暗愚小傳 公演情報 暗愚小傳」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    平田オリザ作・演、青年団初観劇
    病んでいく智恵子を直接描くのではなく、高村光太郎と智恵子夫妻の何気ない日常を切り取り、淡々と話が進んでいきます。
    また悲しさをほとんど表現せず、智恵子役の能島さんの屈託のない笑顔や、光太郎役の山内さんの明るい演技が、逆に悲しさを浮き彫りにし、静かに心に染み入るような公演でした。

    こういう見せ方があるんだと感心し、何気ない演技に、プロの役者さんてやっぱりすごいなぁと重ねて感心しました。
    面白かったです。

    ネタバレBOX

    先にも書きましたが、高村光太郎と智恵子夫妻宅に出入りする人々
      永井荷風、宮沢賢治、姪の一恵、姪の夫になる夏木、
      近所の金石さん、使用人の泰子さん、出版社の本間さん、
      アメリカ二世の西田さん、偽三世の村田さん、通訳の中村さん
    との何気ない日常を演じています。

    直接、智恵子が病んでいる様子や死の前後を描くのではなく、
      智恵子に少し兆候があるかないかの何気ない日常、
      精神を病み始めているが不自由なく明るく暮らせている日常、
      智恵子の法事の日の日常、
      智恵子や宮沢賢治が亡くなって数年後の日常、
    を何気ない会話でつづり、淡々と描くことで、智恵子を亡くした悲しさなどが浮き上がってくる感じです。

    ただ本当に何気ない日常会話ですが、ほとんど高村と関係しなかったであろう二世や三世とのエピソードなどがあり、何の意味があるのだろうか(高村光太郎の事をよく知っていれば合点がいくのかもしれませんが…)、戦争に負けた日本の状況をほんわかと表現したかったのかな…、などと思ってしまいました。

    はっきりした起承転結はなく、起伏のない淡々とした静かな会話劇なので、好き嫌いはあるように思いました。
  • 満足度★★★

    観ても戦争詩執筆の理由は分からず。/約120分
    こまばアゴラ劇場ウェブページの公演案内には「戦争詩人としての高村光太郎を描く、平田オリザ90年代初期の名作。」とあるのに、戦争詩人としての側面はほとんどフィーチャーされておらず、肩透かしを食らった気分。

    当日パンフによれば、1984年の初演に向け若き日の作・演出家は詩人が戦争の詩を書く理由を一生懸命考えながら本作の初演版を書いたそうだが、私もなぜ高村が戦意を煽り、お国のための殉死をも讃えるような一連の「愛国詩」を書いたのかが気になって、答えを知りたくて鑑賞。

    ところが蓋を開けてみれば、高村がどんな思いで戦争詩を書いていたかが“ほの見える”場面が二、三あるのみで、そのような詩を書いた理由はついぞ分からずじまい。

    理由が分かるものと早合点して観劇した私も私だが、公演案内に上のような文句があればこのような誤解をするのも無理からぬこと。
    「戦争詩人としての~」から始まる公演案内の文章は、私のような迂闊者をこれ以上出さないためにも改められるべきだろう。


    まあ愚痴はこのぐらいにして、観劇して何よりも驚いたのは、実在の人物を扱った本作までがいかにも評伝劇然とした厳めしい作風を採らず、あくまでも青年団的方法、今で言う“駄弁芝居”のスタイルで作られていること。
    高村光太郎宅を舞台とし、そこに住む者と来客とによる無駄話から劇のほとんどが成っているのだ。

    ただ、その種の劇としてはくだらなさがまだまだ足りず、宮沢章夫、関村俊介、玉田真也ら駄弁芝居の名手たちの作品には遠く及ばない印象。

    私の観た回はかなりウケが良く、随所で笑いが起きていたが、私は過剰なダジャレ押しに困惑するばかりで、一度も頬を緩めることなく劇場を後に…。


    『智恵子抄』に見られる純粋で脆い智恵子像を繊細な演技で体現した能島瑞穂さんの妙演に支えられ、光太郎・智恵子夫妻を描いた劇としては良く出来ていた。

    ネタバレBOX

    最も印象深いのは、発狂して幼児化した智恵子の遊び相手を光太郎が務める場面。
    智恵子にとって最も良き思い出である“高原での乗馬”を再現しようと馬役を買って出て智恵子を背に乗せ、四つんばいで居間を歩いている時の複雑極まる光太郎の表情はいまだに忘れがたい。

  • 満足度★★★★

    ネタばれ
    ネタばれ

    ネタバレBOX

    平田オリザの【暗愚小傳】を観劇。

    高村光太郎夫妻とそれを囲む友人達の話し。
    今作は再演で、初演が1984年だ。

    戦争と智恵子との夫婦生活、そして妻を失った夫の悲しみが元に描かれているのだが、物語自体はそこには持っていかず、変化のない日常に焦点を当てながら、突然に襲ってくる妻への悲しみ、高村光太郎の戦争批判に対する行為を描いている。
    自身に起きた悲しい事、辛い事、嬉しい事などは日々の生活を過ごしていたら、それは生きている上ではほんの瞬間の出来事でしかなく、そんな中でも我々は生きていかなければならない。そして毎日の日常に追われていながら、ある時突然に喜怒哀楽の感情が湧きあがってくる、そんな人間の感情の一瞬の間を瞬間、瞬間で描いている作品である。

    平田オリザが何故、西洋演劇とは相対する現代口語演劇という方法論に行きついたのか?
    それは今作を観れば観るほど納得してしまうのである。
    【東京ノート】を作った頃は、既に完成されていた方法論でもあるようだ。

    傑作である。
  • 満足度★★★★

    将棋
    面白い。120分。

    ネタバレBOX

    高村光太郎(山内健司)…詩人。
    智恵子(能島瑞穂)…精神疾患?にかかり、死亡。
    永井荷風(永井秀樹)…高村宅に出入りする。
    夏木(佐藤滋)…服飾とか体操とか色んな仕事をする。大陸にて死亡。
    一恵(木引優子)…夏木と結婚する。
    金石さん(松田弘子)…高村の近所のおばさん。ジョーク好き。
    泰子(井上みなみ)…高村家の使用人。銀座の話が出来ずスネた。
    本間(森内美由紀)…青鞜の出版社の人。金石さんとウマがあう。
    マイケル西田(折原アキラ)…アメリカ人との二世。まんじゅうパクった。
    村田絹子(川隅奈保子)…エセ三世。銀座に店を出す。
    ナンシー中村(堀夏子)…西田が連れてきた通訳。英語しゃべれるみたい。
    宮沢賢治(伊藤毅)…高村宅に出いりするマント男。

    1900年初頭から中ごろの戦争期の高村宅。普通(よりも裕福そう)な生活と一個人な悩み、そして外側の戦争の空気を孕む舞台。智恵子が死に、戦争に坦する詩を書き、そして日本が戦争に負ける。椅子を積み、智恵子とともに見た景色を眺める高村の前に智恵子が現れる…。

    高村と智恵子のどことなく哀しげな感覚に引き込まれた。キュートな智恵子の馬になり一緒にトランプして、死に対面して、それでも詩を書き続けた高村の想いを想像するとやっぱり哀しい気持ちになる。山内健司の笑顔と爛漫な能島瑞穂の表情がそう感じさせるのかもしれない。
    個人から世界へ、世界から個人へ、それぞれへ開いていく話のバランス感覚がうまい。
  • 満足度★★★★★

    至芸
    上演時間1時間50分。平田作品×青年団を久しぶりに観たが、とてもいい味が出ていた。第五楽章のよう。

  • 満足度★★★★

    智恵子さん
    彼女のナイーブな心が、ああこうして壊れていったのかと思わせるところは素敵でした。

    ネタバレBOX

    智恵子に精神を病む兆候が垣間見られる頃、智恵子が精神を病んでいる頃、智恵子の法事の日の様子などを通して、戦中戦後の高村光太郎と高村邸に出入りした人々を描いた話。

    光太郎といえば彫刻家で詩人、妻智恵子とのことを描いた智恵子抄ということぐらいしか知らず、戦争に協力する詩を量産したことなどは全く知らず、具体的な詩が紹介されないので、いきなり戦犯に問われるかどうかと心配する発言をされても困ってしまいます。

    のらりくらりと戦争に協力することを回避した永井荷風と、開戦前に死んだもののもし生きていたら戦争賛美の詩を書いたであろうとアフタートークでも話題になった宮沢賢治が登場しました。三人の対比が面白いのでしょうが、それぞれの立ち位置をアフタートークで知るようではいけません。1984年初演、書き換えられた1991年から年数が経っているからなのか、いやその当時でも私は知らなかったことを考えると、南洋の笛や銛でうつつを抜かす暇があったら本編中に何かのエピソードなりを入れてほしかったと思いました。

    その笛と銛は、執筆直前にたまたまもらったものを取り入れたとのことでしたが、『この生は受け入れがたし』のときの狐の面を取り入れた状況と全く同じで、無理に日常に非日常を持ち込まなくてもよいのではないかと思いました。

    アフタートークにおける空飛ぶ新戦艦高千穂の話は面白かったですね。

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