満足度★★★★★
エール
会津は、現在の福島県の一部である。ここに話を設定したのは、無論、3.12のことがあったからであろう。政府や推進派の大音声頑張れキャンペーンに対しては反吐しか催さないが、このようなエールなら大歓迎である。先ずは、このような姿勢があって、”コダマ”という仕掛けがある。この仕掛けを用いることによって、現在の日本にほぼ重なる地域の千年以上に亘る差別と被差別、都の狡さと鄙の純情、先進地域の利器と周縁部の紐帯、雅な連中には、つきものの裏切りと俗な人々の連携、男と女、大人と子供というレベルまで様々な背景と歴史を見事に物語の俎上に載せた。
殺陣のシーンが多いので、舞台設定は、動きの多く激しい流れを汲んで合理的且つ美的・動的に組み立てられている。場面転換など、敷居上を障子が移動することで表現しており、簡潔にして要領を得る見事なものである。
一方、現在我々の被っている核被害を振り返ってみるときに、東電の頬っ冠りは無論のこと、政府行動のいい加減は最早覆うべくもない。ここに表れているのは、現実の差別である。アメリカの日本に対する差別、日本の「選良」による同一民族への差別、また、都人の地方の人々に対する差別、力ある者の無き者への差別である。これに対するに、双方の「コダマ」を以てし、観客の持っていたはずの傾向、判官贔屓に訴えた作品として高い評価を与えられるべきであろう。その結果がこだますのか否か、今や、我らに問われている。
2012/10/14 18:27
2012/10/14 18:19
深いご考察ありがとうございます!
今回の舞台の役作りのために会津若松に取材旅行をしましたが、
福島の方々がほんとうに白虎隊を愛し、
後世に正しく伝えたいと願っていることをつよく感じました。
大きくデフォルメしてはありますが、
この作品が福島の方の心に力を与えることができていましたなら幸いです。
今後ともよろしくお願いします!