満足度★★★★
時間を自由に行き来して。迷い込んだ長い悪夢から覚めたような、それでいて希望も未来もあり・・・
少しおどろおどろしい幻想的な時代劇。
時代を自由に前後し、終盤では同じ人物が一瞬で数十年時代を経てしまう。
恐ろしい悪夢のようでありながらも、過ぎてみれば懐かしくもなり、
ノスタルジックな気分にも浸れてしまう。
観客の現代に近い、登場人物たちの現代、
長い悪夢から覚めたようなエンディングでは、
未来への一縷の希望すら感じさせる。
不思議な浮揚感と余韻が残る、いい芝居でした。
(ちなみに、長塚さんの役の男が、常に探されている?というのが妙に可笑しかったです。)
満足度★★★★
原作ファンには物足りないか?
長塚作品が性に合うのか、出来の良し悪しに関わらず楽しめる。
原作ファンからすると物足りない部分も多いだろうと思えるが、そんなことは関係なく芝居として見れば十分に楽しめた。
時代や人の変わり方(乗り移り)も基本的なものであるが、ぎこちなさはなく、流れに自然と乗れた。
最後列での鑑賞だったため、もっと前なら迫力もあって楽しめたのでは、と思う。
満足度★★★
観客自身の想像力が必要な舞台。
朗読劇「ラブ・レターズ」では噛みまくっていた長塚さん。
本業の演出家としてはきっと素晴らしいはず…と、かなりぎりぎりになってからチケットを購入し、2階席の端っこにて鑑賞。
見晴らしはよいのですが手すりが視界に入るのと、上手側でのお芝居が見えない部分があったので、納得のA席。しかし当然コクーンシートよりは見やすく、舞台上を円卓のようにゆっくり回る独特の演出がとてもよく見えたので、2階席でラッキーでした。上から見ても小栗旬君は背が高ーくて顔が小さく手足が長い・細身ということが分かりました。声量はそれ程でもないかな?
小日向さんは意外に小柄でびっくりしましたけど、声色を変えて老人と17歳の少年を演じていることに拍手。原田夏希さんは背が高くお綺麗で、声も透き通って聞きやすく、時代劇が多いからでしょうか、着物での歩き方や所作がきちんとしていて、おそらく一朝一夕で身についたものではない慣れた動作でした。あのしとやかな雰囲気の方が、来月公開の映画で脱いだり啖呵きった極妻を演じているのがちょっと想像できないです。
満足度★★★
姿勢が素晴らしい
去年観た、長塚圭史さん演出の『南部高速道路』が素晴らしかった為、この作品も拝見しました。
過去を題材に現在の時代状況へ向き合おうとする姿勢は、『南部高速道路』同様に素晴らしいと感じました。
ただ、芝居としては、あまり面白いとは思えませんでした。
(私の席が舞台から遠かったことも影響しているかもしれません。同じ作品をもう少し小さい劇場で見ていたら、印象はだいぶ違うと思います。)
満足度★★★
原作からは一味違うようだ
山田風太郎「魔群の通過」をベースに、水戸天狗党を題材にした芝居、ということは事前の情報で分かっていたが、長塚圭史はそう単純には芝居を作っていない。昭和20年からスタートして、幕末が中心となるものの、時代が大きく前後し錯綜し混乱し幻惑する不思議な作りになっている。最近の長塚作品とは不条理さで通ずるものがあるが、ある意味分かりやすい面もあり、エンターテインメント性もそれなりに見せている。座組が豪華で癖のある役割を各々がしっかり演じているのは見応えがあった。
初スパイダース。
コクーンの広い空間であんなにシンプルな見せ方をするとは。勝手な思い込みで、結構ごちゃごちゃした視覚情報を与えてくるんじゃないかと思っていたものの。冒頭のほぼ無言でしばらく流れる時間は魅入った。見せ方よりも、感じさせ方だったか。
けれどその後の語り出してからがどうもなかなか響いて来ず。せっかく小栗さんの長台詞だったのだけど。距離の問題でもなかっただろうし、役者能力の問題でもなかった気がする。何故なのか判断が付かずにモヤモヤ。他、笑って良さそうな部分でも今日は客席の反応が鈍く。雨の影響?
小野武彦さんの存在感、声の深さに感銘。
満足度★★★
多層的で幻想的な時代劇
原作未読で、天狗党についても全く知識がなかったため、多少取っ付き難さを感じましたが、単なる時代劇ではなく、いくつもの時代が折り重なった怪奇的で幻想的な雰囲気の中で報復の連鎖の虚しさを描いていて印象的でした。
戦争の音~玉音放送~ジャズと時代を駆け抜ける様なコラージュ音響の後に、第二次世界大戦直後の時代設定で若い男女が山奥の宿に辿り着くところから始まり、幕末時代の人々の亡霊が当時、あるいはさらに若かった時代を再現し、時系列がシャッフルされる中、次第に登場人物達の呪われた関係が明らかになって行き、ラストでは舞台上で描かれていることが現代まで続いていると感じさせる物語で、シリアスなメッセージを抑制されたトーンで訴えていました。
中央が円形の回り舞台になっている真っ黒な舞台で、具象的なセットがないので、異なる時代の格好をした人が並んでいても、意外と違和感がありませんでした。黒い空間に赤い衣装や旗が並ぶ絵柄が美しかったです。
天井にあった美術は時折赤く照らされていましたが、どのような意味があるのか分からず、ビジュアル的にも効果が感じられず勿体なく思いました。
暗い雰囲気が強かったせいか、所々にあったユーモラスなシーンであまり笑いが起こらず少々空回り感がありましたが、くどくないので白けた感じにはならなかったのが良かったです。
白石加代子さんの迫力のある台詞が舞台を引き締めていて、素晴らしかったです。いくつもの役を演じた原田夏希さんは声の表情が硬くて、役柄の実直な性格は伝わって来ましたが、周りと溶け込んでいない様に感じました。
満足度★★★
長塚流のアングラ舞台という印象
これまで幕末の歴史事件関連はあまり好みではないので敬遠していた。約150年程前の出来事だが、個人的に先祖が関わった事はない。
一連のベストセラー小説やテレビドラマ(つっても、大河ドラマの新選組!位だが)の予備知識程度で観た今作品。原作本は未読。
真っ暗闇の中で見続けた舞台、なんか歌舞伎作品としてアレンジして見ても良いような出来映えだった。
舞台上は廻る盆舞台、2階席正面から見たが、1階席の近くで見ると人間関係が複雑に見えて余計混乱するかも。
暗闇に映える天狗の赤い姿が印象的。
天狗熱(意味違うけど)にかかったかのような休憩なしの約2時間30分。