「ヘロペ」
.comet <ドットコメット>
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2012/09/27 (木) ~ 2012/09/30 (日)公演終了
幻想の方舟
ミームの心臓
荻窪小劇場(東京都)
2012/09/26 (水) ~ 2012/10/03 (水)公演終了
満足度★★
空中分解
箱舟に乗り込めば救済されるとの情報で、我がちに人々が集まる。然し、乗り込めるのは、ごく一部の人間だけであるから、当然、競争は苛烈なものになり、多くの者は、残されたまま滅ぶと考えられている。然し、実際に船に乗り込んで見ると、乗船している人々が幸せだとは思われない。幸せでも不幸せでも無い状態は、極端な悪さにも陥らない為、これがベストなのだという発想が、主流を為しているのである。
然し、新しく乗船したシャンスラードは、この船の救世主になる可能性があると、この船の歴史を総て知っている道化が、彼に告げる。
乗船者達は、それぞれ個性を持っているはずであるのだが、毎日、同じ議論を繰り返していて、一向に結論は出せない。然し、革命を目指す者が一人、彼女は情況を打開する為に先を見越すことを提言する、が。
演者たちの演技が空中分解していたように、この革命議論も幻想論の域を出ていないことが、一弾深みのある論理によって浮き上がってこない。このことに象徴される舞台であった。
本来、役を振られた役者が、己の実態と役の間にある溝に悩む姿を形象化しなければならないはずのこの舞台で、演出がその点に気付かず、きちんと駄目出しもできていない。
ここで描かれているキャラクターは前に進もうとはしない、が、幻想を持つほどに進みたいとのアンビヴァレンツやアンチノミーを表現したかったはずの舞台で、脚本の意図を汲んでいないであろうからである。
ハッキリ言って演出・役者の力量不足。道化を演じた役者に役者としての芽を感じた他は、見るべき所無し。それぞれのキャラが立つような演出になっていないのは、脚本の読みが浅いのと、脚本自体が頭でっかちなのであろう。
脚本に直接あたっていないので定かでは無いが、恐らく脚本自体コンセプチュアルなものであったろうことは想像できる。演劇は身体性に根ざしていなければならないだろうが、その点についての考察の甘さも感じる。
白虎隊風雲録 コダマ!(CM大会最優秀賞受賞!)
劇団バッコスの祭
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2012/09/26 (水) ~ 2012/10/01 (月)公演終了
満足度★★★★★
エール
会津は、現在の福島県の一部である。ここに話を設定したのは、無論、3.12のことがあったからであろう。政府や推進派の大音声頑張れキャンペーンに対しては反吐しか催さないが、このようなエールなら大歓迎である。先ずは、このような姿勢があって、”コダマ”という仕掛けがある。この仕掛けを用いることによって、現在の日本にほぼ重なる地域の千年以上に亘る差別と被差別、都の狡さと鄙の純情、先進地域の利器と周縁部の紐帯、雅な連中には、つきものの裏切りと俗な人々の連携、男と女、大人と子供というレベルまで様々な背景と歴史を見事に物語の俎上に載せた。
殺陣のシーンが多いので、舞台設定は、動きの多く激しい流れを汲んで合理的且つ美的・動的に組み立てられている。場面転換など、敷居上を障子が移動することで表現しており、簡潔にして要領を得る見事なものである。
一方、現在我々の被っている核被害を振り返ってみるときに、東電の頬っ冠りは無論のこと、政府行動のいい加減は最早覆うべくもない。ここに表れているのは、現実の差別である。アメリカの日本に対する差別、日本の「選良」による同一民族への差別、また、都人の地方の人々に対する差別、力ある者の無き者への差別である。これに対するに、双方の「コダマ」を以てし、観客の持っていたはずの傾向、判官贔屓に訴えた作品として高い評価を与えられるべきであろう。その結果がこだますのか否か、今や、我らに問われている。
纏繞の夕月
集団as if~
笹塚ファクトリー(東京都)
2012/09/26 (水) ~ 2012/09/30 (日)公演終了
満足度★★★
志
劇を通して訴えたいことがはっきりしていない。その結果、主張が空回りしてしまって、折角のストーリーが、単なる因果応報の話に堕してしまった。ひとつ、箍の繋ぎ方を変えると、見違えるような作品になったはずだが。
劇作家は、自分の位置を正確に見極めるべきである。世間での己の位置、演劇が、この時代、この地域でどのような位置づけなのか、といった世塵にまみえる覚悟が必要である。そうすればインプロビゼーションの扱いも、まるで違ったものになったはずであり、今回のような小手先の器用を売るレベルに堕したりはしなかったであろう。観客は、しっかり見ている。そのことの怖さを手掛かりに、先ずは、自分達の生きている状況の分析をしっかりやりなおして欲しい。そうすれば、人間相互の関係を見るきっかけが生まれよう。先ずは虚心坦懐にそこから見直して欲しいのだ。
中也論 よごれたかなしみ
趣向
STスポット(神奈川県)
2012/09/23 (日) ~ 2012/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★
傷
飛び石や靴脱ぎ石には、石材が使われ、如何にも大正から昭和初期の雰囲気を醸し出している。更に孝子の庭には、四季折々の木々と花、鳥や虫が挙って、いやがうえにも風情を顕す。このような背景が、芸術家たちの寄る辺ない位置に、傷つけられた神経をどれほど安んずるかに思いを致すべきであろう。
太郎が、泰子が、秀雄が、二郎が何故、中也を嫌うのかの答えが、ほの見える。無論、中也自身が最も深く傷ついている。中也は、小林自身が指摘している通り、voyantである。見えすぎるが故に、彼は言葉を溢れさせる他、方法を持たなかった。而も、彼の発する言葉は、その向かう対象の裸形を明らかにせざるを得ない。彼の愛する対象は、中也に愛されることによって、己の本質と真正面から向き合わざるを得ない。それが如何に不快であるか。多少とも自らを掘り下げたことのある人なら納得のゆく所であろう。つまり、太郎、泰子、秀雄、二郎総てが、自らの本質を嫌ったのである。そして、そのことを悟らせた中也を嫌うことによって自らの平衡を保ったのだ。そして、それら総てを暴き、愛された者たち総ての裸形を知る中也を恐れたのである。そのことが、voyantである中也には見えていた。そして、己自身、そのヴィジョンに喰われつつあることも。
それが、中也という詩人の誇りでもあり、傷でもあった。即ち、中也とは、総ての底を見尽くす透視力と同時に見られる傷。傷を一身に体現した存在。詩人と名付けられ、生きながらメスをあてがわれた神経束、同時に自らを切開するメスであった。
だが、彼を詩人と名付けた者は誰だったのか、或いは何だったのか?
我らに残された問いである。
ナイゲン【本ページは2012年版です。ご注意下さい】
Aga-risk Entertainment
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2012/09/22 (土) ~ 2012/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★
設定
場面転換が一度もない。それだけ考え抜かれたシチュエイションである。実体験をもとにしているようだが、今回は余り捻らず直球勝負であったことも良かったのではないか。シナリオも当然のことながら良く練られていて、登場人物のキャラが立つ。照明の腕も勘所を押さえたライティングで感心させられた個所があった。論理的な展開と時々吹き出したくなるような要素が上手く絡み合って飽きさせない点でも、ウエットになりがちな場面もドライに処理して、ケレンミも無い。役者たちの演技も中々のもので、本当にこんな奴いたよな、と感じさせるほど完成度の高い舞台で楽しめたが、もう一段、高みを目指して欲しい。力のある舞台を創っている。だからこそ、更に大きなものと格闘して欲しいのだ。そこで敢えて評価は4にした。更なる表現を期待している。
おとう戦記
PROJECT VANGUARD
明石スタジオ(東京都)
2012/09/21 (金) ~ 2012/09/23 (日)公演終了
満足度★★★
崩壊家族
家族などというものが、実質崩壊して既に長い時が経った。作者は、こんな状況を憂いているのだろう。劇中、親子は互いの役割分担を変えて、互いの立場を分かりあうべくロールプレイングゲームを展開するが。
ブラッディ・マリー
劇団東京ドラマハウス
萬劇場(東京都)
2012/09/20 (木) ~ 2012/09/23 (日)公演終了
満足度★★★★
芝居はなまもの
都会暮らしでは忘れがちだが、人生もなまものである。そのことを思い出させるような泥臭いシーンが続くが、終盤、煌びやかではないが重心の安定した人生を、舞台という鏡を通して見せてくれた。芸達者な役者たちに拍手。
林檎ト大地ノ黙示録【ご来場ありがとうございました!!】
空間交合〈アサンブラージュ〉リジッター企画
ザ・ポケット(東京都)
2012/09/18 (火) ~ 2012/09/23 (日)公演終了
満足度★★★★
出口なし
乱暴に思われるかもしれないが、宿命を負ったと設定することで、兄弟はその宿命を生きるほかなくなるのだ。無論、そこから簡単に抜けられない点で、これは単なる宿命というより運命とでもいうべきレベルにアップしている。このことこそが、悲劇を構成している。更に、この脱出不可能性を描く屈折が良い。演出にも光る所が見え、照明、音響なども効果的に使われている。
実際、出口なしの状況に置かれた愛は、他にどのような結末を迎え得よう? この作品の妙味は、このような状況下では、愛の唯一の脱出口が、このような結末を迎えざるを得ないことの必然を析出して見せた点にある。
今回、拝見したのはBだが、Aとは結末も異なると言う。自分の予想するような結末をAで採用するか否か、こちらも興味深い所ではある。
UndergroundStates
EgofiLter
シアター711(東京都)
2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★★
寿
日本三大ドヤのある町の名が寿と言うのもおかしな話だ。僅か200X300メートル四方の一角に122軒ものドヤが立ち並ぶ。そこにしか住めない男や女と、そんな者たちから絞り取ろうとする者らに、引き裂かれつつ、逼迫した財政にも拘らず懸命に支援する役所の現場担当者、ボランティア、ハンディキャップなどが絡み合って、ドキュメンタリー調に展開する。ブレヒトのように異化を強調する舞台ではなく、淡々と描かれるタッチに独特の距離感があり、問題提起をされた舞台であった。
チョリズム
有門正太郎プレゼンツ
枝光本町商店街アイアンシアター(福岡県)
2012/05/17 (木) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★
寿
日本三大ドヤのある町の名が寿と言うのもおかしな話だ。僅か200X300メートル四方の一角に122軒ものドヤが立ち並ぶ。そこにしか住めない男や女と、そんな者たちから絞り取ろうとする者らに、引き裂かれつつ、逼迫した財政にも拘らず懸命に支援する役所の現場担当者、ボランティア、ハンディキャップなどが絡み合って、ドキュメンタリー調に展開する。ブレヒトのように異化を強調する舞台ではなく、淡々と描かれるタッチに独特の距離感があり、問題提起をされた舞台であった。
チョリズム
有門正太郎プレゼンツ
枝光本町商店街アイアンシアター(福岡県)
2012/05/17 (木) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★
愛郷
北九州市に対する愛着と福岡・博多市に対する対抗意識、複合意識は盛んに伝わってきたものの、これからも演劇を続けてゆくのであれば、もう少し対比を使ったり、人生の機微を一人一人の役者が漂わせるような劇団に育って欲しい。対比をする場合でも、たとえば静には動、コミカルにはシニック、はしゃぎには矯め、弧には群れ等々の対比ばかりではなく、それらの対比が、少し次元の異なるレベルでは、グループになったりしつつ、大きな群れを作るが、その大きな群れになった同士が対立したりという構造を持つような、ちょっと手の込んだ作品にも挑んで欲しい。役者陣からは爽やかさを感じたので、良い劇団に成長することを願う。
かたつむり第参部 完結編『彼岸花ノ章』
(有)キィーワード
笹塚ファクトリー(東京都)
2012/09/18 (火) ~ 2012/09/23 (日)公演終了
満足度★★★
イマイチ
シナリオが論理の徹底性を欠くため、メリハリを失って切れが悪い。それでストーリーが失速してしまった。その隙間を情念で埋めるという発想も安易だ。また演技にも作り過ぎたわざとらしさが折々見えた。科白をかむ役者が多かったのも気になる所だ。
a Colony
劇団だっしゅ
萬劇場(東京都)
2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★★★
沖縄の願いは、当たり前に生きること
苛めばかりでなく、差別、捜査などについてもこの国の陰険さは格別だろう。実際、検察の切れ者と言われ恐れられた検事が吐いた言葉を思い出す。予防拘禁についての発言であった。かつて学生運動などで、公安から目をつけられていた人々などは、現在、運動に関わっていようがいまいが関係なく、アメリカなどから要人が来日する際には、しょっぴいて檻の中に入れてしまう。容疑はでっちあげのことも多いとのことであった。兎に角、しょっぴくのが目的であるから何とでも言いがかりはつけられる。この検察官「しょっぴくのは当然だ」と嘯いていたのである。これは、現代のことだ。
自分自身もある取材をしていた時に、恵比寿にある某研究所に仲間が出入りしており、事務所として使っていた自分の電話を連絡先として書き込んだ上で、資料の閲覧などをしていたのだが、暫くすると、その筋と思われる所から「手を引け」と脅しの電話が入るようになり、盗聴器を仕掛けたような雑音が入るようになった。もう随分昔のことにはなるが。それだけではない。自分の住居の周りには、怪しい人物が、何人かのグループで屯するようになったのである。
福島第一原発1号機導入時にも、アメリカのスパイと読売の正力の懐刀、柴田 秀利との密談があり、政治的に原子力予算をつけたのは改進党に所属していた中曽根 康弘である。正力も中曽根も戦中の内務官僚であった。更にいえば、正力自身、ポダムという暗号名のCIAエージェントであったことは周知の事実である。
こんなことを挙げたのは、この劇が、中盤迄、殆ど桁外し、おとぼけ、お茶らけに終始していたからである。それでも終盤まで見ていたのは、しょっぱなのシーンでロミオとジュリエットのパロディー場面が入った際、舞台の使い方が見事で力のある劇団であることを印象づけていたからである。その後も、何度かハッとさせられるような沖縄の抱える問題が提起され終盤に期待を繋げることが出来たからである。
また矢鱈と登場人物にハーフが多いのだ。沖縄の実態に目を向けているヤマトンチュウなら気付く要注意マークである。事実、アメリカによる支配の実態は、占領と大差ない。多くの日本人が勘違いしているのとは逆に、米軍が日本に止まり続けているのは、日本を他国の侵略から守るためなどでは無い。寧ろ、日本を半永久的に属国たらしめる為だ。トモダチ作戦の本質は、米軍主導の米軍・自衛隊オペレーションの実施とエシュロン基地、三沢の防衛、米要人の沖縄差別発言、レイプ、ひき逃げ、傷害、暴行事件などで悪化した反米感情の反転、思いやり予算への民衆的反対運動の事前措置、基地問題の誤魔化し等々があったことは、自分の頭脳で考えることのできる人間なら誰でも気付くことばかりだ。更に、アメリカ製の欠陥原発への抗議、反原発運動を予め骨抜きにすることなども含まれていたであろう。
こういったことを指摘すれば、当然、目をつけられる。そしてリスクを覚悟しなければならないのは当然のことである。だが、大抵の人々は、家族を持ち、中々リスクを背負う気にはならないであろう。その為にこのような形を摂ったのだと考える。中盤迄、断続的に芝居が中断されるようなシーンが出てきて興を殺がれるが、沖縄が現在、日々経験していることのパロディーと見れば、これは鋭い批評である。ヤマトにもアメリカにも蹂躙され続け、訴えることも思うに任せぬどころか徒労感を増すばかりという実態があるのだから。終盤の訴えは、我々、ヤマトンチュウが襟を正して聴くべき問題提起である。
『つまんなかったら言ってね、死ぬから』【ローション・ペペと提携!】
あんかけフラミンゴ
Geki地下Liberty(東京都)
2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★
おもしろさ
”つまんあかったら”というのは、面白いものを目指したと解釈すると、喜劇的なものを目指したのだろうか? それとも、全体的内容の興味深さを目指したのか定かではないが、自分は、一応、喜劇的なものと解釈して続けさせてもらう。自分は、喜劇とは、乱暴な言い方をすれば悲劇に対する徹底的批評精神の産物だと思っている。つまり悲劇に対してはメタ悲劇という形で成立するのが喜劇だと言う事だ。従って、喜劇にするならば、ここで出てくる様々な悲劇と悲劇的状況を徹底的に批評することから始める方が良いのではにかと考える。だが、それはかなり困難を伴う作業になるので、先ずは、徹底的な悲劇を書くことが肝要なことだと思う。まして、扱っている問題がエディプスコンプレックスや共依存という悲劇に相応しい題材であれば尚のことだろう。
性の問題も真正面から取り上げているが、現体制への批判的視点として見ることができる。これを梃子に、先ず、悲劇的状況の本質を暴き、じっくり観察することから始めても遅くはあるまい。
演技に関しては、体当たりで勢いがあるが、やや粗い。妊婦のお腹の詰め物にあれだけ大きな物を使っているなら、歩き方などはもっと鈍重にしなければ嘘だろう。特にハケの時などこそ注意が肝要である。こういう点に注意が注がれた上で身体表現ができているか否かで相当評価が変わってくる。
太陽と灰二 vol.2 / 壊れないジェン我 ・ アンバランス
9-States
相鉄本多劇場(神奈川県)
2012/09/13 (木) ~ 2012/09/18 (火)公演終了
満足度★★★
時空の歪みと若者の歪
時空を交錯させながら登場人物の過去と未来が入れ子細工になって展開してゆくのだが、そこで描かれるのは、閉塞的で諦観の漂う受け身の世界観だ。現代をこの国で生きる若者の遣る瀬無さを見るような気がして暗澹たる気持ちになった。多分、自分には合わないタイプの作品なのだろう。
クールの誕生
ワタナベエンターテインメント
PARCO劇場(東京都)
2012/09/12 (水) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★
日本
義理と人情の物語と見ることができる。所謂、イケメン俳優を多用したステージの割には演技も上手い。この手のグループでは上位にランクされるだろう。だが、小劇場の役者たちのような人生を感じるレベルでは無いので、その分、シナリオがかっちりしていると言えば言えるだろう。悪く言えば、ディレッタントであるべきはずの才能が、この国の大衆レベルまで精神を下げて書いているという事も可能だ。社畜としてのサラリーマンの生活は、義理の世界であり、男が代表している。一方、人情の方は、恋の世界であり、女が代表しているという構造は、近世と変わる所が無いのだ。無論、このように書くことで冒険的要素を削ぎ、受けを計算できるのは確かだが、折角の才能をアートとしての演劇にまで昇華させない職人に寂しさを覚えるのも事実だ。
たけしの挑戦状【ご来場ありがとうございました!!】
劇団東京ミルクホール
ウッディシアター中目黒(東京都)
2012/09/12 (水) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★★
エンタメ
しょっぱなTVネタの楽屋落ちが多くて閉口したが、寸劇の中に、まずまずのものがあって、集中力を繋いでゆくことができた。中盤、伝統的なものを演る基礎力もあると感じてからは、面白く見ることができた。エンターテインメントとしてある程度成功しているのは、ストーリーテリングな展開をきちっと追いかけるより、弾けて歌や踊りに持ってゆくタイプのエンターテインメントだからだろう、ドライで楽しめる。
ファイティングポーズ
劇団光希
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★★
背負うものに感動
"ファイティングポーズ”を見た。冴えないサラリーマン阿部は、運動神経零。妹に「子供の頃から、お兄ちゃんのせいでずっと恥をかかされてきた」と非難されるばかりである。然しながら、兄とてもそんな妹の言葉に釈然としないものを感じている。
そんな時、妹の彼が通っているボクシングジムへ行ってみないか、と妹から提案が為される。同時期、阿部は妻が妊娠3カ月であることを知る。子供が出来たことを喜ぶ阿部だが、無論、ジムへ行くか否か迷いはある。何にしろ、運動神経は零なのである。迷った末に一念発起、ボクシングジムへ出掛けるが、ジム会長の妹からいきなり止めておいた方がいい、と言われてしまう。
ゴベリンドンの沼 終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!
おぼんろ
ゴベリンドン特設劇場(東京都)
2012/09/11 (火) ~ 2012/10/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
しっかりしたシナリオ
シナリオの構造がしっかりしているので、廃工場の空間を使い、縦横無尽に動き回る身体能力の高い役者陣のリズム、躍動感、スピード感が活きる。
構成も巧みだ。だが、最も見事なのは、その言語遊戯だろう。しょっぱな、聞いたことも無いような単語が頻出する詩的導入部があるのだが、演劇の基本に沿って、劇の全容が、この時点で解説される。但し、観客には、その表現の意図する処は、正確には分からない仕掛けになっている。従って、観客は、推理することを強制されながら、芝居を見ることになるのだが、この辺りのシナリオ、構成の巧みは、特筆してもよかろう。ここで、既に観客は、劇作者の呪縛から逃れられないようになっているのだ。