ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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UNIQUE NESS(ユニークネス)

UNIQUE NESS(ユニークネス)

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★★

オーソン・ウエルズVS
 科学的と称される解釈では、ネッシーは存在しないとする解釈が有力だが、居てくれた方が面白いに決まっている。そんな人々の念こそ、ネッシー伝説の正体だと思われる。

ネタバレBOX

 但し、こんなにあっさり解釈するお茶漬け人種と異なり、舞台は、英国。肉食人種の国である。そして、グロテスクな或いはナンセンスなユーモアを活かして来た国の話という設定だ。諧謔あり、アイロニーあり、ブラックジョークのオンパレードありで只管、素直さから逸脱する趣向である。だから、笑いは擽りで、演者達は、巧みな間の外し方で、どんどん得点を挙げて行く。複合的なブラックジョークのシーンで、切られたナースコールのコードには、万国旗がぶら下がっているのなど、イギリスの第一次大戦以降の見事な迄の凋落をおちょくっていると解釈すると頗る愉快である。世界で2番目い面白いジョークというのも、万人受けする傑作ジョーク。これも観劇してぜひお確かめ願いたい。
 素直に表現しない文化というものが、どれほど歪み、どれほど人と自らを傷つけるか、そして、その結果として自らはドライになり自らを洒落のめすしかないか、を描いて見せた、大人のコメディーであるが、同時に、総てを個人的レベルに落とし込むことによって、社会の中の個人、翻って個人の社会内アイデンティティーを問う構造になっていない点で、村社会的である。
明日の天使たちへ

明日の天使たちへ

ワイアールジャパン

テアトルBONBON(東京都)

2014/08/06 (水) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★

シナリオライターもっと生きることに向き合うべし
 Bチームを拝見。イケ面、可愛い女優さんが多いし、演技も決して下手ではない。然し、何か大切な物が、欠けている。

ネタバレBOX

切実さが欠けているのだ。頭で考えて過不足の無いように組み立ててある。然し、内実がすっぽり抜け落ちている為、訴えかけてこないのである。言い方を変えれば、表だけを率なく演じているとでも言おうか。表が在る以上、裏が在り、背理が在る。それを同時に滲ませなければならないだろう。
 例えばそれは、一つの行為の背景には何があってそうしているかが、表されることだ。人は、自分の意志で生まれる世界を選べない。つまり、生まれおちるということは、登場人物達の想や目標設定には、関わりなく、歴史的必然とか、社会の力学的必然とか、思い通りにならない政治的必然などとの命がけの争闘なのであり、ぶつかり合いである。そして、演劇とは、この争闘のことなのだ。この観点がシナリオから抜け落ちている。折角、若い役者たちが、頑張っているのに、残念だ!
あ・ら・かると岸田國士

あ・ら・かると岸田國士

おででこ

Ito・M・Studio(東京都)

2014/08/06 (水) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

岸田 國士の世界を見事に表現
 粋で洒脱、頓知が効き、世界が共鳴している。

ネタバレBOX

 岸田 國士の三つの作品「軌道」「雅俗貧困譜」「是名優哉」を敢えてオムニバス形式とせず、西洋料理のメニュー仕立てで調理して見せた。1st dish 軌道(黙劇1)2nd dish雅俗貧困譜1 3rd dish是名優哉1 4th dish雅俗貧困譜2 5th dish是名優哉2 6th dish雅俗貧困譜3 7th dish軌道2。以上の7皿である。この配合が良い。自分は、今迄様々な劇団やグループの演じた岸田作品を拝見して来たが、今作が、今迄観た中でベストの岸田解釈である。舞台美術や、衣裳、その配置、非常に洒落たセンスのものを、敢えて少しだけ崩す、極めてお洒落な感覚や、矩形の机に対して丸い木製椅子の渦巻き状の文様や、単行本の装丁に使われている龍を連想させる螺旋などの対比を大げさに捉えれば、ミメシスとマニエリスムの対比は直ぐに思い浮かぶ。BGMで流れる数々のシャンソンもフランス語が使われ、ヨーロッパ周遊をしていた岸田の個人的批評も盛られているように感じた。と同時に、日本と西洋の微妙な混交と化学変化を実に良く表現すると同時に大正初旬から、昭和初期迄の、即ち大日本帝国の中国、朝鮮半島支配への歩みが、様々な問題を引き起こして行った時代と、戦後の宰相として、最も愚かな安倍政権とのコレスポンダンスをも感じさせる作りである。岸田自身は、愚か極まるこれらの風潮に対して一種の浮力のようなもので身を処していたのではないかと、そのような空気を感じさせる、豊かなハーモニーの感じられる舞台であった。
1/2

1/2

夢幻舞台

明治大学和泉校舎第二学生会館地下アトリエ(東京都)

2014/08/06 (水) ~ 2014/08/08 (金)公演終了

満足度★★★★

必見、演劇のDNA
 まだ、荒削りではあるものの、演劇とはどういうものか、をDNAレベルで知っている。そんな感想を持たせるポテンシャルの高い舞台。(更なる追記後送)

ネタバレBOX

 演劇とは、対立する項目の鬩ぎ合いなのである。まだまだ発展すると思うので今回は星4つ。だが、ポテンシャルの高さは、初心を忘れずに続けることができるなら、星5つだ。
解散

解散

江古田のガールズ

本多劇場(東京都)

2014/08/05 (火) ~ 2014/08/06 (水)公演終了

満足度★★★★

更に演劇的にするには?
 小劇場劇団が抱えている問題をステージ化した点を、先ずは、評価できる。

ネタバレBOX

 猿の王国の話を演じる劇団の裏方の話。具体的には制作の劇団運営話が中心になることによって、普段、観客の目からは隠れている、役者と制作、演出、プロデュースの関係を含めての舞台裏や公演続行か中止かという判断迄含めて、現在、この国で演劇に携わる小劇団の問題が噴出し、劇団の存廃が問われるという可也シリアスな内容だ。当然、役者個々人の演技論、演技の哲学や内実迄問われるし、バイトに追われ乍ら、本来自分が追い続けて来た夢が最早信じられなくなり掛けているという精神的苦境も語られる。その背景には、人生の多くの時間を自分の夢にでは無く生活にかけざるを得ない事情や、親・親族からの軋轢、恋人との将来設計迄、様々な問題が絡んでくるのであるが、これらのどん詰まり状況をこの劇団の持ち味と思われる一種の暖かさで解決してゆく。
 然し、芝居の作り、即ち、ドラマツルギーの観点からゆくと、二項対立が徹底しない為に、ドラマチックな展開には弱さが感じられたように思う。更に、観客を引き込む為には、矢張り、二項対立をハッキリさせて、エッジを利かせ、人情の機微によってよりは、ドラマの必然性として結末を導く法が効果的であろう、とは思う。
スノードロップ

スノードロップ

みどり人

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/06 (水)公演終了

満足度★★★

孤独を描くなら哲学を 寂しさ程度なら孤独ではない
 四つの話で完結する作品の第二話までなので、結末が分かるわけではないのだが、孤独レベルの話ではなく、とりあえずは、男女間の噺であった。申し訳ないが、孤独というのは、次元が異なる。まあ、ホームドラマレベルでは、なんとかお勧めなのかも知れないが、孤独という言葉を出してしまった以上、自分的には、お勧めはしない。評価は中間をとる。

ネタバレBOX

 男と女。これはヒトという生き物が始まって以来のテーマだろう。然し、他人の色恋など、他者にとってはどうでも良いもの・ことであることも事実だ。己が、一組のカップルのうちの一人と或いは双方と濃密な関係を持った時にだけ、それは、問題になるのが、現実の男女関係というものだろう。従って、男女関係の問題を演劇という方法を用いて観客に訴えたいならば、其処には、キチンとした戦略・戦術が無ければならない。観客を絡め取るだけの仕掛けがなければならないのである。今作は復讐をテーマとしているそうだ。復讐とか怨念という意味で、自分の頭に直ぐ浮かぶ日本の作品は、四代目鶴屋南北の「東海道四谷怪談」である。伊右衛門、お岩を中心とする物語だが、観客がこの作品に引き込まれるのは、中心主題が、復讐・怨念であるにしても観客にも大いに関係のある赤穂浪士外伝として、この物語が成立しているからである。江戸幕府が為政者として、自らの正当性を大衆に刷り込み続けて、安定した時代、その根本的イデオロギーへの異議申し立てとして、忠臣蔵は在る。その外伝として観客に作品を認識させている点、また、観客は、その普遍的意味を了解した点に於いて、この怨み・復讐は成立するのである。
 然るに、今作では、このような社会的因縁が一切ない。或るどうでも良い女の個人的嫉妬心が生み出した復讐劇に過ぎないのである。これでは、観客は白けるだけだ。だって、他人の恋愛など、自分が三角関係にならない限り、何の意味も持たないのは当然のことだからだ。そんな下らないことに付き合っていられる程、現代人は暇ではない。
祀(MATSURI)

祀(MATSURI)

劇団め組

吉祥寺シアター(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★

吉祥天と福禄寿
 何れにせよ、吉祥寺の起こりとされる明暦の大火を幕府の仕業として描いた物語である。

ネタバレBOX

 リーフレットの説明に在る通り吉祥寺の縁起に関する物語だが、増え続ける江戸住民に手を焼いた幕府は材木商人とも結託して、江戸の町に火を放った。付け火は、死罪で購う重大犯罪であるが、権力者がそれを為す場合は、無論“お咎めなし”は万国共通の事実である。物語は、此処までの深読みはしていない。然し、我ら観客は、ここ迄は最低、推し測るべきである。
 ところで、今日は、このような視点からは、論じない。寧ろ、劇場のサイズや構造と演劇について論じたいのである。
 観客の達ばから、自分は、この吉祥寺シアターは好みである。何といっても、段差を充分とってある客席の何処に座っても、舞台が見やすい。前の観客の頭部などによる観切れが無い。音響や、照明の設備が充実している。サイズの大きさも手頃だし、前後左右の比率が適度で舞台に集中しやすい等々である。今回、演出を担当している演出家は、この辺りの事を良く弁え、実に効果的に、音響(吉祥天の吹く横笛の空気を切り裂く音によって観客に空間を感じさせる方法及びD.J.の作り出す横笛程の緊張感のない音響によって別の空間を醸成する技術)と舞台上の舞いで、劇の視覚的効果を高め、上手に自然に観客に見せてくれた。キャパ100前後の小劇場で観る芝居は、観客がその想像力によって参加できるような演出をすれば、必要充分だろうし、それ以上であれば、作品によっては、過重な演出になってしまう可能性がある。然し、中規模以上の劇場になれば、見せる芝居作りを心掛けなければなるまい。その意味で、舞いと音響を巧みに用い、森を動かしたりすることで摩訶不思議な神々のすまいを表現する等の工夫が凝らされていた他、衣裳、舞台美術なども過不足のない良いできであった。
 無論、この演出に出演した役者達がキチンと応えていた点も評価できる。
Vol.1『BGS~バックグラウンドストーリー~』

Vol.1『BGS~バックグラウンドストーリー~』

ド・M(マリーシア)野郎の宴

Geki地下Liberty(東京都)

2014/07/31 (木) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

主張が内向きで弱い
 劇団員、全員男、ゲイ在り、腐れ縁在り! 等々、小劇場で公演を打っている劇団の本公演中、舞台袖、楽屋での話である。

ネタバレBOX

 どういうわけか、この本公演前から、アタッシュケースに仕込まれた爆弾騒ぎが起こっていた。この事件、最初の爆発が、おばあちゃんの原宿、巣鴨で有名な西巣鴨で起こったことから西巣鴨ボマー事件として有名になった。その後も、あちこちで同タイプの爆発事件があったばかりか、何と、この劇団に所属する淡路島出身メンバー、福留の隣室で爆発が起き、ニュースで報道されたばかりであった。そんな折も折、楽屋では、劇団創立メンバー、ポンコツ役者、田端と編集者の服部、制作等担当の淀橋らが、雑談をしている。田端の不満は、「何故、自分には、短い科白しかないのか?」である。服部は、唯一、この劇団で本職のシナリオライターだけで喰っていける、主宰者の大木に原稿を貰うことだ。淀橋は、公演終了後の打ち上げ手配などをやりながら、皆の舞台に気を配っている。ところで、作・演出の大木と田端は、小・中・高と同期で、小さな頃は、双子の兄弟のような仲良しであった。田端は、高校で地区大会決勝迄駒を進めた立役者。キャッチャーで4番、時にはピッチャーも務めた程の選手で1年で既にレギュラーであった。綽名をドカ弁と言う。一方、大木は、サッカー部キャプテン、全国大会出場を果たしていて、特技は、視野が矢鱈に広いこと、耳の辺りで本を開いて読んで見せる。ホントに見えないのは、真後ろだけとの噂があるほどだ。だが、二人は、ある時から、事あるごとにぶつかるようになる。原因は、女である。で、現在の其々の彼女は、互いの元カノという交錯した関係である。彼らと最も、付き合いが古いのが、主役の片瀬である。その片瀬は殆ど出ずっぱりで、楽屋に戻るのは、水分補給程度なのだが、彼のペットボトルを狙っている男がいる、ゲイの矢部坂である。矢部坂は、片瀬がラッパ飲みしたペットボトルと自分がラッパ飲みしたペットボトルを交換し、間接キスをすることに執念を燃やしている。この他、舞台監督兼演出助手でプロレス狂の天本が居るが、本番中は、楽屋では静かにしていることが常識なのと、プロレスラーが試合終了後、何らかのアピールをした後、マイクを投げ捨てる動作に重ねて、楽屋内では常にメモ帳にメモって対話をするのだが、その時、マイクをプロレスラーが投げ捨てるようにメモ帳を投げるのが癖である。
 これら、やや濃い目のキャラクターと西巣鴨ボマーとの関係や如何に? ボマーの狙いは? はたまた、矢部坂の恋の結末は? そして彼らは無事公演を終えることが出来るのか? それらの謎解きは劇場で。
 ところで、矢張り何となく内向きである。演劇は社会を映す鏡でもあるはず。外界を、殊に、この国の歪みが、各々のキャラにもっと反映するような作りを目指して欲しい。同じ楽屋物でも、清水 邦夫の「楽屋」が優れているのは、そこに、役者のエゴやプライド、自意識の深刻さが、本質として描かれ、普遍性を獲得していると、観る者、読む者総てに感じさせるからだ。個別的でありながら、普遍的であるような作品を目指すことが、表現する者の心がけの要の一つだと言うことを肝に銘じて欲しい。
交互に光る動物

交互に光る動物

ブルーエゴナク

王子小劇場(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★

外面 正常 内面 狂気
 北九州市で2年半前に旗揚げした若い劇団だ。座長は、現在23歳。旗揚げの時に3年以内に東京公演を打つと決めていたそうで、2年半で実現した。先ずは、おめでとうと言いたい。

ネタバレBOX

 座長の年齢から察して貰える通り、若い劇団だから“北九州市(小倉などをイメージして貰うと良いかも)に住む人達の意地やしぶとさ”を描いた、と言われるなら、そうなのかも知れない。
 然し、自分の見方では、擬制の維持の為に嘘しかつかない大人達への徹底的な不信感が現れた作品のように思えた。
 衆知の事実ではあるが、日本は、アメリカのポテンシャルベースである。嘗て中曽根がレーガンに対して「日本は不沈空母だ」と国辱そのものの発言をして握手していたことがあったが、無論、アメリカの日本認識を言った発言という意味では、媚びでも何でもなく、正鵠を射た発言なのである。それ故、こんな売国奴が勲一等を貰っているのだ。勲一等では、東京大空襲を始め、日本各地の空襲を指揮し、日本民衆大量虐殺を行ったカーチス・ルメイにも日本は、この勲章を与えている。更に、日本は、首都周辺をアメリカ軍基地に囲まれ、空域の優先権は第一にアメリカが持っている。そんな「国」の首長が、自分の責任でこんな不平等や大迷惑に一言も発することなく、尖閣を購入して、亜細亜の隣国とのいざこざを惹き起こす。首相は首相で、最低限、何万年単位で考えなければならない核廃棄物問題を隠し、何ら問題の片付いていない原発事故にも頬っかむりして、アメリカの言いなり。集団的自衛権でも得をするのは、アメリカだけだというのは地位協定を読めば明らかなのに、そういった被植民地の実体を隠すことばかりに血道を挙げて、日本全土の沖縄化を推進している。一言で言えば、アメリカの植民地である日本の実体を隠し、独立国の体を装う為に擬制を敷き、大人は共犯で嘘をつき続けているのだ。
 そのことを若者の真っ直ぐな目で見、切り取った作品ということが出来よう。従って、自分の解釈では、かなり理屈っぽい視点がベースにはあると睨んでいる。言い方を変えれば、見えている事象総ての背景にある動機、利害、作意などを総て読み取り、対処したい、との思いを感じるのだ。然し、論理的にそれを徹底する限り、不可知論に陥らざるを得ない。だが、経験も未だ浅く、独自の判断を自らの経験に頼ってはすることが出来ないのが、若者と言う名の“老人”であってみれば、論理で食い下がる他、大人に対抗する道は無い。このようなアンチノミーを通して、認識や意味が追求される一方、意味の形骸としてのルーティンワークが、大人への通路として、その危険な顎を広げている。分かり易く言えば、外面正常、内面狂気とでも言えるだろう。だが、他に採る道が無いとすれば、彼らは、アンヴィヴァレントな道を行くしかないのである。結果、判断は停滞・停止し、精神は、本能に屈服する。そのように危険な可能態を群襲劇2作目で描いているのだと考える。シャブ関連の検挙率、1位。治安の悪さも波ではなく、ロケットランチャーが見付かる等々が起こる街とは、植民地の癖に、独立国だと嘘をつき続ける日本の縮図である。そして、交互に光る動物とは、集団的自衛権とやらで人を殺し、殺される状況下での敵と己のことかも知れない。その時、人は、動物であるより獣そのものであろう。
狂喜乱舞~わらいや双六編~

狂喜乱舞~わらいや双六編~

外組

ザ・ポケット(東京都)

2014/07/30 (水) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

喧嘩坊主たち
 現在は売れない落語家、双六となったタケオや、リョウら4人の仲間は、いつもつるんで喧嘩に明け暮れていた。まあ、水産高校の生徒だから喧嘩は日常茶飯事だ。

ネタバレBOX

 ライバルは農林高校の番長グループだ。そんな彼らの中で、唯一、勉強もできるのはリョウだけだ。まあ、親父が議員で元社長ということで界隈の名士だから、その程度は当然だろう。女にももてる。タケオは、いつも、クラスの学級委員をしている女子から追っかけまわされているが、今の所、彼女というわけではない。兎に角、できない勉強をうっちゃり、将来の展望もなく、船酔いを考えただけで戻してしまう体質では、家業の漁師になることも覚束ない、タケオは、喧嘩に明け暮れている。そのお陰で喧嘩坊主としては地元で名の売れた存在だ。そんな彼に、東京で働かないか? と誘いを掛けた男があった。名を木村と言い、亡くなったタケオの父の同級生で、今は東京で働き偉く羽振りが良い。行き詰まりを感じていたタケオは、その話に飛び付くが、木村は、地上げ屋であった。10年後、東京湾を跨いだ橋が掛かることを見越して、房総半島のこの地の土地を買い占め、転がそうと目論んでいたのである。但し、面の割れた、自分の子飼いの若い衆では、都合が悪い。金を積めば、首を縦にふる連中を転ばせるのはわけの無いことだが、先祖伝来の土地は売れない、と言う人々を切り崩すのは難題だ。そこで、地元の若者を使い、様々な問題を起こしたり、敵対させることで、漁夫の利を得ようとの魂胆であった。ところが、その話はリョウの親父にも繋がる利権であった為、リョウの家に出向いて父親と話している所を聞かれてしまった。リョウは早速、タケオに、東京へ行くことは止めるように説得するが。(現在、上演中の為、ネタバレはここ迄)。ダチってのはいいもんだ。
 ちょっと、言っておきたいことは、もう少し、ギャグを知的な物にして欲しいことである。まあ、設定が、水産高校のツッパリなので、シナリオに少し無理がでるかも知れないが、芝居の面白さを追求し、劇団を続けてゆくのであれば、知的レベルの高い作品にもチャレンジしてほしい。
 乱闘シーンの動きなどは良い。
あけみママを待ちながら 

あけみママを待ちながら 

劇団ぺブル(ペブル・グラベル)

ワーサルシアター(東京都)

2014/07/31 (木) ~ 2014/08/04 (月)公演終了

満足度★★★★

劇団の過去作品がポスターにアレンジされていたり、遊び心満載
 この劇団、1年1作である。というのも座長が岡山在住なので、劇団員の殆どが東京乃至近辺在住の合同練習が中々思うようにできないからである。それもあってか、シナリオレベルで、観客に想像の余地を与える“加減・ほど”が実に絶妙である。(開演中なので更なるネタバレは後ほど)

ネタバレBOX

 今作でも、その辺りの呼吸は見事で、作品内容にもピッタリだ。今でこそ、水商売という業界に暗いイメージは無くなってきたものの、かつて、この業界に入る人々には、訳ありの人が多く、過去を消し去りたい人々が持つ独特の距離感を湛えていたものであった。その分、他人にも余計なことを言わない、詮索しないというような空気があったものである。この辺りの呼吸が作品の要になっているのだ。昨日が初日だったので、ネタは終演後に明かすとして、店に捨てられた6~7歳の女の子を何も言わずに育て、独立心の強い、察しの良いこの子がママに遠慮をして中学卒業時に「出てゆく」というのを「高校ぐらい出ておきなさい」とそっとフォローしてやるような優しさを持つママは、店の切り盛りでは、賑やかこの上もない。
 そんなわけでそれなりに繁盛しているこの店は、ホステスが足りない。偶々、父が亡くなって熊本から上京し、キャバクラの面接を受けた夕子は、キャバ嬢には向かない、とのキャバクラ店長判断で、スナック「あけみ」を紹介され、ここで働くようになった。兎に角、自分が「変わりたい」というのが、彼女がこの業界に入ったきっかけである。多少、引っ込み思案ではあるものの、誠実でどこか素人っぽい彼女の雰囲気は、馴染みの客からも自然に受け入れられ、もう7年が経っていた。そんなある日、店は急に静かになった。あけみママが置き手紙を残して失踪したのだ。周りの人々に訊いても消息は知れず終いだ。夕子が入店した時点で、孤児だった優子はここを出ていたので2人に面識は無く、彼女は漫画家になっていて、ずっと戻って来ない。チーママだったみどりも別の店に移っているので、現在、「あけみ」は夕子とバーテンの2人が回しているのだが。
 
見果てぬ夢

見果てぬ夢

ランプの伯爵

上野ストアハウス(東京都)

2014/07/30 (水) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

ヒポクラテス
 確かに、作家がリーフレットに書いている通り、ストレートな作品ではある。然し、全体のバランスの良さ、ところどころに煌めく科白、人情の機微を巧みに表現する技術などは、他劇団でも結構上演されているだけの作品だ。(追記後送)

無事公演を終えました。ありがとうございました!!→H君の冒頭意見陳述とその周辺、あるいは無敵の話

無事公演を終えました。ありがとうございました!!→H君の冒頭意見陳述とその周辺、あるいは無敵の話

楽園王

サブテレニアン(東京都)

2014/07/29 (火) ~ 2014/07/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

Merdre!
 全体は風景1、風景2と題された作品群でひとまず、完全に異なる話の2部構成というか2.5部構成というか、言い方に迷う構成になっている。まあ、2.5部構成といった方が正しかろう。というのも、風景2は、別々の話が、2つ演じられるのだが、風景2の最初に演じられた作品のラスト部分は、風景2で2番目の作品が終了した後に演じられるという特殊な構成になっているからである。この構成上の工夫によって、作品は微妙な化学変化を起こし、結末のファンタジックな世界への移行をスムースに感じさせているのである。尚、タイトルを記してある作品が、風景1の作品だ。風景2のタイトルは後ほど記す。
今作は、サブテレニアンの企画公演Marginal Man01“周縁の人”の参加作品ということもあって、こういう作りになっているのかも知れない。MarginalであることやMarginalなものは、常にpilot surveyや水先案内として、現代のように、価値が無限に希薄化してしまった時代には、殊に重みを増す概念である。この点に着目して、企画を立てた、この小屋主の慧眼にも敬意を表しておきたい。

ネタバレBOX

 何れにせよ、このようなコンセプトで演じられていると考えられる今作。視点もユニークである。Merdre!(糞ったれ!)で始まるアルフレッド・ジャリの傑作、Ubu Roi(ユビュ王)に通じる作品と捉えてみた。但し、今作では糞ったれ! は最後に持って来られている。そのわけは、無論、被告が裁判で意見陳述を許され、その機会を用いて、事件の概要とネットを主要な媒体とする噂の乖離を明かし、個々の事例に対する己の分析的立ち位置、そのように対処した己のメンタリティーの自己分析結果を表明をしてみせた上、更に罪を問う体制側論理を分析、その判断に対する態度表明をしてゆく結果として、己の存在、その存在を許して来た社会そのものを茶番として断罪することが試みられていると言って良いだろうからである。つまり、犯罪を犯した者が、アイロニカルな意趣返しを図ったのである。言い換えれば、論理自体を体制側のものと同一に措定し、それに異を唱えず、寧ろ、自分自身を論理に従って断罪することを要求することによって、体制の茶番を暴くという構造になっている点がアイロニーなのだ。そのアイロニーを呈示した上でだからこそ、糞ったれ! が生きるのである。
 オボカタさんという名の謎の女とムーミンに登場するキャラクター、スナフキンとの間で繰り広げられる、無論、STAP細胞論議をベースとした、コミカルなサイエンスファンタジー。無論、STAP細胞の話が出てくるのだが、専門的な知見というよりは、近代科学のおおもとの一つとなった錬金術と知的所有権や特許料による莫大な利益を示唆する「経済的錬金術」を掛け、更に、錬金術という中世的な概念を持ち出すことによってファンタジックな世界に溶け込みやすくしている点が、面白い。STAP細胞に関して、追試が出来ていないという点が、大きな問題として先ずは上がってくるべきなのだと考えるが、大方の予想通り、下らないゴシップや非本質的な話題に転化することで、メディアが馬鹿騒ぎし、それで、小金を儲けたことを茶化している点もあるかも知れない。それで、今公演のラストに、オボカタさんという名の女性は、迎えに来たスナフキンと共に、ムーミン谷へ行ってしまうのである。
 ところで、風景2では、「錬金術師」と名付けられたこの作品の途中に谷崎 潤一郎作の「お國と五平」という作品がサンドイッチされている。原作を読んでいないので、今回の脚本と同じ内容であるか否か、自分は知らないのだが、この作品は、風景1とダブる。だらしのない男(家老職の家に生まれ、お國の許嫁でもあった友之丞はお國に振られるが、彼女の選んだ夫を闇討ちして殺害、逐電し、虚無僧に身をやつして、仇討の旅に出た、お國、五平を足掛け4年も追い続ける。)武士としては、剣術も頗る弱く、甲斐性もない友之丞だが、未練だけはたらたらである。それは、恋についても己の命についてもだ。その彼が、2人を追い続ける4年程の間、2人は虚無僧の正体に疑いは抱いたものの、結局気付かない。物語は、正体に気付く直前から、仇討を遂げる迄を描くが、互いの利害や、従者、五平とお國の不義密通、友之丞とお國の矢張り、嘗ての情交等を暴きつつ、大団円に流れ込むのだが、だらしない友之丞の居直った論理によって、暴かれてゆく、世間的正義・評判の良さと事実との乖離が呈示されている点で、風景1とダブる仕掛けになっている。

I SCREAM (7/27~7/28無料公演)

I SCREAM (7/27~7/28無料公演)

多摩美術大学映像演劇学科3年表現ⅡAコース

多摩美術大学上野毛キャンパス 演劇演習室(東京都)

2014/07/27 (日) ~ 2014/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

毀誉褒貶分かれよう
 3.11で2人の男達が、避難したのは、キャバクラだった、という設定の作品だ。

ネタバレBOX

このキャバクラのホステス達は、3つの派閥を形成している。在るグループは、津波で家族や親族と家屋を失った者達で形成され、在るグループは、飼っていたメダカの水槽が割れてPTSDになったり、或いは地震そのものを恐れる余り、余震でパニック症状を起こしたりしている。だが他のグループからは、自己憐憫と思われており、残るグループはその中間という位置付けである。ヤンキー系突っ張りで、何とか傷を誤魔化しているのが、この最後のグループである。無論、互いの派閥同士は仲等良いハズも無い。だが、この店のNO.1 は、どの派閥にも属さない。その名は、デンコ。彼女は、最も放射性核種による汚染の酷い地域が故郷なのだが、自分の体がフリークになっても尚、其処に留まり続けることを選んでいるユニークな存在だ。売上NO.1 というものは、大抵、嫉妬や妬みで表面上は兎も角、内心、仮想敵として嫌われるものだが、ことデンコに限っては、仲間の総てから好かれているばかりではなく、尊敬されている節が見える。何れにせよ、デンコの壊れゆく様を間近に見ている他のホステスや常連客は、いたたまれなくなって、デンコの為に反原発デモに走るが。確か翌月、1カ月の余震の数は1049回だったと思うが、余震の中には可也大きな揺れを齎すものがあり、当然、津波の起こる可能性もある。何れにせよ、ちょっとパニクル状況になると、本義も忘れて自己保身に走ってしまうのが、普通の人々でもあるのだ。その辺りのリアルな感覚を今作はキチンと取り込んでいる。
 その時、派閥の論理の外に立つというよりは、派閥の起きる原因の要をして機能するデンコを、その下降弁証法的なスタンスから捉えて演じ内面的な物をも描いていると感じさせた國分 大輝の演技が気に入った。特に、彼の目の表情、フリークとしての身ぶりの形態模写、そして瞼に塗った効果的なラメの化粧もグー。本編、1時間ほどの作品だが、単調になりがちな前説の時、客席に紛れ込んだ役者が、注意事項に反するようなことを、その度にやってみせ、場を盛り上げていたのも気に入った。映像演劇学科は、この度を以て廃止となってしまうそうだが、残念だ。学生さんたちには、大学の学科は廃止になっても、ここで学んだことを活かして更に上を目指して頂けたら、とは思う。
Case4 ~他人と自分~

Case4 ~他人と自分~

劇団HIT!STAGE

サブテレニアン(東京都)

2014/07/26 (土) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

今後も楽しみな劇団
 劇作家の森さんが、アフタートークでおっしゃっていたことが、今作を理解する大きなヒントになりそうである。

ネタバレBOX

何と、今作は2~3日で出来上がった、というのである。そして、普段、佐世保でこの劇団が演じているのとは、ちょっと毛色の異なった作品でもあるということだ。私ごとを持ち出して恐縮だが、自分も極端に早く原稿を仕上げた経験があって、表現する者がそのような状態にあることに思いを巡らせてみた。その結果、矢張り、作家が普段、自らに問い続けていることが、臨界を迎えた時、奔流となって噴出するのだと考えた。常に作家が、自問し続けているからといって、それが、明確な形になっているとは限らない。寧ろ、そうではないからこそ、問い続けているのである。従って、作家にとってもそれは、未だに不定形な何かであって、理屈で簡単に説明できるような何かではない。然し、常に、丁度寄り添う影のように、自らにつき纏う何かなのである。そしてそれは、それを意識していようが、偶々忘れていようがお構いなしなのである。
 唯、自分が、この作家のポテンシャルが高いと感じるのは、既に1998年の劇団立ち上げから長い時を経てなお、自らの内面の深い所にマグマのような作家の源泉をキチンと抱えていることの凄さである。無論、表現をする人でなくとも、このような資質を持ったことが在る人は居るであろう。然し、持ち続けることができるというのは至難の業である。かつて、ボードレールは「芸術とは売春の趣味だ」と喝破したが、表現する者が、皮膚1枚を表現する為の距離として持ったとしても、これを非難するにはあたらない。それがでえきるということこそが、表現する者の技だからである。そのような、世界と表現者と表現する者の内面のたゆたいとを描いた作品と取ると、とてもハッキリこの作品の主題が見えてくるように思う。
 まあ、もっと人口に膾炙する解釈を採るならば、恋を知り失って、より深い孤独の中で、アイデンティティー崩壊の危機を迎えた中年女性が、自らのアイデンティティーを再構成する為に悪戦苦闘する話ととっても良かろう。オチも利いているし。
 佐世保から、舞台道具を運ぶことも考えて、効果的な装置が考案されていた。高さ2mほどの三角柱の骨組みだけが組み立てられていて、床に接する三角形の各頂点に戸車が取り付けられているのだが、これが鏡になったり、三人の登場人物の一体化する枠になったり、無論、観客の思い描く何物にもなるのだ。その他の舞台セットは、木箱と木製のパソコンやポット、カップなどで、ノートパソコンを、それらしく見えるように木で作ってあるのには感心した。
 また、東京に来ることも検討しているという。今後も期待したい劇団である。
それは秘密です。

それは秘密です。

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/07/24 (木) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

必見! !想像力の齎すリアリティー
 情報隠蔽法(秘密保護法)施行2年後の2016年8月13日、売れないお笑い芸人のコジマ ケイは、TKFと名乗り仲間のタムラ・フジムラと共に、コントのトリオを組んでいる。ところがどんな酔狂からか、業界は鳴かず飛ばずのロートル芸人コンテストを開催することになった。20年以上もこの世界で生きて来たTKFもエントリーしたのだが、何と決勝に進出することができた。(追記後送)

ネタバレBOX

勝てば、優勝賞金1千万円、TVのレギュラー番組出演も決まるだろう。そうすれば、バイト人生ともオサラバだ。もう直ぐ40歳になるというのに、まだ夢を追いかけて、家族や親族をヤキモキさせてきた人生ともオサラバできる。決勝戦は2日後、リハーサルに出掛けようとした矢先、彼は逮捕された。

十周年記念コンサート「Thanksgiving!!」

十周年記念コンサート「Thanksgiving!!」

ミュージカルグループMono-Musica

Studio K(東京都)

2014/07/26 (土) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

質の高さと美しさが楽しめる
 Mono-misicaの10周年記念コンサートなので、これまでのレパートリーから選んだ曲が披露された。キャストが女性だけの劇団なので、大方は、甘えがあるのではないか、と先入観を持つかも知れないが、杞憂である。歌の上手さ、確かさ、ハーモニー、声音自体の美しさと共に振付やフォーメーションの美しさにも極めて敏感だし、衣裳や着こなし、配色にも神経が行き届いている。ミュージカル劇団としての、質の高さが際立っている原因は、自らの立ち位置、作品との格闘を通して、自己批評がキチンとできている証拠だろう。こういう劇団に甘えはない。

ネタバレBOX

  公演は2パートに分かれ、間に15分の休憩が入る。各演目の間、メンバーが交代でMCに入って繋いでくれるのも、10周年記念公演らしく自然で良い。更に。伴奏は、グランドピアノを使った生演奏なので、ピアノ大好きな自分としては、大変嬉しかった。作品の多くは、古典や歴史、小説、物語などを独自にアレンジして作られたものだが、今回は、コンサート形式なので、歌と振付がメインである。無論、アウトラインの説明はあるので、オリジナルの舞台をある程度想像しながら楽しむことができるし、歌われている歌詞で本質は掴むことができる。Clown’s Clownで始まったコンサートは、第七回公演の「墓掘り男と六本の煙草」、第五回公演「如月の砦」に移り、過去作品レアコーナーでは旗揚げ公演「月の鳴く音~Dr.Jekyll and Mr.Hyde~」から“月の鳴く音”次に「砂漠の花~Le Petit Prince~」から“砂漠の花”パート1のラストは、第六回公演「夜明けの風」だ。名を上げた各公演から数曲ずつが歌われる。
 第二部は、第四回公演「十六夜の桜」、第八回公演「花廻りの鬼‐魍魎薬師白夜奇譚‐」と進んだ後、2回目のレアコーナーでは「虎落の笛」から“夜の森の虎”、“白い獣”が歌われる。そして前作、第九回公演「アルバローザの花嫁」で本編は終了だが、これでは名残惜しい。大丈夫、最後にExtra Stageが用意されている。このパートは日替わりのようなので、歌われる曲は、実際に出掛けて確かめて欲しい。
 因みに、今回、行けなかったファンは、12月26日~28日迄、新作を六行会ホールで上演するそうだから、実際に出掛ける前には、再度、御自分で確認の上、出掛けて頂きたい。初めてコメディータッチの作品になるとか。
 ところで、この劇団、最初に上演した作品は「ジキル博士とハイド氏」をベースにしたものだが、無論、デュアリズムを問題とした作品だ。デュアリズムとは、善と悪とか、精神と身体とか、何かを論ずる時に、二つの独立した概念によって世界を解釈する考え方だ。近代哲学ではデカルトがその第一人者であるが、人間存在をも二分化してしまい、この論理ではアウフヘーベン出来ないという問題がある。だが、物事を一面的に眺めるという弊害から、この劇団は脱している。例えば、この作品の中でハイドによって救われた娼婦によって歌われる歌の歌詞は、深い悲哀に包まれている。これは、彼女が命の恩人と思い定めたのがジキル氏であったことから生ずる齟齬が、恐らくこの作品を単なる二元論で論じうる作品にはしていないからだ。他の作品も、あやかしと人、あやかしの棟梁の美しい人食い鬼、これらを束ねる者などと人の関係を描いていたり、と単調でない所が良い。それが、悲恋に終わるにせよ、恋の成就が示されるにせよ、まこと、女性の劇団らしく、恋と命を作品化した舞台は、美しく見応えあるものになっている。
肥後系 新水色獅子

肥後系 新水色獅子

あやめ十八番

小劇場B1(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

意地
 基本的には、2つのストーリーが、含まれ、其々が、その時代を映した合わせ鏡のように、綯ったDNAの螺旋構造のように綯い交ぜにされた作品だ。音響に、生演奏が用いられているのも気に入った。使われている楽器はウッドベース、ヴァイオリン、クラリネット、キーボード、パーカッション等々。

ネタバレBOX

  1本目の鎖は、百合の花を右手に持って神社の門前で死んでいたイケ面国語教師兼演劇部顧問の塚田の死の真相追究。
 2本目の鎖は、この神社の再興に関する縁起。
 冒頭、死の汚れを払う儀式が神主によって執り行われるが、この時、祝詞として裕仁の終戦の詔勅(玉音放送の内容)が、援用されている点、また、2本目の鎖で、英霊が、靖国ではなくこの神社に祭られている点に、反骨の美学とアイロニーを見る。(更なる追記後送)
ジプシー

ジプシー

ULPS

ワーサルシアター(東京都)

2014/07/24 (木) ~ 2014/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

詩的作品
 ジプシーの長老役、何とも味のある役作りであった。自由を得る為に人は、何を持ち、何を捨てるべきか? そんな問題を極めて詩的に舞台化してみせた作品。仕掛けになる発想が良いのだが、そのネタバレについては終演後、先ずは観てのお楽しみ。

ネタバレBOX

 入居契約の1カ月ほど前、この部屋の入居者がやってきた。未だ、内装の細々した所は完成していないが、部屋の大まかな部分は出来上がっている。新しい入居者は中年にさしかかる夫婦だが、未だ、子供は居ない。間取りは2LDKだ。今迄、住んでいた部屋に比べると随分広くはなったが、通勤には、1時間程遠くなった。4000万円の物件だ。無論、借金をして購入しているので、結婚で仕事を止めていた妻も、また働きだす予定だ。まあ、思いを一杯詰め込んで買った物件なので、早くから、良く探し、手を打っておいたので、マンションの中で、最も条件の良い部屋に入居できたというわけだ。ロケーションも抜群。環境も良い。いくらか空気もおいしく感じられる。
 ところが、そろそろ、帰らなければと言い始めた夫婦に、多くの人の歩く足音が聞こえてきた。不信に思って廊下へ出た主人は、たくさんの人が、こちらへ来る、と妻を誘ってベランダの工事中の足場に避難してみていると、なにやら杖を持った老人を先頭に赤子を抱いた母親迄がぞろぞろと自分達の部屋に入り込み、老人は、杖を床に打ちつけて何かを探るような素振りを何回か見せた後「此処にしよう」とその杖を床に突き刺した。漸く手に入れた新築マンションの自分達の部屋に闖入された夫婦は、彼らに出ていって貰おうとするのだが。
真夏の少年

真夏の少年

『熱きロマンを胸に、生きる勇気と希望を与えるべく突っ走り続ける奴ら。』

ザ・ポケット(東京都)

2014/07/22 (火) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

1立方cmの土の中
 何もないように見える、ちっぽけな土くれ。この中に実は、どれだけの命が宿っているか。そんなことを思い出させてくれる作品。

ネタバレBOX

 初見の劇団だが、踊りなどの身体パフォーマンスが多い。動きは、悪くないが、こんなに多用する必要があるとは思わない。意気込みは理解できるものの作劇の必然性をもっと盛り込む方が密度は上がろう。他にも、背景の音響と科白のバランスの取り方、マイクを使ってがなることの効果にも疑問を呈したい。がなっても、音が割れるだけで科白は聞き取り難くなるからだ。
 前半のこのような感想にも拘わらず、終盤の遠泳対決辺りからのパートは圧巻。この劇団の熱と主張がしっかり伝わって来た。
 真に豊かな自然というものは、都会人の芽から見ると何も無いように見える。在るのは唯、山と海と青く広がる空と風が運ぶ季節の匂いだ。だからそこには、何でもある。僅か1cm₃の土くれには、数十億もの微生物が生きており、目も見えなければ、どちらが頭でどちらが尻尾かも定かならぬミミズが土を耕している。水たまりが出来ればボウフラが湧き、いつの間にか小さな魚さえ住みついて命が湧くのだ。だから、ここには総てが在る。そんな自然を守ろうとする人々が居て30年前に“一生の友達の約束をした星岩では、今もあの頃のまま。唯、世代が変わって、一生の友達になる為に飛び込んでいる、子供達の姿が生きて在る。こんな小さな、でもとても大切なことが、リゾート開発をして島を「豊かにしよう」とした自分の過ちを気付かせてくれた。30年前にも似たことがあり、同じ過ちを犯した人が在った。だが、その時も、この何もないから総てを持っている島の人々が、教えてくれた。守るべきものもこれからのことも。何故なら、一見、何もないことの中に総てが在って、未来が湧いてくるのだから。

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