じべ。の観てきた!クチコミ一覧

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BORG

BORG

colorchild

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2010/04/14 (水) ~ 2010/04/20 (火)公演終了

満足度★★★★

『トイ・ストーリー』超え
孤児院暮らしの少年が持つ筆箱とその中の文房具たちを主人公にした物語、多機能の新しい筆箱が来て焦る旧顔とかカラスにさらわれた元・缶ペンケースを助けに行ったり改造魔の子供につかまってピンチ、などの部分は『トイ・ストーリー』2作に近いが、そこに缶ペンケースの持ち主(=孤児院の寮母)の少女時代の想いを叶えさせるという要素も加えたことで本家超え、的な。(いや、そもそもおもちゃよりずっと擬人化しにくい文房具を主人公にするという跳んだ発想で超えているか?)
また、各文具の特性を巧く活かしており、その擬人表現も見事で、プロローグでの鉛筆と消しゴムの見せ方にウケてしまい、以降ハマりっ放し。
ネズミ(『アドベンチャーオブGAMBA』)や昆虫(『インセクターズ』)などの生物から文具という無生物に「跳んだ」ことで表現としても「シャトナー超え」を果たしたか?みたいな。
もちろん、文房具たちナメからテレビ画面のアップになるズームインの見せ方など、以前からの手法も見事。
あと、マジンガーネタに引き続いてサラリと流した「足なんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです。」なんて台詞もしっかり拾う。(表現を確認しようとぐぐったら、ある事実も判明)
いやぁ、また一歩進化した、な部分も含めて面白かったなぁ。

ぼくらのアイドル

ぼくらのアイドル

味わい堂々

OFF OFFシアター(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/21 (水)公演終了

満足度★★★★

今までの作品の中では最もポップ
冒頭、新進アイドルグループ「もちもち娘」(メンバーはあん子・きな子・よもぎの3人だ(笑))のTV初出演の様子を見せ、お馴染みの(※)「荒船アニメ」によるオープニングタイトルの後の本編はその何年か後の物語。
※ がしかし、従来とはタッチがやや異なっており、知らずに見たら荒船作品と気付かなかったかも?
男性タレントの追っかけをしている女性がバイトしているコンビニを中心に、そのタレントとかつての「もちもち娘」メンバーやコンビニオーナーの弟などの「アイドル事情」を描いて、今までの作品の中では最もポップか?
とはいえ、突然「未来へ帰る」と宣言した未来型アイドル・ドラえさん(笑)がコンビニオーナーの弟の部屋の押入れにいるとか、シュールなテイストももちろん健在。(笑)
モロモロでツボのど真ん中を突かれた感じ。
また、劇中使用曲が中原めいこだったのも懐かしい。
しかし劇中で「ジェミニ」が流れた時に川島なお美ヴァージョン(そちらが先で、後にセルフカバーしたんじゃなかったっけ?)を先に思い出したσ(^-^) って…(爆)
ちなみにもちもち娘の持ち歌は往年のアイドルポップの典型のようで、これにもウケる。
それにしても、片やアンパンのように吸ったり飛ぶ推進力に使ったり、片や「本番中に出たらどうしよう」だったりという違いはあれ、マチネ、ソワレの両方でおナラネタが出るとは…(@_@)

記憶メモリン

記憶メモリン

時速246億

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/21 (水)公演終了

満足度★★

各編に縛りがないのでまとまりに欠ける
未来、ある王家の人々のスペアパーツとして作られたクローンたちの居住部屋で、「記憶」のことであり「記憶」とは違う「思い出」とは何か?という疑問が出て…というタテ軸に貫かれた5編の短篇、中には「記憶」がチラリと出てくるものもあるが、各編に縛りがないのでまとまりに欠ける。
こういうタイトル&タテ軸なんだから「記憶」あるいは「思い出」で縛ればいいのに、何でだろう?5編中3編が小林作品なので難しかったのか?
ナマ松嶋初音(ナマ足付き)とはいえ、ちょっと割高だったかな…(とほほ)

八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン

八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン

柿喰う客

タイニイアリス(東京都)

2010/04/15 (木) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★

よくもまぁ、こういうスタイルを発想するもんだ
玉置玲央、村上誠基による『八百長…』は、二人芝居とはいえかなり変則的。
何から何までソックリな2人の小学生のハナシで、一方がした演技をもう一方がそっくりトレースする、なんてところから始まり、以降、マナカナの如く(笑)シンクロした台詞が全体の9割以上(推定)を占めるという。
アフタートークで「台本には1人分の台詞しかない」なんてハナシが出たが、なるほど納得。
よくもまぁ、こういうスタイルを発想するもんだ。
七味まゆ味の一人芝居『いきなり…』は08年11月の初演を観ているので、「あ~、そうだった…」的な。
が、どこか違うような気もしたのでアフタートークで訊いてみたら、いわば「先攻と後攻が変わった」とのことで(巧い比喩だな)、初演時は中屋敷主宰主導で創りあげ、今回は逆に七味主導で創り上げたそうな。なるほど。
なお、その質問の回答で、本題に入る前のマクラ的に中屋敷主宰の大学演劇部に入部するかしないかの頃の思い出話も聴くことができて「そんなコトがあったんだぁ…」と。
で、やはり一人芝居や二人芝居だと観る側の「気持ちの焦点」が絞られてほぼ固定されるので空気が張り詰めており、それが通常の公演と大きく異なる点だな、と今更ながら気付く。
無言のシーンなんて本当に客も微動だにしない、な感じで、「シ~ン」という描き文字が見えるくらい(笑)の静寂も良かった。

カスパール・ハウザー

カスパール・ハウザー

JAM BAL JAN JAN パイレート

座・高円寺1(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★

あれもこれももったいない
まず、大がかりな装置はイイが、演技エリアがカスパールの幽閉された部屋(?)である舞台中央に集中してしまうのがもったいない。時々客席通路を使ったりもするのだから、それをもっと発展させればイイのに。
さらにその装置ゆえの(ってコトではないんだろうが)広い会場だけに残響が多く、そのために早口の台詞が聞き取りにくい、どころか時として聞きとれないのは残念…いや、それを通り越して致命的。(これは遭遇したこりっちゃーtさんと表現まで含めて一致) あれこれコアなネタや言葉遊びを盛り込んでいるのに聞き取れなければ意味ないじゃん。
が、カスパール・ハウザーからスタートして、連想ゲームのように次々といろんなキーワードに続いて発展して行くのは、話をしながら「ちなみに…」「そういえば…」などと脇道に逸れて本筋になかなか戻らないことも少なくない(爆)「スキゾ型」のσ(^-^) には好みのスタイル。
逆に言えばストーリーを追いかけようとする「パラノ型」の方には不評だろうが。
また、その発展するネタの数々もかなりコアで、冒頭の某歌姫の「メリクリ」の外国人アーティスト(韓流か?)による日本語カバーネタからすでに観客が置いてきぼり気味。
以降、例えば「考えるな、feel!」(前半が日本語で後半が英語という使い方は初めてだな)はともかく、イマドキ O.J.シンプソンなど出されてもワカるのは3割以下なのでは? 的なネタ満載。
そんなコアさ(爆)ゆえ「元ネタを知らなくても面白いが知っているとより楽しめる」ならまだしも、「元ネタを知らないとワケがわからない」のではないかという危惧まで持ってしまったくらいで…。(もちろんσ(^-^) はほとんどワカったクチ(爆))
「観る人を選ぶ」芝居かも。あ~、モロモロもったいねぇ…。

悪役照会~びっくりしたなあ、もう

悪役照会~びっくりしたなあ、もう

あぁルナティックシアター

駅前劇場(東京都)

2010/04/14 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★

バックステージ系コメディ
人気大御所俳優の歌謡ショー+芝居な公演の大部屋楽屋を描いたバックステージ系のコメディ、時として芝居として演じていることを逆手にとったと言おうか、作中人物が自分が演技していることをワカって演っているというか、楽屋落ち(舞台が楽屋だけに?)寸前のものも含んで大いに笑えて、ちょっこしホロリ。
家族愛に弱い身として、心臓病の妻が息をひきとる時に本番中なので看取ることができなかった過去を持つ役者に「私の時も舞台を優先して」と言う(母と同じ病を持つ)娘、とか、飛び出して何年も音信不通だった息子の舞台の窮地にノーギャラで出演する母である大女優などにツボを突かれるんだなぁ。
さらに、おネエ的な部分も持つ夫が本格的に女装に走ることを「こうして子供もできたし、自分の好きなように自分自身を演じて欲しい」と言って受け入れる妻なんてのもイイ。
ただ、「双子の弟を代役に」なんてのは誰でも真っ先に気付くであろうに土壇場になってやっと、なんていくらなんでも遅すぎね?
いや、そんなツッコミはヤボなのか?

丸ノ子ちゃんと電ノ子さん

丸ノ子ちゃんと電ノ子さん

芝居流通センターデス電所

「劇」小劇場(東京都)

2010/04/14 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★

濃縮還元100%
冒頭、「コトの結果」らしきシーン(薄暗い中でチラ見せするのも不安感をあおって○)を見せた後、ストーリーテラーを務める絵里の独白で10年前まで遡り、成人して酒とタバコをやりたい彼女がバーで「オトナのオンナ」を感じさせるふき子と出会ってから「そこ」に至るまでの軌跡を見せる…というスタイル。
歌に映画に芝居にと才能を発揮していたふき子が、彼女の言うところの「お化け」(=インスピレーション)が降りてこなくなったことに対して焦り・苛立ちを募らせてゆく過程をじっくり描いた前半(ってか大半?)の観応えが圧倒的。またそこに程よく笑える部分を挟むのも巧い。
で、「劇団、ふき子さん」の旗揚げ公演千穐楽で解散を宣言した主宰不在の打ち上げで劇団員から出る批判がやたらにリアルでニヤニヤしながらヒヤヒヤしたり…(笑)
そうして迎えるクライマックスは、「ぶぶか」店内にある油そばについての注意書きの如く「体調の悪い方はご遠慮ください」な痛み満載(笑)で、前々回公演『ヌンチャクトカレフ鉈鉄球』(08年11月)と通ずるスプラッタ系。
この1月(!)の前回公演『急襲キルフィールド』で感じた物足りなさを補って余りある、的な?(笑)
そんなこんなの内容、劇団員のみによる公演ということで、濃縮還元100%な印象?
また、オープニングクレジット映像もスタイリッシュだし、いつもながら生キーボードによる音楽と歌の完成度も高く、しかも全席指定で下手側の席だったので演奏する和田俊輔がよく見えたのもヨカッタ。
あと、序盤での絵里のメガネっ子ぶりに萌え~っっ!!!(爆)

ボンゴレロッソ

ボンゴレロッソ

劇団†勇壮淑女

ウッディシアター中目黒(東京都)

2010/04/13 (火) ~ 2010/04/19 (月)公演終了

満足度★★★★

ズルさ満載!(笑)
卒業から12年が経ち全員が30歳を迎える年、かつてのクラス委員の呼びかけにより、同級生の1人が雇われ店長をしているイタリアンレストラン「ボンゴレロッソ」で同窓会が開かれるが、憧れの存在であった先生が入院していると知った面々は…な物語。
出オチ的なキャラ作りすぎの登場人物たちに大笑い、な登場シーンに続く本編は「ありがちな同窓会系」と劇中で宣言しながらも、死神(!)がストーリーテラーを務め、しかも具体的に「この人物は2週間後に命を落とします」と予告することで「どういう方向に展開するんだ?」と思わせて、これがまずズルい。
で、いろいろあって、結局予告した人物は命を落とさないというのがまたズルい。
しかし考えてみると作・演出の金沢知樹作品は少なくとも今までσ(^-^) の観た範囲内ではビターエンドはなかったワケで、そういうオチなのも当然と言えば当然か?
…なんて書きつつ気付いたのだが、「もしかして初のビターエンドを観ることができるのか?」という無意識的な期待があったかもしれず、だとすればそこもズルい…(笑)
そういえば「ビターなの?」と思わせて実は…というパターンもいくつかあったのでまたしても同じ手口にダマされたのか?(爆)
さらに、クライマックスで出演者15人(すべて女優だヽ(^o^)丿)の大半にあんなカッコとそんなカッコをさせるに至ってはもはやズルいを通り越して反則あるいは禁じ手級?(笑)
が、そのクライマックスでの生のバンド演奏は見事。
その前の練習中の(グダグダの(笑))音は録音音源で「生じゃないのか」と思わせて、か~ら~の、なのでより引き立つ、みたいな。
あ、じゃあこれもズルいじゃん!(笑)

大海原の小さなイェイ!

大海原の小さなイェイ!

カリフォルニアバカンス

OFF OFFシアター(東京都)

2010/04/08 (木) ~ 2010/04/14 (水)公演終了

満足度★★★

いつものことながら可笑しい
地球の陸地の多くが水没した未来、人々は定期的に訪れて略奪する女海賊たちに怯えており…な物語。
が、海賊を追い払うために侍やガンマンを雇う(笑)なんて方向ではなく、毎度ながらのナンセンス系でありながらも妙に説得力のある(←私見)会話が中心で、いつものことながらこれが可笑しい。
そんな中、序盤にコンビーフの材料を「昔、陸に住んでいた「ウシ」というもの」などとする台詞があり、簡潔かつ的確に状況を観客に伝えるなぁ、と感心。
しかしそんな状況だったらカップ麺なんてとっくに賞味期限が切れているんじゃないのか?…いや、未来のことだから半永久的に品質が保てるようになっているに違いない。(爆)
で、終盤には大ダコとの戦い(「海底二万哩」かっっ!!!(笑))なんてスペクタクル(?)まであって、新境地か?みたいな…。
また、このタコの足がなかなかそれっぽく出来ていたし、女海賊のフック船長のようなカギ爪が回るなんてアイデアも愉快。(未来でも不便なカギ爪なのかい!なんてツッコミはヤボってモンで、ここは「海賊の首領の記号」ということで納得しておこう…)

CALLING

CALLING

Neo Mask

吉祥寺シアター(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/12 (月)公演終了

満足度★★★

コミカルな味も加えた新機軸
かつて十兵衛と共に修行をし、柳生宗矩の命により徳川家の裏の仕事をしながらも口封じに一族郎党を皆殺しにされた幻四郎は「伴天連(ばてれん)」の妖術を使って「八犬士」ならぬ「八賢士」を率いて柳生家への復讐を始め…なアクション時代劇。
殺陣やアクションのスピード感と迫力は毎度お馴染みながら、今回はそこに唐の剣術も取り入れ、さらにコミカルな味も加えたのが新機軸。
公安組(表記は推測)の紅二点・蟹目と箙がそれぞれ柳生兄弟と交わしている会話を交互に見せるが箙の側はボキャブラ風、とかその会話の途中で十兵衛に妻がいることを知った蟹目が「男なんて~っっ!!!」と斬りまくる、なんてのが愉快。
が、当日パンフで徳留主宰自ら「里見八犬伝の忍者版というイメージで進めていたが膨大な原作を消化することが出来ず…」と吐露している通り、「八賢士」関連がほとんど生かされていないのが残念。

ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】

ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】

elePHANTMoon

サンモールスタジオ(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

両編とも「This is elePHANTMoon!」
【レシピエント編】 
まずは説明的なものがまったくないのに、交わされる会話の中から自然に諸状況が伝わってくる序盤に舌を巻く。
そんな会話劇的な中からドナーの遺族の気持ちがジワジワと滲み出てきて、しかし迎える結末はショッキング気味?
ってか、ブラックでありながらも「そうか、そのテがあったか……って、そーじゃねーだろ!」なノリツッコミをしたくなるようなユーモラスなオチは前作『ブロークン・セッション』(前年11月)のクライマックスと同質で、笑っては不謹慎かと思いながらもσ(^-^) は満面の笑み…(爆)
思い起こせば前述の「会話から状況がしっかり伝わってくる」手口も『ブロークン…』と共通で、前作にウケまくった身として大いに満足。
その一方、ドナー編の初日をご覧になった方の情報(ってか印象?)と照らし合わせ、この時点で「観る順を間違えたかもなぁ…」とも思う。(笑)
 
【ドナー編】 
まず、装置を目にして「あらまぁ」と。
R編では窓があり外の木々が見えていた装置後方中央部分がコンクリート壁だし、天板が木目で丸いテーブルも黒一色の四角いものだし、などの変化があり周囲の細い縦材まで色合いが違って感じられるほど。
なるほど、60分と75分という中篇でありながらも通して上演しないのはその転換のため「も」ある(← 内容的にも続けて観るのはヘヴィーそうだし…(笑))のね、と。
そんな似て非なる(?)装置内で進むストーリーは静かな中にピンと張り詰めた緊張感があり、初日をご覧になった方が持たれた「『ブロークン…』よりも『成れの果て』(前年5月)に近い」という印象に大いに賛同。
また、ヒロインが悩んだ末に我が子を殺した犯人の臓器を受ける決断を下すものの、決して「めでたしめでたし」にはならず、手術の直前で…という後味の悪さ(笑)もいかにも、な感じ。
 
【総括】 
そんなこんなで、動と静あるいは陽と陰にクッキリ分かれつつも、その両方が「This is elePHANTMoon!」に仕上がっているのが見事。
で、両編を観終えての結論は「やっぱり観る順を誤った…」(爆)
しかし事前にD編の印象を耳にしていたので覚悟ができていた(笑)のは幸い。予備知識なしにこの順で観たらヘコんだかも?(爆)

夕焼けとベル

夕焼けとベル

カムヰヤッセン

王子小劇場(東京都)

2010/04/03 (土) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

満足度★★★

3つのパターンの家族愛
北陸地方の小さな島に銀行を襲ったテロリスト5人が逃亡してくるが、弟が事件に巻き込まれた女性刑事が私怨で彼らを追ってきて…な物語。
チラシには「終わる世界の、続いていく話」など終末的な言葉が躍っている割には単なる(しかも既視感のある)クライムサスペンスにすぎないとか、冒頭のアヤしい儀式や死んだ者の臓器を食べてしまう風習があまり活きていない(それによって西部地区のおどろおどろしさは表現されているが)とか、「17時の鐘」もとってつけたようだとか、ツッコミどころは少なからずあるものの、雨降って地固まる的に2人の小学生がちょっこし成長するラストが清々しいし、家族愛に弱い(あるいは甘い)身として「知的障害の姉への愛に気付く妹・妹へ裏返しの愛を抱いている姉・弟への愛によって暴走する姉」なんて3つのパターンを盛り込んでいるし、なので「終わり良ければすべて良し」的な?(笑)
いや、終盤だけでなく、序盤でのあちこちが軋んでいるようなザラついた感覚とか、島の駐在さんの見合いから現在に至るまでをダイジェストっぽく見せる手法とかも好きだし。
あと、前腕に被弾した2人がちゃんと流血している(しかもよく見ないと気付かない程度なのだ)とは芸が細かい!(笑)

ドライビング エンゼルフィッシュ

ドライビング エンゼルフィッシュ

劇団6番シード

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2010/04/08 (木) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★

「お、いつもと違うゾ」
3人組の怪盗「エンゼルフィッシュ」一味を逮捕するべく警察のブレインとして招かれたのは映画監督で…な「圧倒的コメディ!」(←チラシなどの惹句)、入場してメルヘンチックな装置を目にした段階で「お、いつもと違うゾ」的な。
以降、昨年のアトリエ公演や恒例のファンクラブイベントでなどで見せたコミカルな味を全編にちりばめた125分(本編時間)、異色作と言えるかも。
そんな中、「そう言えばあの時…」というつぶやきの後で回想(あるいは過去再現)シーンが時々差し挟まれており、終盤の謎解きではその連発で大人数がドタバタと走り回って再現してまた戻る(ので中には息切れ気味の出演者もいる(笑))のが可笑しい。
しかしエンゼルフィッシュが殺人を犯すところで「何かあるゾ」と思わせるのはイイとしても286人もの大量殺人(!)というのはやりすぎ。
これじゃあ「真のワルモノを騙すための芝居ですよ」と声を大にして言ってるようなモンじゃないかさ。(笑)

春の海

春の海

世田谷シルク

シアター711(東京都)

2010/04/08 (木) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

満足度★★★★

クライマックスは圧巻
地方の町(村?)の理科実験教室を主な舞台にそこでの2つの出来事を併行して描き、やがてそのつながりが明かされて…という構造。
2つの流れ(+α)の関係がなかなかわからずに観ながら悶々としたり(←そこまで大袈裟ではない(笑))もするが、クライマックスは圧巻。
現在の状況と20年間の状況(それは現在の状況でのビデオ映像内の出来事でもある)、それにドキュメンタリー番組を編集しているルームの3つの場面を映像で言うところのカットの積み重ねのようなスタイルで併行して見せ、時として異なる時空での台詞が微妙にシンクロしていたりするのが、照明による時空の切り替えの表現も含めて巧い。
また、ダム新設によりふるさとが水の底に沈んでしまうことに対する気持ち、ということで 3LDK の『僕たちの町は一ヶ月後ダムに沈む』(09年1月)を連想。
あと、小学3年生の表現(脚本・演出・演技)がいかにもそれらしく、個性も描き分けられていて自分のその年齢の頃を思い出したりも…

トマトのいろは

トマトのいろは

SPINNERS

劇場MOMO(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

満足度★★★

外の景色まで眼に浮かぶよう
地方の町でビニールハウスを併設した喫茶店を妊娠中の妻と営むマスターを東京に出て行った姉が8年ぶりに訪れるが、なにかワケありな様子の姉が以前と変わってしまったことにマスターはいらだちを憶え…な物語。
喫茶店関係者や農業留学している人などその周辺の人物の紹介と地方ならでは(偏見?)の優しい人間関係を見せる序盤は劇場サイズもあって、その喫茶店の空気まで感じられる(どころかその外の景色まで眼に浮かぶ)よう。
と、その静けさに一石を投じるように姉が帰って来て本題(?)に突入。8年ぶりのぎこちなさゆえとも思われた姉と弟のギクシャクした雰囲気が弟の姉に対する思慕の気持ちに基づくものとわかる終盤がイイ感じ。(周りの人々の優しさも含む)
また、トマトが美味しそうで、高校時代の夏合宿で泊まった民宿で食べたもぎたてのトマトの甘さなども思い出す。

Les Bonnes

Les Bonnes

M.M.S.T

横浜美術館レクチャーホール(神奈川県)

2010/04/06 (火) ~ 2010/04/07 (水)公演終了

満足度★★★

芝居ではなく前衛アートを観た
古典に疎い身としてジャン・ジュネの『女中たち』は当然の如く未見なので、一応ネットで探したあらすじを読み、当日パンフにそれよりももう少し詳しいあらすじが載っていて(これは有難い)それも読んで臨んだものの、あまり参考にはならず。
というのも、オリジナルアレンジを知らないままリミックスヴァージョンを聴いた…というより原曲を知らないままにフリージャズ化されたものを「聴いてしまった」な感じだったから。(そんなことから、岡崎藝術座の『オセロー』(07年10月)を観た時のことなども思い出す)
日本の伝統芸能的(最初にそういう印象を受けた)あるいは白石加代子っぽい(笑)台詞回し(ついでそう気付いた)で重々しく始まったかと思えば柿喰う客などのような早口に転じて、また重々しい調子に戻ったりという序盤から「今進行しているのはストーリーのどのあたりか?」と考えることはあまり意味がないと悟り、「考えるのではなく感じる」見方にしたのは正解?
緩急自在な台詞回しに、ここでその曲ですか?なこともあるサックス(テナー&ソプラノ持ち替え)の生演奏も絡んで、時々台詞は聞きとれないし、終盤では戦時中の日本軍の(かな?)文書まで登場するし、いわば「芝居ではなく前衛アートを観た」というところか。
これはこれで面白かったが、間違っても芝居を初めて観る人には勧められず。(笑)
ところで原典を知った上で観たらどうだったんだろう?
そしてまた、いつか原典を観る日は訪れるんだろうか?(DCPあたりが取り上げてもフシギはない気もするが…)

あの娘の気功は1ピコグラム

あの娘の気功は1ピコグラム

ザッパー熱風隊

OFF OFFシアター(東京都)

2010/04/02 (金) ~ 2010/04/06 (火)公演終了

満足度★★★

評価は真っ二つに分かれるだろうが…
人間によく似た未確認生物「マルガニ」と戦うカンフー少女とその姉が住む山寺に、3年前にそこで書いた小説がベストセラーになり再び執筆に来たカリスマ恋愛小説家や環境汚染調査員、UMA探しの女性などが訪れて…な物語。
48種の毒をもつPCB(=PCB48)を生成して撒き散らすUMA(しかも元・人間)や、PCBの毒性を浄化するナチュラル・キラー・バクテリア(=NKB48)を気功によって発生させるなんてムチャな設定を受容できるかどうかで評価は真っ二つに分かれるだろうが、個人的には「芝居のウソ」と割り切って観ることができたのでオッケー。
…ってか、りりあんを観るという所期目的(爆)は十分に果たせたし、そればかりか満載のおバカさ、ヌルさ、ユルさ(←もちろん良い意味での)は好みだし、終盤のミュージカルっぽい部分のおマヌケさが秀逸だし、さらに名前だけしか知らなかった深澤ゆうきもなかなか良かったし(やっぱりソコか(爆))、そもそも女優7人に対して男優は1人だけだし(やっぱりソコか pt.II(爆))ということで許す。

〈津山三十人殺し〉幻視行

〈津山三十人殺し〉幻視行

月蝕歌劇団

ザムザ阿佐谷(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/05 (月)公演終了

満足度★★★★

史実ベースとフィクション部分のハーモニーが絶妙
後にいわゆる「津山事件」を起こすことになる少年・睦雄の前に「お前に幸せな道を歩ませてやる」という3人の人物が現われる一方、軍服姿の一団が彼らを邪魔し…な物語。
横溝正史の「八つ村墓」の冒頭部分の元ネタにもなった昭和13年の「津山事件」の犯人・都井睦雄の半生を中心に、彼が異常な関心を抱いていたという阿部定事件(昭和11年)や二・二六事件を絡め、さらに突拍子もない要素(笑)も加えた作品、事前に wikipedia で睦雄の生涯を調べて臨んだこともあり非常にわかりやすく、かなり史実に忠実な部分とトンデモ系なフィクション部分のハーモニーが絶妙でかなり楽しむ。やはり元ネタを知っている方が楽しめる。
津山事件を防ごうとする3人組が式神で、彼らを邪魔する軍人たちは大量殺人者たちを集めて戦争用人間兵器にしようとしている(当然その両者は未来から来ている)なんて発想、イイよなぁ。
で、帰宅後に阿部定事件について wikipedia で復習したのは言うまでもない。(笑)

乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★★★

以上、総括すると…
全体で言えば比較的リアルなストーリー(どちらも離婚ネタだ)のハッカ味と奇想天外なイチゴ味、そしてそれぞれの味の中ではオーソドックスなもの(てがみ、こゆび)と娯楽性満載なもの(シンクロ、本田)と対照的で、その組み合わせ方が上手いな、と。
この企画、今後も続けて行くんだろうな。次はどこが挑戦するか、どんな手法を駆使するかなど楽しみだなぁ。

乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★★★

イチゴ味
毎度のこゆび侍と初見の本田ライダーズの組み合わせ。
こゆび侍の「網膜火傷」はアリジゴクとアリたちの物語。
初演時に観たいと思いつつ観に行けなかったので時を経てこうして観ることができて幸い。(初演もこういうスタイルだったのかしら?それとももっと芝居寄り?)
で、アリジゴクの巣の中での虫たちを描いた内容から、先日の『昆虫大戦争』に始まる標本箱シリーズの原典はこれだな、と。
また、生き延びるためにハナシをつむぐアリにシエラザード夜話(「千夜一夜物語」とか「アラビアンナイト」と書かないところがペダンチックだね(自爆))を連想。
一方、本田ライダーズの「二匹のマシンガン」は富豪令嬢である小学生を主人公に、彼女の家の「お宝」を頂戴すると予告した怪盗マシンガンも実は小学生(しかも彼女の同級生)で…というドタバタ系。
気付いてみれば主演の生見司織は昨年大いに気に入ったハチビット・プラネットの『朝焼けのパレード』に出演していたワケで、そっちの意味でも満足。

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