じべ。が投票した舞台芸術アワード!

2022年度 1-10位と総評
瞬きと閃光

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瞬きと閃光

ムシラセ

実演鑑賞

観ていて大好きな作品と通ずるものを感じた。1本は「櫻の園」、もう1本は……(ネタバレBOXへ)
ミッション系女子高校の写真部員たちを中心とした物語。若さに基づく一本気さ/繊細さゆえの友人に対する羨望/嫉妬心などが瑞々しくそんな彼女たちに対する先生や先輩(?)の眼差しが優しい。
さらにそこに笑いの要素や個人的に大好きなパターンの一つであるアレも加えて本当に何なの、これ!(語彙力喪失(爆))
脚本、演出、演技の三位一体に感服♪
思い浮かべたもう1本は鈴置洋孝原案・堤泰之脚本の「煙が目にしみる」。が、もちろん真似たとかそういうことではなく「根底に流れるものが共通」というレベル。あ、そういえば集合写真のラストシーンも共通だが故人の出方が違うし。

明日のハナコ

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明日のハナコ

なかったことにされた高校生の2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会

実演鑑賞

とある演劇部員が通りかかった元部員と次回作の構想を実演してみて……な二人芝居。劇中劇は福井地震からの復興から原発の建設までたどり、さらに遠い未来まで語って問題を提起するのが実に巧みかつ面白い。
そして既にある問題を提起するだけでなく、それに対して自分たちには何ができるか?と観客に問いかける内容なのに「なかったことにした」側は何を危惧したのか、が結果的に新たな疑問となるのが痛烈な皮肉に感じられる。
演劇史の貴重な1ページかも?

アルプススタンドのはしの方

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アルプススタンドのはしの方

稲村梓プロデュース

実演鑑賞

ベタな言い方をすれば「青春丸出し」(笑)だが、各人物が次第に応援に身を入れて(身が入って?)ゆく姿は羨ましく感動的。映画化されたものを観ていたこともあり「あー、そうそう、そうだった♪」な部分も。
また、スタンドでの状況しか見せていないのにグラウンドの様子が見えるような気がするのはやはり巧いよなぁ。
いつかあの暑苦しい(笑)厚木先生が出て来ない原点(←この場合はこっちだよね)である高校演劇版も観たいと思う。

気が澄むまでここにいる

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気が澄むまでここにいる

チャミチャム

実演鑑賞

2泊3日の仙台・松島紀行(強ち誤りではない(笑))。
本作にしてもかるがも団地作品にしても藤田脚本とσ(^-^) の相性が良いのか、会話/台詞も話の流れもごく自然で無理がなくて心地よくもうそのまま受け入れてしまう。喩えて言えば「ヨギボー芝居」?(爆)
随時投影される写真と音響効果(と照明効果)がその場を具体化したり、本役以外は口調や方言などで明確に区別したりするのも妙案。いやホント、脚本・演出が巧みだわ。
なお、それを実体化して演じて見せた演者も、というのは言わずもがなにして絶品。

SHINE SHOW!

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SHINE SHOW!

Aga-risk Entertainment

実演鑑賞

進行中のイベントに次々と襲い掛かるトラブルを解決しようと奮闘する運営スタッフ、という典型的なショウマストゴーオン系のコメディにしてアガリスクの真骨頂? そして題材に選んだイベントの活かし方/アレンジの仕方が緻密・巧妙でさすがというか絶品。
休憩前にこれでもかと言わんばかりにトラブルを積み重ねておいて、休憩後の後半でそれまでのあれこれを使ったりもしつつそれぞれが解決「されてゆく」のが「あれをそう使うか!」や「その発想はなかった」など多彩かつ鮮やかで飽きさせないどころか感服。
さらに劇中で生歌を披露する方々の歌の巧さよ! 天は二物を与えずじゃなかったのか?(笑)ってくらい玄人はだしで見事。(うちお一方は別の意味で巧い……以下ネタバレBOXへ)]

【9月6日付記】
前半の各人とその事情・背景紹介はそれだけ見ても見事な精密加工の部品という感じで、後半ではそれらが組み合わされてさらにスゴい完成品になるような……それって個々でも戦闘できるが合体すると超強力になるアレに似てないか?
敢えて言おう本作は戦隊ものの合体メカであると。(真顔)
本作に限らず設定が音痴の役を演ずる役者が劇中で歌うことがあるが、わざと音を外して歌うのは実はかなり難しいのではないか?
σ(^-^) だったら伴奏につられてほぼ正しい音程にしかならないような気がする。

うわつら

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うわつら

殿様ランチ

実演鑑賞

2011年(初演?)、2014年に次いで三度目となるが色褪せない珠玉の名編。人の死を真摯にしかもユーモアも交えて描き「登場人物と共に一人の人間としての作家を看取った」感覚。何年か経ったらまた観たい。
また、「報道センターの斉藤さん」が伝える開演前諸注意と本編導入部を兼ねたニュースのセンスの良さよ! これだけでも一聴の価値があるのでは?(半分真顔)
そのニュースの内容は「芝居の上演中にスマホなどの電源を切ることを義務化する法案」「芝居の上演時間や休憩の有無の事前告知に関する裁判の経過」「本編の主人公である作家の訃報」。このアイデアとニュースっぽい言い回しが秀逸。

あゆみ

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あゆみ

果報プロデュース

実演鑑賞

演目として観るのは通算5回目なこともあり「あぁ、そうだった♪」や「これは新たな演出?それとも単に忘れていただけ?」などと思いながら存分に楽しむ。
また「あぁ、ここをこうしたのか!」や附加されたであろう部分にも得心。
そして「全員(ほぼ)全役」とも言うべき変幻自在の手法(演出と演技の賜物)で場を切れ目なく繋ぎ(エッシャーの「メタモルフォーゼ」を想起)時を隔ててもすぐにそのことと隔てた期間がワカるシカケが毎度ながら見事。
いやホント、この作品って折に触れ観たいな、いろんな演出(巧拙不問)で。そういえばけやき坂46(現・日向坂46)も4年前に赤澤ムックさん演出で演じたんだっけ、それも機会があれば観てみたいと思う。

あなたに会いたいから私は今日も空を見上げる

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あなたに会いたいから私は今日も空を見上げる

劇団皇帝ケチャップ

実演鑑賞

一言で表現すれば「あれこれ佳い塩梅の作品」。
まず、観客の想像力/読解力(?)を信じて語りすぎず説明不足にならずな語り口が鮮やか。
次に本筋を進めるための会話と無駄口/軽口や横道に逸れる会話の配分が絶妙で、初めてここを観た第2回公演以降毎回感心するが「そうそう、普段の会話ってそんな風に茶々を入れたり話が逸れたりするよね」な感覚が実に自然。
さらに安易なハッピーエンドではないがビターエンドでもない「生かさず殺さず」的な(違)結末の「切なさと優しさ」たるや。
あと、あるキャラクターがいわゆるファンタジー系のものながら現代風にアレンジされていて「文明の利器」まで使うけれどもそのアイテムがそこそこレトロというのもまた面白く効果的。
「神」の使いである「天使」が現代風の若い女性で、天界(?)からの連絡を受けるアイテムが「黒電話」というのがまた上手いというか何というか……。

JACROW#28『鶏口牛後(けいこうぎゅうご)』

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JACROW#28『鶏口牛後(けいこうぎゅうご)』

JACROW

実演鑑賞

当日パンフレットにある通り、ある分岐点で異なる道を選択したら?な往年のドラマ「if もしも(1993年)」を想起させる構造だが、ラストの「え、どゆこと!?」からの「あ、そういうことか」な展開がM.C.エッシャー「邂逅」を想起させて(ってか「実演版」みたいな?(笑))見事。
また、ちりばめられたユーモアも楽しく、ともすれば重くあるいは暗くなりかねない部分さえも娯楽性たっぷりに描くのはJACROWの真骨頂か?
後半で短い回想を挟む時の川田さんの出ハケまど楽しかったな。
ところで時折、視野の片隅にユースケ・サンタマリア(ってか「パンドラの果実」の長谷部勉)がいたような……いや、ちゃんと見ると小平さんなんだが。(笑)

恋のすべて【2月11〜12日公演中止】

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恋のすべて【2月11〜12日公演中止】

(株)モボ・モガ

実演鑑賞

1930年代終盤のアメリカを舞台にしたラブコメミュージカル。
どうなるのかあれこれ想像させてからのオチもエピローグもなるほど納得なウェルメイドなのはさすがベテラン鈴木聡脚本。
時代設定による印象もあるが1950年代後半から1960年代前半頃のハリウッド製の、例えばジャック・レモンやモンローが出ていたような洒落たコメディに通ずる味わいがあったようにも思う。
また、あの時代に関するネタが複数あり、知っているとニヤリあるいは納得できるのも巧い。ちなみにσ(^-^) が観た回の客席の反応から推察するにクライマックスの「アレ」をご存知なお客さんは少数か?
あと、仙波"師匠"の生演奏を20年ぶりくらいに聴けたのも嬉しかったし、石田ニコルの歌の上手さに感心。
クライマックスの「アレ」とはH.G.ウエルズ原作、オーソン・ウェルズ脚色・朗読のラジオドラマ「宇宙戦争」のこと。
冒頭を火星人襲来のニュースとしたことでそれを信じた人が多かったというエピソード(実際には信じた人はほとんどいなかったらしい)を知っていれば劇中でそのニュースが流れた時点で「あ、あれね」とワカるが、その後にラジオドラマと判明した時点で客席に笑いが広がったのは「エピソード」を知らない方が多かったのではないか?(推測)

ところでニックが登場間もなくとエピローグとで2回見せる「帽子投げ」、失敗前提とは思うが「たまたま上手くコート掛けに掛かってしまった」時の演出(生の音響含む)があったのではないか? 17ステージ(=34回のトライ)のうち、成功した回などなかったのだろうか?

総評

テーマ性だの上演する意義だの完成度だのの小難しい理屈とは無縁に、単純に好きとか印象に残っているとか極めて個人的な基準で選んだ2022年の10本。

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