルの演出なのに、動きだけならともかく「ムーンウォーク」「EXILE」なんて単語を口にしたり「世界に一つだけの花」「また逢う日まで」「さよなら」のような現代の曲を使(歌)われたりすると違和感を禁じ得ず、その度に現実に引き戻されて醒めてしまうのが残念。
ましてやオープニング(とエンディング、さらに途中も)がリュートの生演奏なのでそのギャップもあり評価半減と言っても過言ではない。何故そんな中途半端なことをするのか理解に苦しむ。
ここから、
play unit ココカラ。
@quos(東京都)
2010/02/05 (金) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★
旗揚げにふさわしくスタートを表現
父親が転勤族だったために「幼な馴染み」というものがいない身としては、互いに幼い頃から知っている間柄の親しさに憧れのようなものを感じ、しかし、そんな中に何かが欠けている感覚があり、それが後半での展開に効いてくるのが上手い
煙が目にしみる
PLUS
アイピット目白(東京都)
2010/02/16 (火) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
Bキャスト
演出家は同じながら完全ダブルキャストで、場面によっては立ち位置まで違っていることもあり、これまた印象を異にして、それぞれの面白さアリ。
面白さといえば、鈴置・カトケン・あかぺらともベテランを起用しての上演だったのに対して今回(とファルスシアター)は若い(相対的に?(笑))キャストが中心で、しかし芝居のウソと言おうか演技によってちゃんと相応の年齢に見える(「見せる」?)のが舞台の面白いところ。
また、泉は今まで観たものでは「貫禄のある」(笑)女優が演ずることが多かったものの、今回はむしろ小柄な女優が演じ、口八丁的にカカア天下らしさを表現していたのも◎。
礼子についても、今回を含めて今までに観た12のバージョンの中で一番よく泣いていたが、そういう解釈もまたアリ。
そんな風にいろんなバージョンを観ていると、目の前の舞台を観ながらそれまでに観たキャストが目に浮かんだりするのも楽しからずや。
煙が目にしみる
PLUS
アイピット目白(東京都)
2010/02/16 (火) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
Aキャスト
この名作戯曲を選んだ時点で半分以上成功と言っても過言ではない(←私見)一方、σ(^-^) にとって過去4団体で通算10回(鈴置P5回、カトケン3回、あかぺら倶楽部、ファルスシアター各1回)観ている大好きな作品なのでその分ハードルも上がるゾ、などと思って観たら、過去に観た4団体のものともまた違ったアプローチながら、それが芝居の面白いところで、十分に「これもアリ」に仕上がっており、結果はやはり大満足。
また、ラストに流れるのが「Smoke Gets in Your Eyes」なのは当然ながらカーテンコールで「Knocking on Heaven's door」というのもイイ。
ハウスシェア~わたしのプリン食べたら死刑~
演劇ユニット3LDK
劇場MOMO(東京都)
2010/02/16 (火) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
2段構えの構造が○
不運続きで身寄りも住まいも職もない男が忍び込んだのは、赤の他人たちが共同生活をしている家で、家主の計らいにより男もそこで暮らすことになり…という物語。
この家主が「小料理屋の女将で保護司で町内会の世話役」という設定で、そのきっぷの良さが小気味良く、なおかつ「あぁ、この人ならそんな面々を住まわせそう」な説得力もあり。
前半は侵入した男がそこに馴染むまでの期間(1ヶ月少々?)を住人たちの紹介を兼ねて描き、後半はさらに新たな人物を2人も登場させて家主の誕生日に起きた騒動(事件?)をほぼリアルタイムで見せる2段構えの構造が○。
この後半では、古典的ですらあるウソと勘違いによるコメディ要素に始まり、家族や人と人とのつながり(「居心地の良い距離」なんて言葉がイイ)や嘘をつくことの是と非など感動させたり考えさせたりする要素も盛り込んで、まさにヤマ場。チラシでも謳っていた「笑いと涙」が爆発、みたいな。
また、最初とその次の暗転で流れる曲が「危険な関係のブルース」と「ワーク・ソング」と内容と微妙にカブっており、曲名を知っている客への目配せか?などとも思ったり。
バラシ
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
赤坂RED/THEATER(東京都)
2010/02/10 (水) ~ 2010/02/18 (木)公演終了
満足度★★★★
満足度高し
いろんな人の繋がりを断ち切る(=バラす)裏稼業を営む「バラ師」グループを描いたストーリー、劇団K助の金沢主宰(脚本)の手口(笑)はよく知っている(←つもり)ので、最終的なオチはかなり早い段階で予想できたものの、そこに至るまでのサスペンスあふれる展開は全く先が読めず、途中で「ありゃ、やっぱりそういうオチではないのかな?」と思ってしまうくらい。だもんで、「予想できた」というよりは「結果的にそこに落ち着いた」という方が的確か。
まずは頼朝と義経の不仲を仕組んだ男が「バラ師」の起源であり現リーダーの祖先、ということで頼朝と義経はマンガチックな映像(スチル)、家臣と実行者を役者が演じて見せることでヤるなぁ、と。
以降、映像(スチルだったり動画だったり)を効果的に使い、場合によっては「なんでアレ(←役者が演じた部分)だけリアルで立体的なんですか」と出演者がツッコミを入れたりもする手法が愉快。
一方、メイン部分である夫婦を別れさせるために互いの猜疑心を膨らませて行く手口は巧妙だし、バラ師チームがたどる末路はコワい(このあたりで予想したオチよりもビターなのか?と思った)し、でハラハラドキドキしつつ、最終的な落としどころは「あぁ、やっぱりぃ」で安心(?)し、満足度高し。
たゆたう、もえる
マームとジプシー
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/02/13 (土) ~ 2010/02/16 (火)公演終了
満足度★★★★★
ほとんど感服
大きな括りで言えば「家族モノ」ではあるが、(σ(^-^) の弱点であるところの(爆))「家族の絆」よりも肉親であるがゆえの甘え(と反発)から生じた溝を描いており、優しさの中からビターテイストが時折表出して、ふわりとした感触なのに強く握るとトゲがある、な感覚。
またそれが、中心となる姉妹(とその弟)の子供時代・少女(少年)期・大人になってからの3つの時代を過不足無く描きつつも90分のワクにキッチリ収めるというのが見事。
さらにその3つの時代はもとより、同じ時代の中でさえも部分的に時系列に沿わない並べ方をしながら、ちゃんとわかる(どころかむしろわかりやすい?)のも巧みだし、回想や説明の短いシーンをサラリと挿入する手口(笑)も上手く、ほとんど感服。
そんなスタイルで、子供ゆえの無神経さ・残酷さでやってしまった(その時はそう思っていなくても大人になってから振り返ると)取り返しのつかないことや、そんな子供時代・少女期の体験が大人になっても尾を引いていることなどまで語って、ホントに巧い。
小説などでテレパシーを「頭の中に直接響く声」などと表現することがあるが、これは「心の中に直接響く芝居」で、共感というよりも共鳴。遠赤外線の如くジワジワ効いてきて、観終わってからもホロリとしたり…。
あと、上方から吊るされた丈が3メートルはあろうかという6着の赤いニットのワンピース(そこから垂れた糸を血に見立てる手法も含む)も印象的。
しかし当日パンフ(に挟んだ紙片)に大半が夫を喪った女性の心境を詠んだものである俳句を載せて涙腺を緩めておいて最初に見せるのが子供たちの情景(郷愁をそそるんだ、これが)というのは卑怯!(笑)
five plots ~名探偵登場~
Last Brand
アイピット目白(東京都)
2010/02/11 (木) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★
評価は真っ二つかも
タイトル通り、とある私立探偵の事務所を舞台にした5つの連作短編集ながら、それぞれサスペンス・ミステリーだったりシチュエーション・コメディだったりとスタイルがすべて異なり、しかも5編が時系列にそって並んでいるワケではないという凝ったツクリ。
さすがに台詞が全部尻取りだったり、時間の経過に従って使う文字を1つずつ減らしていったりというムチャ(笑)をする作家だけのことはある…。
個人的には「パロディ・ミュージカル」と銘打った第3話に特にウケるが、もちろん他の4編もそれぞれタイプが違って面白く、90分程度にしか感じなかったものの、確認したらシッカリ120分経っていたという。
が、逆に全体の統一感に欠けるという弱点もあり、そのどちらに重きを置くかで評価は真っ二つかも。
いえすか?農家!?
セメント金魚
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/02/09 (火) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★★
日本の人情系喜劇
節分恒例の「相撲祭り」を目前に控えたある日の家栖村、最多優勝回数更新の期待がかかる阿栗家の主がギックリ腰になり…な状況から始まるホームコメディ。いや、古典的と言ってもいいほど基本に忠実なのでむしろ「日本の人情系喜劇」という表現の方が的確か?
長女の結婚未遂(どころか金銭貸借まで絡んでいる)問題なども絡ませつつ、ベタゆえにスベらない笑いも交えての105分、万事丸く収まる結末まで手堅くまとめてあり、安心して観る。
また、客入れのBGMと劇中での使用曲がT.D.N.のベストアルバムからの選曲(曲名が全部ワカっちゃったりして)だったのも懐かしかった。
遠ざかるネバーランド
空想組曲
ザ・ポケット(東京都)
2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★
ここまでキャラクターがまんま登場するとは…
かつて母から「ピーターパン」を読んでもらうことが好きだった少女が、フト気付くとネバーランドらしきところにいて…な物語。
ピーターパン・シンドローム(調べたら正しくは男性のみに使うとのことだった)の人々あるいは「モラトリアム人間」たちの「待避所」的なユートピアに一般人(あるいは主人公を救いに来た人物)が侵入したことでそこが崩れるハナシかと思いきや、ネバーランドらしきところにいたキャラクターすべてが少女の内的なモノだったというのが真相で、見事にダマされる。(笑)
思うに恩田陸の「エンド・ゲーム」を読み終わって間もなかったので、その内容と無意識的に結びつけていたのではないかと。「少年」は黒い衣裳なので「火浦」と重なるし…(ありゃ、アッチのネタバレか?)
で、ピーターパンの世界に迷い込んだ主人公、的な展開ではありつつ微妙に歪んでおり、外界(?)とのつながりのヒントもちりばめて進行して行くのであるところで全体像がつかめ、最後に改めて真相を明らかにして「あぁそうか!」と納得させる構造が上手い。
とか言って、前述の勘違いの他にてっきり病院の屋上と思っていたら実は学校の屋上だったなんてこともあったので「全体像がつかめて」などとエラそうには言えないか?(爆)
また、各出演者とも登場人物にうまくハマっており、特に武藤晃子なぞ少女の母(&ティンカー・ベル?)という役どころもさることながら、娘の名前を強引にウェンディに結びつけるところにそのキャラがうまく活かされていて…(笑)。
それにしても、タイトルからピーターパンに関連したストーリーとは予想していたけれど、ここまでキャラクターがまんま登場するとは思わなかったわさ。
一昨年、ホリプロのミュージカルでおさらいしておいて良かったァ。
まぼろし
空間交合〈アサンブラージュ〉リジッター企画
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
野田ファンは一見の価値アリ
若手小劇場系のイキオイのよさに加えて、語り口や言葉遊びなど野田秀樹度高し。野田ファンなら一見の価値アリ、柿ファンでもあれば必見!!
異例の直後「観てきた!」だったものの、後の参考として通常版を加筆しておきます。
日替わりで自分を往年の大打者と信じ込みその相手になりきる草野球の選手を中心としたストーリーと、恋した相手がアイドルで追っかけたちに阻止されながらもキッカケを作ろうとする少年(とその友人)のストーリーが併行して語られ、やがて…な物語。
まずは柿喰う客とも通ずる早口ながら活舌の良さで聞き取らせる会話によるテンポの良さ、リズム感に野田秀樹チックな同音異語などを使った言葉遊びも加えてコミカルにスタート。間の取り方や笑いのセンスは X-QUEST(←ここも野田好きだし)も想起させる?
いずれにしてもσ(^-^) にとっては好きなスタイルの取り合わせである「お子様ランチ状態(爆)」なのでツカミからオッケー。
その後、1錠服用すれば10年間眠り続ける薬(『死霊のはらわた3』を連想)なんてモノも出たりして、「ノストラダムスの大予言」(の本)が登場することで2本のストーリーの関係性に関するヒントが出されるのがまた巧い。
一方では「あと10年か」、他方では「10年も前」などと言い、両者には20年の隔たりがあると悟らせるワケさ。
そうこうしているうちに、冒頭の様々な言葉遊び的台詞にもあった「ドラム缶の中の遺体」が未成年者による少女監禁ドラム缶詰め殺人のことであると明かされ、草野球選手は20年前の事件の被害者の恋人で犯人に復讐すべくその出所(しゅっしょ:「でどころ」ではない)を待っていた…という本題(?)に突入。
チラシなどから予見したものの「読み違えたか?」とさえ思った復讐の是非を問うシリアス系はここからで、これもまた好きなテーマなので、その「二段ロケット」的な構造にも感心。(ライトなタッチで始まりながらも次第に重めなテーマに移行して行くのも野田風味と言えるのではあるまいか?)
で、最終的に復讐するに至ったかどうかについては語らず、しかし主人公の記憶の中の「復讐はしないで…。ただ、覚えていて。」というハカセ(=被害者)の台詞で締めるのもイイ。
東京パリ帝国合同公演
ロスリスバーガー
RAFT(東京都)
2010/02/12 (金) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★★
また別の味わいアリ
今回は東京パリ帝国(未見)との合同公演ということで、作・演出と出演をたすきがけで、という企画。そのうちのロスリスバーガー側が出演する方のみ観劇。
互いにコードネームで呼び合う黒服の男女3人を中心としたナンセンス系コメディ…というよりはむしろ長篇(約40分)コント?なオモムキは過去2回観たロスリスバーガー作品とはやはり異なるが、また別の味わいアリ。
そして彼女はいなくなった
劇団競泳水着
サンモールスタジオ(東京都)
2010/02/11 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
ここまでテイストが異なるとは
CMなどに出始めた新進(なのか?)女優の失踪をめぐる物語、「ミステリー風味」というのは事前に告知されていたとはいえ、ここまでテイストが異なるとは。なんたって、当日パンフに「今回が初めての方は是非次回以降も」みたいなことが書いてあるくらいで…(笑)
で、基本的には2人の人物の会話シーンの積み重ねというスタイルとサスペンスフルな内容の相乗効果によって、緊張感の高いことといったら!
まずはいろんな組み合わせによる登場人物たちの会話をバラまいて様々な可能性を示し、それによって「木の葉を隠すのは森の中」的な状況を作っておいて、次第にその中から失踪とは関係のないものを消去して真相に辿り着くのが、最初はどうやってもほぐれそうにないように思えた糸の絡まりを、ほぐし易いところから順に根気良くほぐしていったらようやく解けた、的な感覚。
また、実は序盤でキモとなる部分の表面を見せておいて、最終幕でそれの「完全版」を改めて見せるという構造もスゴいっちゅうか面白いっちゅうか。
そんなシカケで語るのが「悲劇の起こり方」といおうか、ちょっとした「ボタンの掛け違い」や勘違いがたまたま重なってしまって大事に至る、なストーリー、どれか1つでも要素が欠けていればあそこまでは行かなかったのではないかという「不幸な偶然」の重なりが巧い。
「第四幕」のタイトルにもなっている「トライアングル」もある意味変形のもので、これも活きているんだなぁ。
(リピートした17日の分はネタバレBOXへ)
MARIONETTES-マリオネッツ-
BB団
ウッディシアター中目黒(東京都)
2010/02/10 (水) ~ 2010/02/15 (月)公演終了
満足度★★★
非常にわかり易い娯楽作
西暦2050年、国家防衛のために開発に着手したが狂暴性と破壊力から計画中止となったサイボーグ部隊「マリオネッツ」の試験体数体とともに姿をくらましたドクトル瀬戸が狙う「スーパーチップ」をめぐる善悪の攻防…なおハナシ。
ストーリー自体は既視感ありまくりでお約束通り(『T2』っぽい部分も含む)、先の展開が容易に読めるほどながら、逆に言えば非常にわかり易く、だもんで難しいことなど考えずにひたすら舞台上で起こる出来事を眺めていれば良いという娯楽作。
今回の見どころはアクションで、特にマリオネッツが時としてメカニカルな動きをするのが見事。また、武力ではなくハッキングを得意とするマリオネット、マリリン(演・鈴木美園)のキャラクターが強烈。