ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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擬人カレシ~けもみみ大作戦!?~

擬人カレシ~けもみみ大作戦!?~

モノガタリ

新宿村LIVE(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★

琥珀を拝見 

 イケ面の男の子たちを使って目先だけ変えた出来あいの作品を構成するパターンだ。シナリオは、その割には甘い。演出もマズマズか。観客を巻き込む為のテクニックとして、ペンライトを客席に設置し、公演中何か所かで予め決められたパターンの中から、衣裳なり、多少のストーリーバリエーションなりを観客に選ばせて、恰も観客参加型舞台に見せ掛けるが、ホントに役者が観客を参加させるのであれば、インプロビゼーションの一環として、お題を頂き、即興で演じる程度のことはして欲しい。

僕のともだち

僕のともだち

劇団 でん組

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2014/12/11 (木) ~ 2014/12/11 (木)公演終了

満足度★★★★

時間停止
 10歳(小5)の内気な少年が校舎の窓から飛び降りた。母親は苛めが原因ではないか、と疑っている。一方、加害者側の中心となった少年の親は、母が辣腕弁護士、父が、投資顧問会社の社長である。息子が、下手をすれば家裁送致になるので、苛めは無かったことにして、飛び降りの原因を単なる子供同士の喧嘩ということにしたい。(追記後送)

フタリニミエタ

フタリニミエタ

Oi-SCALE

駅前劇場(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/15 (月)公演終了

満足度★★★

演劇の本質
は、他者との関係にあり!! にゃ!!!!~~~~~っつ! ふぎゃ!

ネタバレBOX

 演劇の本質は関係にある。無論、総てが関係の中に在るのであるから演劇についてだけそういうのはオカシイと論ずる向きもあろうが、ドラマがドラマティックであり得るのは、二項対立か三項対立という代表的な対立形式があればこそである。二項対立はデュアリズムに照応し、三項対立は弁証法に照応する。ドラマチックな総ての戯曲は、このどちらかに分類できるのではないか? 無論、有史以来総てのドラマティックな戯曲がである。
 総てが関係の中にあるのに、戯曲についてだけ関係を持ち出すのはオカシイと言う人々に対しては、こう答えよう。戯曲は、対立する関係を浮き彫りにする為にこそ、論理的に構築されるのであるし、その意味では、総ての関係に目配りをした上で、対立関係に収束させるタイプの芸術なのだ、と。
 この定義から、今作は若干ずれている。何故なら、明確な対立項目が主観の外に設定されていないからだ。結果、関係性はイマイチ不明確で不分明なものにならざるを得ない。登場人物のキャラクターが、総て、作者の影に過ぎないからである。これでは、各キャラクターが異質なものとしてぶつかり合うことが不可能である。自らの解析を通してキャラクターを析出するしんどさは理解するし、影が生まれてくる心理状態は自分にも経験がある故、否定したりはしない。然し、それならば、ベケットのように演劇の不可能性迄追求したら良いのだが、それもできまい。出来ない理由は簡単だ。ベケットは一旦、外の世界から、自分を見つめて作品をものしたが、本作の作者は外の世界から自らを観たことは無いように思う。其処が決定的な差なのである。一旦、世界に飛び出すべきだ。その上で本当の勝負になる。
時代絵巻AsH 其ノ伍 『白殉〜はくじん〜』

時代絵巻AsH 其ノ伍 『白殉〜はくじん〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/12/09 (火) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★

練られたシナリオ
勤皇・佐幕ものとしては、珍しく、登場人物に個性を持たせることに成功したシナリオだ。結果的にイデオロギーの厭らしさに流されないだけの魅力的な人物像を立ち上げるのに役だっている。演出も、自然な流れを作り出してグー。殺陣のシーンが、かなり多いのだが、これも全体的に上手い。殊に、斉藤 一(山口 次郎)を演じた黒崎 翔晴の殺陣が良い。

ネタバレBOX


人望厚かった会津藩家老、萱野 権兵衛を中心とする勢力の動きで会津政治を代表した視点も良い。当然のことながら、会津藩と縁の深かった新選組、長岡藩なども重要な役割を果たす。対するは、薩長の官軍である。朝廷を長らく警護してきた、会津藩にとって、朝敵の名は理不尽なものではあったが、朝廷サイドには、薩長によって漸く貧乏から脱することのできた実際の生活があった。この辺りのリアリティーを描いて力がある。このリアリティーは、矢張り家老職、山川 大蔵の弟・健次郎を、襲って来た官軍兵士から守る為に大怪我を負った、幼馴染の新太を「介錯せよ」と迫った斉藤 一の、戦争を知る者のリアリティーにも通じる。
ハッピーエンドがみえる

ハッピーエンドがみえる

劇団みずほ

千本桜ホール(東京都)

2014/12/09 (火) ~ 2014/12/10 (水)公演終了

満足度★★★★

明日は我が身
 今作、ビニールハウス等に住む人々からの視点で描かれている。一応、最低辺層ということになろうか。上を向くしかないのである。希望を持つ為には。だが、それは容易いことではない。

ネタバレBOX

現在の資本主義は、徹底した収奪は無論のこと、総てをその支配下に置く。少なくとも置こうとする。国家であれ、人物であれ、その他の如何なるものも。かくして資本こそ、この世の王であるかのような感を呈しているのが実情である。即ち、資本以外の総ては資本の奴隷なのである。このような構造の中で形作られるヒエラルキーでは、普通の人があっと言う間にホームレスになったり、中間層の人々が気付いてみたら底辺層になっていることは日常茶飯、最早常識でさえある。
 一方、一度底辺に落ち込んだが最後、差別され、排徐されるのが、これまた常識。更に自分達が普通であったという中間層意識が、底辺に「落ちた」自らを恥じ、こんな姿を知られたくないという感覚から社会復帰を難しくしている側面もある。
一方、ビニールハウスに住む人々が、撲殺されたり、集団のガキに襲われて命を落とす、大怪我をするなどということは頻繁に起こっている。ニッチもサッチもいかなくなって、なるべく目立たぬよう片隅にこうして生き、底辺に馴染んでしまった人々の多くは、自らの明日を、可能性を自ら閉ざしがちなことも確かであろう。その点に着目して描かれた今作の視点の良さと、底辺から世界を観ようという視線が良い。
 時代設定をオリンピック開催直前の首都に置いている点も良い。また、舞台美術が、詩的で時宜を得ている点も評価できる。役者たちもかなり自然な演技をしている。今後に期待したい。演出もストーリー展開に関しては、自然で合格点である。

人間ルネサンス 短編戯曲集

人間ルネサンス 短編戯曲集

ENGISYA THEATER COMPANY

シアター風姿花伝(東京都)

2014/12/08 (月) ~ 2014/12/08 (月)公演終了

満足度★★★

む~~う
15分程の短編2編を上演後、10分の休憩を挟んで35分程の短編2編という構成なのだが、全体の構成には余り脈絡が感じられなかった。それに、1日公演という形を採っているにしては、シナリオ・演出、役者もこなす大村氏のエクスキューズが多いように思う。生まれ変わるなり、再生するなりがルネッサンスなのであろうに、何処から何処へ行こうとするのかを感覚的に追えなくはないが、もう少し理屈で根幹を決め、全体を構造化して、主張をハッキリさせて貰いたい。
 また、大村氏に関しては、存在感だけでなく、劇空間の総てに対して、意識の網を張り巡らせるような手管が欲しい。その辺りの劇空間把握力に関しては相手役の八木 麻衣子さんの方が、優れているように思ったが、演出家が女優に負けていては拙かろう。

スノードロップ

スノードロップ

みどり人

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/12/05 (金) ~ 2014/12/10 (水)公演終了

満足度★★★

がらりと変わる花ことばの意味
スノードロップ、花言葉は希望。但し、誰かに送るとガラッと意味が変わる。

ネタバレBOX

一、二話で、この花に纏わって鬱憤を晴らそうとしていたのは、ライフトラベル課長の渡辺 浩二の妻、花音であった。然し、福岡にかつて居た部長の塩谷が、この大塚ビルの営業部長として転任して来てから、スノードロップで怨みを晴らそうとする主体が変わった。このビルで清掃の仕事をしている矢野 富貴子にである。
 三、四話は、それは何故か? が明かされてゆく主筋に様々なタイプの恋とその悩みが絡まりながら展開する。
Musical PUB

Musical PUB

ステージパートナーズ

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2014/12/06 (土) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★

 チームCを拝見

 トニー賞を受賞したり話題になったミュージカル作品で使われた歌を1曲選び、生演奏を背景に歌われるミュージカルのオムニバス。歌い手によって技量に大分差があり、技量の高い者については、心地よいものであったが、イントロで明らかに合っていない者もいたのが残念。リハーサルをもう少しキチンとやっておくべきだろう。(追記後送)

草莽崛起

草莽崛起

劇団宇宙キャンパス

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2014/12/05 (金) ~ 2014/12/09 (火)公演終了

満足度★★★★

くるものがある
 ソウモウケッキと読む。舞台は1922年(大正11年)に、1人の新聞記者が、高杉晋作が創始したことで有名な奇兵隊の生き残り、浦部 五郎に、その内実を訊ねるという設定だ。名もなく歴史の闇に溶けていった庶民勇士へのレクイエム。(追記2014.12.8)
 

ネタバレBOX

 草莽とは、草原を指すが、転じて民間、民間の士を表すのは、今更言う迄もあるまい。が、念の為。最近、日本語が碌にできない人が多過ぎるからにゃ。そういう自分にした所で大したことは無いのだが。
閑話休題。で、五郎の語るのは、奇兵隊草創期である。当然、幕末だ。明治元年迄あと5年の文久三年(1863年)、安政の大獄で吉田 松陰を失った長州は、高杉らが台頭、御殿山に建設中であった英公使館焼き討ちなどの行動で攘夷を示す。然し、藩内は、幕府に恭順を示すべきだ、との佐幕派も隠然たる勢力を持ち、攘夷派に反対して勢力は二分された為、藩内に於いてもいつ内紛が起きてもおかしくない状態にあった。而も、長州は、下関事件で外国との戦闘も覚悟せねばならず、幕府との関係は朝敵とされて以来最悪のものであった。四面楚歌である。このようなニッチもサッチも行かない状況で高杉の下、頭角を現して来たのが赤根 武人であった。高杉が、佐幕派との衝突の責任を問われて、奇兵隊から外されると、統率を任されたのが、赤根であった。然し、武士でもない所から成り上がった赤根が、自分より上位に就くことを山県 有朋は嫌う。
今作では、この確執が、赤根は冤罪と知りながら、幕府の攻撃に晒される長州を離れたとして罪に問い、斬首刑に処す、という解釈をしている。彼と共に、馴染みの店に居た3人の隊士、修造、伝之助、仙吉も共に処刑された。
奇兵隊きっての腕っこき、伊之助が、命に代えても守ると約束した赤根を助ける為に、斬首時に刑場へ到着。然し、間に合わなかった。それでも未だ命のあった友人らを助けようと奮闘するが、多勢に無勢、終に斬り殺されてしまった。止めを差したのは山県である。腰ぬけの五郎も、流石にこの時、腰の物を抜いた。だが、姉と断末魔の伊之助に、語り部として残るように赤根と約束したことを指摘され、生き残ることを決意。その後、奇兵隊を抜け、生き残りを図ったのである。五郎が、特に称揚したのは、名も無く死んでいった勇士、伊之助と皆に好かれ裏切り者として殺された赤根のことであった。
まあ、草莽の志は、己の中にそのような思想を持つ者にしか分かるまい。一般的に言われる「英雄」というのは、下衆レベル迄自らの精神を落とした人間に過ぎないが、その程度の下衆を喜ぶ手合が多いのだ。草莽とは、自らの命を賭けて義の為に闘う者の謂である。
ザ・モニュメント 記念碑

ザ・モニュメント 記念碑

KJプランニングス

プロト・シアター(東京都)

2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

スタンディングオベーション
 文句なくこのレベルである。紛争地に関わり続けて来た人間の一人として、ここに、戦争の裸形を見るからである。これこそ、戦争の実態。安倍如き阿保が百万言を費やして決して辿りつくことのない真実である。12月7日の公演がラストだ。絶対観るべし!! (追記2014.12.6)

ネタバレBOX

 戦争は狂気だと言って、皆その真実から逃げたがる。皆が逃げたがる、その現実を見事に掬い取ったシナリオ。ステッコ役、神保 良介の熱演が光る。メイラ役、西田 夏奈子の演技も良い。演出も必要最小限で、素舞台、小道具の使い方も無駄を省き知的であり、骨太な作品を立体的に仕上げている。
喜劇王暗殺

喜劇王暗殺

トツゲキ倶楽部

d-倉庫(東京都)

2014/12/03 (水) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★

温かさと苦労人の優しさ
観客席に座って素直に楽しめるだけの芸を持った劇団と観た。要は実力派である。それだけではなく、この劇団、温かさがある。(追記2014.12.6)

ネタバレBOX


 チャーリー役のちゅうサンの手品、ハートウォーミングな役作りが良い。他の役者陣もバランスの良い演技で好感を持った。
 更に時代背景を神託という形でさらりと表しているのがグー。犬養首相暗殺というのが出てくるから、メインストーリーが展開する時代は1932年の5.15事件の前というのは、直ぐ特定できる仕組みだ。つまり太平洋戦争へ至る暗い時代を健全な庶民の感覚で描いている。これは、現在、情報隠蔽法である秘密保護法は、その非人間性に於いて悪法の最たるものの一つであるが、こんなものが施行される直前に、ヒューマニティー溢れる苦労人、チャーリーの温かさを対比させている点もグー。
 実際、チャップリンは来日したことがあるし、彼がユダヤ系であることも知られていよう。この史実もまた意味深ではある。
太陽龍(再演)

太陽龍(再演)

劇団龍門

明石スタジオ(東京都)

2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★

イニシエーション
 侃々諤々の議論が続く問題を手堅く素直なシナリオに纏めた作・演出も勤める座長の村手 龍太氏の演技が良い。ことは、3.12直後の原発暴走を食い止める為に立ち上がった男達の物語だ。

ネタバレBOX

シナリオ執筆の原点は、自分達の子供であるような原発が暴走し始めた。これを止めるのは、携わってきた自分達の責任であるとして、いち早く収束作業に携わろう、と声を挙げた原発技術者OBの記事を見たことだったという。無論、現実は、今作に描かれたより更に厳しくドロドロし、アンビヴァレントな状態に当事者を置くが、今作は、実際に居たであろう、また、現在も収束作業に関わる名も知られぬ多くの現場作業員の命を賭けた、怪物としての原発との戦いを描いて、原発問題へのイニシエーションの役割を果たしていると言えよう。
 今作に描かれる収束作業最初の死者、木下 勇気の死に関し隠蔽工作を図る原子力保安院の矢野に対して、夫を亡くした身重の妻、なおみが叫ぶ「夫を返して下さい」という叫びは痛切である。
 開演前に流れている民謡も良く、劇中用いられる美空ひばりの歌が効果的。
下衆な回遊魚

下衆な回遊魚

はぶ談戯

劇場MOMO(東京都)

2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★

欲望
確かに堕落である。そして下衆だ。描き方として、シナリオライターは、本当は何処に焦点を当てたかったのか? との疑問を持つ作りにはなっていた。ネタバレは控えるが、こういう結末なら、結末をもっと明確に出してしまった方が、演劇的にはドラマチックで締まりのある傑作になったかも知れないのに。周縁部を含めての退廃を描くのが主眼であるなら、そのような社会を作り出した背景を描き込まなければならないだろうから、もっと長大な作品になっただろう。何れにせよ、イマイチ主張がハッキリしないという感触を持った。

遺失物安置室の男/改

遺失物安置室の男/改

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2014/11/22 (土) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

掲諦 掲諦 波羅掲諦
 兎角、この世は、一切空、空即是色、これなり。(因みにタイトルは、般若心経の一節)維摩経は、一説によると仏教の本義とか。それが、判定できるほど、自分は仏教に詳しくないので、興味のある方は、ご自分で調べて頂きたい。(一部追記2014.12.4)

ネタバレBOX

 自分は以上の程度の仏教認識ではあるのだが、今作は、意外と仏教と近い所に、その認識の根底があるように感じた。平家物語の杓子定規な評価に従えば、無常感ということになるのだろうか? 何はともあれ、物にまともに向き合う、という感覚は、ユマニスムを神との「契約者」との関係で打ち立てて来た欧米文明に於いては、疎外・狂気の中でしか現れ得ないコンセプトであると考える。然るに、これが東洋的コンセプトの中に収まることによって、生き物である、ヒトとその「所有物」であった物達の関係が、逆転した“物格”ある物と遺失した物の所有者であることを証明できないヒトとのあり得べき齟齬や関係としての諸々が、示されている。遺失物を管理している男は記憶を失っているとされている為、通常、ヒトが常識と考えている関係の在り様、論理構築のパラダイムからは自由である。この為、所有者を名乗り出た者に、様々な設問をだすのだが、中でも答えにくいのは、所有者だと言い張る者が、自分自身であることの証明である。
「山椒は小粒でもピりりと辛い」

「山椒は小粒でもピりりと辛い」

チョコレイト旅団

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2014/12/03 (水) ~ 2014/12/03 (水)公演終了

満足度★★★

悪戯は楽しいにゃ! !
 1周年記念公演と銘打った公演だが、番外を入れると1年で6本目と多作である。若い劇団で、シナリオは女性が書いているということもあって、今しか書けない、箸を落としただけで笑う水準のノリが基本である。そのレベルでの馬鹿馬鹿しさ、輕み、責任感の無さは、それで面白い。
 然し、ホントに長く劇団としてやってゆくつもりなら、是非ともこのノリは、あと半年で切り上げて、チェーホフに挑んでみるべきだろう。ベケットやイヨネスコ、サルトルでは無い。寺山、唐、佐藤 信でも清水 邦夫でも別役、安部 公房、つかでもない。シェイクスピアでもなければ、イプセンでもなく、チェーホフである。何故、チェーホフかと言えば、スタニスラフスキーの演技論に関わるからである。
 他にも無論、勉強すべき理論家はある。最低限、「風姿花伝」は読んで自家薬籠中のものとすべく励んで貰いたい。当然、能、歌舞伎、浄瑠璃も学ぶべきである。近松と四代目鶴屋南北は、必読。
 とはいえ、遊び心、悪戯精神は忘れなさんな! 「梁塵秘抄」にもある“遊びをせむとや、生れけむ”ハンダラ、座右の銘である。

名醫先生

名醫先生

パンドラの匣

劇場HOPE(東京都)

2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★

大人向け苦みコメディー
チェーホフを敬愛してやまなかったというニール・サイモンの短編を舞台化した作品だ。チェーホフが医者であったことは、演劇に関心のある者の常識だが、サイモン自身、医者の真似ごとをしていたとかで、“ドク”の愛称で呼ばれていたと言うことが、会場で渡されたリーフレットに書かれている。

ネタバレBOX

 
 こんな経緯で、今作は、サイモンがチェーホフ作品をモチーフに書いたということである。どの短編も大人のブラックなジョークが効いて、アイロニカルであったり、苦みがあったり、粋だったりと楽しめる作品群である。シナリオが良く練られているし、役者陣も中々、才能豊かな人々が演じてくれるのだが、初日、カむシーンが多い役者が居たのは残念だ。
 特に気に入った役者が「くしゃみ」でブラシルホフ将軍を演じた桑島 義明、「水死芸人」で浮浪者を演じた光永 勝典、「オーディション」で若い女を演じた中島 佐知子。桑島は、将軍兼大臣の役柄なのだが、高位に在る者の鷹揚や大衆への距離感を上手く捉えて表現していたし、光永は、水死芸を演じる浮浪者の、底辺に在りながら、また苦労をしながらも生き抜いて行く者の複雑なメンタリティーを良く表現していた。中島は、オーディションを受ける際に演じた三人姉妹のラスト部分で三姉妹を演じ分けるのだが、其々の見ている世界を、ちゃんと彼女の解釈でヴィジョンとして見た上で演じている、と感じさせる演技をしている。
春のズボンと秋のブラシ

春のズボンと秋のブラシ

TANGRAM

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/11/27 (木) ~ 2014/12/01 (月)公演終了

満足度★★★★★

秀逸な舞台
地方の、民家と殆ど変らないような不思議な宿を舞台に、宿に集まった人々の日常生活を荘子の“胡蝶之夢”を重層低音のように響かせつつ、各々の人生をそれに重ね、輻輳させて掬い取った見事なシナリオで、死と生の重い話になりがちな所、停電場面を丹念に描き、ランタンや懐中電灯を用いて舞台進行をさせることで、恰も、誰しもの思い出にある修学旅行の悪戯気分を引きずり出し、不思議に明るい印象に変える魔術的手法が功を奏している。
 舞台美術も実に手の込んだ見事なものであり、音響、照明も気が利いている。無論、役者陣の演技も皆素晴らしい出来である。未だ上演中なので詳細は述べないが、ランタンなどの灯りに浮き上がる世界は幽明・閑寂、冥府的である。無論、これは、現とも夢とも知れぬ世界と繋がるのである。この辺りの連関も見事だ。

E-650(イーロッピャクゴジュウ)

E-650(イーロッピャクゴジュウ)

SNATCH

サンモールスタジオ(東京都)

2014/11/27 (木) ~ 2014/12/01 (月)公演終了

満足度★★★

浅い
踊りは上手いのだが、シナリオが平板で、演技も溜めの必要性を意識したり、間によるドラマツルギー構築ができるレベルにない役者が殆どである。年齢的に若いということもあるだとうが、演技に関しては、これからかなりの修練が必要である。また、シナリオライターは、少し哲学書位は読んだ方が良い。ハンナ・アーレント辺りが、入り易く20世紀の知の集大成としても、また皮相な現代への痛烈な批判者としての彼女の仕事の意義からしても良いかも知れぬ。無論、フーコーやラカン、デリダ等から入っても、ハイデガーやサルトルから入っても、スピノザ、ニーチェ、カントなどから入っても或いはウィトゲンシュタインから入っても良い。これらの哲学者を合わせ読んでも、プラトンやソクラテスらギリシャ哲学を学んでも良い。世界の捉え方が、現在の余りに平板なそれとは異なってくることだろう。先ずは、しっかり生きることを。
 今作で気に入った科白は「屑でも守りたいものはある」の一言。このレベルの科白が最低10程度は欲しい。

いとしいとしのぶーたれ乞食

いとしいとしのぶーたれ乞食

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ・九段下GEKIBA(東京都)

2014/11/28 (金) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★

狂気も欲しい
 どうも清水 邦夫の作品というのは、役者の内面に強く高いテンションを維持することを要求する作品が多いように思うが、今作や楽屋は、その代表例と言えるかも知れない。清水は、良くリルケを引用するが、それは、彼自身の感性に詩的なものがあるからだろう。今作にしても、詩的感性なしに理解するのは困難だと感じる。人々は物事を率直に見る訓練をしていない場合が多いからである。
 然し乍ら、pariahとしてものを見たらどう映るか? 老婆は? ええじゃないかパック旅行の面々が旅先で留まった場所は、ええじゃないかに加わった面々、千余名が首を刎ねられた首塚であった。其処には、老爺と老婆が住んでいたが、この老カップルは、実在の者ではあるまい。ええじゃないかパックで訪れた人々に呼応して出て来た異界の者達であると考えた方が、辻褄が合うように思う。その分、この二人を演じる者には、内面的なポテンシャルの高さが要求されるのだが、老婆役の一花さん、老爺役の鈴木さん、二人とも、良い演技をしていた。他に脇を固めた未亡人役の内海さん、看護婦役の阿部さんの演技も気に入った。若手では、渡辺君の目が気に入った。
 シナリオ・演出上では、オープニングの首だけが浮かび上がるシーン。ええじゃないかパックの面々が休んだ先が、首塚であり、そこで主たるエピソードが展開されること。そして、ラスト。しゃれこうべに花がたむけられる美しい終わり方が有機的に連動していてグー。
 欲を言えば、殆ど出ずっぱりの老婆の美醜にファーストシーン以外にも変化をつけて欲しい。メイクで無理なら、照明で工夫するなどでも大分違ってくるように思う。(例えば、醜を表す時は寒色系、美を表す時は暖色系という具合に)演技が良いのだから、そういう所で女優をフォローして欲しいのだ。何れにせよ、新人も入ったこの舞台で、丁寧な作りをしている。だが、もう一つ欲を言えば、もっと爆発的な瞬間があって良いとは思う。何せ、もう棄てるものなど何も無い人々のハレの表現なのだから。

New Planet One

New Planet One

笛井事務所

明石スタジオ(東京都)

2014/11/27 (木) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★

アンテナ感度良好 ばっと
星 新一のショート・ショートから7編を選んで劇化。演目は、①来訪者②マネー・エイジ③生活維持省④伴奏者⑤ボッコちゃん⑥肩の上の秘書⑦敬服すべき一生の7本だ。笛井事務所の制作である。この事務所、いつも面白い作品を手掛ける。そういうアンテナを張り巡らせているのだろう。然し、演技の丁寧さについては、若干、疑問を持つのも事実である。今回、テキストについては、いじっていないらしいから、星 新一さんの本を読んでもらうとして、細かい所作をぞんざいに演じられると、矢張り多く舞台を観ている者から高い評価を得るのは難しいと考える。具体例は会場で書いたアンケートに記した通り。

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